「……おん?お前……百合園さんとこの……」
ぼくの顔をみた君はそういって両手をあけてくれた
ぼくがその上に乗ると、君はぼくの身体をやさしくつつんで両手の親指でなでまわしてくれた
「どうしたー?家出かー?」
ちがうよ!おさんぽ中だよ!そんな思いを込めて羽をぱたぱたさせても君にはぼくの言葉は伝わらない
「冗談冗談、お前はそんな悪い子じゃないもんなー」
だというのに、君はぼくの言葉をわかってるみたいに返事をしてくれた
その微笑みがぼくに向けられたのが嬉しくて、つい羽を広げて君の頭の上に乗ってしまった
「それにしてもキヴォトスの鳥獣保護管理法はどうなって……おっと、なんだ?俺の頭は巣じゃないぞ?」
それはわかってるけど、でもここは一番居心地が良いから
ティーパーティーがお茶会するテーブルの上も、セイアちゃんの袖の上も好きだけど
でも、やっぱりぼくは君の近くが一番すきだ
ミカちゃんと口喧嘩してる時もセイアちゃんと雑談してる時も、ナギサちゃんがミカちゃんのことで謝りに行った時も
怒っても笑っても困ってもずっとやさしくてあたたかい君の温もりがすきだ、そんな思いを伝えるために頭の上でぴょんぴょん跳ねていたら君は困ったように口を開いた
「……あー……とりあえず今から買い物に行くんだけど……ついてくるか?」
ぼくはもう一度羽ばたいた、今度は勢いよく
「牛乳に食パンに……お、じゃがいも安いな。買っとくか」
色んな食べ物をみてまわる君の胸ポケットで、モゾモゾと顔を埋める
君は値引きされてる商品を見つける度に嬉しそうに目を輝かせているね
「……ん?餃子の皮がまとめ売りされてるな?……よし、決めた!今日は餃子パーティーだ!シロコさんにも手伝ってもらおう!」
カゴの中に色んなものを入れると君はたのしそうに鼻歌を歌いながらレジに向かった
今日は何をたべるのかな、君のだいすきな甘いの?それともいっぱいお腹がふくれるお肉?
「さて、今日の夕飯は決まったけど明日は……ん?」
ふと君の視線が気になって追っかけてみると、君はぼくの顔をふさいでしまった
どうしてだろう?ぼくは君と同じ景色がみたいのに
「ねぎまも皮も塩もタレも全部好きだけど……流石に今はなぁ……」
みせてみせてと羽を胸ポケットでぱたぱたさせても君はぼくの頭をやさしくなでるだけだ
そんなことされても誤魔化されないもん、もっとなでて
「さて、他には……あ、洗剤切らしてたな」
目の前がみえるようになったころにはもう、別の景色に変わっていた
ずるいぞ、ぼくだって一緒にみたかったのに
「うおっ……暴れんな暴れんな、胸がくすぐったいから……んっ」
抗議するかのようにジタバタしても君はちょっと身体を動かすだけだ
ぼくのちっちゃなからだじゃ君にはかてない
「なんだ?怒ってるのか?」
ふてくされて羽を大人しくさせていると君はこまった顔をしながらぼくの頭を胸ポケット越しになでた
だからそんなんじゃ誤魔化されな……んーもっとたくさん!
「よし、これで大体買い終わったな。あとは……そうだ、今日は買い物に付き合ってくれたお礼にお前になんか奢ってやろう!」
わーい!やったー!
「あら!とってもかわいい鳥さんですね♪」
「うぇ?ああ、どうも……」
ぼくにごはんを食べさせてくれている君にひとりの女の子がはなしかける
ぼくはこの人をみたことがある気がする、たしかトリニティにたくさんいるシスターさん達のひとりだ
「貴方のペットですか?」
「いえ、知人のですね。この子が一人で散歩していたところを偶然出会いまして」
「一人でお散歩?……だ、大丈夫なのですか……?」
「大丈夫っすよ、俺高校生なんで」
「いえ、そっちじゃなくて鳥さんの方の心配を……」
ぼくのことを心配するシスターさんにふんす!と胸を張って得意気にアピールする
ぼくはかしこいんだぞ!ひとりでおさんぽだってできちゃうんだから!
「ほーら、ぶどうだぞー」
わーい!
「はぁ……お前は本当に可愛いなぁ……」
ぼくにごはんを食べさせている君は顔をほにゃっと崩しながらほめてくれる
でもぼくにとっては君のそのえがおの方がかわいいとおもうよ
「あ、あの……」
「ん?なんです?」
「もしよろしければ……その……わ、私にもその子に触れさせていただけないでしょうか!?」
シスターさんはぼくに視線を向けながら大声でさけんだ
「んー……ぶっちゃけこの子の気分次第というか……まあ、試しに軽く指でも近づけてみたらどうですか?」
「は、はい!ありがとうございます!」
シスターさんはそっとぼくのからだに触れようとしている、今日のぼくは気分がいいのでゆるしてあげよう
シスターさんはぼくのからだを両手でやさしくつつむと、ぼくのからだをふよふよと軽くもみはじめた
「お、おおぉおぉ……!ふ、ふわふわしてます……!」
「マジで触り心地最高ですよね、一生触ってたいですもん」
「は、はい!これ以上触れてると手放せなくなりそうです……!」
むっ、それはいけない。もしこのまま連れていかれちゃうとセイアちゃんのもとにも帰れないし君にもあえなくなってしまう
そくざにパタパタとはねてシスターさんから遠ざかる、ぼくにはおうちがあるんだ
「あっ……離れちゃいました……触れ方がいけなかったのでしょうか……?」
「いや、俺も同じような触れ方したことあるけどその時は逃げませんでしたよ」
「では、単純に出会ったばかりだから……とか?」
「多分そうじゃないっすかね?」
こうして会話してるあいだにも君はぼくにごはんをたべさせてくれる
でも、はなしかけてる相手はぼくじゃなくなっちゃった
「うぅ……もう少し触っていたかったなぁ……我儘を言ってしまって申し訳ありませんでした……」
「あれ?もういいんですか?」
「はい……これ以上無理に触れると嫌われてしまいそうなので……その、ありがとうございました」
「ああ、いえ……こっちこそありがとうございました」
「ふふっ……頼み事をしたのは此方なのにどうしてお礼を言ってるんですか」
「そりゃあ、目の保養的な意味ですよ。美少女が可愛い生き物と触れ合ってたらそれだけでわっぴ~……じゃねえや、ハッピーな気分になれますから」
「びっ!?美少女!?」
むっ、また君はだれかをくどこうとしてるんだね
どうせ君のことだから特に意図せず言ってるんだろう、それか落ち込んでるシスターさんを元気付けようとしているとか
ぼくはくわしいんだ
「そ、そそそそんな!美少女だなんて……!」
「おっと……手を止めて悪かったな、あーん」
ほらやっぱり気にしてない、シスターさんは顔をあかくしてるのに君はすぐにぼくを……ぼくを……
ぼくを優先してくれたのかぁ……うれしいなぁ……
「ああ、神様仏様サクラコ様!初対面でゲヘナの生徒に口説かれてしまった私は一体どうすれば……!」
……でも、シスターさんの〝かんちがい〟をこのままにしておくのもだめだよね
だからぼくは力いっぱい羽をひろげて君の肩に飛び乗る
そして頬に頬を合わせてすりすりとうごかす
「あら?」
「ん?なんだ?今日は随分と甘えん坊だな?」
ここはぼくの席だぞ、ぼくだけの居場所だぞ
そうアピールするようにいっぱいからだをくっつける
ぼくはシマエナガ、君のともだち
ぼくはシマエナガ、君といっぱいあそびたいふつうの鳥だ
ぼくはシマエナガ、君のことがだいすきな君のトモダチ
この羽があるのは君の元まで飛び立つため
君の元に飛び立つのは君に会うため
君に会うのは君がだいすきだから
ぼくはシマエナガ、今はまだちっちゃいけどいつかおっきくなるんだ
そしたら君をせなかに乗せて、二人でキヴォトスの空を旅するんだ
ぼくはシマエナガ
ぼくはシマエナガ
ぼくはシマエナガ
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「……ん?酒泉からのモモトーク?」
「……むぅ、これは……」
「……主人である私を置いてデートとは良い度胸じゃないか」
「……ずるいぞ」
「……」
「……」
「……」
「……もしもし?酒泉かい?モモトークに送られた画像、見させてもらったよ。どうやら私のペットが世話になったみたいだね」
「どうだい?そのお礼と言ってはなんだが、今度の日曜日私の部屋で……」
「いやいや、遠慮する必要は無いよ。君には鳥の世話もゴリラの世話もしてもらってるからね、何か礼の一つくらいは……」
「セイアちゃん、私の目の前で何の話してるの?」
「ナギサ、君のロールケーキの出番だぞ」
「私のロールケーキを口枷か何かと勘違いしていませんか?」