俺には転生特典としてライダーに変身できる力があった
しかしこれは神様に会ってお願いした訳でも天の声的なのに貰った力でもない、生まれた時からなんとなく〝あ、俺ってこんな力を持ってるんだな〟と感覚として理解していただけだ
でも、そのライダーの力はあまりにも強大すぎた
だから俺はどんな状況でもこの力を使ったことは一度もなかった……そう、生まれて一度たりとも
アリウススクワッドに殺されかけた時も、ベアトリーチェと対峙した時も、シロコさんやプレナパテスを止めに行った時も
この力は使っちゃいけない、そんな決意をしながら俺は可能な限り自分自身の力で戦い抜いてきた
「ゆめ、せん……ぱい……」
でも、その決意はここまでかもしれない
目の前にはテラー化して姿を変えた小鳥遊さん、俺の背後には俺を庇って倒れ伏したシロコさんと空崎さん
先生は何かに殴られたかのように頭を抱えてから気絶し、対策委員会の皆は先生の指揮無しで〝青い怪物〟に挑んで破れ去った
そして今立っているのは俺一人……正直、立っているのがやっとって状態だけど
……幸いにも皆はまだ死んでいない、意識を失っているだけで済んでいる
だが、俺にはテラー化した小鳥遊さんと巨大な青い怪物の手から皆を守れる程の力は持ち合わせちゃいない
このままだと無抵抗な皆は簡単にその命を奪われてしまうだろう
「……ごめん、皆……これしか思い付かなかった」
だから、覚悟を決めよう
この戦いが終わったら俺は死んでいるかもしれない、もしくは死んでいるのは小鳥遊さんと青い怪物で、俺は小鳥遊さんを殺したことで皆に恨まれてしまうかもしれない
それでも俺はこの力を使おう、だって────小鳥遊さんの手で大切な人達を殺させたくないから
《ゼロワンドライバー!》
空から突然降ってきた転生特典────ベルトを腰に装着する
そしてもう一つの転生特典をそのベルトにセットする
《ヘルライズ》
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい
心の中で何度も小鳥遊さんに謝る
出来れば貴方も助けてあげたい、助けられなかったらごめんなさい
でも、貴方の大切な人達を守る為にはこれしかないから
《オーソライズ》
鈍いカウント音の後、再び音声が鳴り響く
《プログライズ!》
《Hells energy as destroy the world》
空から赤い飛蝗が姿を現し、俺の身体に纏わりつく
その飛蝗の顔面部がドロドロと溶け、赤黒い装甲へと変貌する
《HELL RISINGHOPPER》
ごめんなさい、これしか思い付かなくて
ごめんなさい、俺が弱いせいで
ごめんなさい────殺してしまうかもしれなくて
《HEAVEN or HELL it doesn't matter》
こんな世界に天国なんて存在するのか、そんな世界そのものを恨むような疑問を最後に意識がどす黒く染まっていく
ああ、やってしまった
次に起きた時、俺は地獄に堕ちているのだろうか
それとも現世で対策委員会の皆の恨む様な表情を見ることになるのだろうか
「小鳥遊、さん……タカナシ、ホシ、ノ」
朧気な意識を保ちながら青い怪物とテラー化した〝破壊対象〟へと向き直る
「壊す」
それが、怪物としてではなく俺が〝折川酒泉〟として発した最後の言葉だった