〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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シュポ川酒泉

 

 

 

 

────野郎オブクラッシャアアアアアアアアアアアアアアッ!!!

 

「パヒャヒャ!にっげろ~!」

 

「お~」

 

 

平日の早朝、普通なら生徒達が自身の通う学校に登校する時間

 

それはハイランダーの制服を身に纏う彼女達────橘ヒカリと橘ノゾミにも言える事だ

 

しかしハイランダー鉄道学園は土地としての自治区を持っていないというキヴォトスでは特殊な性質を持っており、代わりに学園が管理する路線そのものが自治区のような役割を持っている

 

 

「あの子達またやってるよ……」

 

「もうすっかり名物扱いだねぇ……」

 

 

つまり、その路線を利用する他校の生徒達に彼女達のやり取りが見られるという自体も当然発生する

 

双子を追いかける酒泉を見てひそひそ声で会話するゲヘナの生徒達、その内容は酒泉にとってはとても耐え難いものだった

 

 

「やっぱりロリコンって噂、本当だったんだ……」

 

「だからいつもいつもあの双子ちゃんを追いかけてるんだね……」

 

 

瞬間、酒泉の頭が真っ白になる……そして一瞬で沸き上がる

 

発汗してほのかに赤らんでいた顔が完全に真っ赤になってしまった

 

……この双子が追いかけられている原因は早朝から酒泉に悪戯を仕掛けたからというどこからどう考えても自業自得な原因なのだが、それを知らぬ者達は折川酒泉が幼女趣味だから追いかけていると勘違いしている

 

 

────そ、そんな……やっとあの噂を払拭できたと思ったのに……クソガキイイイイイイイ!!!てめえらのせいで俺の人権が消し炭だああああああああ!!!

 

「きゃー!ロリコンが怒ったー!」

 

「やーい、ロリコンしゅせんー」

 

────殺す

 

 

脚に力を込めてより速度を出す酒泉、しかし悲しいことに彼女達の逃げ足はそれを上回る

 

そして追いかけっこが長引けば長引くほど彼のロリコン疑惑が再び燃え始める

 

……この噂に関しては別に双子の少女が流した訳ではない、ただ日常的に悪戯を仕掛けてくる双子を酒泉が追いかけ続けた結果いつの間にか広まっていただけだ

 

すっかり浸透してしまった折川酒泉ロリコン説、しかしこれを再び払拭する方法は意外にも簡単だった

 

それは、何をされても無視すること

 

彼女達のようないたずらっ子は相手にすればするほど余計に喜んでしまう、つまり何の反応も示さなければ自然と悪戯も止むだろう

 

酒泉もそう考えて双子の悪戯を無視し続けた時期があったし、実際にその効果は絶大だった

 

 

『えぅ……ひっぐ……ぐすん……なにがしゃべっでよおおお!』

 

『ごめんなさいするがらぁ……ゆるしでよぉ……』

 

 

……むしろ絶大すぎた

 

双子の泣き顔を見た酒泉はギョッとし、すぐに二人に頭を下げた

 

折川酒泉という少年の性格的に二人を無視するなど不可能だったのだろう……結局、彼は仕方なく今まで通りの関係を続けることを選んだ

そしてそれに甘えた双子の少女はこれからも悪戯を続けるだろう

 

酒泉の登校前にピンポンダッシュをしたり、昼休みの時に横から弁当のおかずを奪ったり、酒泉の背中に勝手に自分達の名前が書かれた付箋を貼ったり

 

 

「ほーら!こっちだよー!」

 

「おそーい」

 

 

折川酒泉が他者に構う暇を与えないほど、何度も何度も繰り返し怒らせてその視線を自分達に向かせ続けるのだろう

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

────お、おはようございます……先輩……

 

「おはよ……なんだ、随分疲れてるな……」

 

 

この日自分達が担当する列車の内部に酒泉が顔を覗かせると、そこには既にもう一人の担当者が待っていた

 

先輩と呼ばれた彼女はハイランダーに入ったばかりの酒泉に仕事を教えた張本人……つまりは嘗ての教育係だった

 

 

────もしかして……もう列車内点検始まってます……?

 

「いや、ギリギリセーフだ。あと数分遅れてたら後でネチネチ責め立ててやろうと思っていたところだ」

 

 

冗談っぽくニヤつきながらそう語る先輩に苦笑で返す酒泉、それは酒泉が新人時代の頃からの付き合いだからこそできる気安いやり取りだった

 

「さて……今は綺麗なこの内装も運行が終わる頃にはどれだけ汚れているか」

 

────ゲヘナ行きの列車が外れ扱いされる一番の理由ですね……奴等、遠慮ってもんを知りませんからね

 

「まあ、先週はトリニティのせいで酷い目に遭ったけどな」

 

彼女が思い浮かべているのは先週列車内で起きた出来事

 

ゲヘナとトリニティの生徒の争いに巻き込まれ、列車内部が見るも無残な姿になってしまった事件

 

 

「全く……正義だか風紀だか知らないが、問題を起こすなら他所でやってほしいな」

 

────あの事件のせいで掃除とか報告書とか色々と大変な思いをしましたからね……

 

「しかも糸目の生徒も銀髪の生徒も無駄に強いせいで被害を抑えるのが大変だったしな……あと温泉狂いみたいな奴もいたし」

 

 

ゲヘナとトリニティ、両校の実力者が暴れまわれば当然被害は拡大する

 

しかもそれが狭い列車内となれば尚更だ

 

因みにあの場にはシャーレの先生も居たものの、流石の彼の指揮でも列車内での戦闘を全くの被害ゼロで終わらせることは不可能だった

 

 

────結局、残業も長引いちゃいましたしね

 

「残業自体はほぼ毎日あるんだけどな」

 

────悲しいこと言わんでくださいよ……事実ですけど

 

 

溜め息を吐き、今日も多くの問題児を相手にしなければならないことに絶望する二人

 

しかしこれは鉄道を運営する学園の性質上、避けては通れぬ道であった

 

 

 

────先輩って去年からずっとここで仕事してるんでしょ?よく続けられますよね……

 

「そりゃあ、色々とストレスが溜まって限界になることだってあったさ。でも……最近は頼れる後輩が来てくれたお陰で仕事も少しだけ楽になってきたからな」

 

 

 

微かに頬を染めながら酒泉の頭を撫でる先輩、その表情は単純な恥ずかしさだけじゃなく別の理由もあるように感じられる

 

……が、酒泉はそれに気づくことはなく気恥ずかしそうに頭を降りながら手を退ける

 

 

 

────もう、子供扱いしないでくださいよ……

 

「……やっぱり気づかないか」

 

────ん?何がですか?

 

「いや、何でも」

 

 

ギリギリ聞き取れなくもない声量で呟くが、しかし折角聞かれてもそれ以上言葉を続けることはなかった

 

少女は未だに頬を少々赤らめたまま咳払いし、話題を逸らした

 

 

「それよりも酒泉の方はどうなんだ?仕事が嫌になったりしてないか?」

 

────仕事は嫌になったりはしてませんね……あ、でも別のことでちょっと問題が……

 

「別のこと?」

 

────ええ、実は最近朝登校する前に例の双子に絡まれる機会が増えてきたんですよ

 

「例の双子……橘ヒカリと橘ノゾミか」

 

 

例の双子、その言葉だけで名前を当てられるほど彼女達は有名な存在だった

 

破天荒、いたずらっ子、ハチャメチャ、当て嵌めようとすれば幾らでも言葉が思い浮かぶほどの問題児

 

不幸にもそんな彼女達に目をつけられてしまった酒泉はその被害を一身に受けることになってしまった

 

 

 

────聞いてくださいよ!今日だって登校前の朝やってきたかと思えば〝究極奥義!ピンポンダッシュ32連打!〟とか言ってめちゃくちゃチャイム鳴らしてきたんですよ!?

 

「……それでいつも通り追いかけてきたのか?だから疲れていたのか?」

 

────ええ!そうですよ!全く……あいつらのせいで朝からおちおち休んでもいられませんよ!

 

「……でも、結局許してるんだろ?その度に遊ぶ約束もしてるし」

 

────まあ……定期的にあいつらの相手してやらないと悪戯が激しくなってきたりしますからね

 

 

 

如何にも不機嫌そうに愚痴を呟く酒泉、それを聞いた少女は顔を暗くして目を伏せる

 

それは少女が酒泉の愚痴を聞いて不快に思ったから……なのだが、別に酒泉自身を不快感を覚えたわけではない

 

むしろ、その感情の矛先は双子の少女に対してで────

 

 

「……か?」

 

────……?あの、先輩?今何か……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「朝からあの二人と追いかけっこって……ふざけてるのか?もしかしてアレか?どうせ仕事が始まるまで時間が残ってるしイチャついてから登校しても問題ないだろうって?美少女達と戯れても誰にも文句は言われないだろうとか……!堕としたモブキャラを無視してネームドを優先しても許されるとか思ったんだろ…?言い訳なんて、もう分かってんだよ!どうせ自分は好意を向けられてないだろうなんて考えで……白昼堂々、色んな奴等に狙われてることも気づかず自分からわざわざあの双子を構いに行ったんだろ!?もう限界だ!相変わらず私の気も知らずにクソボケムーブをかます酒泉なんて!」

 

────うわあああああ!?先輩が壊れたあああああ!?

 

 

 

表情に怒りを滲ませながら口から次々と言葉を吐き出す少女、しかしこれは彼女がキレる若者世代だからというわけではない

 

ここまで話を聞いていた者達ならば薄々と察しがついていると思うが、彼女は折川酒泉に恋心を抱いている

 

しかしこの少年、他人の恋愛事情を察するのは得意なくせに自分自身に向けられる好意に対しては残念な程に鈍感だった

 

それは人によっては思わず〝クソボケ〟と罵ってしまうほど重度な病だった

 

 

「知ってたさ!酒泉の好みが幼い少女だってことくらい!酒泉にとってはロリ以外価値がないってことくらい!」

 

────はいぃ!?何言ってんですか!?先輩まであんな噂信じてるんですか!?

 

「だって最近はずっとあの双子に構いっぱなしだろ!?だから登校時間ギリギリで到着する事が増えてきたんだろ!?」

 

 

折川酒泉ロリコン説、それは彼が想定していたより多くの被害を及ぼしていた。自分に仕事を教えてくれた先輩にまであらぬ誤解を生んでしまっては最早ただの悪戯では済まないだろう

 

酒泉は激怒した。必ず、かのシュポガキどもを〝わからせ〟なければならぬと

 

「ゲヘナの問題児共は大人しくできないしついにはトリニティの生徒まで暴れるしシャーレの先生すら無賃乗車するし……しかも自らの手で育てた後輩は寝取られるし!こんな仕事やってられるかああああああああああああああ!!!」

 

 

しかしその前に、目の前の先輩を何とかしなければならぬと焦り倒した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

────忘れ物有り、破損有り、汚れ有り……よし、いつも通りだな

 

 

 

この日の運行を終え、列車内チェックに入る酒泉

 

普通のゲヘナ生が入った後は通常通りの車内状況なのだが、不良のゲヘナ生が入った後はポイ捨てされたゴミや落書きされた跡など決まってどこかに問題が生じる

 

……いや、むしろ荒れ果てたゲヘナの治安的に不良生徒の方が〝普通のゲヘナ生〟らしいのかもしれない

 

 

 

────外の方の点検は先輩がやってくれてるけど……そっちの方が時間掛かりそうだし、早く中の清掃終わらせて手伝いにいくか

 

 

タイヤや列車の真下を覗き込み、それらの点検を終えたら今度は付近の線路の安全確認まで

 

勿論、これらの作業はたった二人で行う訳ではないものの、それでも人命が懸かった安全確認ということもあってかなりの時間を掛けて行うことになっている

 

 

 

「相変わらず外部の暴徒共に振り回されているようだな、折川酒泉」

 

────うおっ!?……なんだ、朝霧さんですか……前にも言いましたけど気配消して近づかないでくださいよ

 

「この程度も感じ取れないお前が悪い」

 

 

先程まで誰も居なかったはずの背後に突如気配を感じ、それと同時に声を掛けられる酒泉

 

最初は侵入者かと驚いたが、背後に立っている人物が自身の知人────朝霧スオウであると分かった途端に安堵したかのように息を吐いた

 

 

「相変わらず中途半端な力だな、その〝目〟も少し磨けば中々の武器になるというのに……」

 

────んなこと言われましても……俺個人としては最低限、列車内で面倒な客を押さえ付けられる力があればそれでいいですし

 

「……まあいい、その目をどう使うかなどお前の自由だからな」

 

 

心底残念そうに酒泉の瞳を見つめた後、スオウは一枚の紙を酒泉に渡した

 

その書類に記された名前を見た酒泉はスオウが自身の前に姿を現した理由を察して気の毒そうに見つめ返した

 

 

────あー……これってこの前起きたゲヘナとトリニティのいざこざの件ですか?

 

「そうだ、上の連中曰く〝面倒事を避ける為に今回の件は必要以上に追及するな〟とのことだ」

 

────正実も風紀も強力な武力を保持する組織ですからねぇ……一体何が理由で両組織が対立したのかは不明ですけど、下手に争い事に首を突っ込むと面倒な事になるかもしれませんしね

 

「そういう事だ……まあ、首を突っ込んで争い事に発展したとしても私には関係ないのだがな」

 

────いやいや、関係はあるでしょ。朝霧さんだって戦いに駆り出されるかもしれないんですよ?

 

「言い方が悪かったな、仮にゲヘナやトリニティと戦うことになったとしてもどうせ私が勝利する……そういった意図で〝私には関係ない〟と発言したんだ」

 

 

戦闘狂じみた発言に頬をひくつかせる酒泉、この朝霧スオウという少女は〝強さ〟や〝力〟といった類いのものに固執するタイプの人間だった

 

 

────まーたそんなこと言っちゃって……そんな言い方ばっかしてると不必要に敵を作っちゃいますよ?

 

「お前だって似たようなものだろう?何かあればすぐに負けず嫌いを発揮するからな」

 

────いや、ただの負けず嫌いと戦闘狂を一緒にされても……

 

「どうせ戦うなら勝ちたい、遊びだろうと殺し合いだろうとそれは人間として当たり前の感情だろう」

 

────殺し合いって……はぁ、朝霧さんって一体どこでそんな物騒な考え身につけてきたんですか?

 

「……さあな、お前はどこだと思う?」

 

 

不敵な笑みを浮かべるスオウ、その表情にどこかヒリついた空気を感じた酒泉は目を逸らして掃除を再開する

 

明らかに話を無理やり終わらせたような空気だが、スオウはそんな空気を読まず酒泉の背に語り掛けて話を続ける

 

 

「私としてはむしろお前がこんな所にいる方が不思議なんだがな」

 

────俺が?別にどこもおかしくないと思いますけど……

 

「大企業の出自ならもっと上の地位に就けたはずだろう?それなのにこんな下っ端に甘んじているとはな」

 

 

 

〝大企業〟という言葉を聞いた瞬間、酒泉は手に持っていた窓拭き用の雑巾を落としてしまう

 

そして、額に微かに冷や汗を浮かべながら恐る恐る振り返った

 

 

────あ、あの……朝霧さん……どこでそれを……?

 

「上からの使いっ走りを続けていると不必要な情報まで流れてくる事があってな」

 

────……その……どこまで広まってます……?

 

「安心しろ、上の人間と私以外には誰も知らされていない」

 

 

 

それを聞いた酒泉は胸を撫で下ろし、一度落とした雑巾を広い上げて再び水の入ったバケツに沈める

 

その雑巾を絞りながらも、酒泉は先程のスオウの問いに答えるかのようにポツリと呟き始めた

 

 

 

────別に昇進とかそういうのに興味があってハイランダーに入ったわけじゃないんで……名残というかなんと言うか……

 

「名残……それはお前の許嫁が勝手に他の学園を選んだ事の名残か?」

 

────えぇ……そこまで漏れてんの……?

 

「お前がネフティスのご令嬢を支える為に育てられた孤児だという話など上の間ではとっくに知れ渡っているからな」

 

────わーお、プライバシーも糞もねえや

 

「当然、ネフティスがお前を引き取った理由も既に判明している……簡単に言えばキヴォトスでは珍しい〝人間の種馬〟が欲しかっただけなのだろう?」

 

 

人の過去を平然と晒すスオウ、しかし酒泉はそれに対して不快感を示すことなく平然と答える

 

 

 

────その通りっすよ……俺を引き取ったのは人間同士で結婚させるため、俺を育てたのは生涯を懸けてご令嬢をサポートさせるため、大方そんな感じっすよ

 

「だが、その教育も全て無意味と化したがな」

 

────ご令嬢様がハイランダーではなく勝手に別の学園を選んじゃいましたからねー。しかもそれっきりネフティスとも連絡は取ってないみたいですし、ご令嬢のサポート係って仕事が無くなった俺も完全にお払い箱ですからね

 

「その結果、元々夫婦で通う予定だったハイランダーにお前一人で通うことになった……と」

 

────そっすね……まあ、その辺に関しては〝ご令嬢様に縁切られちゃったしお前も自由にしていいよ〟って事かもしれませんがね

 

「つまり通う学園がハイランダーだろうとそれ以外だろうと別に構わなかったという事か……お前は何も思わなかったのか?」

 

────……何が?

 

「そのご令嬢に対してだ、長年の付き合いにも関わらずお前に何も告げず勝手に他校に入学する事を選んだのだろう?怒りや失望など抱かなかったのか?」

 

────まあ、確かにネフティスに引き取られた時からずっと一緒に暮らしてきましたし何の相談もせずいきなり姿を消されたのは悲しかったですけど……でも、それはつまりあの人にとって俺はその程度の人間だったってだけの話ですから

 

「ほう?意外と簡単に割り切れているんだな」

 

 

まるで他人事のように泣くことも怒ることもなく語る酒泉を意外そうに見つめるスオウ

 

しかし、一瞬……スオウが見つめていた酒泉の表情がほんの一瞬だけ寂しそうに歪んだ

 

 

 

────孤児院の時も含めると二回目ですからね

 

「……二回目?」

 

────ちょっとだけ慣れてましたから、捨てられるの

 

「……」

 

────それにいつまでもクヨクヨしたままじゃ人生勿体無いですからね、ご令嬢が去ったなら去ったで俺も新しい人生を自分なりに探してみますよ

 

「成る程な……その生き方、私は嫌いではないぞ」

 

────そっすか?

 

「ああ、少なくともいつまでも過去に囚われているような愚かな生き方よりは好ましいぞ」

 

 

 

そう述べたスオウは用は済んだとばかりに背を向けて列車を去ろうとする

 

もう少し雑談が続くかと思っていた酒泉は意外と早く話が切り上げられた事もあって〝あれ?〟と声を漏らす

 

 

 

────もう帰っちゃうんですか?

 

「渡す物は渡したからな……それに、私にもやるべき事があるからな」

 

────やるべき事?……まさか仕事が残っているのにわざわざここまで足を運んでくれたんですか?

 

「そういう訳ではない」

 

────……?

 

「……悪いが帰らせてもらうぞ、こんな所でいつまでも油を売っている訳にはいかないからな。私もお前のように自分の人生を探して……自分自身の存在証明をしなければならない」

 

────存在証明って……朝霧さんは〝ハイランダー鉄道学園〟の〝朝霧スオウ〟さんでしょ?それ以外に何があるんですか?

 

「…………」

 

────……まあいいや、難しい話はよく分からんし……とりあえずさようなら

 

「……ああ、〝さようなら〟だな」

 

 

 

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