〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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if世界~アリウスルート~その8

 

 

 

 

隙が出来れば酒泉が爆弾を仕掛ける

 

隙が無くても酒泉が暴走し、騒ぎに乗じてアズサが爆弾を仕掛ける

 

何処ならバレないか、どの生徒がどの時間にここを通るのか、どの生徒がどれ程の実力なのか

 

前々から酒泉とアズサの二人で進めていた計画はここに来て漸く実を結んだ

 

各地に仕掛けた爆弾を遠隔起爆装置で一斉に爆発させ、敵を陽動する

 

その隙に一気にマダムの元へ攻め込み、短期決戦を狙う

 

マダムは〝子供〟を甘く見ている。取るに足らない存在だと認識し、必死に足掻く様を上から見下すように見ている

 

その油断を突き、マダムが〝本気〟を出す前に決着をつける

 

この作戦は速攻でマダムの元にたどり着く事が前提だが、酒泉はそこに関しては問題無いと考えていた

 

これまで幾度となくアリウス生達と戦闘を行ってきた酒泉、敵の力は十分に把握している上、敵戦力も各地の爆発で分散されている

 

そして彼自身の実力も相まって、この作戦はスムーズに行くかと思われた

 

 

 

 

 

 

 

────……まだ残っていたのか、錠前さん

 

「……まさか本当に裏切るとはな」

 

 

 

 

 

 

目の前に実力者が立ち塞がらなければ……だが

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

 

「……リーダー、何処にいるんでしょうか」

 

「情報と違う……」

 

「………?」

 

「サオリに何かあった……?でも、このタイミングで……?そもそも何で酒泉だけ……今まで何度も暴れてきたのに、今回の罰だけ軽いし……」

 

「ア、アズサちゃん……?どうかしたんですか……?」

 

「サオリだけいない……酒泉が一人で行動するタイミングと偶然被っただけ?それとも……」

 

「き、聞こえていますか……?」

 

「……罠?だとしたら酒泉は……」

 

「あの~………」

 

「─────ッ!ごめん、皆。アリウス自治区に戻るね」

 

「えっ!?いきなり何を言い出すんですか!?」

 

「………!」

 

「姫の言う通りだよ、任務をこなさずにおめおめと帰ってきたらまた〝指導〟されるだけ」

 

「そもそも、どうして戻りたいんですか?何か忘れ物でも……?」

 

「それは………」

 

「ねえ、アズサ。アズサが戻りたい理由ってもしかして………サッちゃんと酒泉絡みのこと?」

 

「そうなんですか?もしかしてお二人に何か───え?今喋ったのって誰です?」

 

「………姫、どうして────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────マスク外してるの?」

 

「うん、もう必要無いかなって………それで、理由を聞かせてもらってもいい?なんとなく想像はつくけど………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ふむ……始まりましたか……」

 

「マダム、その……よろしいのですか?我々も錠前サオリの援護に向かわなくて……」

 

「必要ありません、あの子には一線を越えてもらわなければなりませんから」

 

「それは……つまり……」

 

「ええ、そろそろ経験させておいた方が後々役に立つでしょうからね────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────殺しの経験を」

 

 

 

 

 

 

 

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──────

 

 

 

 

 

 

サオリの放った弾丸が酒泉の服を掠るが、端から当たらない事が分かっていた酒泉は何も恐れずに突き進む

 

手が届く範囲まで接近すると、そのままアサルトライフルの銃身を左手で掴んで銃口を逸らそうとする

 

……が、片腕を負傷してる酒泉では両腕を使えるサオリをそう簡単に抑えることができるわけもなく、アッサリと突き放される

 

 

 

────っ!やっぱ駄目か……!

 

「その腕の怪我でよくここまで来れたなっ!」

 

褒めるぐらいなら少しは手加減してくれ……っ!?

 

「断る!私にも負けられない理由があるからなっ!」

 

 

 

今度はサオリから仕掛けようと脚に力を入れて走り出そうとするが、その予備動作を妨害するかのように酒泉が脚に向けて弾丸を放つ

 

スナイパーライフルの一撃は脚に直撃はしなかったものの、サオリを下がらせるには十分だった

 

サオリが後ろに飛び退いて着地した瞬間、酒泉はリロードを済ませたスナイパーライフルで次は相手の額を狙う………が、サオリは既に回避行動を取っていた

 

いつもの酒泉の手際の良さならば確実に間に合っていたであろう狙撃、それが間に合わなかった理由はやはり右腕の怪我だろう

 

どれだけ痛みを我慢しようとしても彼が人間である以上、それには限界がある

 

リロードしようと弾を込めるだけでも激痛が走り、例え右腕を使わなくても戦闘中に身体を動かしているだけでついでのように痛みが走る

 

更には痛みによる集中力の低下も酒泉を追い詰める原因の一つだろう

 

 

 

「諦めろ!今のお前では私には勝てない!」

 

うるっ……せぇなあ!そっちは余裕そうで羨ましいぜっ!

 

「何故諦めて現状を受け入れようとしない!?私達はマダムの……大人の言うことに従っていればそれでいい!」

 

そうやって何でもかんでも受け入れるつもりか!?その結果、自分や家族が人殺しの道具にされてもいいのかっ!?

 

「それで皆が救われるのなら……なっ!」

 

 

サオリは身体が揺らいだ酒泉に蹴りを放つが、酒泉は少し横にズレることでギリギリでそれを回避する

 

そのまま左手でスナイパーライフルの引き金を引くが 、右腕の負傷のせいでどちらの腕で攻撃してくるのか既にバレている酒泉は攻撃を簡単に防がれてしまう

 

 

 

 

────っ!何だと!?皆を救う為なら人殺しの道具にされても………罪の無い誰かの命を奪っても良いって言うのかっ!?

 

「何かを護る為に何かを奪う!当たり前の事だろう!」

 

じゃあそんな奴等に命を奪われた被害者の思いはどうなる!?残された者達は!?

 

「……っ、道具である私達が考える必要は無い」

 

───ふざけるなよ……アンタみたいな奴がいるからゲヘナもトリニティも……そして先生も……!

 

「何を訳の分からないことを……!」

 

 

 

 

避けてばかりでは埒が明かないと判断した酒泉がスナイパーライフルを投げ捨て、スリングで背中側に回していたアサルトライフルを構える

 

得意の二丁持ちではないものの、それでも酒泉の実力を侮ってなどいないサオリは少し距離を取る

 

しかしサオリが下がると同時に脚を前に進めていた酒泉が足払いを仕掛け、サオリのバランスを崩す

 

そのまま頭に銃口を突きつけようとしたが、サオリは逆にバランスを崩した勢いのまま地面に倒れ込んで回避し、すぐに態勢を立て直す

 

 

 

 

 

このっ……!いい加減にしろ……!

 

「それは此方のセリフだ!お前が皆を惑わさなければこんな事にはならなかったんだっ!無駄に希望を与えて………訪れるかも分からない未来の話を当然のように語って……!」

 

希望を与えることの……何が悪いっ!?

 

「不可能な事を口にするなと言っているんだ!どうせ救えもしないのに私達に希望を持たせようとするなっ!」

 

────っ!自分から救われようともしない奴が最初から〝不可能〟だなんて決めつけてんじゃねえっ!

 

「何だと……!?」

 

 

 

 

サオリは執拗に酒泉の残された左腕を撃ち抜こうとするが、酒泉は近くの瓦礫を盾に攻撃から身を護る

 

それを追撃しようとサオリは手榴弾を取り出すが、そうはさせまいと瓦礫の裏から酒泉が飛び出して手榴弾を持つ手を蹴りあげる

 

 

 

 

「……もういい!お前の耳障りな綺麗事を聞くのもこれで最後だ!」

 

……っ!少しでも説得できると思っていた俺が馬鹿だった!

 

「アイツらは私が護る!お前の首をマダムに捧げてなっ!」

 

───そんなに地獄が好きなら一人で居座ってろっ!

 

「お前は周囲に苦痛を撒き散らす疫病神だ!ここで息の根を止めるっ!」

 

 

サオリは引き金を引こうとするが、酒泉は右腕で懐からナイフを取り出し、そのままサオリに投げつける

 

使われるはずがないと思われていた負傷した腕からの攻撃、それはサオリから隙を生ませるのに十分だった

 

……しかしナイフはサオリに当たることはなく、サオリの頭部の横を通り抜ける

 

 

「っ!?」

 

 

意識を酒泉に戻した時には遅く、既に懐まで潜り込んでいた酒泉がサオリの腹にアサルトライフルを押し付けてそのまま引き金を引く

 

 

「がっ……ぁ……!」

 

 

サオリは気を失いそうになる痛みに耐えながら反撃しようと銃を握る手に力を込める……が、その前に腹を蹴り飛ばされる

 

咳き込みながらも何とか視線を前に向ける、次の瞬間───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────先程、サオリが手放した手榴弾が投げ込まれた

 

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

身体に負ったダメージのせいで思うように動けないサオリの額に、アサルトライフルの銃口がゼロ距離で突きつけられる

 

 

 

「……撃つなら撃て」

 

……ああ、そうさせてもらう

 

「………」

 

 

 

最早抵抗する意思を見せないサオリ

 

そんな彼女の意識を奪おうと酒泉は指に力を込め、そして────

 

 

《サオリ姉さんもミサキちゃんも姫ちゃんも、勿論アズサちゃんや酒泉さんも一緒に暮らせるんだとしたら……それ以上に幸せなことなんて無いと思います》

 

 

────弾が出てこない

 

もう一度引き金を引く

 

 

 

《これで皆に………特にサオリ姉さんに迷惑を掛けずに済むならそれに越したことはないし》

 

 

 

また弾が出ない

 

震える指で〝今度こそ〟と思いながら引き金を引く

 

 

 

《その時は……〝自分のやりたい事〟を探してみたい、皆と一緒に……》

 

 

 

やはり弾は出ない

 

何故か震えが強くなってくるが、心変わりしてしまう前に必死に指に力を込める

 

 

《私は……私を救ってくれたアリウススクワッドの皆に幸せになってほしい、その為にもまずはサオリを止めないと》

 

そこまでやって酒泉は漸く気づいた、弾が出ないのではなく自分が引き金を引いていないのだと

 

酒泉がドサッと音を立てながら銃を落とすと、サオリが睨み付ける

 

 

 

 

「……何のつもりだ」

 

……やっぱり俺だけじゃ無理だ

 

「……今更怖じ気づいたのか?」

 

あの人達にはアンタが必要なんだよ……

 

「……は?」

 

 

 

 

身体を震わせながら語り出す酒泉

 

サオリは少しずつ身体の痛みが引いてきたものの、大人しく酒泉の話を聞こうとする

 

 

 

 

────あの人達は皆で幸せになることを望んでいる、その中には当然アンタも含まれているんだよ

 

「私も……?」

 

当たり前だろ、あの人達にとってアンタは今までずっと自分達のことを護ってくれた〝優しい姉〟なんだよ

 

だからこそアンタにも幸せになってほしくて、その為の希望を持つことができたんだよ!

 

「………」

 

本当は自分でも薄々こう思ってたんだろ?〝このまま皆をアリウスに縛り付けてもいいのか〟ってな、それに………さっきの戦い、本気じゃなかったろ

 

いや、アンタ自身は本気で戦ってるつもりだったが、無意識のうちに俺を殺さないようにセーブしていたんだ

 

………俺がアンタとマダムを打ち倒して、皆を解放する事を心のどこかで期待して、な

 

「……だとしたらなんだ、今更どうしろと言うんだ」

 

 

 

 

力無く項垂れるサオリ、そんな彼女に酒泉が手を差し伸べる

 

 

 

 

────頼む、一緒に戦ってくれ

 

「………正気か?さっきまで殺し合っていた相手だぞ?」

 

マダムを打ち倒すには今の俺だけじゃ力不足だ、だから……お願いします……

 

「酒泉………」

 

 

 

散々啀み合ってきた自身に頭を下げる酒泉を見たサオリは、驚愕で目を見開かせる

 

暫く黙り込んだ後、ゆっくりと手を伸ばし、そして────

 

 

 

 

『サオリ、これは貴女の為でもあるのです』

 

『サオリ、アリウススクワッドを……家族を取り戻しなさい』

 

『貴女の家族を護れるのは……サオリ、貴女だけです』

 

 

 

 

 

 

 

「無理だ……」

 

………あ?

 

「今更戻れる訳がないだろうっ!」

 

 

 

酒泉の手を払い除け、突然立ち上がるサオリ

 

その際に近くに落ちていたナイフを拾い上げ、そのまま接近戦を仕掛ける

 

 

 

 

 

「私はマダムの言葉を鵜呑みにして皆をこんな地獄まで連れてきてしまった!それなのに、今更全てを無かったことにして皆の元に帰れだと!?」

 

───ぐっ……止めろっ!もうアンタと戦うつもりはない!

 

「私が必要だと!?下らない慰めはやめろっ!私がいなくてもお前が皆を導いていただろ!」

 

あの人達の言葉には全部アンタのことを想う気持ちが込もっていたっ!それを否定するのか!?

 

「私が戻ったところで再び皆を地獄に引きずり込んでしまうだけだ!そうなってしまうくらいなら自分から消えた方がマシだっ!」

 

……っ!だから、止め……ろ!これ以上アンタに銃口を向けたく───っ!

 

「そんなに皆を救いたいのなら………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私を倒してお前が代わりに導けばいいだろうっ!」

 

 

まるで〝もう終わらせてくれ〟と叫ぶかのように大雑把にナイフを振り下ろすサオリ

 

彼女は理解していた、自分では酒泉に勝てないことを

 

そしてその考えも間違っていなかった、もし普段の酒泉が相手ならサオリの大雑把な攻撃など腕を動かす動作を〝視た〟瞬間に回避行動を取り、即座に反撃していただろう

 

……今まで無理やり耐えてきた右腕を走る激痛に気を取られ、片腕だけでの戦闘や痛みに耐え続けてきた事による疲労で一瞬だけ身体から力が抜けなければ……だが

 

攻撃の動作が視えているのにも関わらず、思うように身体が動かない酒泉

 

ほんの少しだけ後ろに下がれたものの、それでもナイフの振り下ろされるコースから完全に逃れることはできなかった

 

勢いの止まらぬ刃はそのまま酒泉の右目に近づき、そして────

 

 

 

 

 

 

「………ぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

────サオリのか細い声と同時に、赤い液体が宙を舞った

 

 

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