〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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面倒だよ!空崎さん

 

 

 

「そういやこの前百合園さんとこのシマエナガと散歩してきたんすよね……可愛かったなぁ」

 

「そう、私とどっちの方が可愛かった?」

 

「そうはならんやろ」

 

 

ゲヘナの食堂にて、現在食事中

 

ちょっとした雑談の種になればなー的な感じで軽く話をしてみたらとんでもない方向に話をねじ曲げられた

 

「なんで急にシマエナガと可愛さを競おうとしてるんですか……そんなキャラじゃないでしょう空崎さん」

 

「もし酒泉にとって私よりシマエナガの方が魅力的に見えているのだとしたらそれは重大な問題よ」

 

「なんですか俺の事を人間より鳥に興奮する変態だとでも思ってるんですか」

 

 

……待てよ?これはもしや空崎さん流のジョークなのでは?

 

普通に真顔で聞いてきたからガチのやつだと勘違いしていたが、それも会話を盛り上げる為の空崎さんの気遣いなんじゃ……

 

 

「早く答えて、返答次第では今日から一週間酒泉を拘束して恋愛観を更正させないといけないから」

 

「はっはっは!空崎さんってばご冗談を……」

 

「大丈夫、休暇なら酒泉の分まで先に取っておくから」

 

 

目がマジだ、ヤバい(ヤバい)

 

このままだと俺は空崎さんに異常性癖の烙印を押された後、どこかに監禁されてしまうかもしれない

 

 

「……そ、空崎さんとシマエナガの可愛さは別の方向性でしょう?」

 

「……どういう意味?」

 

「ほら!空崎さんは正統派な美少女系の可愛さですけどシマエナガはペットにしたくなるような……そういう系の可愛さでしょう!?」

 

必殺!〝可愛いの方向性が違う〟攻撃!

 

この技は複数の女性を褒める際にそれぞれ違う全員の長所を褒める事によってなんとかその場をやり過ごす技だ、その代償として女性達からはヘタレ扱いされてしまう諸刃の剣だが……まあ、監禁されるよりはマシだろう

 

ちなみにこの技は前世の後輩ちゃんとその妹ちゃんの洋服の買い物に付き合った際に〝この服、私とお姉ちゃんのどっちが似合うと思いますか?〟って聞かれた時に編み出した技だ

 

……案の定、どっちも褒めたら〝ダッサ〟とか〝チキンですね〟とかどっちからも罵られたけどな!

 

 

「……そう、つまり酒泉にとって私とシマエナガは比べる対象じゃない……と」

 

「そうそう!だから空崎さんも気にする必要は────」

 

「でもペットって捉え方によっては家族ともとれるのよね」

 

「……ん?」

 

「ねえ、酒泉は私とシマエナガのどっちをペットにしたい?」

 

「おっとぉ?」

 

 

思わずどこぞの狭間の王みたいな驚き方をしてしまった、どこの行間を読んだらそうなるんです?

 

 

「きゅ……急に天雨さんみたいなこと言い出しますね……」

 

「そう、酒泉にとって私よりアコの方が〝ペット〟ってイメージが強いんだ……つまり酒泉は私よりアコと一緒に居たいのね、私よりアコと家族になりたいのね」

 

「なんか行間を百行くらい飛ばしてません?」

 

 

なんかとんでもない解釈をされちゃったぞ……あ!俺これ知ってる!多次元解釈って言うんでしょ!アトラ・ハシースゼミでやったところだー!んなわけねえだろ(豹変)

 

なんだなんだ、今日の空崎さんはやけに様子がおかしい……いや、別に今日以外にも様子がおかしい日はちょくちょくあったな

 

もしかしてあれか?仕事疲れか?とりあえず後で羽沼さん殴ってくるか……

 

 

「も……もー!そんな訳ないでしょー?俺と天雨さんがそういう関係になるなんて槍が降ろうと隕石が落ちようと手足がもげようとあり得ませんよー」

 

「……そうかな」

 

「ほら!俺と天雨さんってちょくちょく喧嘩してるでしょ?主に向こうから突っかかってくる事の方が多いですけど……〝委員長にベタベタしすぎです!〟って!アンタは空崎さんの保護者かっての!」

 

 

ケラケラとわざとらしく笑いながら場の空気を変えてみると、空崎さんは納得してなさそうに渋々と頷いた

 

……まあ、さっきより雰囲気は若干和らいだ気もするし、とりあえずはこれで良いだろう

 

 

「ほらほら!午後からも仕事が沢山残ってるんですから早く食事を進めましょ!折角の愛清さんのご飯が冷めちゃいますよ!」

 

「……分かってるわ」

 

「んー!相変わらず愛清さんの作る味噌汁は美味しいなぁ……これを毎日飲めるなんて俺達ゲヘナ生は幸せ者っすねー」

 

「そうね……ところで話は変わるけど酒泉は私とフウカ、どっちの作る味噌汁を毎日飲みたい?」

 

「そうはならんやろ」

 

 

今日はやけに好戦的っすね、もしかしてアレか?空崎さんまでゲヘナみたいな価値観に染まりきってしまったのか?

 

だとしたらこの学園はもう終わりだ、ゲヘナ最強の風紀委員長がヒャッハーする側に回ってしまったらもう誰も止められなくなってしまう

 

いや、もしそうなってしまったら俺が空崎さんを止めてみせよう。アニメとか特撮でよくある闇堕ちしてしまった主人公を止める仲間的なポジションで……こう……俺が不破さんみたいに……

 

 

「ねえ、答えて」

 

「いや……その……」

 

 

「フウカ先輩!目玉焼きの注文が入りました!」

「…………」

「その……先輩?どこを見て……」

 

 

駄目だ空崎さんの圧が強すぎる勝てる気がしない、このまま主人公闇堕ちでバッドエンド一直線です本当にありがとうございました

 

どうしよう……まさか料理面でも自分と比べてくるなんて……仕方ない、ここはさっきと同じ方法を使おう

 

 

「ど……どっちの味噌汁も毎日飲みたいじゃ……駄目、ですかね……?」

 

「……」

 

 

「(눈_눈)」

「せ、先輩の目が……」

 

空崎さんの目が細められると同時に圧が更に強くなった……あと、どっか他の所からも視線をぶつけられてるような気がする

 

ここで逃げずに正面から空崎さんと見つめあってみる、瞳は何かを訴えるように射抜こうとし、頬はよく見れば拗ねているかの様に僅かに膨らんでいる

 

これは……怒ってる、のか……?

 

 

「……あの、もしかして俺……何か空崎さんに悪いことしちゃいました……?」

 

「……別に、私が勝手に怒ってるだけだから」

 

「だ、だったらその理由を教えてください!次からは改善しますから……」

 

「酒泉は悪くないから本当に気にしないで……約束を破られたと勝手に被害妄想を膨らませた私が悪いだけの話だから」

 

 

そうは言われてもここで引き下がる訳にはいかない、だって俺は空崎さんと喧嘩したあの日、様々な約束を交わしたのだから

 

空崎さんを支えると、空崎さんを甘えさせると、空崎さんを優先すると……ん?約束?

 

 

「……あの、空崎さん?約束ってもしかして……喧嘩したあの日の?」

 

「……」

 

 

こくり、と無言で頷く空崎さん

 

すると先程までずっと開こうとしていなかった口から心の内が吐き出された

 

 

「この前、聖園ミカの恋人のフリをしてたでしょ。その次は変な薬の影響で子供になった錠前サオリのお世話をしてたし、他にも色んな人の所に行ったり……」

 

「まあ、はい……」

 

「……その……さ、最近の酒泉は……私のことを放置しすぎだと思う」

 

 

空崎さんは顔を少々赤く染めながら恥ずかしそうに俯く……え?マジで?本当に拗ねてただけ?

 

それはまあ、なんとも……可愛らしい理由だな

 

しかしどんな弱音も不満も自分の内に隠してしまうあの空崎さんがこんな風に俺に甘えようとしてくれてるって考えると素直に嬉しくなってしまう

 

 

「……ご、ごめんなさい……今のは忘れて」

 

「……」

 

「やっぱりこんなのは私らしくないし、それに酒泉にも酒泉の予定が……」

 

「空崎さん、これあげます」

 

「……?これは……?」

 

 

 

という事でここは自分の心に従って自分のやりたい事をするとしよう

 

俺が今、空崎さんに渡したのは咄嗟にメモ帳を取り出して書き記した〝折川酒泉が何でも言うことを聞く券〟だ

 

期限は今日中、使用回数は三回まで

 

 

 

「……どうしてこれを私に?」

 

「空崎さんとの約束を破ってほったらかしにしちゃったお詫びです、今回の件はどうかそれでご勘弁を」

 

「……ねえ、酒泉」

 

「なんでしょうか」

 

「この券って……本当に何でも言うことを聞いてくれるの?」

 

「はい、何でもです……三回までですけど」

 

「それは……甘えたいってお願いでも?」

 

「甘えさせます」

 

「……じゃれあいたいってお願いでも?」

 

「じゃれあいます」

 

 

俺の顔と言うこと聞く券を交互に何度も見る空崎さん

 

それから数秒後、空崎さんは定食の目玉焼きが乗った皿を俺の前に差し出し、お箸を俺の手に持たせてきて

 

 

「じゃ、じゃあ!その……一回分の権利を使って、私にご飯を食べさせてほしい……」

 

「……仰せのままに」

 

 

最初だけ声を大きくし、その後は控えめに小声でお願いしてきた空崎さん

その要望に応えるべく箸で目玉焼きの一部を切り分け、そのままご飯に乗せて空崎さんの口まで運ぶ

 

空崎さんは一瞬だけ身体を震わして躊躇したが、すぐにぱくっ!と小さな口を開いて目玉焼きとご飯を食した

 

 

「美味しいですか?」

 

「……うん」

 

「それは良かった……んで?次はどうします?」

 

「つ、次は……隣に座って私の頭を撫でてほしい」

 

「撫でる?……それだけでいいんですか?」

 

「う、うん……」

 

定食を持って空崎さんの隣の席に移動し、そのまま頭頂部からゆっくりと撫で下ろす

 

すると空崎さんはくすぐったそうに身動ぐが、その後は心地良さそうに目を閉じて俺の手を受け入れた

 

 

「んっ……」

 

「どうです?」

 

「気持ちいい、から……そのまま続けながら……最後のお願いを聞いて……」

 

「はいはい、最後はなんです?」

 

「その……撫でながら……私のことを褒めて……ほしい……」

 

「褒める?えっと……偉い偉い……」

 

「そ、そういうのじゃなくて……その……み、耳元で囁くみたいに……」

 

「え゛っ」

 

 

空崎さんが求めてるのって多分アレだよな……ASMR的な……

 

え、えー……俺のキャラに全く合わないし恥ずかしいしでとにかくやりたくないんだけど……

 

しかし空崎さんの期待と不安の入り交じった様な表情で見上げられると断るのも申し訳なくなってしまう、それに何でも言うことを聞く券を渡しておいてやっぱ無しですってのもなぁ……

 

漢酒泉、覚悟を決めて耳元に近づきます

 

 

「……い……いつもお疲れ様です、空崎さん」

 

「……」

 

「今日も沢山の書類仕事を片付けて、その後は不良生徒達の制圧もこなしてましたね……本当によく頑張ってますよ、空崎さんは」

 

「……」

 

「空崎さんのお陰でいつもゲヘナの平和が保たれています、皆空崎さんに感謝しているんです。俺自身も沢山空崎さんに助けられてきましたし感謝していますけど……でも、あまり頑張りすぎないでくださいね?」

 

「……」

 

「身体に無理をさせるのも心を磨り減らすのもどっちも良くない事ですから……こういう時ぐらい身近な人に甘えて、ゆっくり休んじゃいましょうね」

 

「────~~~っ!!!」

 

 

頭を撫でながらこしょこしょと小声で囁く……が、空崎さんは無言のままだ

 

しまった……期待に添えなかったか?恥ずかしい思いをしながら慣れない事にチャレンジしたが、やはり俺のASMR擬きじゃ大した効果なんて────うおっ!?眩しっ!?

 

 

「なっ……なんだ!?何の光……空崎さん!?」

 

「ふぅ……満足したわ、ありがとう酒泉」

 

 

食堂中に光が広がり、その光源を探そうとしたら俺の目線の下で空崎さんの肌がツヤッツヤに輝いていた、なんなら上のヘイローもベイブレード並にめっちゃくるくる回転していた

 

 

「ご馳走さま……じゃあ、私は先に戻って仕事してくるから」

 

「えっ!?い、いつの間に……」

 

 

気づけば定食も全て平らげられ、そのお皿を愛清さんの所まで運んでいた

 

あの一瞬で全てを腹に納めるなんて……空崎さんって実は結構食べるタイプなんじゃ────って

 

 

「ま、待ってくださいよー!?俺も一緒に仕事しますからー!?」

 

 

僅かに皿に残っていた自分用のおかずを腹に納め、ご馳走さまでしたと愛清さんに礼を言って皿を片してからすぐに空崎さんの後を追う

 

廊下を歩いているだけで一般生徒の視線がツヤッツヤな空崎さんに集まるが……本人はそんな事など意にも介さず歩き続ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、ゲヘナの牢は美食研究会と温泉開発部と便利屋68とその他大勢の問題児達でぱんっぱんになった

 

 

 

 

 

 




以下くっそどうでもいい映画予告



先生としての使命を全うし、酒泉にシロコを託したプレナパテスは〝この世界に生まれてきてくれてありがとう〟と礼を言い残してこの世を去った

プレナパテスの意思は酒泉に受け継がれ、これから先の己が知らない未来へ向けて酒泉は足を進める

そんな中、突如として破壊したはずのアトラ・ハシースが現れ、折川酒泉を近くにいた先生や生徒ごと連れ去ってしまう

そして先生と同じ教師でありながら〝相手(酒泉)が生徒だろうととりあえず襲って既成事実を作っちゃえばいいや〟という教師とは思えない思想を持つ敵、ダーク女先生が立ちはだかる

「一つ問おう!私が幸せになる為には何が必要だと思う?そう!酒泉の子種だ!!!」

「これが妊娠検査薬の力ぁ!」

「酒泉、勝手に逃げようとしたね?先生ちょっと怒っちゃうよ♡」



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