〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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いーとみーのつづきてきな

 

 

 

 

「愛清さーん、こっちの皿洗い終わりましたよー」

 

「ありがと、そっち置いといてー」

 

「うっす」

 

 

 

お皿を拭き終えると酒泉君は今度は汚れているフォークに手を伸ばした……別に酒泉君は手伝わなくてもいいのに

 

放課後、美食研究会に捕まった私はいつものように酒泉君に救出された

 

その際酒泉君のお腹から虫の鳴き声が聞こえたから、助けてもらったお礼も兼ねて料理を振る舞ったんだけど……これで片付けまで手伝ってもらっちゃお礼の意味がない

 

……まあ、厚意を無下にするのは申し訳ないしつい頼んじゃったけど

 

 

「酒泉君、手際良いわね」

 

「まあ、家事なんて嫌でも毎日やらなきゃいけないですからね。自然と慣れますよ」

 

 

流しの前で二人並びながら皿洗いを続ける、何とはなしに横を見てみると酒泉君の鍛えられた手が食器用洗剤の泡に包まれていた

 

私をハルナ達から助け出してくれた後、いつも私を抱き抱えてくれていた腕もよく見てみると細かい傷痕が幾つも残されていた

 

これはきっと、この傷の数だけ多くの戦場を駆け抜けてきたという事なのだろう

 

……そして、この傷の中にはきっと私の為に戦ってくれた時の傷痕も混ざっている

 

 

「……あの、愛清さん?どうして俺の腕を掴んでるんですか?」

 

「……え?……あっ!?いや、その……これは……!」

 

 

酒泉君に指摘されて初めて気づいた、私の両手が酒泉君の左腕を掴んでいる事に

 

無意識の内に勝手に手が動いてしまったのだろうか……でも、そんな事より私の頭はこの状況でどんな言い訳をしようか考え込んでいた

 

 

「えっと、酒泉君の腕……結構傷が残ってるなって思って……それで気になっちゃって……痛くないの?それ」

 

「ん?これですか?まあ……別に大半は昔の傷ですし……」

 

「……それって調印式の時の?」

 

「そっすね……別の事件の傷痕とかも残ってますけど」

 

 

トリニティ、それと噂が本当ならミレニアムも……ゲヘナの問題児達と戦った時以外の傷痕も彼の身体には多く残されていた

 

……きっと、その服を脱がせれば背中や腹にも沢山の戦いの跡が────

 

 

「……あまり危険な事はしないでね?」

 

 

 

それを知ってても、あまり強くは止められない

 

彼には彼なりの戦う理由がある、そもそも給食部の私が風紀委員の彼を止めること自体何の権利があってという話になってしまう

 

あの風紀委員長が酒泉君が戦うのを許しているというのならその辺の問題は私が首を突っ込むべき問題ではない……それに面倒な女だと思われるのも嫌だし

 

 

「大丈夫ですよ、俺はもう無茶な事はしませんから……色んな人にこってり絞られましたし」

 

「むしろ叱られるまでは無茶し続けるつもりだったのね……」

 

「昔は自分の身体には無頓着でしたからね、でも今は……違う」

 

きゅっとお湯を止めると、酒泉君は自らの手を広げてじっと見つめる

 

 

「色んな人が俺を大切に思ってくれている、それを知っちゃそう簡単に傷付く訳にはいかないですからね」

 

「……そっか」

 

 

その〝色んな人〟の中には私も入っていると伝えたら……なんならその〝色んな人〟達にとっての大切という言葉の意味に恋慕的なものが含まれていると彼に教えたらどんな反応をするだろうか

 

だけどそれを正直に伝える勇気を持ち合わせていない私は一言返すだけで精一杯だった

 

 

「……」

 

「……」

 

 

カチャカチャ、じゃーじゃー

 

お皿の音とお湯を流す音だけが聞こえる

 

本当はもっと早く洗えるのにこんなノロノロと皿洗いをしてるのは私が無意識の内に少しでもこの時間を長く過ごしたいと思っているからか

 

そして酒泉君も私にペースを合わせてるのは私を焦らせない為か

 

 

「……」

 

そんな風にボーッとしながらスポンジで擦っているとなんとなく思う事がある

 

こうして二人で並んで家事をしてると……その……なんか、家族みたいだなーって

 

……私はなんて恥ずかしい事を考えているのだろう、善意でお手伝いしてくれてる酒泉君の隣でこんな色ボケてしまうなんて

 

 

「そっすね、確かに家族みたいですね」

 

 

ほら、酒泉君も気を遣って同意して……ん?待って?気を……遣って?

 

どうして?どうして酒泉君が私の心の声に気を遣う必要があるの?そもそも聞こえる訳ないでしょ?

 

酒泉君が突然エスパーに目覚めたとかでない限り、私の心の声なんて聞こえないはず

 

 

「ぁ……あ……」

 

 

顔が熱くなるのを感じ、口元がふるふると震える

 

そして、恐る恐る聞いてみた

 

 

「もしかして……私……声に出してた……?」

 

「……?はい、バッチリ聞こえてましたけど……あ、もしかして独り言のつもりだったんですか?」

 

 

何事もなかったかのように答える酒泉君に反して私の心はパニック状態に陥る

 

マズイ、聞かれた。酒泉君本人はそこまで気にしてはなさそうだけど私は気にしてしまう

 

 

「ご……ごめん!〝家族みたい〟なんて言っちゃって!勝手に変な妄想に巻き込まれるなんて嫌だったよね!?」

 

「いえ、別に……つーか愛清さんと家族なんて嫌がるどころかめっちゃ幸せじゃないっすか」

 

「ふぇ!?」

 

 

どうしよう、謝罪して話を切るつもりがその隙すら与えられずカウンターを食らってしまった

 

未だ顔の熱さと動揺が収まらない私、そんな事など露知らず酒泉君が喋り続ける

 

 

「愛清さんって家事は出来るし料理も美味いし可愛いしで嫌がる要素なんて全くないでしょう?」

 

「え……あ……え……!?」

 

「自分を卑下せずにもっと自信を持っていいと思いますよ?」

 

 

恐らく酒泉君は私のフォローをするつもりで言ってるだけなのだろうが、その一言一言が私の動揺をより強く揺さぶってくる

 

こんな最高……じゃなくて最悪な事態になるなんて、なんであのタイミングで口を滑らせるのよ私

 

 

「~♪」

 

 

なんて自分を責めている間に酒泉君は鼻歌を鳴らしながら皿洗いを再開してしまった、彼にとっては意識するまでもなく普通の会話だったのだろうか……私だけ意識しているのが少しだけムカついたのは内緒

 

この隙に冷静に深呼吸をし、ドクンドクンと何度も高鳴る胸を落ち着かせる

 

緊張するような痛みが引き、漸くまともに思考ができる程度に落ち着いた

 

私も皿洗いを再開すると再び無言の時間が始まった

 

さっきと同じ空気、だけど今の会話のせいで少しだけ隣が気になってしまう

 

チラッと横を見れば相変わらず普通の表情で皿洗いを続けてる酒泉君、私の家族発言など毛ほども気にしていないであろう彼に向けて私は口を開いた

 

 

「……ねえ、酒泉君」

 

「はい?」

 

「今の言葉、他の女の子には言っちゃ駄目だからね?」

 

「今の言葉……どれっすか?」

 

「……てい」

 

「冷たっ!?」

 

 

 

またちょっとだけムカついたのでお湯を水に切り替えて弾いてみた、これで少しは反省してほしい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ピピピピッ!ピピピピッ!ピピピピッ!

 

アラームを繰り返す時計のボタンを優しく押して音を止め、少し控えめに欠伸をしてから身体を起こす

 

時刻は7:30、普段より少々遅めの起床だ

 

「……ふふっ」

 

理由は久方ぶりに思い起こしたあの青春の記憶────私の学生時代の夢を見たからか

 

 

「あの二人は……もう起きてるのね」

 

 

いつも私の反対側で寝ている夫と私達の間に挟まって寝ている娘の姿がベッドの上にないのを確認すると、私は目を擦って視界をハッキリさせてからゆっくりと寝室を出た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おはよぅ」

 

「おう、おはよう……フウカ」

 

 

 

私がリビングに向かうと台所にはエプロン姿の酒泉、それと……

 

 

 

「おはよう!ママ!」

 

「おはよう────センカ」

 

 

私と酒泉の子供、センカが酒泉の後ろからヒョコッと顔を出して元気よく挨拶してきた

 

 

「センカ、もしかしてお父さんのお手伝いしてるの?」

 

「うん!みてみて!このおにぎり、私が作ったんだよー!」

 

 

お皿を持って駆け寄ってくる愛娘、そこには形の少々崩れたおにぎりが六つ乗っかっていた

 

米粒だらけの手からして恐らく全てセンカが握ったものであるだろう事が窺える

 

 

「ねえねえ!食べてみてよ!」

 

 

センカはおにぎりを一つ持つと私の口元に押し付けてきた

 

大して熱くなかったのはセンカが火傷しないように酒泉がある程度時間を置いて米を冷ましてくれたからだろうか

 

 

「そうね……じゃあ一口頂こうかしら」

 

 

あーん、と口を開けておにぎりを食べる……すると口の中全体に塩の味が広がってしまう

 

吐き出してしまう程ではないけど……これは明らかに塩の量が多い

 

 

「どう?美味しい?」

 

 

しかしキラキラした目で味の感想を尋ねてくるセンカに向かって馬鹿正直に答える訳にはいかない

 

センカの後ろでは酒泉が苦笑しながら〝しー〟と人差し指を立てている……仕方ない

 

 

「ええ、美味しかったわ……でも、塩はもうちょっと控えめでもよかったかもしれないわね?」

 

「え?そう────うぇえ!?しょっぱい~!?」

 

「ほらね?」

 

「うぅ~……ジュース飲んでくる~!」

 

手に付いた米粒をパクっと口に入れて味見するセンカ、すると次の瞬間にはあまりのしょっぱさに舌を出して顔を歪める

 

この様子だと多分味見はしていなかったのだろう、そして酒泉も酒泉でセンカに甘いところがあるから下手に料理を止められなかったのかもしれない

 

小走りでテーブルの上に置かれたオレンジジュースの方へ向かうセンカを見届けてから再び酒泉に目を向けると、彼は申し訳なさそうに両手を合わせて謝っていた

 

「悪い、フウカ……手伝おうとしたんだけど〝パパは料理に集中して!〟って怒られてな……」

 

「ああ、やっぱりね……あの子、最近私達が料理しようとすると楽しそうに近くに見にくるから」

 

「店の手伝いも積極的にやってくれるからな」

 

 

〝店〟……それは私達が住むこの〝キッチン折川〟のこと

 

彼がまだ一年生だった頃に私から告白して付き合って、彼の卒業から二年後に籍を入れ、〝二人で食堂を切り盛りするのも悪くないかもねー〟なんて学生時代の会話を思い出して始めたこのお店

 

売り上げはまあまあ好調で特に困っている事もなく、常連さんやご近所さん達と触れ合いながらここで一家団欒を楽しんでいる

 

 

「にしてもフウカ、今日はいつもより起きるのが遅かったな?……なんか寝言言いながら気持ち良さそうに寝てたから起こさないでおいたけど」

 

「あー……ごめん、ちょっと夢を見てて……」

「夢?」

 

「そ、学生時代のね」

 

「学生時代か……懐かしいなぁ、思えば色んな事件に巻き込まれたもんだ」

 

「自分から首を突っ込んだ事件もあったけどねー、しかもその時には既に私と付き合ってたのに他の女の子を助けに行ったりとかね?」

「うぐっ……そ、それは……」

 

「ふふっ……冗談よ冗談。それに、その優しさが酒泉の良いところでもあるってちゃんと分かってるから」

 

 

酒泉の優しさは私達が恋人関係になった後でも変わらなかった

 

正直、嫉妬しなかったと言えば嘘になる……だけど酒泉が他の子を見捨てられない人間だってことは最初から分かっていたし、酒泉も酒泉なりに工夫して私と過ごす時間を優先できるように仕事もスケジュールの組み立ても頑張ってくれてたからあまり嫌な思いはしなかった

 

……とはいえ、私は大丈夫でも酒泉を好いていた他の子達は納得してなかったけど

 

思えば多くの恋敵が立ち塞がったものだ、まさか学園内どころか他校の生徒すら酒泉を狙い始めるとは……

 

でも、そんな過去があっても今酒泉の隣に立っているのは私だ、他にも魅力的な子が沢山居たのに酒泉は私だけを選んでくれたんだ

 

 

「さ……さーて!そろそろ開店の準備でも始めますかねー!」

 

「……待って」

 

 

先程言葉を詰まらせたのを誤魔化すように酒泉は玄関に向かうが、そんな彼の腕を咄嗟に掴んで動きを止めさせる

 

そして身体をぴとりとくっつけ、下から酒泉の瞳を見つめる

 

 

「その……何か忘れてない?」

 

「忘れてる?」

 

「ほら……いつもの……ね?」

 

「……ああ、今日は〝まだ〟でしたね」

 

 

酒泉は赤くなる私の頬を見てくすりと笑うと、腰を少しだけ低くして顔の位置を合わせる

 

同時に、私も自身の顔を酒泉に合わせ、そして

 

 

 

「んっ……」

 

 

 

────唇同士をくっつける

 

 

 

「改めて……おはよう、フウカ」

 

「うん……おはよう、酒泉」

 

 

目覚めのキス、まさかこんな夢見がちな女の子が憧れるような行為を自分が大人になって求めるようになるなんて学生の時は想像もしていなかった

 

でも、今ではすっかりこの時間が恋しくなってしまった

 

だって……口づけを交わす度に〝この感覚を味わえるのは私だけ〟という独占欲を満たせるから

 

彼と身体が触れ合う度に〝彼の隣に立ったのは私だ〟という歓喜で心が沸き立つから

彼は人生の伴侶に私を選んでくれた、唇が重なる度にその事実を再確認する事ができる

 

愛する彼と、愛する娘と、ずっと一緒

 

ああ、私はなんて幸せ────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでフウカ、そろそろ学校に行かないと遅刻するぞ?」

 

「………………え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「んっ……」

 

 

日の光がカーテンの隙間から漏れ出し、私の目に襲い掛かる

 

それと同時に閉じてる光景がうっすらと明るくなり、今がもう朝である事を私に知らせる

 

 

「ん───っ!」

 

 

上半身を起こしてから両腕を伸ばし、軽く欠伸をしてから目を開ける

 

 

「……もう朝か」

 

 

ぽつりと呟いてから自身の頬を指で摘まみ、そして────少々強めに引っ張る

 

右にぐーっと、左にぐーっと……うん、痛い。ここまで強めに引っ張る必要はなかった

 

でも、この痛みが本物という事はこの世界は間違いなく現実という訳で────

 

 

 

 

 

 

「なんて夢見てるのよ私はああああああああああああああああああああああああ!!?!?」

 

 

 

 

 

起きたばかりだというのに私の口からは大音量が溢れ、乾いていた喉が更に乾いた

 

…………いやいやいや、本当になんであんな夢見てたのよ。どうして?まさか私には酒泉君とああいう事がしたいって願望でも秘められてるの?答えなさいよ愛清フウカ

 

あ、それともあれかな?昨日私が〝家族みたい〟なんて話を酒泉君としてたせいで偶々そんな夢を見ただけとか?あはははーなんだそうだったのねーだったらキスまでガッツリする必要はないでしょ馬鹿じゃないの?

 

 

「うぅ……ごめん、酒泉君……」

 

 

いつも私を助けてくれる後輩の男の子を使ってあんな妄想をしてしまった、そのせいで若干の罪悪感が私に押しかかってくる

 

どうしよう……今日学園で顔を会わせた時、まともに見れる気がしない────

 

 

「……ん?学園────そうだっ!?今の時間は……!」

 

 

今更になって今日が平日である事を思い出し、咄嗟にスマホの電源をつけて時間を確かめる

 

もし九時を過ぎてたらどう急いでも間に合わな────は!?

 

 

「11時40分!?嘘でしょ!?」

 

 

自分がどれだけグッスリしていたのか思い知らされる

 

おかしい、目覚ましはしっかり掛けていた筈なのにどうして起きようとしなかったの?そんなにあの夢の世界から出ていきたくなかったの?

 

 

「ああ……もうっ!」

 

 

愛清フウカは意外と色ボケなのかもしれない、そんな事を考えながらすぐに登校の準備をする

 

もうすぐ十二時、つまりお昼の時間……恐らく食堂にはジュリしかいないだろう

 

ゲヘナに着いた際に考えられる状況は三つ、多くのゲヘナ生がお腹を空かせて待っているか、普通にコンビニや他の店を利用するか、それか────ジュリが善意で料理をして、とんでもないモンスターが生まれているか

 

分かっている、もしそうなったとしても責任は全て私にあるという事は……でもジュリは良い子だからきっと自分を責めてしまうだろう

 

だからそうなる前に止めないと、その一心で乱れた髪すら整えずにゲヘナに向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へい!鮭定食お待ちぃ!!!」

 

 

しかし実際にはそんな状況にはなっておらず、私がゲヘナ学園の食堂に到着した瞬間に飛び込んできたのは私のエプロンを着た酒泉君が大急ぎで調理している姿だった

 

 

 

「おーい!?目玉焼きまだかー!?」

 

「はいはい今作ってるんでもう少しお待ちくださいねー!」

 

「すいません、ご飯の量もう少し増やせますか?」

 

「あいよぉ!牛牧さん!盛ってやってくれ!」

 

「は、はい!分かりましたぁ!」

 

「悪い!さっき注文した目玉焼き定食の目玉焼きを両面焼きに変更してくれ!」

 

「ああ!?今更変更!?……ったく!今回だけだからなぁ!?」

 

 

 

多くの注文を必死に処理する酒泉とそのサポートに徹するジュリ

 

……何故酒泉君が厨房にいるのだろうか、そんな疑問が頭に思い浮かぶと同時に慌ててお皿を洗っているジュリと目が合った

 

 

「あっ!?しゅ、酒泉さん!先輩が!フウカ先輩が来ました!」

 

「えっ!?マジ!?よっしゃこれで少しは楽できる!」

 

「はい!お手伝いありがとうございました酒泉さん!後は私達が……」

 

「いいや、せっかく乗り掛かった船だ!最後まで手伝うさ!」

 

「酒泉さん……」

 

 

……成る程、大体把握できた

 

ジュリが助けを求めたのか酒泉君が自分から手を貸してくれたのかは分からないけど、酒泉君は寝坊した私の代わりに食堂を切り盛りしてくれていたのか

 

心配させてしまったジュリにも迷惑を掛けてしまった酒泉君にも申し訳ない……すぐに私も厨房に入らないと!

 

 

「二人とも待たせてごめん!私もすぐ厨房に「きゃああああああああああっ!?」入っ……て……?」

 

 

まずはピークを乗り越えないと、ちゃんとした謝罪はその後で

 

そんな思いと共に足を踏み出した瞬間、突如厨房からジュリの叫び声が聞こえてきた……え?何?何が起きたの?ついさっきまで酒泉君と会話してた筈よね?

 

思わずその場に止まりながら厨房を眺めていると、なんとジュリの目の前で味噌汁が入ってるであろう寸胴鍋がガタガタと揺れていた

 

更に中からはうねうねとした触手が、そして蓋の隙間から不気味な生き物が少しずつ…………あっ(察し)

 

 

 

「どうした!?牛牧さん、大丈夫────っ!危ない!」

 

「えっ……きゃあ!?」

 

 

その謎の生き物はジュリに触手を伸ばすが、異常を察知した酒泉君が咄嗟にジュリを突き飛ばして触手から庇う……が、代わりに酒泉君がその触手に捕まってしまう

 

 

 

「なっ!?なんだなんだ!?何が起きた!?」

 

「なんだあのうねうねしたの!?」

「き……巨大わかめ……?」

 

「また給食部が新しい生物を生み出したのか!?」

 

「代償無しの生命錬金……!なんて美しいケミストリー……!」

 

 

 

一瞬でパニック状態に陥る食堂、悲鳴やら疑問やらが全体に響き渡る

 

 

 

「くそっ……銃は料理の邪魔だからって厨房の隅に置いといたのが裏目に出たか!?つーかコイツは何なんだ……!?」

 

「ご、ごめんなさい!さっき定食を提供しにいった時に味噌汁をつけるのを忘れてしまいまして……それで温めてから入れ直そうと思ってお玉を入れたら……!」

 

「そ、そんな……たったそれだけでこんな事に────ぬおおっ!?」

 

 

 

謎の生物が更に多くの触手を伸ばして酒泉君の言葉を遮る

 

ジタバタと抵抗すればするほど、酒泉君への拘束がより強くなっているように見える

 

 

 

「んひぃ!?触手が服の中にぃ!?」

 

「し、酒泉さあああん!?」

 

「やめろォ!女の子を捕まえられなかったからって野郎で触手プレイしようとすんじゃねえ!?……でも残念でした~♡俺は男なのでえっちな事はできませ~ん♡───────ぎゃあああああ!!?触手が増えたああああああああ!!?

 

 

 

あの触手は意思でも持っているのだろうか、酒泉君の挑発を食らった瞬間に怒り狂ったかのようにより多くの触手を生やし始めた

 

それを見た酒泉君は一瞬で涙目に変わり、最早恥も外聞もなくより強く暴れ出した

 

 

「やめろおおおお!!!どこ触っ……どこ触ってんでい!嫌じゃ!前より先に後ろを失うなんて嫌じゃ!触手の子など孕みとうない!!!だから誰か助けてええええええ!!!もういっそそこに突っ立ってる美食研究会でもいいから助けてくれええええええええ!!!」

 

「……らしいですよ?」

 

「…………もう少し眺めっ……様子を見ましょう」

 

「了解で~す☆」

 

「この人でなしいいいいいいいい!!!」

 

 

 

美食研究会は当てにできない、他の生徒達は全員逃げ回っている

 

自らの手で酒泉君を救出する覚悟を決めて銃を手に取る

 

多分、酒泉君の救出に成功したとしても食堂は戦闘の余波で滅茶苦茶になるだろう

 

神様、これは遅刻して二人に迷惑を掛けた私に対する罰ですか?だとしたらあまりにも重すぎませんか?

 

……なんて、ゲヘナ生らしくない事を考えながら私は謎のワカメモンスターに銃口を向けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ……結局この後私も捕まっちゃったし、風紀委員長に救出される頃には酒泉君と二人仲良くぬめっぬめになってたんだけどね

 




ダウナー系バツイチ茶髪ロング女先生(子持ち)×クソボケアルコールとかいうキメラを思い付きました、思い付いただけです
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