「おお……急に家まで押し掛けてきたかと思えば開幕それか」
まあ、暇だしいいけど
今日はどんなゲームで遊ぶのだろうか、対戦ゲーム?協力ゲーム?パーティーゲーム?どんなジャンルで戦ったとしてもだろうと勝つのは俺だろうがな
「で?今日は何をやるんだ?」
「それは……これです!」
「……ん?」
天童さんが取り出してきたのはポッキーの箱だった、多分音的に中身も入っている
ポッキーで……遊ぶ……?どういう事だ?
「こらこら天童さん、食べ物は玩具じゃないんだぞ?」
「そう……なんですか?でもアリス、ポッキーで遊べるとネットで見ました!」
「そりゃあれだ、きっと馬鹿な連中が食べ物で遊んで炎上してるだけだ」
時々いるんだよな、やっていい事とやっちゃいけない事の区別がつかない連中が
そういうのの大半は飲食店で馬鹿な事をしでかしたり食べ物で遊んでたりするんだよなぁ……
「ほら、天童さんもそんな事してないで俺とゲームで遊ぼうな?」
「はい!アリス、酒泉とポッキーゲームで遊びます!」
「そうそう、ポッキーゲームでちょっと待って?」
ポッキーゲーム?ポッキーゲームってあの?ポッキーを口に加えてサクサクするあのリア充専用ゲームの?
それを俺と?天童さんは意味が分かって言ってるのか?……いや、そもそもゲームの内容を理解できていない可能性も……
「えっと……天童さんはポッキーゲームがどんなのか知ってるのか?」
「知ってます!二人の人間が両端からポッキーを加えて先に口から離した方が負けのゲームです!」
マジか、知った上で俺とやろうとしてきたのか
「えっと……天童さん、ポッキーゲームってのは……その……女友達同士でふざけてやったり愛する者同士でやったりとか……普通の男女の友人同士ではあまりやらないゲームなんだ」
「それなら問題ありません!アリスと酒泉はお互いに愛し合ってます!」
「い、いや……そういうのじゃなくてだな?恋愛的好意と友情的好意は別のもので……」
「酒泉は……アリスのことは嫌いですか……?」
「────愛してます!!!」
言ってしまった……でも仕方ないじゃん、こんな不安そうに尋ねられたら言うしかないじゃん
天童さんはパーッと顔を明るくさせながら満面の笑みで喜んだ
「えへへ……アリスと酒泉は相思相愛です!これならポッキーゲームで遊んでも問題ありません!」
「あ、あー……いや、でもこういうのはさぁ……天童さんも一番大好きな男の人と……」
「酒泉です!」
「……性別問わず一番好きな人と」
「酒泉です!」
「…………こ、心の底から全てを預けられる人と!」
「酒泉です!!!」
どうしよう、ここまで堂々と答えられたら何も言え「酒泉です!」うん分かった分かったから
ええ……マジでやるの?いや、俺としちゃ役得どころではないレベルの幸運なんだろうけどさ、こんな無垢で純粋な子のファーストキスを恋愛感情も育ってない内から奪うのは……ねぇ?
……あ、そうだ。俺が途中で折れればいいのでは?わざと負けてポキッとしてしまえば最初から解決する話じゃん
なーんだ、そんな悩む問題でもなかったな
「よし、いいだろう!その勝負受けて立とう!」
「はい!では早速準備を────」
【待ってください、王女】
天童さんの瞳が赤く塗り替えられ、声色が冷静なものに切り替わる
彼女の笑顔は一瞬で真顔に切り替わり、何を考えているのか分からない無機質な瞳で俺を見つめてきた
「ケ……ケイさん?」
【……】
もしかして俺が天童さんに手を出そうとしてたから怒って出て来てしまったのだろうか
だが俺は実際に手を出すつもりはない、さっきも言ったが直前でわざと負けて……ってケイさんに伝えると中に居るであろう天童さんにまで伝わってしまうな
【王女よ、これが勝負だというのなら罰ゲームも用意するべきでは?】
「……うぇ?」
【敗者が勝者に従うのは自然の摂理です】
しかしケイさんは俺に対して怒りを抱いている訳ではなく、むしろ少しノリノリにも見えた
この人罰ゲームとかそういうの考えるような子だっけ……?
【そう、例えば敗者は勝者の要求を全て飲み込む……とか】
「まあ……それくらいなら……」
【そして王女が勝った場合は私達二人の言うことを聞いてもらいます】
「それは狡くない!?」
【その代わり貴方が勝利した場合は私達二人に好きな命令を下してもいいですよ……これで平等ですよね?】
二人分のカウントとか聞いてないんですけど!?つーか何シレッとケイさんまで参加してんの!?
……ま、まあ?でもたかがポッキーゲームの罰ゲームでそこまで過激な事は要求されないだろうし?別に受け入れても……
《否定、それでは平等とは呼べません》
受け入れかけた俺が頷くのを止めたのは、我が家に住むもう一人の住人の声だった
リビングのテーブルの上に置いてあるシッテムの箱が起動すると画面が光り、その中から白リボンの女の子が姿を現す
《酒泉さんの肉体は一つ、罰を受けた場合に掛かる身体への負荷は単純計算で二倍です。ですが貴女達の場合は片方が精神世界に潜る事によってその負荷を押さえる事ができます、これでは酒泉さんだけ敗北した場合のデメリットが多すぎます》
【……酒泉、彼女は?】
あ、そっか。ケイさんはまだプラナとは直接会ってないのか……同じ電子系ヒロイン繋がりで仲良くなれるかもしれないし紹介しておくか
「えっと……この子はプラナ、シロコさんと同じく訳あって俺と一緒に暮らしてるんだ」
【…………なるほど?私より〝後〟に出会った私と似通った存在と……つまり〝二番目〟という事ですか】
《肯定、ですが何が一番で何が二番かの定義を共に過ごした時間の長さを基準に考えるのならば〝一番目〟とも呼べるでしょう》
【…………】
《…………》
めっちゃ真顔で見つめあってる……二人とも感情の起伏が少ないタイプなので何を考えているのかより分からなくなった
……まあ、二人とも〝もう一人の自分的な存在を持つ電子系の女の子〟と共通点ばかりなのですぐにでも仲良くなれるだろう
【……そういえば一つお聞きしたいことが……あのアトラ・ハシースのバリアは貴女の演算能力で再現したものですか?】
《一部肯定、確かに私もサポートはしていましたが、あのバリアの大半はアトラ・ハシースに元から備わっている演算機能で再現されたものです》
【そうでしたか……あまり大した強度ではなかったのでてっきりそこら辺の機械を使って組み立てたプログラムなのかと勘違いしてましたよ】
《否定、あの時はあくまでバリア以外にも演算機能を割いていたから破られただけです。最初から攻撃を防ぐことのみに集中させた場合、貴女達の力だけで突破することは不可能でした》
【……ええ、そうならずに済んで本当に良かったです。お陰で私達は〝酒泉の為〟に突破口を開くことができたのですから】
《…………》
【彼の場合、もし多次元解釈バリアを突破できなかったらその身一つでバリアに殴りかかってしまいそうですから】
「おいおい……流石の俺だってあんな上空で船から飛び出して生身のままバリアに触れるなんてことはしないぜ?」
《……肯定、確かに酒泉さんは生身だろうと無茶をしてしまう人間です》
【でしょう?】
《私はそんな生身の状態の酒泉さんを〝最後まで〟守り抜きましたが》
【……………………】
《……………………》
……な、なんか雰囲気悪くない?なんで?めっちゃ共通点あるのに仲良くなるどころかむしろ互いの視線が冷たくなってるような……
おかしい、さっきまでポッキーゲームをどうやり過ごすかで悩んでいたのに今度は別の悩みの種が……
「ケイばかり酒泉の自慢話をしてズルいです!アリスだって沢山語りたいことがあります!」
……まあ、このままポッキーゲームの話が有耶無耶になるのならこれはこれでいいのかもしれない
オマケ
酒泉「極度の緊張状態にも耐えられるように精神力を鍛えるゲーム?」
リオ「ええ、その名もポッキーゲームというのだけど」
酒泉「……絶対にやりませんからね?」
リオ「……」しゅん