「……」
「どうだ?」
「え?まさかこれ聞かせる為だけに俺呼ばれたんですか?」
「爆笑してくれてもいいんだぞ」
「帰りますね」
真夜中に〝重大な話がある〟と呼び出されてこんな下らないダジャレを聞かされた俺はどんな反応をすればいいんだ
てかまだ23日の夜だし、聖夜じゃねーし
「まあまあ、軽い冗談じゃないか」
「軽い冗談の為に他校の生徒を夜八時に呼び出さないでください」
「安心してくれ、呼び出した理由はちゃんと別にある……といってもただ君とケーキでも頂きながら駄弁ろうとしていただけだが」
「それ先に言ってくださいよ」
「君は欲に素直だな」
なんだ、テーブルの上に置かれていたケーキは俺の為の物だったのか
帰ろうとしていた足を立ち止まらせ、そのまま椅子の方へとUターンさせる
「本当は24日に呼びたかったが、君の方に予定があったからな」
「知ってます?ゲヘナってリア充じゃなくても爆発するんですよ」
「つまり仕事漬けって事だね」
リア充爆発しろって言ったら本当に爆発する学園、それがゲヘナ
勿論大人しく夜を過ごす生徒も存在するが、一方で普段通り暴れまわる問題児も存在する
「そういやなんで急に俺と駄弁ろうと?」
「……どうしてだと思う?」
「うーん……クリパとか?それかもうすぐ一年も終わるし忘年会でも先にしとこう的な?」
「…………はあ」
溜め息を吐かれた、解せぬ
「いいかい?私はさっき〝本当は24日に呼びたかったと〟言っただろう?クリスマスイブに男を一人だけ呼ぶ事の意味を今一度……ひゃん!?」
「……え!?」
百合園さんが突然艶かしい声をあげたかと思えば、百合園さんの胸元がゴソゴソと動き出した
な、なんだ?何が起きている?百合園さんに動く程の胸は存在しn……百合園さんの体格的に中に何かが入っているとしか思えない
「くっ……ふ……ぅ……!」
「あ、あの……大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫────っ、ええい!いい加減にしろ!」
痺れを切らした百合園さんは自身の胸元に強引に手を突っ込んで動いている〝何か〟を引っ張り出した
するとあらビックリ、中からサンタ帽にサンタ服を着たシマエナガくんが飛び出してきたではないか
「主の告白を邪魔しようとはいい度胸じゃないか……」
「────!」
「ふっふっふ……そんなバタバタ羽を暴れさせても無駄だぞ、こうなったからには身動き一つとれまい」
「……」
「っと、見苦しいところを見せてしまったね。話の続きを……酒泉?どうした?」
「……」
「急に黙って「きゃわわ」……?」
「シマエナガくんまじきゃわわ」
「……は?」
なんだその格好、癒しいにも程があるだろ
因みに卑しいの誤字ではなく癒しいで合っている、我らの光であるシマエナガくんをキヴォトスの湿度たっぷりな女達と一緒にしないでほしい
お前ただでさえ身体モフモフなのにそんなモフモフな服着てどうすんだよ、俺をモフ死させる気かよかわいいね
なーんて思ってたら羽をパタパタさせながら俺の頭に乗ってきた
「うおっ……ははは!こいつめ!そんなに俺の頭が好きか!?」
「むっ……こら、まだ話は終わってないぞ」
「シマエナガァ……お前ホント可愛いなぁ……」
「……そうかそうか、君は目の前の女性より鳥類を優先する男なんだな」
「おお?お前は本当に頬擦りが好きだなぁ?うり!こうか!?これがいいのか!?」
「聞け」
俺の肩に移動してきたかと思えば今度は身体全体を頬にくっつけてきやがった、なんだこの愛らしい生き物は
ごめんスカルマン、俺浮気しちゃったよ……
「いやーすいませんね百合園さん、飼い主の許可なく勝手に愛でちゃって……ん?」
「……」
ふと視線を百合園さんの方に戻すと狐耳を垂らして何やらションボリ落ち込んでいた
なんだ?もしかして百合園さんもシマエナガくんを愛でたかったのか?それは申し訳ない事をした
「……もういい……シマエナガ、君がそのつもりなら私にだって考えがある」
「ん?どうしたんすか百合園さん、急に立ち上がって……」
「先に喧嘩を売ったのは君だ、ならば私もそれに応えよう」
「おーい、百合園さーん?」
「まさか〝あれ〟を……切り札をいきなり切らされるとはな」
百合園さんは〝少し待っててくれ〟と言い残してそのまま部屋から出ていってしまった
喧嘩を売ったとか言ってたけど……多分言い方的にシマエナガくんに対して怒ってたよな?お前何かしたの?
「~~♪」
なんて聞いても羽をパタパタさせるだけ、結婚しよ
──────────
────────
──────
「おっ、そろそろか?」
そうしてシマエナガくんと身を寄せあったりシマエナガくんにキスしてもらったりして数分後、百合園さんが先程出ていった扉の向こうから足音が聞こえてきた
一体何をしに行ってたのだろう、切り札がどうたらこうたら言ってたけど……
「やあ、待たせてしまってすまないな」
ガチャリ、と扉を開けて姿を現した百合園さん────バージョンサンタ服
赤い帽子に赤いスカート、そして相変わらず両脇が空いている赤い服
……いや、何故着替えてきた?まだ通常衣装すら実装されてないというのに
「どうだい?君だけのサンタだぞ?」
「はあ……」
「あまりの美貌に反応すら示せなくなったか……セクシーセイアですまない」
「そっすね……じゃあ俺シマエナガくんと遊んでるんで……」
「は?」
「ははは!そんなに俺の胸ポケットが気に入ったか!このまま持ち帰ってしまおうか!」
「いやいや待て待て待て」
「もう……なんすか?」
「面倒そうな反応をするな、流石に傷付くぞ……その……ほら、他に何かないのか?」
「他?」
「その……私のサンタ服への感想とか……」
「え?めちゃくちゃ可愛いと思いますよ?」
「そ、そうか?そこまでハッキリ褒められると流石に照れるな……」
「じゃあ俺シマエナガくん愛でるんで……」
「だから待てや」
引き続きシマエナガくんとイチャイチャしようとしたら百合園さんが止めてきた
何をそんなに怒っているのだろうか?ちゃんと褒めたというのに
「いくらなんでも反応が薄すぎないかい?そんなに似合ってなかったのか?」
「いや、さっきも言いましたけど百合園さんめちゃくちゃ可愛いっすよ。正直見惚れてましたもん」
「じゃあどうしてすぐシマエナガの方に行こうとする!?」
「んなのシマエナガくんが待ってるからに決まってるでしょう!?」
「き、キレられた……」
見ろよこのつぶらな瞳、こんな瞳で見つめられて耐えられる奴がこの世に存在するのだろうか、いやしない
なあシマエナガ……お前はこの世にいちゃいけない可愛さだ、一体何考えてんだ?
本当に可愛いよ、お前の愛らしさに溢れた姿を思い出すだけで俺は────ああっ!?シマエナガくんが百合園さんに奪われた!?
「……時間切れだ!」
「そんな……あと一分!あと一分だけ!それかさきっちょだけでもいいから!」
「駄目だ!飼い主の私が駄目だと言ってるんだから駄目だ!そんな無闇矢鱈に触れていると羽が抜け落ちるだろう!」
「ああ……モフモフ……シマエナガくんのモフモフ……」
「……」
「俺のマイエンジェルが……なんかちいさくてかわいいやつが……」
シマエナガくん愛で愛でタイム終了、この世に希望はない
俺はただ小さくて可愛い生き物を愛でていただけなのにどうしてこんな思いをしなければならないのか
未だ手に残るふわふわした感触が余計に俺を苦しませる、この手から溢れ落ちた小さな命が────うん?
「……あの、百合園さん?」
「……ふん」
失意の底に沈んでいると突然膝に重みを感じる
ふと視線を下ろしてみれば、何故か百合園サンタが俺の膝に座っていた
「……そんなに小さくて可愛いモフモフが好きならお望み通り私の耳でも触ってればいいさ」
「百合園さんって自分で自分を可愛いと言えちゃうタイプ────メメタァ!?」
無言で顎に頭突きを食らった、舌はギリギリ噛まなかった
「いつつつ……百合園さん、なんかシマエナガくんに張り合ってません?」
「仕方ないだろう、どっかの誰かが私の話を無視してそのペットに夢中になってしまうんだから……ジェラシーセイアですまない」
「それは……まあ……シマエナガくんが可愛すぎるのがいけないというか……」
「二言目にはシマエナガだな君は……まあいい、それでどうするんだ?」
「ん?」
「その……触るのか?触らないのか?」
表情は見えないものの耳を赤くしながら呟く百合園さん、その様はサンタコスの効果も相まってロリコンじゃない俺の目から見てもかなり魅力的に見えた……ロリコンじゃない俺の目から見ても!
更に狐耳はひょこひょこと何かを期待しているかの様に動いている、正直めっちゃ可愛い
狐耳っていいよね、モフモフしてるし感情の起伏が表れやすいし……ふふふ……フォックス!
フォックス!皆フォックスし続けろ!……って冗談はさておき、実際触り心地はちょっとだけ気になるな
「でもゲヘナの一般生徒が無闇矢鱈にトリニティのトップに触れるのはよくないよね。という訳で漢酒泉はシマエナガくんを所望します、ジェントル酒泉ですまない」
「いい加減にしろよクソボケ」
このあと普通にケーキ食って帰った