〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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正実モブちゃんがいる日常

 

 

 

 

調印式の襲撃事件、それは正義実現委員会に入って間もない頃の私にとって自身の無力を思い知らされる事になった事件

 

あの日、私達は突如姿を現したアリウスの生徒達や青白い幽霊達との戦闘を余儀なくされました

 

怖かったけど立ち向かう勇気は持てた、だけど現実はそんなに甘くなく、弱い私は何もできずに追い詰められるだけでした

 

『ひっ……!?』

 

 

向けられる四つの視線、明確な殺意を込められたアリウスの視線と何もこもっていない無機質な幽霊の視線が私にぶつけられる

 

銃口を向けられた時には私は痛みを覚悟して目を閉じようとした────その瞬間、目の前の敵に弾丸が二発直撃した

 

更に一発で倒しきれなかったアリウスの身体にはグレネードが投げ込まれ、私を巻き込まないギリギリの距離で敵を吹き飛ばした

 

誰かが私を助けてくれた、そう思って弾丸が飛んできた方向を見るとそこでは一人の男の子が敵と戦っていた

 

……いや、もっと具体的に言うと敵と戦いながら私以外の正実の援護もこなしていた

 

撃たれそうになっている子がいたらその子を狙っている敵を優先的に処理して、怪我してる子がいたらその子の逃げ道を作るかのように突破口を開いて

 

その男の子はずっと他の子に気を配りながら戦ってました────自分も怪我だらけなのに

 

戦闘中だというのにその男の子の事が何故か気になった私はその動きを一瞬足りとも見逃さず釘付けになってしまい……当然のように命取りになった

 

 

『あ』

 

 

嫌だ、怖い、来ないで、痛くしないで

 

様々な感情が〝あ〟の一言だけに込められて零れる

 

そんなたった一瞬の間にも敵の銃口は私の方に向けられ、そして────

 

『だああああらっしゃああああああい!!!』

 

 

 

────勢いよく銃が蹴り飛ばされた

 

 

 

『大丈夫か?立てるか?立てなくてもなんとか自力で退却してくれ!』

 

『え?え?あ、あの……待っ───』

 

『じゃあなッ!』

 

 

ボロボロの身体で私を守ってくれたあの人は自分の伝えたいことだけ伝えて一方的に立ち去ってしまった

 

後から聞いた話によると、あの人は私を助けた後も敵組織のリーダーを倒すために一人で戦場を駆け回っていたらしいです……他の子も助けながら

 

そんな彼のことが事件が終わった後もずっと忘れられなくて、どうしてこんなに気になるんだろうってずっとモヤモヤしてて、それで────

 

 

 

『ちょっ……調印式の時からずっと好きでした!付き合ってください!』

 

 

 

 

────自分の感情の正体に気が付いた時は、今までのモヤモヤを解き放つかのように衝動的に告白していました

 

あの時の彼のぽかんとした表情は今でも鮮明に覚えています、その後の困惑した様な表情も、あたふたと慌て始める様子も、その後のニマニマと照れくさそうに笑う様子も……これを言ったら怒られるかもしれませんが、ちょっと可愛かったです

 

結論だけ言うと私の告白は失敗に終わってしまいましたが……でも私は後悔していません!だって、あの時告白したからこそ今でもお友達としての関係を続けられているんですから!

 

それに、彼が私の告白を断ったのは既に他の女性と〝貴女を支える〟という約束を交わしていたから。そんな状態で私と付き合うと不誠実だからという理由でした

 

つ……つまり!彼が私に抱いている申し訳なさを失くすか、その女性との約束を終えた後ならまだ私にもチャンスがあるという事です!

 

後者はその約束を果たし終えるのがいつになるのか分かりません、ならば残る選択肢は前者です!

 

でも前者の条件を達成する為には私と酒泉さんの距離をもっと縮める必要が……私自身に酒泉さんを堕とせるくらいの魅力が必要です

 

そんな魅力を身につける為に私はなんだってやってきました、全ては酒泉さんに喜んでもらう為に……酒泉さんに好かれる為に!

 

オシャレの仕方をお勉強したり、楽しそうなデート場所を探したり、酒泉さんが好みそうなスイーツを探したり、ちょっとでも身長を近づける為にばんざい体操にも手を出してみたり、あとあと……

 

 

『一番の胸育方法は好きな人に揉んでもらうこと……?私が、酒泉さんに……あ、あわ、あわわわわわわっ……!』

 

 

……その、実行出来なかったのもありますけど……と、とにかく!私なりに出来ることは全てやってきたつもりです!

 

この努力が実を結ぶとは限りません、もしかしたら彼にとって私はただのお友達かもしれませんし、女の子として意識されてるのかも分かりません

 

でも……今はそれでいいんです。今はその他大勢モブの一人だったとしても、いつか貴方の特別ヒロインになれたのならその時はきっと笑って〝頑張ってよかった〟って胸を張れるから

 

……ううん、例え努力が実を結ばなかったとしてもその時もやっぱり泣きながらでも笑えると思う

 

〝貴方を好きになれてよかった〟って涙と一緒に心の底から言えるはず、だって貴方は────そう思わせてくれるほど素敵な人だから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えへへへ……」

 

「あー!あの子またスマホ見てニヤニヤしてるー!」

 

「引っ捕らえろー!」

 

「事情聴取だ事情聴取!」

 

「え?いや、あの……きゃあ!?」

 

 

モモトークに送られてきた今日の予定を再確認するメッセージ、それを見てだらしなく笑みを浮かべているとその少女は一瞬で仲間達に取り囲まれてしまった

 

そのまま胴上げされながらえっほえっほと正実の休憩室まで運ばれていき、椅子の上に優しく降ろされた

 

 

「さーて、今日は愛しの彼ぴっぴと何処にお出掛けするのかなー?」

 

「か、彼ぴ!?そ、そんな……まだお付き合いもしてないのに……」

 

「ねえねえ聞いた!?〝まだ〟だって!」

 

「きゃー!だいたーん!」

 

「あぅう……」

 

 

顔を真っ赤にして俯いてしまう少女とは反対に顔を赤くしながら仲間内できゃーきゃー騒ぐ仲間達

 

普段は正実として学園の問題事を取り締まっている彼女達も休憩中は年頃の少女らしくはしゃいでいた

 

 

「あっ!?この子、深夜に彼と通話してるよ!?」

 

「ほんとだー!だから眠そうだったんだー!」

 

「寝落ちもちもちまで!?」

 

「か、勝手に見ないでよ~!?」

 

 

一人の生徒が後ろからモモトークの画面を覗き込んでみればトークルームに通話履歴が残っており、そこに表示されていた通話時間は深夜の一時から二時までの記録だった

 

恋愛話に植えている少女達がそれを見逃すはずもなく、たった一人の少女に対してどんな会話をしたのかと次々と詰め寄り始める

 

 

「どっちから電話掛けたの!?」

 

「そ、その……私から……向こうのお仕事が次の日お休みだって聞いてたから……」

 

「何を話したの!?もしかしてまた告白した!?」

 

「相手の反応は!?脈ありそうだった!?」

 

「こんな時間でも応じてくれるってもう完全に脈ありでしょ!」

 

「だ、だめ!教えないもん!」

 

「ははーん……さてはデートの約束でもしたね?」

 

「……ち、違うもん」

 

「はいはい……それで?当日は何を着てくの?」

 

「えっと……今日は前のデートの時に酒泉さんから頂いた服を着てスイーツ食べ放題のお店に────はっ!?」

 

「やっぱりデートじゃん!」

 

「しかも今日!?」

 

「者共出会え出会えー!」

 

「白状させろー!」

 

「きゃー!?」

 

 

敵の策略に嵌められたいたいけな少女は一瞬でボロを出してしまい、周囲から生暖かい視線を向けられながらあっという間にわちゃわちゃと揉みくちゃにされてしまった

 

そんな彼女達を小動物同士の戯れを見る様な視線で見守りながら、黒羽の生えた正義実現委員会の生徒が一人駆け離れた所でぽつりと呟く

 

 

「いやー青春っすね……」

 

 

正義実現委員会二年生・仲正イチカ

 

彼女は自分が心の底から夢中になれる物に出会った事がない、故にたった一人の男に夢中になっている自らの後輩がちょっと羨ましかったりする

 

 

「私もいつかあの子みたいに酔い潰れちゃうぐらい素敵な男の子と出会ってみたいもんすね~」

 

 

イチカと酒泉、両者の間に繋がりは殆ど存在しない。ゲヘナとトリニティ、風紀委員会と正義実現委員会で協力して何かを行う時に軽く挨拶する程度の関係でしかない

 

では何故〝素敵な男の子〟と呼んだのか、それは数多くの噂を耳にしたからだ

 

ゲヘナの眼、風紀委員会の双璧、冴えない男、究極の女誑し、獰猛、冷静、狙撃の天才、近接戦のプロ、無慈悲、お人好し、エリート風紀委員、ただの馬鹿、気配に鋭い、全てに鈍感

 

相反したりただの悪口にしか聞こえない数々の噂を聞いた上でイチカは全部纏めて素敵な男の子と評した、多くの悪評が混じっていながら女誑しだのお人好しだの言われるほど好かれているのだから多分よっぽど素敵な人なのだろう

 

 

「まあ、もしあの子がお付き合いする事になったら先輩として挨拶にでも行くっすかね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

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──────

 

 

 

 

 

 

 

「ぶえっくしょおい!!!……なんだ?かわいこちゃんが俺の噂でもしてんのか?」

 

《それは俗説というものです》

 

「ん、それか誰かが酒泉の背中を刺す計画を立てている」

 

《なるほど、つまり死亡フラグという訳ですね》

 

「いやいや、まだ見ぬ新ヒロインとの恋愛フラグという可能性も……」

 

「ない」

 

「いやでも「ない」……でもさ「ない」……いやちょっとくらい「ない」……」

 

「ないから」

 

「そんなに否定しなくても……」

 

 




本当は後輩ちゃんの話にする予定だったんですよ、でも公式があんな動画出しちゃうからさぁ……!
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