〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

338 / 514
転生するのが遅すぎた男

 

 

 

 

《───以上が、デカグラマトンとシャーレのファーストコンタクトでした……さて、次は教科書の48Pを開いてみましょう》

 

 

BDのガイド音声に従い、教科書を捲る

 

未だにBDに頼りっぱな教育方法を続けている辺り〝先生〟という存在は過去のキヴォトスに一度しか現れなかったのだろう

 

原作が終了したであろう後は〝先生〟に続いて〝新たな先生〟がキヴォトスにやってくるなんて事もなく、ストーリー的にも特に刺激的な変化も無いままただ時代が進んだだけ……なのかもしれない

 

 

《教科書の左上の写真を見てください……はい、空が赤いですね。皆さんは小学生の頃の授業で〝虚妄のサンクトゥム〟という言葉を習った事があると思います、今回はその〝虚妄のサンクトゥム〟を……113年前に起きた、キヴォトスが滅びかけた事件を再び学んでいこうかと思います》

 

 

俺は〝原作〟は知っているが〝過去〟は知らない、こうして歴史の授業を受ける度に新たな発見があるのはちょっと面白かったりする

 

ブルーアーカイブに登場する皆はきっと原作で起きた事件以外にも四苦八苦する様な出来事に会ってきたんだろうなぁ……プレイヤーである俺達が知らないだけで

 

……そういえば百年程前に実在した俺の〝推し〟は先生と結ばれる事ができたのだろうか、それが一番気になるが……残念ながら知る術はない、ただ幸せを祈るのみ

 

いや、過去の人間に祈ったところで今更すぎるんだけどな

 

 

「……あ、鳴った」

 

 

キーンコーンカーンコーン、と授業終了の合図が鳴り響く

 

クラスを纏める先生も存在しないので特に決まってない誰かしらが〝続きはまた今度でいいよねー〟と呟いてからBDの映像を止めて授業を終わらせてくれた

 

 

「しゅせーん、この後どうするー?」

 

「カラオケ行くべ」

 

「あー……わり、俺生徒会あるからパスで」

 

「えー?またー?」

 

「いつか埋め合わせすっからさ、その時頼むよ」

 

 

ゲヘナ程物騒ではないしトリニティ程謀略が巡らされている訳ではない、それが俺の通うアビドス高等学校の良いところ

 

しかしそんなアビドスでも生徒数が1000人を越えている以上は必ずどこかしらで事件やら些細な揉め事やらが起きたりする

 

それを解決してアビドスの治安を守るのもアビドス生徒会の仕事の一つである……ちなみに俺は副会長です、はい

 

 

「酒泉くーん!迎えにきたよー!」

 

「……っす」

 

「あ、会長さんだ」

 

「こんにちはー」

 

 

生徒会の事を考えていたからか、丁度タイミング良く教室の扉付近から我らが生徒会長様の声が聞こえてきた

 

後輩達からも気軽に話しかけられているところを見れば一発で人望があると理解できる……が、俺個人としてはこの人の近すぎる距離感がちょっと苦手だったり

 

 

「梔子さん、前にも言いましたけどわざわざ迎えに来なくてもいいですから」

 

「え?でも酒泉君の教室って私の教室のすぐ下の階だし……それなら一緒にお喋りしながら移動した方が楽しくない?」

 

「……まあ、はい」

 

 

〝別に〟と否定するのは簡単だったが、正直に言うと梔子さんと話すのは普通に楽しいし変にツンデレ発揮させる必要も無いだろうと素直に答える

 

すると梔子さんは満開という言葉が似合うような笑顔を咲かせながら正面から勢いよく抱きついてきた

 

 

「酒泉君かわいい~!正直で偉い!」

 

「ちょっ……胸が────あびゃびゃびゃびゃびゃびゃ」

 

「おー、大胆」

 

「おねショタごちそうさまです」

 

「ショタ……?」

 

 

梔子さんの様なナイススタイルなおとなのおねいさんが抱きついてくるとどうなるか。答え、二つのぺぇぺぇが密着してくる

 

これだ、これこそ俺が梔子さんを苦手としている理由、男子高校生の生態も知らず平然とハザードトリガーを刺激するような真似をしてくる

 

それを避けようと梔子さんからのスキンシップを拒もうとすれば今度は酷く傷付いたような顔をしてくる、どうすりゃいいんだ

 

「……だーもう!さっさと生徒会室行きますよ!こんなところで油売ってる場合じゃないでしょう!?」

「はーい!」

 

 

これ以上周囲からの視線を集める訳にはいくまいと梔子さんを無理矢理退かし、逃げ出すかのように足早に教室を出る

 

……まあ、急いだところで別に俺達以外の部員が待ってるわけでもないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だってアビドス生徒会、俺と梔子さんしか居ないし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえねえ酒泉君、どうして誰も生徒会に入ってくれないんだろうね」

 

「誰も面倒事を引き受けたくないからじゃないっすかね」

 

「ひぃん……」

 

 

書類仕事を進めながら尋ねてきた梔子さんに率直な意見を言うと梔子さんは机の上にガックリと項垂れてしまった

 

止まらない砂漠化、減ってゆく人口、多額の借金、これらは全て過去にアビドスで起きた事件だ

 

アビドスが抱えていた借金は完済済みだし人口問題だって全盛期程ではないにしろ大幅改善された。しかしそれらの問題もたった数年で解決した訳ではなく、歴代生徒会達の尽力という長い歴史の積み重ねによって漸く解決したものだ

 

なんなら砂漠化の具体的な原因だけは百年経った今も具体的には解き明かされていない訳だし、また急に砂漠化が進んで再びアビドスが衰退してしまう可能性だって考えられる

 

まあ、要するにだ、過去に起きた事件の影響が大きすぎてそれらの解決に当たってきた生徒会=激務という印象がアビドス生の中に根付いてしまっているという訳だ

 

……だとしても俺等以外の入部希望者ゼロはおかしくね?運命が悪戯してるレベルの奇跡だろこれ

 

いや、確かに仕事は忙しいには忙しいんだけど……皆が思ってるほど激務ではないし、あと何人か生徒会メンバーが増えれば一気に楽になる程度の仕事量でしかない

 

 

「んで?今日は何の会議をするんです?」

 

「ふっふっふ……よくぞ聞いてくれました!今日の議題は……ずばり!アビドスの入学希望者を増やす方法についてです!」

 

「……はぁ」

 

「……あれ?思ってたより反応悪い?」

 

「いや、だって……在校生千人以上居るなら別にこれ以上増やす必要なくないですか?」

 

「甘いよ酒泉君!ハチミツと生クリームが乗ってるパンケーキくらい甘いよ!」

 

「なんすかそれ最高じゃないすか」

 

「後で一緒に食べにいこうね!」

 

「はーい」

 

「……あれ?なんの話してたんだっけ?」

 

「え?パンケーキ食いに行くって話でしょ?」

 

 

糖分なんてなんぼ摂取しても良いですからねー、特にスイーツなんか甘ければ甘いほど良いとされている、古事記にもそう書かれている

 

いやー嘗ては砂場大国だったアビドスも今じゃすっかり都会の仲間入りかー、お陰でわざわざ他の自治区まで出向かなくてもアビドス内だけでスイーツ巡りができる程度には飲食店が増えてくれた

 

 

「……あっ!?そ、そうだ!確か入学希望者を増やそうって話してたんだった!」

 

「えー?それマジでやる必要あるんですか?」

 

「あるよ!大有りだよ!折角歴代の生徒会さん達が頑張ってアビドスをここまで復興させてくれたんだから、私達も現状に満足しないでもっと上を目指さないと!」

 

「忘れちまったぜ……満足なんて言葉……」

 

「わーすーれーちゃーだーめー!」

 

 

軽い冗談のつもりで吐いた言葉を本気で受け取られてしまったのか、梔子さんは俺の両頬を引っ張ってぐいぐいと上げ下げしてきた

 

ちなみにキヴォトス人にそれやられるのは普通に痛いのでやめていただきたい

 

 

「……んで?そこまで押してくるって事は何か案でもあるんでしょうね?」

 

「ふふふ……じゃーん!これなーんだ!」

 

 

自信満々な顔で梔子さんが鞄から取り出したのは恐らく手書きであろう一枚のポスター

 

上の部分には〝復活!アビドス砂祭り!〟と堂々と書かれており、ポスターの下部分には……多分、何かしらのキャラクターであろう絵が〝おいでよ!〟と叫んでいる

 

 

「な、なんすかこれ……バナナと鳥のキメラ合体……?」

 

「えっ!?酒泉君、たのしいバナナとり知らないの!?」

 

「楽しいブラカワニ?」

 

「そんな……昔ちょっと流行ってたのにバナナとりシリーズを知らない子がいるなんて……うぅ、これがジェネレーションギャップなんだね……」

 

「昔って……どれくらいすか?」

 

「……ひゃ、ひゃくねんくらい?」

 

「俺生まれてねーよ」

 

 

モモフレシリーズと共に消え去った今は亡きペロペロ様と同系統のキモさを感じるこのキャラクターが人気だった……?どうやら昔の人間達は今より圧倒的にセンスが壊滅していたらしい

 

「そ、それで……どうかな?砂祭り」

 

「どうかなって……うーん……」

 

 

今のアビドスの人口で祭りを開くとなればそれなりの……いや、かなりの規模が予想される。まず間違いなく俺達二人だけじゃ祭りの管理はできないだろう

 

その辺の人員問題はバイトかなんかを雇えばいいだけとして、後は祭りの会場の確保とか露店を出してくれそうな飲食店への協力取り付け、花火師さんにも……

 

 

「……や、やっぱり駄目……かな?」

 

「はい?……いや、別に駄目ってわけじゃ───」

 

「ご、ごめんね?急に変なこと言い出して……生徒会長なのにこんな事しか思い付けないなんて情けないよね……頼りない先輩でごめんね……」

 

 

何から手をつけるべきか思案している俺の様子を見て〝否定される〟と勘違いしたのか、梔子さんはポスターを背に隠して案を下げてしまった

 

あははと作り笑いを浮かべながら平静を装おうとするその顔は酷く傷付いた様で、俺にはまるで突き放されることを恐れているように感じた

 

 

「……なーに二回も謝ってんすか、俺は良い案だと思いますよ」

 

「……え?」

 

「やりましょうよ、砂祭り!」

 

 

勘違いしないでほしいが俺は祭り事は大好物だ、前世からずっと催し物は大好きだったし〝へっ!文化祭なんてくだらねえ!クラスの連中で勝手に楽しんでろよ!〟みたいな中学生特有の病気を拗らせるタイプでもなかった

 

なんなら人生二週目の今ですらこういうのには弱かったりする、永遠に小学生マインドですまない

 

 

「……い、いいの?」

 

「いいも何も梔子さんから言い出したんでしょ?」

 

「ほ、本当?怒らない?ポスター破ったりしない?」

 

「怒る要素どこにもないでしょ……つーか高校生にもなってそんな感情抑えられないガキみたいなことしませんよ」

 

 

まあ糖分や特撮を前にすると抑えが利かなくなる事が多々あるんですけどね、でもどっかのグリードだってその欲望解放しろって言ってくれてるし俺には免罪符が「酒泉くううううん!!!」────ぐええええええええっ!?

 

 

「ありがとね酒泉君!砂祭り、絶対に成功させようね!」

 

「ふもっ!?ふもっふ!もふふふふふ!?」

 

 

突如飛びかかってくるユメ先輩のユメ先π、あまりの重圧感にドッジボール大会で顔面にボールを食らった小学生の時の記憶を思い出してしまった

 

軽率に抱きついてくるのは普通に考えてアウトです先輩、もし俺に二周分の人生経験がなかったらこのまま誰もいない生徒会室で狼になっていたかもああでも気持ちいいしもうどうなってもいいや、これが嘗てアビドスに存在した生きる伝説・暁のホルス(タイン)ですか

 

もにゅ、ぽよん、ふんわり、なにこれすごいしあわせ、まるでやさしさにつつまれているような────はっ!?

 

 

「むぐぐぐぐぐ……離れろぉ!ガンダムの力はぁ!」

 

「きゃうん!?」

 

 

折川の理性は性欲だって乗り越えられる!てことで少々強めに梔子さんを突き飛ばして抱擁から逃れた

 

キヴォトス人相手に生半可な力じゃ抵抗すらできないから加減はできん、許してくれ

 

 

「ひぃん……酒泉君が冷たいよぉ……」

 

「あのまま抱きしめられてたら窒息してガチの意味で冷たくなってたんですが?……てかそんな気安く男に触れない方がいいっすよ、誰彼構わず抱きついてるとそのうち本気で勘違いされますからね?梔子さん、ただでさえ距離感バグってるんですから」

 

「……誰彼構わずじゃないもん」

 

「はい?なんすか?」

 

「ふぇっ!?う、ううん!なんでもないよ!」

「いや、今なんかボソッと呟いて……」

 

「よーし!まずはお祭り運営のバイト募集ポスターから作っちゃおっか!」

 

 

テンパったようにペンやら絵具やら画用紙やらを用意する梔子さん

 

……ただポスターを作るだけなのに何を興奮しているのやら

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「パンケーキ美味かったっすね」

 

「ねっ!……酒泉君他にもいっぱい頼んでたけど」

 

「メニュー表見てたら我慢できなくなっちゃいました」

 

「そんなに食べて大丈夫なの?」

 

「大丈夫っすよ、俺梔子さんと違って太らないんで」

 

「わ、わたしだって太らないもん!」

 

 

有言実行、約束通りパンケーキを一緒に食べて己の中のグルメ細胞を進化させた帰り道

 

沢山の人々の談笑やら愚痴やらが聞こえてくる商店街、たったそれだけの光景なのに原作でのアビドスの立ち位置を知っている身からすれば勝手に感慨深くなってしまう

 

 

「───ですから!なぜ赤ワインを売ってくれないのですか!」

 

「いや、だってねぇ……お嬢ちゃんまだ学生だろ?だったらまだ売るわけにはいかんよ」

 

「別に私が飲む為とは言ってないでしょう!?あくまでも儀式用です!私が崇高に至る為の!」

 

「べ、ベアちゃん……無理強いはよくないよ……」

 

「貴女は黙ってなさい!バルバラ!」

 

 

 

 

 

 

「……あん?なんだ?」

 

「け、喧嘩かな……?」

 

 

そんな思いを抱えながら歩いているとふと酒屋の方から怒鳴り声が

 

ちょっとした好奇心混じりに視線を向けてみると緋色の長髪の少女が酒屋の店主さんに向かってがるるると威嚇しており、その隣で水色の長髪の少女がおろおろと困り顔をしていた

 

 

「んー……悪いなお嬢ちゃん、だとしても売ってやれねえよ。赤ワインを買いたきゃ大人の人にお使いでも頼むんだな」

 

「なっ!?……もういいです!こんな店、二度と来ませんから!」

 

「おー、成人したらまた来てくれよー」

 

「二度と来ないと言ってるでしょう!?全く、わざわざトリニティから出向いてきたというのに!……チッ!今生こそは崇高へと至ってみせると決意した矢先にこんな壁にぶち当たるとは!」

 

「ま、まってベアちゃん!おいてかないで!」

 

 

しっしと追い払う素振りを受けた緋色の少女は捨て台詞を残して酒屋を去り、水色の少女がその後ろを不安そうに急ぎ足で追いかけてゆく

 

……酒か、俺も事故死せず順当に歳を重ねていたら今頃飲める年齢になってた筈なんだよな

 

いやまあ、死人の身でありながら二度目の生を送らせてもらえてる時点で十二分に幸せではあるんだが、ちょっとだけ欲を言えば酒を飲める年齢で転生したかったり……ん?

 

「……梔子さん?なんで笑ってるんです?」

 

「……え?」

 

「もしかして梔子さんって人が争ってる姿に愉悦を見出だしちゃうタイプだったり?」

 

「ち、違うよ!?そんな悪い性格してないよ私!?」

 

 

なんだ、てっきり〝争え…もっと争え…!〟系の人かと……ってのは冗談なのだが、梔子さんが嬉しそうな笑みを浮かべていたのは本当だったり

 

それを聞くかどうか悩んでいると此方から尋ねるより前に、梔子さんが自分からポツリと語りだしてくれた

 

 

「その……アビドスもすっかり大きくなったなーって」

 

「……まあ、そっすね。他校の生徒がふらっと立ち寄ってくる程度には復興しましたからね」

 

 

さっきみたいにアビドスのお店の人と他校の生徒が口喧嘩している光景なんて昔じゃ考えられなかったのではなかろうか、そもそも人口が少な過ぎてすれ違う機会すら無かったのかもしれないし

 

アビドスの復興が進むと共に商業施設も建ち始め、インフラが整うに連れてアビドスで暮らす人も増え始め、こうして今に至る

 

きっとその歴史の裏には多くの人達の血が滲むような努力があったのだろう

 

 

「今でこそ当たり前みたいに学校近くのデパートで買い物したりしてるけど、まだ復興してない頃のアビドスじゃそんな当たり前の事すらできなかったんだよね……」

 

「ほんと、歴代生徒会の皆様には感謝しかないっすね」

 

「……どうだろうね、もしかしたら皆が皆成果を出せたわけじゃないと思うよ?」

 

「……つまり?」

 

「例えば……何も成し遂げられないで、生徒会長の立場を降りちゃった人とか」

 

「……梔子さんにしては珍しくマイナス向きな考え方っすね」

 

「でも、少なからず一人はいると思うんだよね。アビドスの復興を目指しておきながら何も出来ずに、そのくせ〝きっといつかは〟って能天気なことばかり考えて、周りを失望させて……」

 

 

そこまで言うと梔子さんは口を閉ざして続きの言葉を飲み込んだ

 

……正直、驚いた。梔子さんの口から過去の人間を貶す言葉が出てくるなんて────いや、恐らく梔子さんは歴代生徒会を蔑んでるわけではない

 

この人は、梔子さんは、きっと、自分自身を───

 

 

「……そうっすかね?生徒会長なんて面倒な役職に就いた時点で必ず一つは何かしら残せてると思うんですけど。例えば……想い、とか」

 

「……想い?」

 

「アビドスを守りたい、アビドスを復興させたい、歴代の生徒会役員達が抱えてきたそんな想いを紡いできたからこそ今のアビドスがあるんじゃないですかね。一代だけで復興させるなんて不可能なんですから」

 

 

いつかは、やがていつかはと、希望を捨てず抱き続けた夢

 

そんな夢が残した足跡を、また別の夢追い人が追いかけて、新たな足跡が生まれる

 

 

「何も残せなかった人なんて一人もいません、全生徒会の想いが貴女の中に宿ってるんです。だから……まあ……えっと……………すみません、上手い言葉が思い付きませんでした」

 

「……ぷっ────あははははははっ!」

 

 

なんか途中までそれっぽいこと言えていた筈なのに締めに入った途端に語彙力が失くなってしまった

 

そんな俺の情けない姿がツボに入ったのか、梔子さんは顔を上げ大声で笑い始めた

 

 

「もー、そこはちゃんとキッチリ決めてよー……ふふっ!」

 

「し、仕方ないでしょう!?頑張って慣れないことしようとしたんですから!梔子さんこそ急に変なこと言い出さないでくださいよ!」

 

「……うん、ごめんね?私、もう二度とあんなことは言わないから」

 

 

ごめんも何も、梔子さんが蔑んでいた相手は最初から自分自身なのだから謝る相手なんて存在しないだろうに

 

……まあ、梔子さん本人が〝あの事〟を隠している限り俺からそれを問い詰めるような真似をするつもりもないが

 

それに隠し事をしているのはお互い様だしな……実はどっちも〝二度目〟だったと知った時、梔子さんはどんな反応を見せてくれるのだろうか

 

 

「……ねえ、酒泉君。そこまで生徒会の事を考えてくれてるならさ……これからも生徒会に残ってくれるって、そう取ってもいいのかな?」

 

「当然じゃないですか、たとえ再び廃校の危機が訪れようと残り続けますよ」

 

「そ、それはそれで複雑というか……と、とにかく!信じてもいいんだよね?後からめんどくさくなっちゃって辞めちゃうとか無しだからね?」

 

「んな無責任なことしませんって……まあ、確かに仕事は面倒ではありますけど」

 

「ひぃん……」

 

「でも……それ以上に梔子さんと一緒に仕事するの好きですし」

 

「え?そ、それって……その……」

 

 

というか俺にとって嫌いになる要素が無い、こんなに優しくて暖かい太陽の擬人化みたいな存在を嫌いになれる筈がない

 

ちょっと明るすぎる梔子さんのことを能天気と言う奴もいるにはいるが、だったら俺がその分冷静に物事を見ればいい。会長に不満を持つ生徒がいるのだとしたら俺がその不満点を補おう

 

 

「……………わ、私も!私も酒泉君のことがだいす───」

 

「あー!?あれはアビドス名物の砂団子!?こしあんが詰まった団子の上に砂に見立てた黄粉を満遍なく振り掛けた超人気和菓子じゃないですか!?」

 

「…………き?」

 

「この時間になると大抵売り切れてる場合が多いのに……店長さん!それ全部!残ってるの全部くださーい!」

 

「……あ、あの……聞いてる?」

 

「ん?……ああ!聞こえてますよ!梔子さんも好きなんでしょ?砂団子!」

 

「ひぃん……」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。