〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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鈍感には重いくらいが丁度良い

 

 

 

「うん、ないかな」

 

「は?」

 

大口を開けてシュークリームを頬張ろうとしている目の前の男の子を見て無意識にそう呟いてしまう

 

一瞬間を空けてから一口で食べる用ではないであろうそれを口の中に突っ込むと、男の子は幸福を噛み締めるように笑った

 

……うん、やっぱりないね。この私────聖園ミカが、こんなアホ面を晒しているゲヘナの男子生徒に恋をしているなんて

 

確かに彼に会いたくてこっちから呼び出す事は度々あるけど、それはあくまで何の遠慮もなく愚痴を吐き捨てられる相手が欲しかっただけだし

 

 

「聖園さん、そのフルーツサンド食わないんすか?だったら俺が貰ってやってもいいですけど?」

 

 

……向こうだって私の事なんか全然何とも思ってなさそうだし

 

犬猿の仲とはいえ仮にも女子生徒に呼び出されてるんだよ?少し意識してもよくない?

 

それとも何?私ってそんなに魅力無い?自分で言うのもなんだけど顔もスタイルも良い方ではあると思うんだけどなー……そもそも女の子として見てもらえてるんだよね?

 

 

「……あげるわけないでしょ、私が注文したんだから」

 

「とか言いながら俺のシュークリーム食ってんじゃねえ!!!」

 

「んー☆おいひー☆」

 

 

ちょっとイラっとしたからフルーツサンドを渡すどころか逆に残ったシュークリームを奪ってあげると、酒泉君はこの世の終わりみたいな顔をしながら怒ってきた

 

自分を呼び出した女の子より甘味を優先するなんて〝本当に思春期男子なのか〟と問いたくなってしまう

 

 

「……皆、こんなのの何がいいんだか」

 

「ああ!?人のシュークリーム奪っといてなんだその言い草はぁ!?」

 

 

シュークリームの味に対して文句を言ってると勘違いした酒泉君が中指を突き立ててきた、やっぱり女の子に対する態度じゃないよねこれ

 

……私が口にしたのは〝どうして皆こんな男の子に惹かれているのだろう〟という事だ

 

ゲヘナの風紀委員長もミレニアムの会長も、なんなら私と同じティーパーティーの一員であるセイアちゃんも、変なフェロモンでも出しているのかというくらい皆がこの子を好いてしまっている

 

しかもその中の何人かは各学園の中枢を担う組織のトップだなんて……酒泉君はなんなの?キヴォトス統一でも目指しているのかな?

 

……でも、こんな子に惚れちゃう人達も問題だよね

 

確かに実力は評価できる、戦闘中の判断力も一年生にしてはかなりのものだし、同年代だともう勝てる子はいないんじゃないかってくらい強いとは思う

 

でもそのプラス点を全て帳消しにしちゃうくらいマイナス点が大きすぎる

 

まず第一にクソボケ、数多の女の子からの好意に気付かない程の鈍感っぷり

 

次に活動範囲の広さ、ちょっと会わないだけでいつの間にか女の子のお友達を増やしている見境の無さ

 

最後に女の子に向かって酷い事を言っちゃうところ!男友達と話してる様な感覚で簡単に罵ってくるのは本っっっっ当に駄目だと思う!……多分、私相手の時だけじゃない……よね?

 

まだまだ駄目なところは沢山あるけど全部挙げてたらキリがないからこれだけに留めておくけど、ちょっと考えただけでパッとこれくらい浮かんできてしまう程に折川酒泉という男子生徒はダメダメすぎる

 

だから彼の事を好いている女の子達はさっさと見限って他の素敵な人を探せばいいのに……って私は思うけどね

 

一人になった後の酒泉君の事?どうせ心優しい誰かが拾ってくれるでしょ、それか酒泉君と悪口叩き合ってるから暴言吐かれるのに慣れてる誰かとかが仕方なく……本当に仕方な~く拾ってくれるかもね

 

 

「酒泉君はさ、もっと私に感謝するべきだよね」

 

「は?」

 

「こんな冷たい態度取られても尚関わりを持とうとしてくれる女の子なんて私しかいないじゃんね☆」

 

「そもそも貴様が煽ってこなければ相応の態度で相手するんじゃが?」

 

 

それはまあ、そうだろうなとは思う……けど、あんな出会い方をしておきながら今更態度を変えろというのも無理な話でしょ

 

秤アツコを救出する為にカタコンベを通ってアリウス自治区に侵入したアリウススクワッド、私はそこで彼女達と行動を共にしている酒泉君と出会った

 

逆恨み染みた復讐心でサオリから全てを奪おうとしていたあの時の私にとって酒泉君は〝私の邪魔をしてくる大嫌いなゲヘナの生徒〟でしかなかった

 

だからこそ容赦なく潰すつもりだったし、その結果酒泉君が本当に死んじゃったとしても私は大して何も感じなかったと思う

『こっちはいいから聖園さん達があのババア倒してきてくれよ!全ての元凶ぶっ倒せば、ほんのちょっっっっっとぐらいはアンタの聴聞会もカッコつくかもしれねえだろ!』

 

 

……あの時、までは

 

何を思ったのか、ミメシス達の足止めをしようとした私の代わりにボロボロの身体で立ち上がった酒泉君

 

ついさっきまで自分を殺そうとしていた相手を、ついさっきまで殺し合いしてた相手を庇う為に彼は全身で叫んだ

 

正直、理解できなかった

 

私なんか……こんな逆恨みで勝手に暴走して勝手に泣き出すような女、見捨ててしまえばよかったのにって

 

でも、今は理解できる。それが出来ないのが────折川酒泉という男の子なんだって

 

敵対してた人達に手を差し伸べて、自分の為と言っておきながら他人の為に頑張れて、どっちかって言うと現実論者側の癖して理想家みたいな事を言って

 

あれもしたいこれもしたいって……お人好しってより中途半端で我儘な男の子って感じ?

 

そんな彼だからこそ皆に好かれてるんだろうけど……まあ

 

 

「私は嫌いだけどねー」

 

「それは俺のことか?それともこのシュークリームのことか?」

 

「酒泉君のことに決まってるじゃん」

 

「なら許す」

 

「えぇ……」

 

「俺の前で甘味を蔑む者は何人足りとも許さん……命拾いしたな」

 

「なにそれ、自分が嫌われた方がマシってどういう価値観してんの?」

 

 

そう、私は酒泉君なんか大嫌い

 

もし酒泉君が困ってる顔をしてたらそれを煽りに行く為に駆けつけるし、敵に苦戦してたらそれをあっという間にやっつけて酒泉君に格の違いを見せつけるし、酒泉君が怪我したらやっぱり煽りに行くし

 

誰かが酒泉君の悪口言ってたらそれに参加する為にちょっと〝強め〟に肩を掴んで引き留めるし、誰かが酒泉君を傷付けたらムカつく酒泉君をやってくれた〝お礼〟をしに行くし

 

噂だけ聞いて酒泉君が良い男だと勘違いした子がいたら〝アレはやめた方がいいよ〟って忠告しに行くし、ちょっと日頃のストレスが溜まってきたら今日みたいに呼び出して愚痴の吐き捨て先にするし

 

 

「酒泉君」

 

「ああ?」

 

「だいきらい!……えへへ」

 

「嫌いな相手に微笑みかけるとか気でも触れたか?」

 

 

私の行動の全てには〝大嫌いな酒泉君〟という大前提がある

 

……自分の本心なんて薄々察してる、でもそれを認めてしまうと今までの様に接する事が出来なくて私達の関係が変わってしまうかもしれない

 

暫くはこうして蓋をしておこう、自分の本心の上に〝大嫌い〟という蓋を

 

だから───これからも末永くよろしくね?大嫌いだいすきな酒泉君

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「どうした?迷っているのならどちらとも選んでくれても……」

 

「い、いや……そうじゃなくて……」

 

 

どこか遠慮がちに〝やっぱやめません?〟と語り掛けてくる酒泉を前に私の心は酷く気落ちした

 

私の贖罪の意は受け止めてもらえないのかと、やはり薄汚い犯罪者からの贈り物など────

 

 

「流石にこんな高い指輪を買ってもらう訳には……錠前さんだって余裕がある訳じゃないでしょう?」

 

「此方の金銭事情を気にする必要は無い、それに私はこの日の為にずっとETOの給料を貯め続けてきたんだ」

 

 

そう、酒泉に指輪を渡す為に私は────

 

 

「……ていうか、なんで指輪なんですか?」

 

「……?男女の契りを交わす時は指輪を渡すのだろう?その程度の常識なら私でも知っているさ」

 

「ああー……」

 

 

嘗て私が酒泉と交わした〝お前を守る〟という契り、それを目に見える形にする為に私はこの店に来た

 

これは私なりの贖罪と覚悟の表明だ。無論、この程度で罪滅ぼしになるとも思っていないが

 

 

「錠前さん、それ少し違います。それは男女の契りっていうか誓いっていうか……その、結婚する時の恒例行事みたいなもんです」

 

「血痕……ならば尚更指輪を渡すべきだろう、お前に血を流させてしまったこの私が」

 

「うん、多分盛大に勘違いしてますね」

「む?」

 

「血痕じゃなくて結婚ですよ!男女が婚姻届を出して夫婦になること!その式に時に指輪を通したりするんですよ!」

 

「ああ、その結婚か……」

 

 

長いこと苛烈な環境に身を置いていたせいでどうしても思考が戦いに関する方へと向かってしまう、これでもトリニティに保護されたばかりの時と比べたら大分改善された方なのだが

 

しかしそうか……結婚しなければ指輪は受け取ってもらえないのか……よし、ならば

 

 

「酒泉、結婚しよう」

 

「えっ」

 

「そして式も挙げよう、指輪はその時に渡す。渡した後はそこらの店で売り払ってくれて構わない」

 

「いや、あの」

 

「便宜上〝妻〟という事にはなるが、私の事など大切にする必要は無い。タダで雇える召使いか、肉体労働や性欲処理の為だけの道具として扱ってくれてもいい」

 

「…………あ?」

 

「お前が望むのなら……別れた後、他の────」

 

言葉が出てこない、何故だ

 

酒泉が求めるのなら全てを受け入れる、そのつもりだった

 

こんな薄汚れた手で……こんな戦いの為だけに鍛え上げられた女らしくない身体で酒泉の役に立てるのなら本望だと

 

そう覚悟して伝える事が出来たのに、なぜか────〝他の女と結婚してもいい〟と、それだけ伝える事ができなかった

 

「錠前さん、悪いけど俺はそういうの好きじゃねえんだ……自分の身体を売るような真似はやめろ、もっと自分を大事にしてくれ」

 

「……何故だ、こんな身体には何の価値もない」

 

 

私の身体も、心も、全てはベアトリーチェに育てられたものだ

 

誰かを殺す為に鍛えられ、洗脳され、血で研かれた忌むべき肉体、こんな物を大切にする道理などあるのだろうか

 

否、問わなくても分かる、何かを壊す事しかできない私には存在価値そのものが無いのだと

 

それならばせめて……酒泉、お前の道具としての価値だけでも自分自身で見出ださせてくれ────

 

 

「違う、その肉体はアンタ自身にとっても大切な宝だ」

 

「……私自身にとっても?」

 

「その手は家族を抱き寄せる為、その足は家族と未来を歩む為、その身体は家族を守る為、その口は家族に〝大好き〟を伝える為、それと……いつか本当に結婚したい人と出会えた時にその人と結ばれる為のものだ」

 

「家族の……為……」

 

 

そうだ、私には家族がいる

 

アツコが、ミサキが、ヒヨリが

 

血の繋がりがなくとも、誰にでも堂々と〝私達は家族だ〟と宣言できる、そんな大切な存在が

 

 

「……すまなかった」

 

「分かってくれたならそれでいいです」

 

 

私の提案を一蹴した酒泉は安心したように息を溢した、どうやら私はまた道を間違えてしまうところだったらしい

 

檻に捕らわれていた時から何も成長できていない、他者に迷惑を掛けず生きていけないなんて

 

 

「……お前には教えられてばかりだな」

 

「はい?」

 

「アリウス自治区で助けられただけでなく、アリウスの外ですら手を煩わせてしまうとは……あまりの不甲斐なさに涙すら出てきそうになる」

 

「別に教えられてばっかでもいいと思いますけどね、俺が誰かに教えてる事だって大半は先輩や先生からの受け売りですし……俺達人間はそうやって誰かの助けを得て生きてきたんですから、今更その生き方を変える必要も無いでしょう」

 

 

……相も変わらずフォローの上手い男だ

 

それが心の底からの言葉か、それともその場の空気を収める為の言葉かは分からない

 

確かなのは、酒泉の言葉は私に安心感を与えてくれるという事実だけだ

 

 

「……お前は」

 

「?」

 

「お前は、どうしてそんなに優しいんだ」

 

 

ふと、溢してしまった一言

 

それをまた一蹴する様に酒泉は鼻で笑った

 

 

「優しい、ねぇ……はっ、本当に優しい奴はアリウスの事情を知っていながら〝アリウスを潰す〟なんて言ったりしませんよ」

 

「だが、結局は助けてくれただろう」

 

「あれは……俺の目的もあったし……」

 

「私達を庇ってまでか?」

 

 

そうだ、常人なら私達を守ったりなんかしない

 

私達は────

 

 

 

「────私は、お前を殺そうとしたんだぞ」

 

 

 

震える声でそう呟くと、酒泉は僅かに目を細めた

 

あの作戦のターゲットである先生や空崎ヒナを始末する為に進軍していた私達、そこに立ちはだかったのはたった一人の少年だった

 

大切な人達を守ろうと何度も立ち上がる酒泉に対し、私は感情を引き金に乗せて何度も鉛弾を食らわせた

 

そんな人殺しを、救う価値の無い屑を、酒泉は守ってくれた

 

酒泉に命を救われたあの日を忘れたことなど一度もなく、その度に救われた理由を考えていた

 

敵である自分を助けた理由を考えていれば自ずと敵対していた頃の記憶が思い起こされ、敵対していた頃の記憶が思い起こされれば自ずと己が酒泉を殺そうとしている場面が浮かんでくる

 

そうしてまたこんな人殺しを救ってくれた理由を求めようとし、再びあの場面が浮かんでは自己嫌悪に陥る

 

そんな日々に終止符を打つべく、私は直接酒泉に訊ねた

 

 

「んー……まあ、身体が勝手に動いてた的な?」

 

「……っ、私は真面目に────」

 

「真面目だよ、真面目に考えてそれ以外の理由が見つからなかったんだ」

 

「なっ……馬鹿な!私がお前に何をしたのか忘れた訳じゃないだろう!?」

 

「ちゃんと覚えてるよ、その上で言わせてもらうけど……もういいんじゃないか?」

 

 

その口から出された答えを冗談だと感じた私は無意識に声を荒げてしまったが、酒泉はそれを気にも留めず落ち着いた声色で宥めてきた

 

何に対しての〝もういい〟なのか、それを訊ねる前に酒泉が語り始めた

 

 

「錠前さん、確かに俺はアンタらアリウススクワッドが先生や空崎さんを……俺の大切な人達を狙った事に関しちゃ未だに許し切れていない。今でもムカついてるし言いたい文句だって山程ある」

 

「……当然、だな」

 

「それに、もしアリウススクワッドが俺の仲間を手に掛けていたら俺は……アンタの家族を全員殺すまで止まれなかったかもしれない」

 

「…………っ」

 

 

その怒りは正当なものだ

 

結果的に酒泉に止められはしたが、私が酒泉の大切な人達を傷付けようとしたのは事実なのだから

 

終わりよければ、などという話ではない。これは私が一生背負わなければならない────

 

 

「でも、そうはならなかった」

 

「……え?」

 

「俺の仲間は全員守れたし大怪我したのも俺だけ、錠前さんが誰かを殺す事はなかったし俺が復讐する事も空崎さんがあのまま誰かを殺すまで暴走し続ける事もなかった……だからこの話はこれでおしまいだ、最悪のifばっか考えてもしょうがないだろ?」

 

「……」

 

「それに先生達を狙った事を許すかどうかも本人達が決める事だしな。まあ、先生は当然の様に許してくれそうだし空崎さんも……自分が狙われた事に関してはあんま気にしてないと思うけどな」

 

 

だから、と続けられた言葉

 

あの日正面から向けられた怒りの形相とは反対に、今の酒泉は柔らかく笑っていた

 

 

 

「錠前さんもさぁ、もう自分を許していいんじゃねえの?」

 

 

……駄目だ、この言葉には抗えない

 

どれだけ己を罰したくても、どれだけ罪を償いたくても、お前のその言葉を聞いてしまうだけで幸せになりたくなってしまう

 

 

「少なくとも俺に対するあれこれとかはもう考えなくていいからさ、その代わりいつかアリウススクワッドの皆で謝りにいこうぜ?トリニティにゲヘナ、それに先生と……とにかく傷付けようとした人達に!やっぱ言葉にするのって大事だからさ」

 

「……お前は、馬鹿だ」

 

「……うぇっ!?急に罵られた!?」

 

「そこに自分を入れないで……どうする……!」

 

「そ、それは……ん?」

 

 

私達はまず一番にお前に謝罪するべきだろうに、お前はそうやって自分を疎かにして

 

そんな、太陽の様な男を、私は、わたしは、このてで、ころそうと

 

なのに、それをゆるされてしまうと、わたしはこれ以上じぶんを、せめられなくなってしまう

 

 

「錠前さん……泣い、て───っ?」

 

「すまない、すこしかりる」

 

 

返事が来る前から酒泉の胸元に顔を埋める

 

勝手に身体を借りられたにも関わらず酒泉は私を拒絶せず、それどころか一瞬の間を開けた後に無言で背中に手を回して頭を撫でてきた

 

嘗て自分を殺しかけた女とここまで密着し、挙げ句両手を自ら塞ぐなんて不用心な男だ……でも、その不用心な身体が今はひたすら心地好い

 

 

「酒泉」

 

「はい」

 

「多分、私はすぐには自分を許せない。これからも償いの為に生きていくし、その過程でまた余計な事をしてしまうかもしれない」

 

「仕方ないっすね」

 

「ああ、だから……その……今日みたいにまた私が道を間違えそうになったらその度に教えてほしい」

 

「勿論っすよ、錠前さん達が〝外〟に慣れるまではどこまでも付き合いますよ」

 

「……ありがとう」

 

 

酒泉は子供をあやすように背を軽く叩きながら頷いてくれた……だというのに、その言葉に私はどこか寂しさを感じてしまった

 

私達の繋がりはその〝慣れるまで〟の間だけなのか、それが終わってしまえば酒泉の中での私の存在が薄くなってしまうのではないか

 

もしそうなれば、私と酒泉の繋がりを証明するものは────この暖かい身体につけられた、数多の傷痕だけになってしまう

 

同時に、その唯一無二の繋がりに私はとても言葉にできない感情を抱いていた

 

一生消えることのない私の罪の証は、一生消えることのない酒泉との繋がりでもある

 

忌むべき過去、償うべき罪、そんな傷痕の筈なのに何故か歓喜にも似た情を抱いてしまっている自分自身を酷く恥じた

 

 

「それより錠前さん!俺、どうせ奢ってもらえるなら食い物にしてほしいんすけど!輪になってるもん貰えんなら指輪よりドーナッツの方が嬉しいし、どうせ通すなら指より舌に通したいんすよ!」

 

「ああ、分かった。お前がそれでいいなら……でも、その前に一ついいか?」

 

「はい?なんです?」

 

「今度、お前の裸を見せてほしいんだ」

 

「あーはいはい裸ね!全然構わな…………ん?」

 

 

そうだ、私は向き合わなければならない

 

私の手で傷付けた酒泉の身体と……過去の私自身と

 

ずっと憎んでいた、もし過去の私に会えるのならば酒泉に銃口を向けている自分をすぐにでも殺してやりたいと

 

だが、酒泉はそんな私すら許すと言ってくれた。なら……私自身も、私を許す為に向き合わなければ

 

 

「あ、あの……錠前さん?一体何を仰っているのでしょうか……?」

 

「無論、すぐにとは言わない。都合の空いている日で構わない」

 

「いや、そうじゃなくてね?そもそもそういうお願いは親しいを越えたより密接な間柄の男女じゃないと……」

 

 

より密接……なるほど

 

 

「やはり結婚するか」

 

「この子将来大丈夫かな……」

 

 

 

 

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「いやー改めて見ても……やっぱ真っ当にセンス良いっすね!」

 

「……そう?」

 

 

トキとエイミ用の新装備を見て目を輝かせている酒泉、そんな彼を前に笑みが溢れる

 

一人の男の笑顔を見れただけで胸が温かくなる感覚を覚えてしまう、そんな私を昔の自分が見たらなんて言うのか

 

理解できない?そんな感情は不要?一個人に拘るなんて合理的じゃない?……何れにせよ、つまらない答えを出していたでしょうね

 

 

「んで、その装備にさっき取ったデータをぶっ込むんです?」

 

「ええ……協力感謝するわ」

 

「いえいえ、お役に立てたのなら」

 

 

酒泉に手伝ってもらったのは各武装の性能テスト、特に狙撃に関して彼の右に出る者はいない

 

つまりこれは私の私利私欲一切関係の無い合理的な判断、ケッシテ彼に会うためだけにミレニアムに呼んだ訳ではない

 

……決してないわ

 

 

「他にもテストする物ってあります?」

 

「特には無いけど……酒泉、この後時間はある?」

 

「はい、今日は完全フリーなんで」

 

「そう、それなら丁度良かったわ。実は貰い物のバウムクーヘンがあるのだけれど……よかったら一緒にどう?」

 

「なっ……こ、これは!?あの有名スイーツ店〝うましょー〟のバウムクーヘン!?」

 

 

バウムクーヘンの包装を見た酒泉は私の期待通り……いえ、期待以上のリアクションをしてくれた

 

先々週辺りも武装の性能チェックをしに来てもらった事があったけど、その日の休憩中に偶々テレビのCMで流れていたこのお菓子を酒泉は食い入る様に見つめていた

 

だから試しに取り寄せてみたけど……正解だったようね

 

 

「あ、あまりの美味しさに中毒になる人が続出すると言われているこの光菓子を俺に!?ほ、本当にいいんですか!?」

 

「勿論よ、色々と手伝わせてしまったもの」

 

「あ……ありがとうございます!!」

 

「今持ってくるから少し待っていてちょうだい」

 

 

大袈裟にはしゃぐ酒泉を前にし、自分の足取りが自然と軽くなっていくのを感じた

 

コーヒーを淹れている最中も、取り分けた菓子を運んでいる最中も、彼の一喜一憂とその動作一つ一つに反応する様に私の目は惹かれてしまっている

 

……それも仕方のない事、だって彼は────私の理解者なのだから

 

 

「んん?このコーヒー……程好い苦さですね」

 

「そう?」

 

「はい!このバウムクーヘンに合います!」

 

 

事前にバウムクーヘンを試食しておき、その味に合うコーヒーの厳選や糖度の調整を行う……私の後輩の言葉を借りるなら〝計算通り、完璧〟と言ったところかしら

 

彼の好みに関して正解を引き当てる度に心が満たされていくのも無理はない、だってそれは私が折川酒泉という存在の事を誰よりも〝理解〟している証拠なのだから

 

 

『俺が天童さんを破壊します』

 

『ゲヘナ学園を退学して、全ての組織の生徒や先生との繋がりを完全に絶って、誰の責任でもない完全に俺個人の意思で破壊します』

 

『調月さん、俺は別にあんたに「俺を信じてくれ」なんて言葉を吐くつもりはないです……でも、せめて俺の事を〝共犯者〟にはしてくれませんか?』

 

そう、私は彼の理解者、そして彼は私の理解者

 

私を認めてくれたあの日から、私の計画に理解を示した上で共に手を汚す覚悟を決めてくれたあの日から、その関係はずっと変わらない

 

ゲーム開発部と、C&Cと、先生と……アリスの善性を知る全ての人達と敵対するというのに、彼はアリスが暴走を抑えられなくなったら自らの手で破壊すると宣言した

 

自分一人で手を汚すつもりだった私にとってその言葉はあまりにも心に突き刺さりすぎた

 

無論、今はもう違う考えを持っているけれど。アリスとケイを殺すつもりはないし殺したいとも思わない、あの日の計画が失敗して心の底からよかったと思っている

 

もしこれから先あの二人に降り掛かる脅威があるのならば全力でそれを食い止めるつもりだし、他にも迷惑を掛けてしまった人達への贖罪だって忘れはしない

 

……そして、こんな私についてきてくれたトキへの感謝と、改めてトキと向き合わせてくれた酒泉への感謝も

 

 

「……調月さん、ひょっとして疲れてます?」

 

「……え?」

 

「いや、なんか心ここに在らずって感じだったから……それに目元にもうっっっっすらと隈みたいのが」

 

「……よく気付いたわね」

 

 

酒泉に声を掛けられ、漸く記憶の世界から現実へと回帰する

 

呆けていたのは考え事をしていたからだけど〝疲れている〟というのも間違いではなかった

 

……あの凍土で感知したのは僅かな〝兆し〟だけで実際に何かしらの大事件が起きた訳ではない、それだけでも戦力を強化する必要があると判断する程には危険すぎる〝兆し〟だった

 

だから最近はこれから起きるかもしれない戦いに備え、寝る間も惜しんで装備開発に勤しんでいたのだけれど……その結果、顔をジロジロと観察でもされない限りは気付かれる事のない程度の薄い隈が出来てしまった

 

酒泉とそんな顔で会う訳にはいかないと思って多少の化粧を施して隠そうとしたけど……どうやら彼の〝眼〟の前では意味が無かったようね

 

……気付いていたのなら化粧に対する感想も言ってほしかったわね、彼の事だから心配の方が勝っただけでしょうけど

 

 

「心配無いわ、一日休めばすぐ回復する程度の疲労よ」

 

「本当ですかぁ?調月さん、繊細な癖に一人で抱え込みやすいからなー……」

 

「……貴方には言われたくないわ」

 

「俺ぁ能天気でアホな部分混じってんでそんな繊細じゃないっすよ」

 

 

自虐しながら、貴方はからからと笑う

 

でも私は知っている、本当は心にも体にも傷を負っている事を、誰よりも傷付いている事を

 

事件が起きる度に出来るだけ人が傷付かない最善の道を探り、全てが終わった後で〝もっとマシな道があったかもしれない〟と落ち込む貴方を

 

あの日唯一救えなかったプレナパテスの亡骸を前に酷く悲しそうな目をしていた貴方を、泣きじゃくるもう一人の砂狼シロコの頭を撫でながらバレないようもう片方の手で血が出るほど拳を握りしめていた貴方を───っ?

 

「……しゅ、酒泉?」

 

「知ってますか調月さん、疲労回復には糖分がいいらしいっすよ?」

 

 

あーん、と

 

フォークに刺したバウムクーヘンを口元に向けられて思考が中断される……彼は自分が今何をしているのか理解しているのかしら

 

それともフォークごと差し出すというその行為は間接的な接吻に成り得るという事を理解している上で行っているの?だとすれば……私は女として見られていない事になる

 

 

「そ、そうね……頂くわ……あむっ」

 

「どう?美味しいでしょう?……なんつって、買ってきたの調月さんなんですけどね」

 

 

結局、何も言えず受け取ってしまう私も私だけれど

 

既に一度試食しているというのに味が違うように感じるのはただの錯覚か、それともこのフォークが原因か

 

……彼は私の理解者、それだけは何があろうと変わらない事実。でも……私の女性としての心だけは唯一理解してもらえそうにない

 

 

「しっかし俺だけまんまの意味で美味しい思いさせてもらえるのはなんかなー……調月さん、本当に手伝うことないんですか?何でもやりますよ?俺」

 

「なんでも……」

 

 

……そう……なんでも、ね

 

 

「────……じゃあ、貴方には私の疲労回復に協力してもらおうかしら」

 

「おっ!きたきた!まっかせてくださいよ!……んで、俺はどうすれば?」

 

「まず、ソファーの端まで移動してくれる?」

 

「はいはーい」

 

「ありがとう、そうしたらそのまま座っていてちょうだい、後は自分でできるから」

 

「え?自分でって……何を───」

 

 

ポスン、と

 

後頭部から膝に埋めると、鍛え抜かれた身体の感触がズボン越しに伝わってくる

 

 

「そうね、枕にしては硬すぎるけど……これはこれで悪くないわ」

 

「……あの、調月さん?何をしてらっしゃるんです?」

 

「何って……膝枕だけれど?」

 

 

彼とは向かい合って話をしたいけど……こうして下から覗く顔も新鮮で悪くないわね

 

若干困り顔になっている様にも見えるけど、何でもやると言ったのは貴方自身なんだから今更そんな顔をしないでちょうだい

 

……それにしても、暖かい

 

 

「……貴方の膝は安心するわ」

 

「は、はは……さいですか……(山が……山が近い……!)」

 

「ねえ、暫くこうしていてもいいかしら」

 

「ヴェアッ!?」

 

「…………駄目?」

 

「……ど、どうぞ(下を見るな下を見るな下を見るな下を見るな下を見るな下を見るな下を見るな下を見るな)」

 

「ふふっ……ありがとう」

 

私だけの理解者、今は私だけの特等席

 

私は貴方の前でだけ弱さをさらけ出し、こうしてもたれかかれる

 

だから貴方も偶にでいいから────私にもたれかかって

 

 

「……酒泉」

 

「は、はい……」

 

「……頭も撫でてもらっていい?」

 

「り、了解しました……」

 

「そう……そんな……ふうに……」

 

「あの……ところでこれはいつまで───え?つ、調月さん?」

 

「じょうず……よ……」

 

「ね……眠っちまった……」

 

 

ほん…とうに…………あたたか──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「酒泉、他の風紀委員から聞いた……市民を庇ったんだって」

 

 

救急医学部室のベッドの上、仰向けで眠っている酒泉に話しかけるも返事は来ず

 

意識不明の重体って訳じゃない、本当にただ眠っているだけ……の筈なんだけど、それでも私は不安になってしまう

 

だって、こうして目を閉じながら生死の狭間を彷徨う酒泉を何度も見てきたから

 

 

「……本当に大丈夫なんだよね」

 

 

不良グループとの戦闘中、彼女等の投げた手榴弾の爆発によって硝子の破片が市民の顔に向かっていった

 

キヴォトスで暮らしている人達の身体は基本的に誰も彼も酒泉より頑丈だけど、破片が目の角膜を傷付けてしまう可能性も考えて酒泉はその人を庇ったらしい

 

結果的にその破片は咄嗟に顔を逸らした酒泉の頬を傷付けるだけで済んだけど……もしこれが目に刺さっていたらと、想像するだけで背筋が凍りつく

 

……因みにその不良グループは本気で怒った酒泉によって瞬殺されたらしい、多分酒泉は自分が傷付けられた事より市民を巻き込んだ事に対して怒ってたと思う

 

 

「……やっぱり簡単には治らないね」

 

 

その、誰にでも献身的な性格は

 

今、こうして酒泉が眠っているのは私がそうするように命令したから、それが無ければ今すぐ仕事に戻っていただろう

 

……自分の不幸より他人の不幸を本気で悲しめてしまえるこの子はちょっと目を離すだけですぐ怪我を負って帰ってきてしまう、彼の怪我の原因は大半が誰かに降り掛かった不幸と戦った結果だったりする

 

自分の身を呈してでも誰かを守る……成る程、確かに人間としては立派な行為なのだろう

 

 

(────でも、私はそんな事を望んではいない)

 

 

優しさのせいで誰かを守りに行ってしまうなら、それで死にかけるような怪我を負ってしまうのなら、私は酒泉に優しさなんて捨ててほしい

 

赤の他人なんて放っておいていいから、誰も救わなくていいから、私は酒泉に生きていてほしい……でも、貴方はそんな私の願いを踏みにじるかの様にいつも勝手に居なくなる

 

だから私は貴方を閉じ込めようとした

 

誰も助けに行かせない為に、誰にも傷付けさせない為に

 

もし外に出たとしても────手足の骨を全て折ってでも連れて帰ると

 

 

「……そう、覚悟するつもりだったんだけど」

多分、酒泉は手足を折られてでも戦おうとするだろう

 

それに閉じ込めておいてもちょっと目を離しただけでいつの間にか居なくなってそうな危うさもある

 

だから私は────酒泉の隣で戦うことにした

 

酒泉を守るのではなく酒泉と一緒に戦う、酒泉の前に立つのではなく酒泉の隣に立つ

 

酒泉が誰にも負けないくらい強くなるまで支え続ける、それが私の新たな決意

 

 

「……そう、ずっと」

 

 

ずっと、ずっと支え続ける

 

酒泉がこれからも私を支えてくれると約束してくれたように、私もずっと酒泉を支え続ける

 

卒業した後も、大人になっても、死ぬまで、死んだ後も

 

 

「もう二度と……あんな姿は見たくないから」

 

 

穏やかな顔で眠っている酒泉のワイシャツを少しだけ捲り、身体の腹部辺りだけ露にさせる

 

 

「……っ」

 

 

酒泉はあまりこれを見せたがらない、でも私はこれを見続けなければならない

 

キヴォトスの現代医療技術でも完全には治しきれなかった数多の傷痕、この傷の数だけ酒泉を守れなかったという不甲斐なさが私の心を突き刺す

 

そっと腹を撫でれば細かい切り傷や弾創の痕が手のひらをざらつかせ、その度に酒泉はくすぐったそうな反応を見せる

 

……前だけじゃない、背にも似たような傷痕が沢山残っている

 

大半が誰かの為に戦った事で付けられた傷ばかり、そして……その〝誰か〟の中には私自身も含まれている

 

調印式の日、アリウスを私に近付けさせない為に一人で立ち向かった酒泉

 

私達が到着した時、彼は既に大量の血の中心で倒れ伏していた

 

あの血は私のせいで流れた血であり────私の為に流してくれた血でもある

 

なら、それに応えないと

 

 

「……ごめんね、こんな私で」

 

 

私の為に血を流したという事実に、悲しみや怒りだけでなく喜びまで感じてしまう私で

 

その代わり、私も貴方の為に血を流すから

 

だから、二人で支え合っていこう。二人で血を流して、二人の血をどろどろに混ぜ合って、私の血を全て酒泉の身体に与えて、酒泉の血を全て私の身体が貰って

 

やがて互いの身体を流れる血が入れ替わっても、互いの生き血しか身体が受け付けなくなっても

 

 

「愛してる」

 

 

起こさないよう、そっと囁きながら首に近付ける

 

歯を立てて血を吸うべく近付けた口で、私は────

 

 

「……んっ」

 

 

────顔を少しだけ逸らし、頬にキスをした

 

……危ない、あと少し正気に戻るのが遅れていたら酒泉を傷付けていた

 

最悪血を吸うどころかその肉に噛みついていた可能性もあったかもしれない

 

勝手にキスをするのとどうかとは思うけど、少なくとも口同士ではないのでこれくらいは許してほしい

 

……この鈍感さんには散々我慢させられてるんだし、ちょっとくらいご褒美を貰ったってバチは当たらないと思う

 

 

「でも、いつかは貴方と向かい合って想いを伝えたい」

 

 

眠っている貴方にこんな事を言っても意味は無い、これは私が私自身と交わした勝手な約束

 

早速〝いつか〟と言ってしまったけど、もし私が〝いつか〟という言葉を使わないくらい強くなれたのならその時は真っ先に貴方の元まで駆け寄って想いを伝えるから

 

 

「……だから、今はこれだけで我慢するね」

 

 

靴と靴下、それと上着と共に風紀委員長という肩書きも脱ぎ捨ててベッドに上がる

 

酒泉が入っていたお陰で既に毛布の中がぽかぽかしており、少し被さっただけでこのまま夜まで眠ってしまいたくなる様な睡魔に襲われた

 

 

「隣、失礼するね────ぴゃっ」

 

「んー……」

 

「か、かおっ……ちかっ……!」

 

 

そのまま毛布に潜り込み、酒泉におやすみなさいを言おうとした矢先に突如酒泉が寝返りを打って此方を向いてきた

 

そのせいで驚きと一緒に変な悲鳴が出てきてしまったけど、幸いにもそれをを聞いて酒泉が起きる事はなかった

 

 

「……すぅ……はぁ」

 

 

あと数センチ此方から寄るだけでキスになってしまう距離

 

顔が熱い、心音が煩い、汗も滲み出てきた、そんな状態から脱却するべく私は深呼吸を繰り返した

 

 

「……よし」

 

 

数度の深呼吸によって漸く落ち着いた体と心、これでやっと────貴方に抱きつくことができる

 

片方の手をベッドと酒泉の身体の隙間に通し、もう片方の手を酒泉の背中に回す。すると折角落ち着いたばかりの心音が再び大きくなり始めた

 

……でも、さっきとは違ってトクントクンという落ち着いた心音に留まっている、これなら眠っている酒泉に密着しても私の鼓動で起こしてしまう事はない

 

 

「……おやすみなさい、酒泉」

 

 

さっきは言えなかった言葉を今度こそ溢し、私は身を預けるように酒泉の胸元に顔を埋めた

 

すると眠っている筈の酒泉の両手が無意識に私の背に回され、そのまま加減された力でぎゅっと抱き締められた

 

 

「そら…さき……さ……」

 

「……ふふっ」

 

 

彼が今、どんな夢を視ているのかは私には分からない

 

でも、どんな形であれ彼の心の中心に私が存在しているのはとても喜ばしい

 

 

「げへなも……あいどる……いべ……」

 

 

ああ、私も酒泉の夢を視られるといいな

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「だーかーらー!何も知らないって言ってるでしょ!?」

 

「嘘を吐かないでください!ならどうして委員長が貴方と同じベッドで眠っていたんですか!?」

 

「んなもん俺が知りたいっすよ……こっちだって起きたらいつの間にか空崎さんが隣にいたんすから!」

 

「はんっ!どうだか……どうせ私が起こしに来なかったら委員長にいやらしいことするつもりだったんでしょう!?」

 

「ああ!?天雨さんじゃねーんだからそんな事しねえよ!」

 

「はあ!?隣で委員長が眠っているなんてそんなの手を出さない方が失礼でしょう!?」

 

「何なんだよお前ぇ!?だーもう!氷室さん!氷室さんからもこの変態に一言言ってやってください!」

 

「そうですね、一部始終を見ていた私から言う事があれば……酒泉さん、貴方は御自分に向けられている感情の大きさにそろそろ気付いた方が良いかと」

 

「え?この流れで俺がなんか言われんの?」

 

「刺殺体にされた場合の引取人は私の名前にしておいてください、非常に興味がありますので」

 

「ほらぁ!やっぱりヒナ委員長に刺されるようなことやらかしてたんですよ!」

 

「だからしてねえって!氷室さんも物騒な冗談言わないでくれ!」

 

「いえ、冗談などでは……私としては本気でいつか刺されると思っているのですが」

 

「えっ」

 




だらだら書き続けて500話ですってよ奥さん、この小説は一体何目指してるんでしょうかね

そういえば皆さん例の歴代総力戦pv見ました?あれ見て自分の中でイオリ×ミカが目覚めかけてるんですけど、それに嫉妬したイチカや半分本気半分悪ふざけで参戦したカスミもイオリを取り合ってくれたら嬉しいんですけど

よくわかんねえからミカイチカカスミでイオリん囲むべ
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