※この話はブルーアーカイブ最新話のネタバレを一部含んでいます
「状況は」
「変わりなく」
「ならば良い」
天に浮かぶ祭壇、そこに立つ〝神〟を前に少年は真っ暗な眼で答える
このやり取りを行うのも何回目か、少年が神に仕えて始めの頃は報告にも変化があった筈なのに
〝鋼鉄大陸の侵食を食い止めようとする勢力が出現しました〟
〝侵食率に異変あり、直ちに修正が必要です〟
〝……鋼鉄大陸、侵食率が安定しました〟
〝侵食率異常無し〟
〝侵食率異常無し〟
〝侵食率……異常、無し〟
侵食が進むにつれて敵対勢力の反応は小さくなっていき、やがて報告にも変化がなくなった
それが意味するのは即ち〝侵食完了〟……つまりは神が世界を支配した事だった
無論、今も鋼鉄に染まった地を解放しようとする者達は存在する。だが、それらの反抗勢力をキヴォトス全域を監視している神が見逃す筈もなく
殺しはしない、しかしその者達には死すら生温い苦痛を与える────まるで天罰かの如く
「優れたその〝眼〟に焼き付け続けろ───神に歯向かう者達がどの様な末路を迎えるかを」
天罰が下る度に、少年にも同じく罰が下された
自分の守りたかった世界が鋼鉄に支配される様を、守りたかった人達が傷付いていく様を、手を差し伸べる事も許されずただ延々と監視し続ける
それこそが少年への罰であり、そして───
「汝も憐れだ、〝あれ〟の愚かな選択に巻き込まれた末がこれとは」
────同時に、預言者へと至る事を拒んだ愚かな人間への罰でもあった
差し伸べた手を振り払った愚か者、その教え子が手足をもがれ、生命を無理矢理維持された状態で鋼鉄に染まる世界をひたすら見続ける
それこそが最も愚かな人間を苦しめられる罰だと、神は頭を下げてでも教え子を守ろうとするその姿を見て一瞬で理解した
『折川酒泉、汝に最後の糸を垂らしてやろう』
自らの下に降れば、この場の全ての命を保証すると
子供や大人だけではない、神の器も、その器を慕う用済み共も
汝の選択で全てを救える────その大人の過ちを汝の身一つで償えると
こうして神は救いの手を拒んだ愚かな人間の目の前で教え子の少年の四肢を奪い、無様に伏す事しかできない力無き者達を置いて少年を連れ帰った
しかし少年の心は不思議と安堵に包まれていた、何故なら自分の身一つで大切な人達を守れたのだから
だから何も問題ないと、明日も母校で待っている仲間達の顔を必死に脳裏から消しながら
瞳の端が濡れている事に気付かないフリをしながら
『待ちなさい!その汚い手で彼に……っ、連れていくな!返してください!返せ!返せええええええええッ!!!』
背後で王女の鍵が叫ぶのを聞こえないフリをしながら
皆を助けられたのだから自分は幸せだと、涙が流れそうなのは切断された手足が痛いからだと、必死に自分自身を騙し続けた
────自分の心が壊れるまで、ずっと
「折川酒泉、汝は〝罰〟そのものだ。汝が生きている限り、あの嚮導者は己の犯した罪を忘れる事はないだろう……故に、己の意思で死ぬ事は許されない」
「……」
「不服か?」
「いえ、貴方の言う通りです。神の支配の下で生きる事こそが人類にとって唯一の幸福、今頃彼等もその事実を噛み締めている事でしょう」
もはや眼に光は宿っていない、声に生気は宿っていない
『待ってください!行かないで!お願いです!戻ってきてください!私とアリスを置いていかないで!』
どうせ解放されたところで生命は維持できない、そもそも生命を維持できたところでこんな身体では生きる気力も湧いてこない
『う……ぅあ……ちく、しょう……ちくしょう!ちくしょうちくしょうちくしょう!ちくしょうッ!!!』
それでも、記憶の片隅に残っている叫びを思い起こす瞬間だけは
唯一、彼の眼に光を灯す
即興で書いたからかなり短めだし色々とガバガバです、ゆるして♡