〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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前後編別れます


ヒナちゃそVSクソボケ!最強の風紀委員決戦!(半ギレ)

 

 

 

 

ヒナを中心に円を描くように走りながら鉛弾の雨を回避する酒泉

 

その間にもスナイパーライフルのリロードを済ませており、高機動戦闘中でも一切のブレなくヒナの手の甲を狙い撃つ────が、ヒナはその一発を予想していたかの様に右の羽であっさりと弾き返す

 

 

(そう来ると思ってましたよ────空崎さん)

 

 

その防御を終えるよりも先に酒泉は既に右側から距離を詰めており、がら空きとなったヒナの懐目掛けて一直線に駆け出した

 

しかしヒナはその程度の攻勢に動じる事もなく冷静に迎撃しようとしたところで、自身の愛銃・デストロイヤーからカチリと空回る様な音が聞こえた

 

その弾切れは偶然───ではなく、酒泉の狙い通り

 

 

「……道理でね」

 

 

ヒナは戦闘開始時からずっと酒泉から向けられる視線に違和感を覚えていた

 

それは正面からヒナを見ている様で、しかし別の何かに集中している様な妙な感覚だった

 

 

(私の行動パターンだけじゃない、酒泉は────私の銃のリロードタイミングまで窺っていた)

 

 

弾切れのタイミングで突撃する事で銃での迎撃を不可能にし、更には事前に羽を防御に使わせる事で完全に前方をフリーな状態にする

 

そして御得意の近距離戦闘に持ち込ませる……成る程、全ては彼の計画通りという訳か

 

 

「────まあ、関係無いけど」

 

 

酒泉が右腕のスナイパーライフルをヒナに向かって投げ捨て、同時に左手のアサルトライフルで連射を行おうとする

 

しかしヒナは自ら酒泉に接近する事で不意を突き、発砲前の銃口をその手で掴んで無理矢理逸らした

 

そして流れるように片手で愛銃を逆さにし、レバー部を踏んで雑にリロードを行おうとし────それを咎める様に、酒泉が足払いでデストロイヤーを横に倒した

 

 

「足癖が悪いのは感心しませんよ」

 

「それはお互い様でしょう?」

 

「確かに───ねっ!」

 

 

片手で銃の反動に耐えられる程の腕力、それでも握られた銃口の主導権を取り返すのは不可能だと察した酒泉は自身の手を離してそのまま握り拳を作る

 

そのままヒナに拳を振り下ろす……と見せかけて自らの制服に手を指を掛け、ボタンが幾つか千切れる程の力で強引に脱ぎ捨てた

 

次の瞬間、制服の中に入っていた何かが〝ピンッ〟と外れる音が鳴り、同時に紫色のスモークがその場に炊き上がる

 

 

「目眩まし……成る程、確かにこれなら私の視界を封じられるし、それに酒泉の視力ならこの程度関係ないもんね」

 

 

それに、煙の中から脱出したところを一発当てられるかもしれない

 

もしこれが通常の戦闘ならばその程度ダメージにもならないが、しかし今回は〝条件〟が違った

 

 

「でも────気配がダダ漏れよ」

 

 

それどころか、駆け寄ってくる足音も、息遣いも、全てが丸聞こえ

 

ヒナは紫の煙の中から伸びてくる手を冷静に避け、そのまま腕を掴んで一気に背負い投げまで繋げる

 

煙から引き摺り出されたのは予想するまでもなく折川酒泉、これは二人だけの戦いなのだから当然の話だ

 

 

「っ……かはっ……」

「酒泉らしくなかったね、あんなにあっさりと捕まるなんて……勝負を焦りすぎた?」

 

「かも、知れませんね……互いに」

 

「……?何を───」

 

 

次の瞬間、コツンとヒナの頭に何かが直撃した

 

その何かはヒナの頭から地面に転げ落ちた瞬間、ヒナは既視感を覚えるてから一秒も満たぬ間にその正体に気付いた

 

(スタングレネード……煙に紛れていつの間に上空に?)

 

 

それは風紀委員が実戦で使用するスタングレネード、酒泉が元々持っていた物かそれとも備品庫から勝手に持ち出した物なのかは分からないが、それを食らえば間違いなく行動を制限されるのは確かだった

 

 

「……こんな物で私を騙せると思ったの?」

 

 

だというのに、ヒナはスタングレネードを一瞥するのみ

 

彼女は回避行動を取る事もせずただ酒泉を見下ろすばかりだった

 

 

「酒泉の一番の武器はその眼、それを自ら捨てる様な相性の悪い武器を使う筈がない……空弾でしょ?それ」

 

「は、はは……マジかよ……」

 

 

目を閉じたまま渇いた笑いを浮かべる酒泉、やはり予想通りスタングレネードは爆発せず、ヒナは無表情で勝利を宣言しようとし────

 

 

「マジで思った通りだったな」

 

「っ!?」

 

 

────次の瞬間、光が弾けた

 

 

「やっぱこうなると思ったんだ、空崎さんって俺のことなんでも理解してくれるから……空崎さんって俺のことちゃんと見てくれてるから、俺の戦闘中の思考もバレバレだろうなって」

 

 

光をその眼に焼き付けられ、それでも尚跳んで咄嗟に回避行動を取るヒナ

 

しかし酒泉は目を閉じたままにも関わらずヒナの跳んだ方向が見えているかの様に手を伸ばした

 

 

「本当は空崎さんの言った通りブラフ戦法で戦おうと思ったんですよ?でも一人で作戦会議してる時に空崎さんが俺を分かってくれてる事が嬉しくなっちゃって、そしたら〝それだけ大切に思われてるならこの程度の考え見抜いてくるよなぁ〟って」

 

 

酒泉が持つ気配の察知能力は常人の域を軽々と越えており、そこに高性能な予測能力まで掛け合わされる

 

あの身長あの歩幅あの体勢で全力で飛び退いた場合、どこまで下がれるか

 

まずは大まかな現在位置を得意の察知能力で把握し、後はそれらを得意の予測で空崎ヒナの行動パターンと照らし合わせて微調整するだけ

 

それは折川酒泉が空崎ヒナという少女を知り尽くしているからこそ目を閉じたままでも可能な計算だった、仮に目の前の相手が空崎ヒナ以外であればここまで具体的に位置を把握する事はできなかっただろう

 

 

「まあ、ともかく────今回は俺の勝ちってことで」

 

 

ヒナの両腕を掴んだ感触と共に全体重を乗せて押し倒す酒泉

 

漸く瞳を開けた頃にはヒナの驚いた様な顔が視界に広がった

 

 

「……」

 

「てい」

 

「あうっ」

 

 

デコに一発デコピンを入れると酒泉は得意気な表情で笑った

 

 

「俺が模擬戦挑んだ時確かに言いましたよね、〝10回中1回でもまともな一撃を入れられたら酒泉の勝ちでいい〟って……約束、守ってもらいますよ」

 

「……その9回は全部酒泉のボロ負けだったけどね」

 

「お?負け惜しみっすか?」

 

「酒泉」

 

「ごめんなさい」

 

 

〝冗談です〟と呟き、怯え震えながら立ち上がる勝者。しかし一方でヒナは押し倒された体勢からあっさり解放されたというのに若干不服そうな顔をしていた

 

他人から見たらイマイチ悔しがっているかも分からない無に近い表情だが、酒泉の眼はヒナの顔を〝ちょっとだけ悔しそう〟だと判断した

 

これ以上勝敗に触れるともっと分かりやすく拗ねてしまうかもしれない、そう考えた酒泉はどうやって話を切り出せばいいのか悩み始めた……ところでヒナの方から話を振ってきた

 

 

「……それで?私は何をすればいいの?」

 

「え?」

 

「〝え?〟じゃないでしょ?最初に〝この戦いに勝ったら一つだけ頼みを聞いてほしい〟って言ってきたのは酒泉からなのに」

 

「あ、ああ……そうですね……」

 

 

今回はいつもの様に全部員で訓練していた訳ではなく、酒泉の方から一方的に挑戦状を叩きつけた形だった(挑戦状の書き方はトリニティの友人に教わったとか)

 

因みにヒナが全勝していた場合には酒泉が何でも言う事を約束していた為、彼女が拗ねているのはそれが大きかったり

 

 

「そ、その……酒泉のお願いなら他の人には言えない様な事でも可能な限り叶えてあげるけど……」

 

「え?良いんですか?結構自分勝手な頼み事するつもりだったんですけど」

 

「う、うん……なんでも……いい、から」

 

 

妙な色気を振り撒きながらモジモジと訊ねる風紀の長、もしかしたら彼女の敗因の一つには煩悩も混じっているのかもしれない

 

しかしその様子に全く気付く様子のない、キヴォトスでも屈指の節穴という自分の長所と矛盾した瞳を持つ男は真剣な表情でヒナの両肩を掴んだ

 

 

「空崎さん」

 

「ひゃ……ひゃいっ」

 

 

真っ直ぐに向かい合う瞳、縮まる二人の距離、誰もいない演習場で、折川酒泉はその口を開いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明日1日、何もしないで休んでてください」

 

「は、はい!誓いま────え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で!明日を〝ヒナちゃそおやすみDAY〟として認定する!!!」

 

「「「「「「うおおおおおおおおおおっ!!!」」」」」」

 

 

そして現在に至る

 

悲しい事に風紀委員会の仕事というのは万魔殿の介入がなくとも忙しいもので、風紀委員達は連日連勤に追われていた

 

中でも特に空崎ヒナという少女はその善性からか、部下の分の仕事まで肩代わりしてしまう事が多かった

 

勿論部下達もそれを断ろうとしたい……ところだが、これまた厄介な事情があるらしく

 

まず、ゲヘナの治安上風紀委員会に回される仕事は大半が不良の制圧等の力仕事である

 

これがそこらの雑魚相手ならば何も問題はない、ちょっとした実力者集団が相手だろうと頑張れば幹部抜きの風紀委員チームでも制圧できるだろう

 

しかし相手が便利屋や美食研、温泉開発部の生徒だった場合は?

 

彼女等の行動範囲はゲヘナだけでは収まらず、更に無駄に高い戦闘能力も相まって問題児を越えた問題児として風紀委員にお墨付きをいただいていた

 

〝しゃあけど残念ながら委員長や酒泉一人に勝てない雑魚共ですし〟という舐め腐る様な意見もあるが、それは逆を言えばこの二人以外には対処不可能という事でもある

 

この二人以外で唯一対処できる可能性があるのは銀鏡イオリくらいだが、彼女に関してはその猪突癖を直さなければ戦闘開始以前の問題である

 

 

「────今日は私が委員長の代わりだから!二人とも手出し無用だからね!」

 

「イオリ……本当に大丈夫なの?見えてる罠に引っ掛かったりしない?」

 

「あ、当たり前じゃん!私だってそれぐらいの罠は……多分……見抜ける……と思う」

 

「そこで自信を失くしてどうするんですか……委員長、ご心配なく。イオリのサポートは私が完璧にこなしますので」

 

「それに行政官が暴走しても私が止めますので」

 

「は、はい!?どうして私がサポートされる側なんですか!?」

 

 

しかし、それは〝個〟の力だけで事態を解決しようと謀ろうとした場合の話、足りない部分は他の者がサポートすればいい

 

戦闘面ではイオリが、頭脳面はアコが、戦闘前や直後の支援はチナツが

 

三人だけではない、それなりに経験を積んできた風紀委員は他にも大勢居る

 

「……てことでさ!安心して休んできてよ委員長!」

 

「万魔殿のタヌキ共が何か企んでいたとしても我々でなんとかしますから!」

 

「勿論、酒泉君もゆっくり羽を伸ばしてきてくださいね?」

 

「……え?俺も?」

 

「当然ですよ……認めるのは癪ですけど、戦闘面において一番ヒナ委員長に貢献出来ているのは貴方なんですから」

 

「酒泉の仕事は頑固者の委員長を負かすところまで!ここからは私達の仕事だから!」

 

「……イオリ、今度の〝委員長候補教育〟はいつもの二倍やるから」

 

「なんでっ!?」

 

 

全ては空崎ヒナという少女の人徳故に

 

皆で支えるからこそ尊いんだ、絆が深まるんだ────

 

 

「いや、俺はいいよ。それより天雨さん達が休んでくれ、赤字屋68もグルメテロリストも温泉狂も全部一人で対処できるからさ」

 

「「「「「「「「「「「「は?」」」」」」」」」」」」

 

 

 

うぁぁぁ、ク…クソボケが修羅場を練り歩いてる

 

 

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