〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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誕生日遅れてごめんよヒナちゃん!自販機ルートを後回しにして書いた小説を受け取ってくれええええええええええええ!!!

あ、中編です、それとヒナちゃの私服姿は中国版ブルアカの私服ヒナちゃをイメージしてます

あれ考えた人天才でしょ


ヒナちゃそVSクソボケ!最強の風紀委員決戦!(全ギレ)

 

 

 

前回のあらすじ

 

 

『『『犠牲になぁれ!犠牲になぁれ!』』』

 

『や、やめ……なにするぐあああああああっ!!!』

 

〝クソボケ修正棒〟を持った風紀委員達に袋叩きにされた酒泉はすっかり反省の色を示し、明日は1日中身体を休める事を誓って帰宅

 

しかしその日の夜、クソボケのモモトークに一通のメッセージが届いており、その送り主はなんと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その……ど、どう……?」

 

「おお……おお……!」

 

 

私は今、猛烈に感動している!

 

紫のスカートかわいいね!!黄色いトップスかわいいね!黒い長袖インナーかわいいしサイズちょっと大きくて手の部分ダボッとしてるのかわいいね!赤黒白のマフラーかわいいね!

 

その頭の上のピンク縁透明サングラスは何かな!?おでかけ楽しみで掛けてきちゃったのかな!?ポニテ似合ってるねかわいいね!

 

 

「私服崎さん……初めて見る服の私服崎さんだ……!」

 

「……私、感想を聞いてるんだけど」

 

「なんかもう同じ国同じ星同じ次元で暮らしてるのか怪しいってくらいドチャクソのバッチバチにウルトラ可愛いです」

 

「そ、そう?……あ、ありがとう」

 

 

はーマジで可愛い……なんかずっと心臓バクバクしてるもん……

 

一緒に出掛ける約束をした待ち合わせ中、こんな可愛い子に〝おまたせ〟って言われてみい、もう何百年でも待っちゃうもんね

 

しかもなんだ、将来空崎さんとお付き合いする人が居るとしたらその人はデートの度にこんな空崎さんをお目にかかれるんだろ?んなの嫉妬で狂ったあと祝福するわ

 

……は!?いかんいかん、危うく頭の中が〝空崎さんかわいい〟で埋め尽くされるところだった……今日は1日中休めるんだから存分に時間を使って空崎さんかわいい

 

 

「あ、ところで今日は何処に行く予定で……ていうかなんで一緒に出掛ける事になったんでしたっけ?」

 

「酒泉の監視兼休息の為よ、これなら酒泉が勝手に働かないか見張ってられる上に羽だって伸ばせるでしょ?」

 

「羽生えてるの空崎さんだけですけどね!ははは!」

 

「……」

 

「今の俺が悪いんすか?」

 

「そうね、100:0で酒泉の責よ」

 

 

ほんの軽い冗談でもそんな冷えた視線を向けられるなんてどんだけ信用されてないんすか俺は、それとも空崎さんは俺のことを休み方すら知らない可哀想な奴とでも思ってるんです?

 

 

「そういえばずっと気になってたんだけど……今日はどうして制服で来たの?」

 

「それはほら、救援を要請された時とかすぐ駆けつけられる様に……制服なら戦闘で傷付いても問題ありませんからね」

 

「つまり戦うつもりだったってこと?」

 

「と……時と場合によっては……」

 

「ほら、やっぱり……私だけ気合い入れてきたのが馬鹿みたいでしょ、もう……」

 

 

空崎さんのジトッとした粘着性のありそうな視線をぶつけられ、同時に罪悪感を抱いてしまった

 

ち、違うんよ……別に仲間を信頼してないとかそういうのじゃなくて、俺自身の感想としては別に空崎さんほど働いてる自覚はないのに休みなんてもらっちゃっていいのかなーって申し訳なく思ってるだけで……

 

 

「酒泉、今日の私達の仕事は万全の状態まで身体を回復させて明日以降に備える事よ。皆に申し訳ないと思うならその分は明日から返していけばいいの」

 

「はい……しっかり休みます……」

 

 

ムッとした表情の空崎さんに昨日の仕返しの様に額を優しく突かれてしまった、やはりこの人にとっては俺の考え事などお見通しらしい

 

そうだよな……せっかく空崎さんと二人で遊びに来てるんだし、こういう日くらいは素直に楽しまないとな!

 

 

「心配しないで、今日は酒泉が好きそうなスイーツのお店を調べてきたから。憂いを感じる暇なんてないくらい楽しませてあげる」

 

「チョワヨーチョワヨー…ソラサキサンチョワヨー…」

 

「ありがと、式は明日でいい?」

 

「(何の話か分からないけど)ちょわよ!!!」

 

「ふふっ」

 

 

まさかの俺がエスコートされる側だったとは……可愛いのにイケメンとか最強か?この王子様

 

 

 

 

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「へ、平日だってのに人多いっすね」

 

「そうね……」

 

 

スクールバッグ一個分程度には隙間が空いている電車内、せめて空崎さんが座れる場所だけでもないかと思って探してみたが……駄目だ、暫くは無理そうだな

 

にしても普段は使わない路線を使った電車旅ってのは景色が新鮮でいいな、これから未踏の地にスイーツを探しに行く事を考えるともっと心が踊るな

 

 

『おまたせしました~ウゴアツ駅~ウゴアツ駅でございま~す、お降りになる際は足元にご注意くださ~い。また、オマウサ駅までお急ぎのお客様様は二番ホームに参ります特急デカスギ行きをご利用くださ~い』

 

「酒泉、もうちょっと詰めよ。沢山人が入ってくるから」

 

「はい……っとお」

 

 

ただでさえ人が沢山乗っていた車内に更に大勢の乗客が、ジャパニーズ満員電車の洗礼を受けた俺はそのままドア横まで押し込まれ……あれ?

 

扉の硬い感触がしない事に違和感を抱き、背後を確認してみると空崎さんが羽で俺を受け止めてくれていた

 

 

「大丈夫?」

「ありがとうございます……便利ですね、それ」

「そうだね、こうして酒泉が変な人に触られないように守れるし」

「お、俺はそういうの無いんじゃないですかね……どちらかと言えば空崎さんの方が危険な気が」

「私の方こそ大丈夫だと思う……こんな身体だし」

「お、俺は魅力的だと思いますよ?空崎さんの身体」

「……こんな所で変なこと言わないで、変態」

「ひぃん……」

「で、でも……ありがとう」

 

(もげろ……!)

(もげろ……!)

(またキヴォトスの空赤くならんかな)

 

 

『この先~揺れますのでご注意くださ~い』

 

 

確かに今のフォローは変態臭かったなと自己反省しながら気持ちを切り替えて電車の窓に意識を戻す

 

すると人の手があまり掛かっていないような穏やかな緑の景色から、少しずつ人工物らしい灰色が増えてきた

 

うーむ、自分達が技術の発展の恩恵を受けているのは理解しているけど、それでもこうして自然が減っていく様をパラパラ漫画の様に見せられるのは……なんか……心に来るものが────

 

 

「きゃっ……」

 

「うおっ……大丈夫ですか?空崎さん」

 

「う、うん……ありがとう」

 

 

激しい揺れと共に身体が傾く乗客達

 

俺は空崎さんの羽に支えられていたからそこまで影響なかったけど、逆に空崎さんの方がバランスを崩してしまっていたので咄嗟に背中に手を回して抱き寄せた

 

空崎さんってちっこいからこういう満員電車で押し潰されたりしないか心配なんだよな……身体スペック的にノーダメなのは分かってるんだけども

 

 

「ね、ねえ……もう少しくっついててもいい?」

 

「そうですね、目的地までもうちょい掛かりそうですし暫くこうしてましょうか」

 

「……うん」

 

 

俺なんかが空崎さんとひっついても良いのだろうかという恐れ多い気持ちでいっぱいだが、決して邪な気持ちで抱いた訳じゃないしそもそも提案してきたのは空崎さんの方からだ

 

だからこれは仕方ない、身体がベッタリくっついているのも腕の中で縮こまる空崎さんにドキッとしてしまったのも全部仕方ない事なんだ、うん

 

これも全部電車の揺れと人の波から空崎さんを守る為なんだ、俺は悪くねえ!俺は悪くねえ!

 

 

 

 

 

 

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「ん~……マラサダうめぇ……」

 

 

知ってるお菓子、聞いたことだけあるお菓子、全く知らないお菓子、各国色んなお菓子が描かれた看板があちこちに立てられている

 

スイーツバイキングとは違い、大きなホールの中に多くの売店が設置されている形式

 

前世でもラーメンの博物館的なのはあったけどそれのスイーツバージョンがあったなんて、空崎さんはなんて素晴らしい場所を見つけてくれたんだ

 

 

「こんな素敵な場所に連れてきてくれてありがとうございます!空崎さん!」

 

「ううん、喜んでくれたのなら何より……だけど……その……」

 

「どうかしました?何か気になる事でも?」

 

「えっと……それ、本当に一人で全部食べるの?」

 

「……?」

 

 

空崎さんが困惑気味に指差してきたのは俺用のケーキ菓子が入った袋……とバタークッキーが入った袋とアップルパイとチェリーパイが入った袋とマンゴーラッシーが入ったホルダーとカヌレが入った小箱とマリトッツォとフィナンシェとカタラーナとバクラヴァとコンチャと……

 

 

「ええ、全部食べますけど……」

 

「そ、そう……」

 

 

何故か口元を押さえながら顔を青ざめさせる空崎さん、このスイーツ天国を前にしてどうして元気を失くしてしまうのかコレガワカラナイ

 

……あっ!そういう事か!まったく空崎さんってば~、恥ずかしがらずにそれならそうと早く言ってくれたらよかったのに

 

 

「もっと穏やかな食べさせあいっこがしたかったのに……」

 

「空崎さん空崎さん」

 

「……なに?」

 

「はい、あーん」

 

「……え?」

 

「あれ?違うんですか?てっきり空崎さんも食べたかったのかと」

 

「ちっ……違くない!それであってるから!」

 

 

必死に否定したかと思えば差し出したスプーンに飛び付く空崎さん、そんな慌てなくても甘味は逃げたりは……する……なぁ……パンケーキが逃げ出す学園で生活してるもんなぁ

 

 

「どうです?美味しいでしょう?」

 

「う、うん……とっても───@■✕#△■■!?!!?」

 

「俺もこれ食ってみたかったんですよねぇ……空崎さん!ここに連れてきてくれたご恩は絶対に忘れませんから!」

 

(あ、甘い……甘すぎて舌が痛い……これ絶対一口で食べるやつじゃない……!)

 

「んぐ……んー!やっぱうめぇ!想像以上の甘さだぁ!」

 

「し、したひゃ……いひゃい……」

 

「ん?」

 

 

隣を見ると空崎さんが舌を小さくチロッと出したまま喋っていた、猫ちゃんみたいでかあいいね……

 

しかしどうしてこんな真似を……ああ!そういう事ね!

 

 

「おかわりが欲しいならちゃんと言ってくださいよー……はい、もう一個あーん」

 

「ち……ちぎゃくて……」

 

「え?要らないんですか?」

 

「────っ」

 

 

なんだ、じゃあただの勘違いだったのか

 

せっかく空崎さんと好みが合ったと思ったのになぁ……

 

 

(酒泉からの〝あーん〟は嬉しいけど、でもこれ以上はダメージが……でも……でも……!)

 

「要らないならやっぱり俺が────」

 

「────っ、いる!!」

 

 

またもやパクリと食い付いてくる空崎さん、やっぱ好きなんすねぇ────グラブジャムン!

 

 

「───■■✕■△✕✕■△▲!!?!?」

 

「お、シロップ溜まってる!一気に飲んじゃお!……うんめぇー!」

 

 

へー、これが通常のグラムジャムンより三倍甘いキヴォトス限定グラムジャムンのシロップかぁ……なかなかイケんじゃねえか!なあ小松ぅ!

 

でもこれ普通の人が食うにはちょっと甘すぎる気もするな……牛乳と一緒なら程よく食えるか?

 

 

「空崎さん、イチゴチョコミルク飲みます?」

 

「トドメさそうほしへる……?」

 

「え?」

 

 

 

 

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「そ、空崎さ……ひいっ!?も、もう少してかげ……ふおおっ!?

 

「これでも十分手加減してるつもりだけど?」

 

「う、嘘だ……やっぱりさっきのことを根に持って───殺されるぅ!!?」

 

 

今度はゲーセンでエアホッケー対決……の筈だったのに

 

おかしい、どうして円盤が回転ノコギリの如く迫ってきているのだろうか

 

ゴール前で受け止めようとする度にギャイイイイイイン!!!と火花が散るのはもうベイブレードとかそういうホビーアニメの世界観に達しているのではなかろうか

 

そういえば空崎さんのヘイローってベイブレードめっちゃ強そうだよね────ぐああああああっ!?

 

「10対7……私の勝ちね」

 

「なんで受け止めただけで弾き飛ばされるんです……?」

 

「これが風紀委員長の力よ」

 

 

そっかぁ……じゃあ銀鏡さんも将来的にはこれ出来るようにならないといけないのかぁ

 

……まあいけるだろ、銀鏡さんめちゃくちゃ強いし、

 

 

「次はあのパンチングマシーンで発散……遊ぼうかな」

 

「今発散って言いました?やっぱまだ怒ってます?」

 

「違う、あのパンチングマシーンの顔がハッサンに見えただけ」

 

「それはそれで失礼では?」

 

 

一体何が行けなかったんだ、調和剤としてイチゴチョコミルクを渡した事か?それともめっちゃ甘いものをちょっとだけ甘いもので上書きする折川理論を実行しようとモンブランを渡したことか?

 

今となっては全てが謎、真実は闇の中に追放された。俺はただ、あのパンチングマシーン君が壊れないのを祈る事しかできない

 

まあ、対キヴォトス人用に作られたパンチングマシーンを素手で壊せるのなんてゴリ園さんくらいしか《バキャアッッッッ!!!》いな……え?

 

 

「あ、あの……空崎……さん……?」

 

「……店員さん、これは幾らくらい掛かるの?」

 

「ご、ご心配なく……生徒の皆さんが遊びにくる以上これくらいは想定済みですので……はは……ははは……」

 

「……ごめんなさい、万魔殿にツケておいて」

 

 

想定済みならその引き笑いはなんだよ、そんな言葉が出てこないくらいには店員さんへの同情心が勝ってしまった

 

いやまあ、正しい遊び方で遊んでただけなのに〝壊したから弁償しろ〟ってのもおかしな話だけどさ……これに関しては誰も悪くない、うん

 

だから空崎さんを怒らせた俺も悪く……え?お前は悪いだろ?

 

シュセピヲイジメヌンデ…

 

 

 

 

 

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「空崎さんの頭に猫耳付けちゃいますね」

 

「別に構わない、その代わり私は酒泉のほっぺに猫髭付けるから」

 

「なぬっ!?」

 

 

プリクラに入ったからには一度は夢見る〝画面内の空崎さんに猫耳を付ける〟という行為

 

しかし思っていたよりも効果は薄く、そこまで恥ずかしがる事もなく空崎さんは割とあっさり流してしまった

 

……さてはキラキラ部と遊びに行った時似たようなことされたな!?

 

そんな……あの風紀に厳しい空崎さんが聖人陽キャギャルに囲まれてバリバリの現代JKらしい格好に着せ替えられていくなんて……本当にありがとうございます

 

 

「まあ、それはそれとしてやられっぱなしは嫌なんで……今度は空崎さんに犬耳付けて反撃しちゃ「させない」画面の主導権を……奪われた……!?」

 

「犬耳は酒泉につけるから、あとついでに首輪も」

 

「ちょっ……やめ……いたっ」

 

「あとほっぺに追加でハートマークもつけちゃおうかな」

 

「それはあまりにも似合わな……いたっ……本当にやめ……いたっ」

 

「首輪のところには追加で私の電話番号を書いて……」

 

「俺はペットじゃ……いたっ────髪をかきあげながら片手でペチペチするのやめてくれません!?」

 

通称〝ソラサキラッシュ〟により反撃すら許されず完全封殺されてしまった俺は、次々と似合わない装飾をつけられていく画面の向こうの折川酒泉君に謝罪する事しかできなかった

 

そして最終的には猫耳を付けられただけのシンプル可愛い空崎さんと、犬耳やらハートマークやら首輪やら目の加工やら唇の加工やらで化物みたいにされた俺のプリクラが完成していた

 

なんだこの……なんだ?

 

 

 

 

 

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「見て酒泉、アヒルの親子がお散歩してる」

 

「おお、ほんとだ……」

 

 

〝青き清浄なる湖の為に公園〟と書かれた看板、その奥の水辺でアヒルと三羽のヒナがとてとて歩いている

 

公園の名に相応しく、湖がどこまでも透き通った清らかな色をしているのがこれまた美しいアヒル親子の絵を際立たせているというか

 

 

「……平和ですねー」

 

「ゲヘナじゃ考えられないね」

 

 

今頃皆どうしてっかなー……何事も無ければいいけど

 

重傷人とか出てないかな、そんな大事起きたら真っ先に空崎さんに連絡行くだろうしそれはないか

 

上のタヌキ共に何かされてないだろうか、ちょっとでも目を離すとすぐ何か企むからなあいつら

 

問題児共の制圧は出来てるだろうか、特に温泉開発部なんて〝マジシャンか!?〟って突っ込みたくなるぐらい爆弾隠し持ってるからな、牢に穴空けられてないといいけど

 

愛清さんと牛牧さんも大丈夫かな……グルメテロリストに拐われてたりパンケーキに襲われてなきゃいいけど……

 

実力的な意味で一番厄介なのはあいつらだよなぁ……あの万年赤字低賃金労働基準崩壊屋68が腹を空かしてくれてたら戦闘力も落ちるんだけど

 

 

「酒泉、心配なのは分かるけど……今の私達に出来る事はあの子達を信じて今を楽しむ事だけよ」

 

「ですよねぇ……まあ、明日の事は明日考えますかね!」

 

 

明日の事は明日の自分がなんとかしてくれる理論で思考を切り替えた……なんか空崎さんさらっと心読んでなかった?まあ空崎さんならそれくらい楽勝か

 

しっかしこんな羽を伸ばしたのはいつぶりか、最近は仕事に鍛練に仕事に鍛練にと忙しかったからなぁ

 

……まあ、自分で勝手に忙しくしてるだけなんだけど────

 

 

「───あの、空崎さん?」

 

「?」

 

「さっきから何してるんですか……?」

 

 

俺の隣ではなく真後ろを歩き続ける空崎さん、背中にピッチリついてくるその謎行動が気になってつい触れてしまった

 

ちょっと歩幅を狭めれば同じ様に狭め、歩くスピード自体を遅くすれば同じくらいのスピードに落としてくる……一体何がしたいんだ?

 

 

「何って……ヒナの真似」

 

「ヒナ?……あのアヒルの後ろの?」

 

「うん」

 

「……」

 

「……」

 

「……くっ……!」

 

「っ、ふ……!」

 

 

ヒナがヒナの真似をしている、なんじゃそりゃ

 

くっだらねえと思いながらも空崎さんらしからぬ行動に思わず笑いが込み上げてきてしまい、空崎さん自身もそれに釣られるかの様に片手で笑みを抑えた

 

 

「酒泉がまた難しい顔してたから何かしてあげられないかなって」

 

「それが俺を笑わせることだと?……まあ、確かに元気は貰えましたけど」

 

 

元気を貰えたというか気が抜けたというか、どちらにせよ先程よりはリラックスしている状態になれたのだから結果的には空崎さんの作戦通りだと言えるだろう

 

心なしかさっきよりも湖が澄んで見えるし……いや元々綺麗な場所ではあったな

 

 

「酒泉はまだまだ人に頼るのが下手だね」

 

「空崎さんにそれを言われる日が来るとは」

 

「私は誰かさんのお陰で人に甘えるのが上手になったから……こんな風に」

 

 

トン、と空崎さんが身体を預けてきたのでそれを胸元で受け止める

 

こんな小さくて細い身体にゲヘナ最強の力が宿っているというのだから人体というのは不思議なものだ

 

 

「ねえ酒泉、昨日はどうしてあんな事を言ったの?」

 

「あんな事?」

 

「問題児の事を〝一人で対処できる〟って」

「ん?いや、特に深い理由は……」

 

「嘘」

 

 

空崎さんが背伸びをし、胸元から一気に顔をずいっと近づけてきた

こちらが何かを言い切る前に俺の唇に人差し指を当て、そこから先の言葉を強引に止めてきた

 

 

「酒泉、ここ最近ずっと訓練してたでしょ……風紀委員にバレないように隠れて」

 

「まあ、そうでもしないと空崎さんから一本取るなんて不可能でしたからね」

 

「本当にそれだけ?」

 

「……というと?」

 

「本当は他に理由があったんじゃないの?」

 

……困ったな、まさかそこまで見抜かれていたなんて

 

つっても何か疚しい気持ちがあって隠していた訳ではない、ただ誰にも聞かれなかったから教えなかっただけだ

 

 

「癖っていうのはそう簡単には治らないけど……それにしても酒泉は引き摺りすぎよ」

 

「……ん?」

 

「今の酒泉を見ていると自己犠牲精神の塊だった頃を思い出すの……そんなに私達は頼りない?」

 

「ちょいちょい、ストップ。空崎さん一つ勘違いしてますよ」

 

「……勘違い?」

 

「俺が周りを頼らないのは自己犠牲とかそういうのじゃなくて……あれです、修行の一環です」

 

 

空崎さんが俺を理解してくれてるとはいっても、流石に細かい部分までは当てられなかったようで

 

修行と言っても少年漫画的な劇的なパワーアップを目指している訳ではなく、あくまで無理じゃない範囲での腕試しがしたかっただけだ

 

それに俺が一人で問題児を抑えればその分部員の被害も減るし空いた人員を他の仕事に割けるし、風紀委員会全体にとっても悪い話じゃないだろう

 

最近だと戦況のコントロールも出来るようになってきた、ある程度手を抜いて敵の逃げ先を誘導すれば建物被害だって抑えられる

 

 

「なんて説明すればいいのやら、言語化ムズいな……その、例えばありえんくらいめちゃくちゃ強い敵が居たとするじゃないですか」

 

「急に語彙力下がった……」

 

「その強大な敵を倒す為に仲間と力を合わせて絆の力で撃破!……っていうのは勿論素敵な事だとは思うんです。でも、もしそれが通用しない敵が現れたとしたら?」

 

 

仲間を頼る前提の戦い方というのは仲間を失えば当然の様に瓦解する

 

絆や友情というものは尊いものだと分かってはいるが、それにばかり拘って個の力を疎かにするのは……なんか、違う気がする

 

 

「チームワークが大切なのは重々承知してます。でも、いざ全てが砕かれたその時、最後の最後には結局自分個人の力しか頼れないじゃないですか」

 

「だから、時には仲間を頼らず自分だけの力で物事を成し遂げようとする選択も大事なんじゃないかなって……」

 

 

俺は以前、空崎さんに叱責されて周りを頼る事の大切さを学んだ

 

その考え方が間違っているとは思わないし今でも大事にしていきたいと思っている、仲間を信じるのは悪いことではないのだから

 

……ただ、積み重ねてきた信頼を敵の強さがあっさり越えてくる事だってある

 

絆や友情を糧に必死に抗ってもどうしようもない実力差、そんな絶望的な状況に押し潰されない為にもまずは……

 

 

「レベルが何百もある格上相手に仲間が誰も欠けず勝利する……そんな理想を叶える為に、現実問題自分自身が誰よりも強くならなきゃいけないんです」

 

 

……まあ、色々ごちゃごちゃと話したけど要するに〝友情パワーじゃどうにもならなくなった時に備えて最低限抵抗できる力は身に付けておこうな!〟って事だ

 

絆の力で無限に強くなれる───程度の希望では安心し切れない程に、このキヴォトスという世界には滅びが溢れているのだから

 

「そう……でも、一年生の内からそんなに力を求めるなんて焦りすぎだと思うけど……酒泉以外の人が強くなるじゃ駄目なの?」

 

 

それこそ私達とか、そう続ける空崎さん

 

その通りだ、仮にキヴォトスに特大の危機が降り注いだとしても俺以外に強い人がいればその人が解決すればいいだけの話だ

 

……でも

 

 

(───焦りすぎなんて事はない、失ってからじゃ遅いんだ)

 

 

目の前の〝助けたい〟と思った人を絶対に助けられるような力がほしい。味方は勿論として、相手が〝敵〟だったとしても

 

俺はその人の事情を何も知らないから〝敵〟に見えているだけで、実はその人にもプレナパテスの様な事情があったのかもしれないし、そんな裏を知ってしまえば俺は絆されずにはいられないかもしれない

 

そうなった時、俺は目の前の相手を最後まで〝敵〟として見る事ができるだろうか?

 

もしその時になって〝助けたい〟なんて甘い考えを浮かべてしまえば、俺は敵を助けるなんて無茶を強いられる事になる

 

俺はそんな無茶を貫き通せる力が────敵対している相手だろうと助けたい相手は助けられる、そんな絶対的な力がほしい

 

……況してや、その相手が生徒なら

 

 

(……プレナパテスとの約束を守る為にも)

 

 

全部を助けたいとは言わない、悪い大人なんかどうなろうと知ったこっちゃない

 

でもあの人が守りたかった生徒だけはもう誰も死なせたくない、それがどんだけ性根が腐ってる奴でも、どんだけ悪辣な奴でも

 

例えそれが───人類の敵だったとしても、生徒であるならば

 

 

 

 

 

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「空崎さん、今日はありがとうございました」

 

「ううん、私も……こうして酒泉と出掛けるの久しぶりだったから……嬉しかった」

 

「……俺もです」

 

 

電車を降り、すっかり見慣れたゲヘナの夜道を二人並んで歩く

 

最近は互いに時間が取れなかったせいか、こうして二人きりというのはかなり久しぶりな気がする

 

 

「また明日から仕事だね」

 

「ちょっと憂鬱になりますね」

 

 

日曜夜の様な、ゴールデンウィーク最終日の様な、ともかく

どうしようもない虚しさが心に覆い被せられる

 

……本来なら空崎さんだけでも休ませるつもりだったのに、結果的に俺まで休ませてもらった挙げ句めちゃくちゃ休みを満喫してしまった

 

さて、明日からは普通に仕事だ。今日1日皆が頑張ってくれた分、俺も頑張らなければ

 

 

「……ところで酒泉、皆は私達に〝明日1日休んでって言ってたでしょ?〟この1日の定義ってどこまでだと思う?」

 

「え?どこまでって……そりゃあ、遊び疲れて家に帰るまで?」

 

「私は24時を回るまでだと思うの、だから酒泉が帰った後も日が変わるまではちゃんと休んでいるか見張る義務があるわ」

 

 

そんな……別にワーカホリックって訳でもないのにそこまで信用されてないのか俺は

 

大体見張ると言っても空崎さんはどうやって見張るつもりなんだ、これから別れようってのに

 

 

「だ……だから……私から提案があるのだけど……」

 

「提案?」

 

「酒泉が制服を着てきてくれたお陰でそのまま学園に直接登校できるし、制服を洗濯してる間の部屋着も……その……酒泉のサイズのを私が買ってあげるから…………あ、あの……だから……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ、悪い!本当にすまんかった!俺もまさかこんな事になるとは……いや無理だって!空崎さんにあんな切なそうな顔されたら断れねえよ!……そ、そうだ!焼き肉!今度皆で焼き肉行こうな!?……え?手作りでいい?その代わり一週間全部シロコさんが献立を決める?ぐ、ぐぬぬぬぬ……分かった!俺も男だ!受け入れよう!じゃあ話も終わった事だしそろそろ通話を……ん?あ、ああ、代わっていいぞ……あ、もしもし?話は聞いてるよな?」

 

 

いい様に尻に敷かれてしまっている情けない会話だが、シャワー音のお陰で空崎さんには聞こえていないであろう事が唯一の幸運だ

 

え?〝どうしてシャワー音が聞こえるのか〟?〝自宅でシャワーを浴びてるならシロコさんに電話する意味ないだろ〟?

 

んなもん────俺が空崎さん家に泊まるからに決まってんだろうが

 

時刻?20時だけどそれがどうかしたよ……あ、シロコさん達の晩御飯は元々作り置きしてあったから安心してほしい

 

いざとなったら出前も頼んでいいって伝えてあるしな

 

 

「おう……おう、明日は帰ってくるから心配すんな。大丈夫だって、寄り道はしないからお兄様を信じてくれ。あ、それとさっきから後ろでロリコンロリコン叫んでるクソガキ黙らせといてくれないか?……あ、もうアイツが黙らせてくれた?そっか、礼言っといてくれ……うん、じゃあまた……あ、そういやスケッチブックってまだ余りあるか?そうか、なら買わなくて大丈夫だな……はいよ、おやすみー」

 

 

ふう……さて、連絡も済んだ事でこの胸の高鳴りはどうしようか

 

よし、まずは素数を数えて落ち着こう。ヒッヒッフー、ヒッヒッフー、ヒッヒッフーミ……駄目だ!全く落ち着けん!

 

空崎さんがシャワーから戻ってくる前には平常心を取り戻したいのだが……シャワー……シャワーかぁ……

 

あの先の、あのルームに、今空崎さんが裸でシャワーを───

 

 

下川(お?久しぶりに出番か?)

 

「やめな───さいっ!!!」

 

 

危ない危ない、こんな聖域で一度でも邪な考えを浮かべる訳にはいかない

 

相手が自分の息子だろうと、時には親らしく全力でひっぱたいて正しい道に戻してあげなければ

 

 

「……しかし」

 

 

これが空崎さんの部屋……初めて来た訳ではないのだが、こうもガッツリ中まで入った事は一度もなかったな

 

空崎さんの生活空間に俺が侵入してると考えると、神聖なものに薄汚れた手で触れてしまっているような気がして罪悪感が……あ、シャワー音止まった

 

という事は身体を洗い終わったのか、それなら今から入浴って事になるしまだ精神統一の時間は残ってるな

 

 

「煩悩滅却煩悩滅却……」

 

 

落ち着け俺……ビキニ姿のカイザーPMC理事が1匹……逆バニーのカイザージェネラルが2匹……裸エプロンのカイザープレジデントが3匹……ヴォエッ!!!

 

よし、なんとか平静を取り戻したな。これで僕はまだ戦え───

 

 

「酒泉、上がったよ」

 

「────はえ?」

 

 

風呂場からではなく何故か真後ろから聞こえる空崎さんの声

 

顔だけ振り向いた途端視界に入る、ほっかほかに顔が紅潮した湯気立ち空崎さん

 

身体と頭にタオルを巻いてはいるが、そんな布切れ1枚の壁ごときでは俺は理性を抑えられな────

 

 

下川(やっぱ俺の出番じゃん、久々の登場なんだから暴れさせ───)

 

「────シャオラァッッッ!!!」

 

「酒泉!?」

 

俺が甘かった、道を間違えた息子に慈悲を与える必要など無かったのだ

 

今度こそ殺してやろうと全力を拳に乗せて放ったが……ちっ!逆に立ち上がってなかった事であまり衝撃が行かなかったか

 

 

下川(お、お前……正気じゃねえよ……!)

 

(黙れ、もし次空崎さんの部屋でその薄汚い身体を晒そうとしたら───今度こそ〝断絶〟するぞ)

 

下川(ひえっ……)

 

 

空崎さんがタオルを巻いただけの姿で現れたのは〝俺を男として見ていない〟か〝俺にならこの姿で会ってもいいと信頼してくれてる〟かの二択だ

 

個人的には前者の可能性の方が高いと思っているが、どちらの理由にせよ空崎さんの想いを裏切る訳にはいかない

 

そうなるくらいなら俺は───我が息子だって殺してみせよう

 

 

「だ、大丈夫?背中越しだったからよく見えなかったけど……急に自分のお腹を殴ってたような……」

 

「気にしないでください、ちょっと自分のお腹殴ってみたくなっただけですから」

 

「そ、そう……大丈夫?この後酒泉がお風呂に行く番だけど……一人で歩ける?」

 

「大丈夫です……よっこいせっと」

 

「そんなガックガクな腰で言われても説得力が……」

 

部屋にある物を支えに風呂場に直行する、まるで空崎さんから逃げるように歩いている今の俺の背中はさぞ情けなく映っている事だろう

 

しかしそんなこんなで風呂場に到着、俺もさっさとシャワー浴びて……

 

 

「……シャワー……」

 

 

さっきまで……ここに空崎さんが……

 

下川(何を無駄に紳士ぶってんだか……そもそも意識してねえ男をこんな簡単に部屋にあげたり、況してや風呂上がりの姿を晒すなんて────)

 

 

うるせえ殺すぞ

 

 

下川(ごめんなさい)

 

 






次回っ!!!空崎ヒナVS折川酒泉!たった二人の風呂場決戦!

ヒナちゃが背中を流さねば誰がやる!!!
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