〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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ヒナちゃそVSクソボケ!最強の風紀委員決戦!(白目)

 

 

 

前世の俺よ、一体どれだけの徳を積めば〝空崎ヒナの寮部屋でシャワーを浴びる〟という幸福が訪れるんだ?

 

むしろ親より早く死ぬという罰当たりな行いをやらかしてるんだが?じゃああれか、これは逆に罰なのか

 

あまりに美味しすぎるシチュエーションへの興奮と空崎さんからの純粋なご厚意の狭間で苦しめという罰なのか?だとしたら大成功だよチクショウ

 

ヤバい、何がヤバいってさっきまでこの風呂椅子に空崎さんが座ってたという事実がもうヤバい、あとついでに空崎さん用なせいか椅子が小さすぎて腰がヤバい

 

駄目だ、これ以上余計な方へ思考が逸れる前にさっさと身体洗って風呂に入ろう。湯船に浸かれば身も心もリラックスできて良い感じに思考能力を衰えさせる事ができる筈だ

 

……と行きたいところなのだが、忘れてはならないのがここは空崎さんの浴室だという事だ。汚れた身で湯船に浸かる訳にはいかないのでキチンと身体中を念入りに洗ってから浸からねば

 

 

「心頭滅却……心頭滅却……」

 

「酒泉……は、入ってもいい……?」

 

「はーい、どうぞー」

 

 

そうだ、ここは全く関係ない事を考えて身体を洗い終わるまでの時間を潰そう

 

明日帰った後の夕飯の事でも考えようかしら、家で待ってる皆には朝と昼を出前とかで済まさせてしまうのが申し訳ないしちゃんと豪華にしてあげないとな

 

とりあえず汁物は無しだな、この前カレーうどんの汁跳ねさせて見事に白い服と白い肌が台無しにされてたし、そのせいでカレーうどんへのヘイトが凄い事になってたしな

 

一方でシロコさんは〝ん、酒泉の服着てるから跳ねても大丈夫〟とかぬかしやがってたな……そのいつの間にか自分のテリトリーに俺の私物持ち帰るのやめろや、カレーうどんの殺傷能力ナメるなよ

 

さてさて、話を戻しまして……夕飯はどうするかねぇ

 

〝豪華な食事〟のイメージといえばやっぱ雑に肉と魚は置いてあるよな、じゃあローストビーフと鮭のムニエルか

 

いや、見た目だけなら白身魚の方が豪華感あるか?味はどっちも美味しいけどさ、それに皆のイメージカラー的にも……

 

……今更だけど、なんか俺の周りって白い人多くないか?シロコさんにプラナ、それと空崎さんも───ん?

 

 

「……空崎……さん?」

 

「じゃ、じゃあ……お邪魔するね……」

 

 

そういえばさっき、なんか空崎さんの声が聞こえたような?しかもなんか〝入ってもいい?〟とか言っていたような……

 

いや、まさかね?空崎さんは俺が浴室に居ること知ってる筈だし、それを承知の上で入ってくるなんてまさかそんな────

 

 

「お、お背中……流し……ます……」

 

「…………」

 

 

あり得ない、とは思いつつ幻聴ではなかった可能性も考慮して軽く後ろを振り向いてみる

 

するとそこにはバスタオルで身を包んだだけの空崎さんが……一糸しか纏っていない空崎さんの姿が───はあ!?

 

「空崎さん!?何故ここに!?自力で脱出を!?」

「今言った通り背中を流しに来ただけだけど……」

 

「そ、そうじゃなくてっ!なんで異性が入ってる風呂場に平然と……!」

 

「……さっきは入ってもいいって答えてくれたのに」

 

「あ、あれは……口が勝手に……!」

 

「それよりも早く前を向いてくれる?背中を洗う時に泡が目に入ったら危ないし、それにずっと見られてると……流石に恥ずかしいし……酒泉がそうしたいならずっと見ててもいいけど」

 

 

ど、どうする!?どうやって空崎さんを浴室から出す!?いや、でも家主に〝出ていけ〟は流石に失礼なんじゃ……

 

で、でも!このままだとタオル一枚の空崎さんがずっと同じ空間に居るという事実に俺の理性が────あ、マズイ

 

そうだ、驚愕の方が勝って意識してなかったけど俺の視界に映ってる空崎さん、今凄い格好してるじゃ……ヤバッ……奴が……奴が目覚め……

 

 

下川(超!戦!龍!覇ぁ!!!)

 

起きるんじゃねえ!!!

 

下川(シャオラァッッッ!!!)

 

 

いや無理よ、これ俺悪くねえよ

 

恋人いない歴=年齢(前世含まず)の男子高校生にバスタオル一枚の美少女目の前で見せてみ?しかも相手が推しまくってた人だぜ?

 

これで反応しなかったら男じゃねえ!……でもそれなら俺は男じゃなくてよかった!空崎さんに邪な想いを抱いてしまうのであればこんな愚息は必要無かった!

 

あれ?でも女でも天雨さんみたいに空崎さんにヤバい感情を抱くパターンも有り得るし……つまりあれか!俺が空崎ヒナという少女の存在を知ってしまった時点で罪だった訳か!はは!

 

 

「しゅ……酒泉?背中洗わないの……?」

 

「そ、それは……それは……!」

 

 

ここで首を縦に振ってしまえば間違いなく絵面がとんでもない事になってしまう、何よりこのシチュエーションに俺の理性が耐えられないかもしれない

しかし断ってしまえば空崎さんのご厚意を無下にする+家主を追い出すという最悪のツインドライブシステムが発動してしまう

 

 

下川(別にいいんじゃね?理性が耐えられなくなってもよ)

 

は!?何馬鹿な事を言ってやがる!そうなったらどうなるのか分かってんのか!?

 

下川(なんだ、今の言葉じゃ伝わらなかったか?それならハッキリ言ってやるよ……手を出しても問題無いつってんだよ)

 

なんだと!?お前、ふざけた事を言ってんじゃ────

 

下川(ふざけてんのはテメェだ、あの空崎さんがただの厚意だけで男の風呂に突入すると思ってんのか?あの風紀の長の空崎さんが、バスタオル一枚で、だぞ?)

 

そ、それは……確かに俺も疑問に思ってるけど……で、でも!他に理由なんて考えられないんだよ!

 

あの空崎さんが俺の背中を流しにきてくれた理由なんて!空崎さんが優しいからくらいしか!

 

下川(他にあるだろ、例えば────)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下川(お前の事が好きだから誘いにきた、とかな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……は?お前、何を言って……

 

下川(だーかーらー、空崎さんはお前の事が好きなんだって!だからこうしてエ駄死な格好をお前に晒せるんだろ!?)

 

……

 

下川(いい加減認めろ!ただの監視目的であんな気合いを入れた格好をするか!?ただの休養目的でお前と遠出する事を選ぶか!?)

…………

 

下川(お前だって本当は気付いてるんだろ!?空崎さんはお前に恋をしてるんだ!なら仮に過ちが起きたって何も問題ないだろ!)

 

………………

 

下川(据え膳食わぬは男の恥!試しにちょっと押し倒してみろって!拒絶される事はないだろうよ!)

 

分かった

 

下川(へっ、やっとお前も素直になったか……そうだ、それでいい────)

 

お前が救い様のない屑だってことがな

 

下川(……え?)

 

お前は所詮、ただの愚息。空崎さんが俺に恋をしているというのは俺の性欲が生み出しただけのただの幻想だ

 

要するにお前は欲しいだけなんだよ!空崎さんに手を出す為の大義名分がなぁ!

 

下川(な、なんだと!?俺が間違ってるってのかよ!?)

 

ああそうだ!謂わばお前は〝アイドルにウィンクされただけで好意を持たれたと勘違いしている面倒なヲタク〟と何ら変わらない哀れな存在だ!

 

必要無いのだ!この世界にとって!貴様の様な存在は!

 

下川(ふ、ふざけんじゃねえ!お前みたいなクソボケより性欲そのものである俺の方がまだ乙女心を───)

 

 

下川酒泉、俺はお前を恥じる……だが、お前は性欲に負けた俺の心の弱さそのものでもある

 

だから、俺自身の手でケジメをつけてやる。勿論空崎さんを追い出すことも、悲しませることもしない

 

 

「……空崎さん、俺が良いと言うまで目を閉じてくれませんか?」

 

「え?う、うん……いいけど……」

 

 

……下川酒泉、最近家族が増えた事で気軽に己を解放できなくなったのは悪いと思っている

 

だが、それを理由に空崎さんに手を出す事は絶対に許さない!

 

 

下川(ま、待て!なぜ拳を構えている!?まさか貴様────)

 

(もう一度────眠ってろ!!)

 

 

殺しはしない、それでも尋常ではない痛みが己に走る

 

安心しろ下川酒泉、俺はお前、お前は俺だ……共に苦しんでやる

 

一秒、二秒……声を押し殺し、痛みに耐え続けてどれ程の時間が経過しただろうか

 

やがて痛みは穏やかな波の様に引いていき、我が息子にして我が半身が暫く起き上がらないであろう事をなんとなく確信してから空崎さんに告げた

 

 

 

 

 

 

 

「空崎さん、背中────頼みます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「どう?気持ちいい?」

 

「最高です、この前受けてきたマッサージより気持ちいいです」

 

 

最近肩が凝り気味だったからこの前気分転換にマッサージ屋に行ってみたんだけど……正直、あんま効果なかったな

 

しかも女性店員さんがあまりにも長時間身体をベタベタ触ってくるだけだったので〝これ本当にマッサージですか?〟と効能を疑ってしまう事もあったな、その時はリンパがどうたらって難しい説明で返されたので取り敢えず納得してされるがままにされておいたけど

 

でも終わった後も肩は凝ったままだったし、マッサージ中くすぐったいのを我慢してたせいで終わった後無駄に疲れてたし、もしかしたらあまり腕が良くない人に担当されてしまったのかもしれない

 

そんな愚痴を先生に吐いたらスッゲー真顔で〝今度私も行ってみるよ〟って言ってたけど……次の週にはなんか潰れてたんだよな

 

あんな冷たい無表情になるくらい疲れ溜まってたのに……運の悪い人だな

 

いや、でもあんま効果の無いマッサージに金を使うのを避けられたって考えれば逆に運が良いのでは────んひいっ!?

 

 

「そ、空崎さ……ふっ……な、何を……いひっ!?」

 

「……なんか、イラッとしたから」

 

 

貴女はシャークさんですか?いやシャークさんもちょっとめんどくさい彼女感あったけど!

 

というか空崎さん、不意に脇に手を突っ込んでくすぐってくるのは止めていただきたい、泡でぬるぬるしてるせいで滑りやすくなってるし

 

……そう、今の一連の流れでお分かりいただけたかもしれないが実は今、空崎さんに素手で体を洗われています

 

ボディソープしか置いてない事を失念していた俺は頼んだ手前今更断る事もできず、空崎さんのちっちゃなお手手でぬるぬるしゃわしゃわと背中を洗ってもらっています

 

 

「ついでに肩も揉んでおくね」

 

「ありがとうございます……あ゛あ゛~、効くぅ゛~」

 

「おじさんみたいな声」

 

「うへ~」

 

「そっちじゃない」

 

 

空崎さんレベルの強者からのマッサージ、にも関わらず痛みはそこまで感じない

 

これはやはり空崎さんが俺の身体の耐久を考慮して手加減してくれているのだろう、なんて優しいお方なんだ

 

 

「そこそこ強めにやってるけど……全然声出さなくなったね」

 

 

違った、俺の肉体がキヴォトスに適応しているだけだった

 

なんかもう撃たれまくって感覚麻痺してきたのかもしれん、このままだと早死にしそうだ

 

 

「……酒泉、痛くない?」

 

「いえ、丁度良いくらいですよ」

 

「……嘘」

 

 

そんな不謹慎且つ割と現実的な事を考えていると、空崎さんが肩を揉む手をピタリと止めて訊ねてきた

 

本当に丁度良いくらいの力加減だったので正直に答えるも、空崎さんはそれを〝嘘〟と一蹴し、肩を揉むのをやめて背中に手を当ててきた

 

 

「本当は痛かったでしょ?……この身体の傷、全部」

 

「───それは」

 

 

傷痕を確かめる様に指で背中をなぞられる

 

今はもう触れられても痛くないけど、退院したばかりの頃は風呂に入る度に染みて痛かったな

 

知り合いに生肌見られる度に悲しそうな顔をさせてしまった事もあったし、特に銃痕なんかは数も大きさもそこそこあるもんで未だに完治は出来てないし

 

空崎さんの言う通り身体は痛かったし、なんなら心も痛かったけど、でも

 

 

「俺としては大切な人達に何かあった方が〝痛かった〟んで……それに比べたら余裕っすよ」

 

 

それに、傷を付けた側の方が……俺を撃たざるを得なかった人達の方がもっと痛かっただろうから

 

俺がもっと早く強くなってりゃ……今まで戦ってきた人達を無傷で倒せるくらい強いチート転生者だったら、こんな傷痕も残らなかっただろうしそれを誰かが気に病む事もなかったんだろうけどな

 

……弱さは罪とまでは言わないけど、誰も悲しませたくないのならやっぱ自分自身が強くならなくちゃいけないんだな

 

強さを求めるのに焦りすぎなんて事はない、多分キヴォトスは───これからもずっと、危機に見舞われるだろうから

 

 

「……そういうところよ」

 

「っ、空崎さん?」

 

「酒泉、私も……貴方と同じ思いだから」

 

 

なぞる指を止め、手の平を背中に当てられる

 

こんなに小さくて柔らかい手なのに、その手から歴戦の強者足る重みを感じられた

 

 

「私達に何かあれば酒泉が傷付くように、酒泉に何かあれば私達だって傷付く」

 

「分かってます、皆さんに愛されてるって事は十二分に理解してますから」

 

「ううん、分かってない。酒泉は自分が思っている以上に周りに愛されてるって事が」

 

幸いな事に俺の周囲は優しい人達ばかりだ

 

クラスメイトも、委員会の仲間達も、ゲヘナという暴力の具現化の様な場所で出会ったとは思えない程に

 

ゲヘナ外でも……まあ、一部すぐ口喧嘩に発展する様な相手だったり本気で殺し合った相手も居るけど。その人達含めてもそこそこ上手くやっていけてる……と俺は思っている

 

それぞれ形は違えど皆友愛を向けてくれている、それは理解している……でも、空崎さんは少しだけ不機嫌そうな声色で〝まだ自覚が足りていない〟と否定してきた

 

 

「多分、酒泉はこれからも戦い続けるんだと思う。世界を守る為だったり誰かを守る為だったり理由は色々あるだろうけど……それ自体は悪い事とは言えないし、そうだったとしても私に戦いを止める権利はない」

 

「……でも、これだけはずっと覚えていて。酒泉が戦いに命を懸ける様なら、私も一緒に命を懸けるから」

 

「これ以上身体の傷を増やすなら……私も、酒泉と同じ数だけ傷付いて酒泉と同じくらい一緒に苦しむから」

 

 

……困ったな、それじゃあいざカッコつけたくなった時に〝俺の命に代えてでも!〟って決め台詞が使えなくなっちゃうな

 

あーあ、俺が命を懸けると空崎さんまで一緒に命を懸ける事になるのかぁ。なんというか、それは凄く───嬉しいな

 

本来ならあっちゃいけない事なのに、空崎さんにそんな決意を抱かせちゃいけない筈なのに、なんでこんなに喜んでるんだろうな俺は

 

 

「……なるほど、俺達は運命共同体だと。つまり俺が悲しかったら空崎さんも悲しいし、俺が幸せなら空崎さんも幸せになれると?」

 

「そういうこと」

 

 

これは困ったな、キヴォトスで幸せにならないといけない理由がまた一つ増えちゃいましたよ先生

 

じゃあやっぱ強くなりたいって思いは何も間違ってなかったな、守りたいものを壊されないようにもっと鍛えないと

 

自分より強い人達がどうにもならなくなった時、その人達の事も助けられるようにもっともっと上を目指していかないと

 

強きが弱きを助けてくれるなら、俺はその強きすら助けられる超スーパーウルトラ強きにでもなろうか

 

それに、む……む……無職の恥祭?とかいう何を企んでいるのか分からん連中も残ってるしな

 

え?名前が違う?シロコさん達を悲しませた連中なんかこんな名前でいいんだよ、ほら無名に名を与えてやったんだ感謝しろよ

 

 

「でも、酒泉が幸せだったとしても私も絶対に幸せになれるとは限りない」

 

「え?」

 

 

なんて下らない連中の下らない事までついでに考えていると、空崎さんが突然梯子を外してきた

 

そ、そんな……さっき運命共同体だと言ってくれたのに……

 

 

「私は器が小さいから酒泉を傷付けた人達が酒泉と仲良くしているとモヤモヤするし、他校の生徒といつの間にか仲良くなっていたりするとちょっとだけ拗ねちゃうかも」

 

「そ、空崎さん……?」

 

「それに、私への報告を後回しにして勝手に家族を増やしたりしたら……すっごくめんどくさい女になっちゃう」

 

「すっごくめんどくさくなっちゃうんですか……」

 

「うん、すっごくめんどくさくなる」

 

 

ほんの少しだけ後ろを確認してみると空崎さんの頬が僅かに膨らんでおり、確かにちょっとだけ拗ねたような顔になっていた

 

いや、面倒な空崎さんもそれはそれで可愛いし良いんだけど……

 

にしても空崎さんがここまで正直に物申せる様になるなんて俺は嬉しいよ、やっぱ甘えたくてじゃれあいたい年頃なんだろうな

 

 

「だから、そういう時は……ちゃんとご機嫌取りしに来ないと駄目……だから」

 

「分かりました、もしこれから先も空崎さんを怒らせる様な事があれば今日みたいに一緒に出掛けないかお誘いする事にします」

 

「……それなら毎日怒っちゃおうかな」

 

「えぇっ!?」

 

「アコが変態さんなのも、万魔殿が役に立たないのも、便利屋が暴れるのも全部酒泉のせいにして……毎日二人で出掛けちゃうかも」

 

 

風紀の長という肩書きを脱ぎ捨て、くすくすと年頃の少女らしく笑う空崎さん

 

しかしそれは流石に理不尽が過ぎるのではなかろうか、まさか〝絶対に許さんぞ折川酒泉〟されるとは……つまりあれか、これからは理不尽に陸八魔さんのせいにされた罪がそのまま俺の方に回ってくるのか

 

「せ、せめて月一で怒るくらいに───くしゅん!」

 

「あ……ご、ごめん!すぐ流すから!」

 

「お、お願いします……」

「うん、頭から流すね」

 

 

 

シャワーヘッドを頭上まで持ち上げ、水がお湯に変わるのを待ってから俺の頭に掛ける空崎さん

急にシリアスな話に突入したせいですっかり忘れていたけど、そういや今背中を洗ってもらってる最中だったわ

 

お湯も何も掛けずに暫く話し込んでたせいでちょっとだけ身体が冷えてしまい、なんともテンプレ的なくしゃみをしてしまった

 

 

「どう?見た感じ洗い残したところはなさそうだけど」

 

「はい、特に違和感とかもありません、ありがとうございました」

 

「それならいいけど……ほ、本当に大丈夫?」

 

「……?えっと、それは何が───」

 

「だ、だからっ!背中だけじゃなくて!……他に洗ってほしいところとかは……」

 

「────大丈夫です!!!後は自分で出来ますので!!!」

 

「そ、そう……?」

 

 

あかんやろそれ、後ろ洗ってもらったら残りは前しかないに決まってるやろ

 

上司に前まで洗わせるのは流石にマズイで工藤!勿論上司以外が相手でもマズイで工藤!いやでも自分から提案するって事は空崎さんって結構ムッツリ───んなわけあるかぁ!!!

 

これはただの!!!冗談に!!!決まってるだろうが!!!空崎さんだって人をからかいたい年頃なんだよ馬鹿野郎!!!これくらいの冗談、じゃれあいの範疇だわ!!!

 

あー良くない良くない、こういうエッチな事を考える輩は駄目です、死刑です

 

余計な事を考えてる暇があるならさっさと風呂入ってさっさと寝ましょう、明日からまた社畜の様な日々が始まるんだから

 

 

「……あ、そういや空崎さん、一つ聞きたいんですけど……俺って今日はどこで寝れば……」

 

「……そ、それは────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

────────

 

 

 

──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー……」

 

(俺は石像俺は石像俺は石像俺は石像俺は石像俺は石像俺は───)

 

 

ベッドの上でピンク色のパジャマを着た少女に抱き枕にされてる風紀委員は誰でしょうか?……そう、私です!

 

いや私ですちゃうわ、なんで抱きつかれとんねん俺は、いくらベッドが一つしかないとはいえこうはならんやろ?

 

勿論俺だって断ったんだよ?シーツさえ貸してもらえれば床でもいいとか、なんなら今からでも帰りますよーとか、でもさ?そしたら空崎さんが〝じゃあ私が床で寝るから〟って脅してくんのよ

 

それだけは止めてほしいって何度伝えても無視するし、だから仕方なく……本当に仕方なくね?空崎さんの〝二人で寝ればいい〟っていう提案を受け入れたのよ

 

 

「えへへ……ぎゅー……」

 

 

その結果がこれだよ、見ろよ野郎のゴツゴツした体を満面の笑みで抱き締める空崎さんの姿を

 

スヤァだよスヤァ、完全にスヤ崎スヤになっちゃってるよこれ、こんな気持ち良さそうに眠る空崎さんが見れるなら俺は便利屋だろうと美食研究会だろうと温泉開発部だろうと万魔殿だろうと何回でも滅ぼせるね

 

 

「んぅ……ふふ……あったかい……」

 

 

でもね?こんな間近で見るってなると話が違うんよ、まさかこんなふわもふ天使と一緒におねんねする羽目になるとは思わないじゃん

 

いや勿論状況的には天国だよ?でも理性を保たねばならないという意味では地獄なんだよ

 

しかも何が凄いってさ、こうしてちょっとだけ力を入れて空崎さんから離れようとすると────

 

 

「んー……やだ……」

 

 

何がやだやねん可愛いね、幼稚園児ですか貴女は可愛いね

 

あーもう、普段はキリッとしてる癖にこういうポヤポヤしたところまで兼ね備えてるなんて……マジで完璧すぎんか?空崎さんは俺の理性が硬い事にもっと感謝した方がいいと思いますよ?

 

もし俺の理性が崩壊していたら今頃両腕で空崎さんを抱き枕にして髪の毛に顔を埋めてヒナニウムを吸収しながら寝てるところでしたよ?

 

 

「しゅせん……すき……」

 

「────~~~っ!!!」

 

 

俺も!!!……と叫びそうな口を押さえ、必死に歯を食いしばる

 

この天然タラシめ……ここまで気を許してくれてるのはありがたいですけどねぇ!そういうのは恋愛的な意味で好きな人だけに言いなさい!

 

あーもう全くこの人は……あっ!こら!胸に顔をグリグリしてくるんじゃありません!涎が付いちゃうでしょ!これ空崎さんが買ってくれた寝間着だけど!

 

 

「しゅせん……だいすき……えへへぇ……」

 

 

ああもう!!!俺だって大好きですよ空崎さん!!!

くっそ!眠れねぇ!明日もどうせ問題児の相手しなくちゃいけないってのに!

 

頼むから明日一日くらい大人しくしててくれよお前ら!まともに相手できる自信が無いんだからさぁ!……無理!?やっぱ無理か!ゲヘナの不良だもんな!

 

ファーーー!!甘い甘い!!ゲヘナオレらって野蛮レボリューションなんだ!

 

 

「ちゅー……」

 

 

ファーーー!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「おはようございます!委員長!……あとついでに貴方も」

 

「おはよう、アコ……昨日はありがとね、お陰で沢山休めたわ」ツヤツヤ

 

「はよ……ざ……」ギラギラ

 

「い、いえ……私達も委員長に頼りっぱなしでしたので……ところで───」

 

「ところで……昨日は大丈夫だった?特に連絡は来なかったけど」ツヤツヤ

 

「あ、それがですね。昨日は偶々視察でゲヘナに来ていた先生が一日中風紀委員会の指揮を取ってくれていたんですよ」

 

「先生が?」ツヤツヤ

 

「はい、事情を説明したらお二人の為にと」

 

「……そっか、先生にも今度お礼を言いにいかないとね」ツヤツヤ

 

「……あの、それよりも委員長?先程から目がギンギンなクソボケは一体……」

 

「ばっちりみなー……ばっちりみなー……」ギラギラ

 

「実は……酒泉、枕が変わると眠れないタイプだったらしいの。それで一日中起きてたんだって」ツヤツヤ

 

「え?でも彼はどこでも仮眠を取る事ができ───ちょっと待ってください、〝枕が変わると〟ってまさか……」

 

「……そういえば確かに、酒泉は別にどんな環境でも眠る事ができる筈。なのに寝不足だなんて……酒泉、もしかして遅くまでスマホ弄ってた?」

 

「ソンナコトナイヨ」ギラギラ

 

「そう?それならいいけど……」ツヤツヤ

 

「待ってください委員長、もしかして二人とも同じ場所で寝たんですか?枕が変わったって、もしかしてホテル的な場所にでも行ってたんですか!?」

 

「でも、やっぱり目も充血してるし……朝だって私がご飯食べさせてあげないといけないくらい元気無かったし、やっぱり寝不足なんじゃないの?」ツヤツヤ

 

「朝食を食べさせてあげた!?それってつまりどちらかの家に泊まって……」

 

「ボク,ソラサキサンニウソツカナイ」ギラギラ

 

「ほんと?酒泉がそう言うなら信じるけど……取り敢えず今日は体調が回復するまでベッドで横になってて、後で看病しに行ってあげるから」ツヤツヤ

 

「チョワヨ」ギラギラ

 

「待ってください委員長!どうなんですか!?まさか本当に二人でお泊まりして……ていうか何でそんなにツヤツヤしてるんですか!?委員長!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






折川酒泉の愛用品


・リビングに飾られたスケッチブック


紙面には幼子が描いたような微笑ましい絵と特に上手くも下手でもない者が描いた様な普通の絵が入り交じっている、誰かと誰かの合作だろうか

絵の中の少年の首には一枚のカードが掛けられており、その手には少女の顔が入ったタブレットが一台、その周囲を白髪の少女達が囲んでいる、全体的に白い

この若さで一家の長になるのはまだちょっと早すぎるかもしれない


Q.どちらが正妻ですか?

A.ん、当然メインヒロイン

A.めいん…?よく分かりませんが、我は酒泉と一緒にいると胸がぽかぽかします

A.ん!胸なら私の方が大きい!ん!!!ん!!!
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