〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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クソボケあんま出ません




誕生日って歳を重ねるにつれて自分でも忘れてきちゃうよね

 

 

 

「ミ……ミカ様!お誕生日おめでとうございます!」

 

「「「「「「「「おめでとうございます!」」」」」」」」

 

「へ?」

 

 

クラッカーが鳴ると同時に頭の上から浴びせられる紙吹雪、我ながら間抜けな声を出してしまったと思いながらミカは口を半開きにしたまま固まった

 

普段は正義実現委員会が使用している作戦会議室、その奥の壁にはアルファベット型の風船が貼り付けられており、全て繋げて読むと〝HAPPY BIRTHDAY〟というメッセージになっていた

 

ミカの目の前には〝ある出来事〟を境に特別な目で見るようになった少女───下江コハルが白い小包を持ってミカを見つめていた

 

コハルだけではなく、コハルを見守るように正義実現委員会や補習授業部の生徒まで、更にその真横には先生と共にナギサとセイアまで立っていた

 

そしてテーブルの中央にはパンプキンケーキが2ホール……そこまで整理して漸くミカは状況を理解した

 

 

「あ……そっか、今日私の誕生日だっけ」

 

「おいおい、肝心の君が忘れてどうする」

 

「ご、ごめんごめん!……でも、なんか急だね?」

 

「急じゃないとサプライズとは呼べないだろう?」

 

「それは……そうなんだけどさ……」

 

 

改めて周囲を見渡すミカ、正義実現からはイチカ、ハスミ、コハルが

 

補習授業部からはアズサ、ヒフミ、ハナコが

 

そして謂わずもがなナギサとセイアというこのメンバーの中では一番付き合いの長い二人が、そこに常日頃激務に追われている筈の先生まで

 

 

「でも、まさかこんなに来てくれるなんて……ちょっと驚いたっていうか……」

 

 

特に体よく利用しようとしたアズサ辺りにはてっきり嫌われているものだとばかり……否、アズサだけではなく何人かは直接的迷惑を掛けてしまっているし、直接的な被害者でなくとも大事な後輩が危うく退学寸前まで追い詰められてしまっている者達までいる

 

だというのにこれだけのメンバーが自分を祝う為に集まっているという事実に困惑と後ろめたさを感じるミカ、しかし場の空気を考えるならそれを口にするのは愚かな行為だろうとミカは余計な事を言わぬよう口を閉ざそうとし

 

 

「あら?ミカさん、もしかして……〝あんな大事件を起こした私なんかが皆に祝われていいはずがない〟とか思ったりしてます?意外と繊細なんですね♡」

 

「よく人の心無いって言われない?」

 

 

室内の何人かにギョッ!とした顔で見つめられるも、それを気に留めることなく〝あらあら〟と笑うハナコ

 

両者の言葉には若干の刺が込められている様に聞こえるが、意外にもハナコの方は穏やかな顔でミカを見つめていた

 

 

「今回のお誕生日パーティー、提案したのはコハルちゃんなんですよ?」

 

「……え?」

 

「ちょ……ハ、ハナコ!余計なこと言わなくていいから!」

 

「……コハルちゃんが?」

 

 

驚いた表情でコハルに視線を向けるミカ、するとコハルは小包を持つ両手を後ろに回し、気恥ずかしそうにもじもじし始めた

 

 

「その、厳密言うと私はイチカ先輩に〝どうすればミカ様は喜んでくれるんだろう〟って相談しただけで、サプライズとかは全部先輩の案だから……です」

 

「そう、なんだ……それでイチカちゃんとハスミちゃんまで来てくれたんだ」

 

「いえ、私達もコハルに頼まれたから来ただけではありませんよ。プライベートビーチでの一件では皆さんのサポート役だった我々が逆に助けられてしまう事が何度かありましたので、そのお詫びとお礼と込めてです……その、特にゲヘナ関連とかで……」

 

「あの時は面目無かったっす……」

 

「あ、あはは……」

 

〝そういえばこの子達、プライベートビーチでゲヘナの生徒相手に暴走しそうになってたっけ〟と記憶を遡りながら苦笑するミカ

 

 

(……もしかして、私と酒泉君が口喧嘩してる時って周囲からはあんな風に見られてるの?)

 

 

まるで自分自身の日常を客観視させられている様な気分に陥ったミカはこれ以上ティーパーティーとしての品位を損なうまいと〝これからはもっとお淑やかにしよう〟と心の中で誓った

 

尚、この誓いは折川酒泉を前にした場合一瞬で崩れ去る程度の硬度でしかないものとする

 

顔を見合わせた瞬間に煽りを吹っ掛けてしまう彼女らしい決意の柔らかさと言えるだろう

 

 

「でもミカさんも水臭いっすね、まさか誰にも誕生日だって事を伝えていなかったなんて」

 

「あはは、隠してた訳じゃないんだけどね……でも、コハルちゃんはよく私の誕生日知ってたね?私なんか自分で忘れてたくらいなのに」

 

「え!?それは……え、えっと……」

 

「え、えーと!確か先生がナギサ様達とそういうお話してたところを偶々通りがかって、それでミカ様のお誕生日を知ったんですよね!?」

 

「そ、そう!それです!」

 

何故か急に言葉を詰まらせたコハル、そんな彼女を庇う様に前に出たヒフミが口早に理由を述べる

ミカは何をそんなに慌てているのだろうと疑問に思いながらも〝まあ先生なら生徒の誕生日を知っていてもおかしくないか〟と一人で納得した

 

 

「まあ、そういう訳でイチカの案をコハルがナギサに伝えて、それで折角ならもっと人数を集めてパーティーしようって事になったんだよね」

 

「プレゼントも用意してあるから楽しみにしてて、因みに私が用意したのは───」

 

「あ、アズサちゃんストップです!まだバラしてはいけませんよ!?」

 

「アズサちゃん……その、なんか意外だね?アズサちゃんまでお祝いに来てくれるなんてさ」

 

「……もしかして、私が来るのは不味かった?」

 

「ち、違うよ!?嫌とかそういう意味じゃなくてね!?」

 

 

後ろめたさからか、まるで叱られるのを恐れている子供の様におずおずとアズサに話しかけるミカ

 

しかし当のアズサ本人は何の事かと頭に?を浮かべるだけで、ミカに対しても極普通に正面から向き合っていた

 

 

「……その、結果的には何事も起きなかったけどさ……でも私ってアズサちゃんの手を汚させようとしちゃったでしょ?だから、もしかしたら嫌われてるかもしれないなーって……」

 

「それを言うなら私だって、サオリとミカが私を送り込んでくれたお陰で結果的にヒフミ達に会えたから……感謝する理由はあってもミカを恨む理由はない」

 

「……ごめんね、アズサちゃん」

 

「……?私はミカに何もされてないけど……」

 

「そうじゃなくて……色々と」

 

 

トリニティとアリウス、両校を繋ぐ和解の梯に成り得たかもしれない少女

 

そんな彼女を自分の選択一つで殺人犯に仕立て上げてしまっていたかもしれない、その罪悪感に苛まれたミカはアズサを抱きしめながら謝罪の言葉を口にした

 

 

「私、沢山皆に酷いことしたのに……それなのに、まだこんなに沢山祝ってくれる人がいるなんて───」

 

「ミカさん、そこまでです」

 

まるで懺悔直前の罪人の様に、暗い雰囲気のまま自らの過ちを呟こうとするミカ

 

しかしナギサが両手を強く合わせるとパン!という破裂音に似た音が響き渡り、ミカが呆気に取られると同時に彼女を取り巻く薄暗い雰囲気が一蹴された

 

 

「本日はミカさんに〝ごめんなさい〟を言わせる為に集まったのではありません、私達はミカさんに〝おめでとう〟と伝える為に集まったのです」

 

「過去を反省できるのは良い事だけど、後ろばかり見ていると前のものが見えなくなってしまうよ……ほら、前を向いてみな」

 

君の目には何が見える、先生にそう問われたミカが顔を上げる

 

彼女の前には心の底から祝福を送ろうと笑顔を向けている学友の姿が

 

親しくなったのはつい最近の子も、騒動の被害に遭った子も、誰の目にも悪意敵意は込められていない

 

そこにあるのは〝生まれてきてくれてありがとう〟という、聖園ミカ誕生への感謝のみ

 

 

(……そっか)

 

大勢に多大な迷惑を掛け、逆恨みで大暴れし、挙げ句手を汚しかけた。あの日の後悔が未だに押し寄せ、その度にベッドに顔を埋める、そんな時が今でも度々

 

〝人を殺す〟という取り返しのつかない過ちを二度も犯しかけた、そんな自分が許されていい筈がないと何度も罪の意識に苛まれてきた

 

しかし、こうして皆が自分の生まれを祝ってくれるのなら〝私は幸せになっていいんだ〟と少しだけ前向きになれるかもしれない

 

 

「……ねえ、先生」

 

「うん?」

 

「私、幸せになってみせるね」

 

 

否、絶対になってみせる、それこそが自分を赦してくれた者達への恩返しだとミカは前を向く決心をした

 

 

「……まるであの子みたいな事を言うね」

 

「え?」

 

「気にしないで、やっぱり仲良しだなーって思っただけだから……さて!重たい話はこの辺にしてそろそろパーティー開始といこう!」

 

「そうですね、折角の料理が冷めてしまいますから……それとミカさん、貴女はいつまで紙吹雪を頭に乗せてるつもりですか?」

 

「……え゛っ!?まだついてたの!?」

 

「君が一人で勝手にシリアスモードに突入した頃からずっと乗っていたぞ」

 

「そ、それ先に言ってよぉ!?」

 

「あむっ……くっ!悔しいですがやはり料理の腕だけは確かですね、あのおと───」

「しっ!……それ言っちゃ駄目な事になってるんすから」

 

「ところでコハルちゃん、コハルちゃん的にはパンプキンケーキはエッチ判定じゃないんですか?」

 

「は、はあ?パンプキンケーキのどこがエッチなのよ!?」

 

「だって元の材料がパンプキンなんですよ?……ほら、所謂〝かぼちゃパンツ〟と呼ばれる物があるじゃないですか。中身をくり貫く為にそれに〝穴〟を空けるなんて……まるでそういうプレイをする為のコスチュームに───」

 

「ミカ様!これ食べちゃ駄目!!!」

 

「ええっ!?な、なんで!?」

 

「ヒフミ、ヒフミ……プレゼントは何を持ってきたの?」

「私ですか?私はこのペロロ様型のシャンプーボトルを……」

 

「ふふっ……ヒフミさんは相変わらずペロペロ様がお好きなのですね。私もヒフミさんの御趣味に興味がありますので、後でペロペロ様の事についてお話を伺わせていただいてもよろしいでしょうか?」

 

「………………ハイ!イイデスヨ!」

 

 

 

 

 

──────────

 

 

────────

 

 

──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー楽しかった!」

 

 

時刻は17時

 

帰路を歩くミカの周りには既に先程の面子は一人も居らず、すれ違う人々は見知らぬ赤の他人ばかり

 

そんな場所で独り言を叫べば当然周囲からは変人を見る様な目で見られるのだが、今の彼女はそれすら気にもしない程に気分が高揚していた

 

「ゲームも沢山遊んだし、ご飯も美味しかったし!……特にケーキなんて最高だったなー、あれどこのお店で買ったんだろう?」

 

 

身も心も満たされたミカは上機嫌で思った事を口にするが、それに答える者は当然居らず

 

すると大きな満足感の中に僅かに寂しい気持ちが入り交じり、それがほんの少しだけミカのテンションを落ち着かせた

 

 

「……時間が巻き戻ればいいのに、なんて」

 

 

有り得ない願いを口にするも、叶わぬ事は承知の上

 

それ程まで彼女達との時間は至高の一時だったのだろう

 

 

「でも、それじゃあ駄目だよね……先生だって〝後ろばかり見てたら前が見えなくなっちゃう〟って言ってたし……よし!決めた!次、誰かのお誕生日が来たら────っ?」

 

 

〝今度は私がパーティーを開こう〟

 

心の中でそう誓った刹那、ミカは視界の隅っこに見慣れた顔があるのを発見した

 

 

「……あれって」

 

 

目を凝らし、まじまじと観察してみる

 

やはりその正体は折川酒泉、他校の生徒にも関わらずスイーツを求めて高頻度でトリニティにやってくるゲヘナ学園の風紀委員であった

 

相変わらずスイーツに釣られてトリニティまでやって来たのか、そのままの意味でスイーツ脳な酒泉に呆れながらミカは声を掛けようとし────次の瞬間、別の可能性が彼女の脳裏を過る

 

 

「いやいや、まさかね……いや、でも……もしかしたら……うん!」

 

 

一人でぶつぶつ呟きだしたかと思えば、覚悟を決めた表情で酒泉に近付くミカ

 

歩く際に右手と右足が同時に前に出ていた事には気づいていない模様

 

「や……やっほー!また糖分を求めてトリニティに来たの?なんていうか酒泉君ってそういう生態の虫みたいだね☆」

 

「あん?……うげっ……アンタかよ……」

 

「あはは、開幕から〝うげっ〟はひどくなーい?」

 

「おえええええええっ!!!」

 

「は?」

 

 

ナルシストという訳ではないが、それでもミカは自分が容姿は良い方であると多少の自覚はある

 

しかしそんな彼女に対して特大の嘔吐で返事をする酒泉の姿は美少女への対応には見えず、それどころかとんでもなくグロテスクなモンスターを相手にしている様な態度にしか見えなかった

 

……まあ、煽り混じりに話しかければ当然煽り混じりで返されるのでこれはミカの自業自得と言えよう

 

 

「……そ、それで?結局酒泉君は〝こんな日〟に何をしにトリニティに来たの?」

 

「ん?私用っすけど」

 

「ふ、ふーん……〝こんな日〟に会うなんて偶然だねー、これも何かの運命なのかなー?」

 

「はぁ」

 

「今日は〝こんな日〟だし気分も良いから……特別に酒泉君の私用、手伝ってあげるよ?」

 

 

〝こんな日〟というワードを露骨に強調しながら会話を続けるミカ

 

もし酒泉が今日は何の日か知っているなら〝こんな日〟というワードに何かしらのリアクションを見せる筈、もし違ったとしても〝何の日ですか?〟と訊ねるくらいの事はしてくる筈

 

そう考えたミカはその作戦を実行したが、酒泉は驚くほどに反応を示さなかった

 

 

「別にいいっすよ、てかもう用事済んだんで」

 

「そ、そう?……その私用以外にも他にやってほしい事とかない?今日は〝おめでたい日〟だからちょっとくらい無茶聞いてあげるけど?」

 

「いや、特には……」

 

「ふ、ふーん?本当に?本当に何もないの?私が酒泉君にこんな優しくしてあげる日なんて滅多に訪れないよ?今日は皆に〝祝ってもらえて〟気分が良いからさー」

 

「はぁ……て言われても無いもんは無いんで……」

 

「っ~~~!」

 

 

ついには〝おめでたい日〟やら〝祝ってもらえて〟などそのまますぎる言葉を使い始めたミカ、しかしそれでも酒泉はそのワードに一切触れることなくミカからの誘いを断り続ける

 

おかしい、今日が何の日か知らないだけならまだしも自分の言葉を気にも留めないとはどういうつもりか

 

やはり鈍感らしく耳の中に鉛弾でも詰まっているのか、そう叫びたくなるミカだが、一度の深呼吸と共に怒りともどかしさを抑えながら震える声で酒泉に訊ねた

 

 

「しゅ……酒泉くーん?ところで酒泉君はさぁ……今日が何の日か知ってるー?」

 

「さあ」

 

「じゃあここで問題でーす!今日は一体、何の日でしょうかー?」

 

「ギブアップで」

 

「み、認められませ~ん!」

 

「じゃあ近所のスーパーのトイレットペーパー半額の日……あ、シロコさんに後で買っといてってモモトーク送らないと」

 

「……ふぅううううう」

 

 

ピキッ、とミカの額から音が鳴るも酒泉は気にした様子も見せず

 

それどころか会話の途中で他の女性の名前を上げられた事でミカのストレスゲージが少しずつ溜まっていく

 

再び深呼吸する事で必死に怒りを抑えようとするミカ、しかしそんな彼女を見て酒泉はついに面倒そうな顔を崩してあははと笑い始めた

 

 

「ははははっ……冗談っすよ、ちょっとからかいすぎちゃいましたかね」

 

「……え?」

 

「俺がこんな大切な日を忘れる訳ないじゃないですか……〝誰かに祝われるようなめでたい日〟なんてアレしかないでしょ」

 

「なっ……まさか───」

 

 

今日が何の日か初めから分かっていたのか、その上で自分をからかう為に知らないフリをしていたのか

 

からかわれていたのはムカつくけど誕生日を知ってくれてたのは嬉しい、そんな二つの感情がぐちゃぐちゃに混じったミカは笑みを浮かべながら怒ろうとした

 

 

「も……もう!酒泉君ってばいくらなんでもからかいすぎ────」

 

「レッドアーカイブに〝カラサキ・シナ(ウェディング)〟が実装される日ですよね?」

 

 

突然梯子を外されたミカは笑顔のまま動かなくなる

 

カラサキ・シナ、それはレッドアーカイブ……通称レドアカに登場するキャラクターの名前だった

 

性別は女性、見た目は白髪少女、普段は治安維持組織の長を務めており、その実力はレドアカ世界でも最強クラス

 

まるで〝どっかの誰かさん〟の様なステータスを持つキャラクターの名前を出されたミカはワナワナと震え始め、そして────

 

 

「……まあ、そりゃそうだよねー」

 

 

────諦め気味に返事をした

 

 

「さーて、さっさと絆エピ進めて石回収しないとなー……んで?まだなんかあります?」

 

「べっつにー?勝手にどっか行けばー?」

 

「言われなくてもそうしますぅー」

 

 

互いに引き止めることなく、二人の足はそれぞれ反対の方向へと進んでいく

 

結局彼女の考えていた〝別の可能性〟とやらは潰え、跡にはいつも通り煽り合ってそのまま解散という何ら代わり映えのしない結果だけが残った

 

 

(……まあ、当然だよね)

 

 

折川酒泉にとって聖園ミカはただの喧嘩友達……否、今日の素っ気なさを鑑みるに友達とすら思われていないかもしれない

 

それでも彼女はほんの少しだけ期待をしていた、折川酒泉が聖園ミカを祝いにきたという可能性を、そうでなくとも折川酒泉が聖園ミカの誕生日を知っているという可能性を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、折川酒泉が自分の生を祝ってくれる事を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「ナギちゃん、セイアちゃん」

 

「うん?」

 

「どうかされました?」

 

「昨日はありがとね」

 

「なんだ、そんな短い一言を言う為だけに態々茶会なんて開いたのか」

 

「お礼でしたら昨日散々聞かされたのですが……」

 

「そ、そうだけど……改めてってこと!」

 

 

誕生日会を終え、皆笑顔のまま解散した次の日

 

ミカは自身の誕生日を祝ってくれた者達へ改めて感謝の言葉を伝えていた

 

先生に、正義実現委員会に、そしてティーパーティーの二人に、何度伝えても足りないとばかりに〝ありがとう〟を繰り返した

 

言葉を交わす機会が足りなかったばかりに悲劇を起こしてしまった彼女達、その過去を知る者達にとってミカのその行動は間違いなく〝成長〟と呼べるだろう

 

 

「……私さ、エデン条約の件で色んな人達に迷惑掛けちゃったでしょ?だからちょっと驚いちゃったんだ、まさかあんな大勢の人達に祝ってもらえるなんて」

 

「まあ、確かに各方面に多大な迷惑を掛けたね」

 

「盛大にやらかしましたからね」

 

「うっ……」

 

 

二人から一切の遠慮なく言葉のナイフを突き刺されたミカは二人を前に苦しそうな呻き声を上げるが、それが当然であるとばかりに言い訳をせず受け止めた

 

だが、二人は顔を見合わせたかと思えばクスクスと笑い出し、自分の落ち込んでいる姿をからかわれたと思ったミカは少しだけ膨れっ面で二人を睨んだ

 

 

「……そんな笑わなくてもいいじゃん、こっちは真剣に悩んでたのに」

 

「ああ、すまない……また勝手に一人で早とちりしてるなと思ってね」

 

「多方面に迷惑を掛けたというのはミカさん一人の話ではなく、私達三人の話ですよ」

 

「……え?」

 

「私は様々な重荷をナギサに背負わせて雲隠れし、その結果トリニティを混乱に陥らせてしまったからね」

 

「私は罪の無い者達にまで疑心を向けてしまい、挙げ句〝取り返しのつかない発言〟までしてしまいましたから……うっ……」

 

過去の行いと同時にトラウマまで呼び起こされたのか、くらりとする頭を押さえて目を閉じるナギサ

 

セイアも他人事ではないとばかりに、後悔の念を表情に出して目を伏せた

 

 

(……元はと言えば、私のせいなのに)

 

 

だというのにナギサとセイアは〝三人の罪だ〟と共に背負おうとしている

 

一人で背負うつもりだったミカの荷物を横から奪い、自分等も勝手に背負おうとしている

 

 

(なんでそこまで───ううん、今更ごちゃごちゃと考える必要はないよね)

 

 

理由を問えばきっと二人はこう答えるだろう、〝友達だから〟……と

 

ちょっと頑固者で、ちょっと屁理屈屋で、だけどお人好し、そんな親友と幼馴染に巡り会えたのは自分がこの世界に生まれ落ちたから

 

それに気付けた時、漸くミカは自分の誕生を心の底から祝う事ができた

 

「ナギちゃん、セイアちゃん、私と出会ってくれてありがとね」

 

「こ、これまた急ですね……お礼でしたら昨日散々伝えられたと先程も───」

 

「ううん、これだけじゃ足りないよ。二人には〝ありがとう〟も〝ごめんなさい〟もまだまだ沢山伝えないと!だ、だから………これからも一緒に居てほしいなーって……」

 

「おや……」

 

「ふむ……」

 

「……な、なに?」

 

「いや、今日の君は随分素直だなと」

 

「そ、そういうのいちいち口にしなくていいから!」

 

「まさかあのミカさんがここまでしおらしくなるとは……」

 

「ナギちゃんまで!?ていうか〝あのミカさん〟ってどういう意味!?」

 

「それは当然、野蛮で暴力的でゴリラみたいな風貌の───」

 

「セイアちゃんには聞いてないんだけど!?ていうかそれってセイアちゃんが思ってる事じゃんね!?」

 

先程までのしんみりした空気はどこへやら、お嬢様達のお茶会場は一転してただの口喧嘩会場へ

 

怒りで声を荒げるミカを大して相手せず、セイアを優雅に紅茶を飲みながら独り言の様に呟いた

 

 

「君に頼まれなくとも元より一緒に居るつもりさ……君の様な暴走機関車にはブレーキ役が必要だろうからね」

 

「ミカさんがまた問題を起こした時、その口にロールケーキをぶち込む役も必要でしょうから」

 

「ふ、二人とも酷い!もしかしてまた私が何かやらかすと思ってるの!?」

 

「そういえば君は謹慎中に脱獄してアリウス自治区に行った事があったな、エデン条約の件も含めてやらかすのは二度目だ」

 

「二度あるという事は……」

 

「ぐ、ぐぬぬぅ……!」

 

「ふふっ……冗談ですよ」

 

「ああ、冗談半分に流してくれ」

 

「残りの半分は……?」

 

 

怒る気力も体力も失くしたのか、ミカは溜め息を吐きながら椅子に着席する

 

そんな彼女に二人は半笑いで謝罪し、その後セイアは〝さて〟と会話に区切りをつけた

 

 

「反省会も程々にしておこうか、どうせ過去を振り替えるなら明るい話題の方がいいだろう?」

 

「そうですね、明るい話題と言えば……やはり昨日の誕生日パーティーでしょうか」

 

「ああ、あれは本当に楽しかったな、途中からミカが主役である事を忘れてしまうくらい夢中になってしまったよ」

 

「ちょっ……そこ一番大事なところだから!絶対忘れちゃ駄目なやつ!」

 

「お食事の方もどれも美味でしたね、特に酒泉さんの作ったパンプキンケーキは頬は零れ落ちてしまいそうになるくらい絶品でした……」

 

「まさかあそこまで才能を開花させていたとはね、彼には毎回驚かされるよ」

 

「ええ、専属のシェフとして雇いたくなってしまうほど素晴らしい一品でした」

 

「ただ、印象だけなら食後のミカとハナコの〝コハ吸い〟を賭けたツイスターゲーム対決もあのケーキに負けず劣らずだったな」

 

「あれは色んな意味でヒヤヒヤさせられましたね……」

 

「や、やめてよもー!あの時の事はあまり思い出したくないんだからさー!」

 

 

キャーキャーと騒ぐミカ、彼女を暖かい笑みで見守る二人

 

そこには確かに、〝トリニティ〟の名を体現した様な三人の天使が身を寄せ合って微笑んでいた────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ん?待って?…………酒泉君が作ったパンプキンケーキ?」

 

会話の流れが途絶え、途端にひゅ~という風の音が吹き抜ける

 

そんな彼女にナギサがキョトンとしたかと思えば〝あ〟とだけ声を溢し、直後やってしまったと言わんばかりに両手で自分の顔を覆ってしまった

 

「ナギサ……君って奴は……」

 

「ち、違うんです……あのケーキ本当に美味しくて……つい口がゆるゆるに……」

 

「……え?それ本当?本当に酒泉君があのケーキ作ったの?」

 

 

ミカからの問いに無言で頷く二人、その顔はどこか気まずそうだった

 

 

「その、御本人からは〝後から不味いだのなんだのケチつけられたくないから製作者は不明って事で〟と言われまして……」

 

「……酒泉君、私の誕生日なんて全く知らなそうだったよ?」

 

「なんだ、直接会っていたのか……だとしたらそれは演技だろうな」

 

「…………もしかして、あの場に居た全員この事知ってた?」

 

 

これまた無言で頷くナギサとセイア

 

全員……つまりは目の前の二人は当然として先生も、補習授業部も、正義実現委員会も、全員が……

 

 

「誕生日パーティーの時、コハルは〝ナギサ達と先生がミカの誕生日について話しているのを偶々耳にしたからミカの誕生日を知っていた〟と答えただろう?」

 

「その……本当は先生ではなく、私達と酒泉さんがミカさんのお誕生日についてお話していたんです。酒泉さんが来ればミカさんも喜ぶと思って……結局〝それだけは有り得ない〟と頑なに否定されて断られてしまいましたが」

 

「…………」

 

「ミ、ミカさん?酒泉さんも恐らく悪気があって隠していたわけではなく……」

 

「多分、これも彼なりの照れ隠しだと……」

 

「……は……」

 

「……ミカ?」

 

「……ミカさん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!?!?!!?」

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

────────

 

 

 

──────

 

 

 

 

 

「ああもう!!!なんで電話出ないの!?モモトーク送っても〝いましごとむり〟しか返ってこないし!!!」

 

 

「ミカさん、荒れてますね……」

「まあ、当然だろう……彼女としては自分の誕生日を必死こいてアピールしてる姿を晒した様なものだからね」

 

 

「既読無視しないでよ!!!早く出てよ!!!出て!!出て!!出ろ!!!」

「返信遅すぎるでしょあいつ!!!私からモモトーク送ってあげてるんだよ!?!女の子の扱い方がなってないんじゃない!!?」

 

 

「……どうしましょう」

「触らぬゴリラに祟りなし、だ」

 

 

「もういい!!こうなったら直接ゲヘナに会いに行くもん!!それでも会えなかったら家の前でずっと待ってればいいだけだし!!」

 

「……よろしいのですか?セイアさん」

「何がだい?」

「このままではセイアさんが出し抜かれてしまうかもしれませんよ?」

「これも誕生日プレゼントみたいなものさ、どうせ最後に勝つのは私だからね」

「そうですか……」

 

 

「こうなったらスタンプ爆撃しちゃうもんね!!!電話も十秒刻みでかけてやるんだから!!!」

 

 

「それに……私としてはミカより君の方が危うい気がするからな」

「……私ですか?」

「君、ニコメディアトゥループの一件から妙に彼と親しそうにしているじゃないか。恐らく彼に絆されるような言葉を投げ掛けられたんだろう?……私の勘はよく当たるんだ」

「っ……」

「口説かれたのか?それとも慰められたのかい?」

「……彼は人の弱音を受け止めるのが上手な方ですね……とだけ」

「おや、それはつまり───」

 

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?!!?モモトークブロックされたあああああああ!!?」

 

 

「……そろそろ止めてやるか」

「……ですね」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「酒泉?どうして私が怒ってるか分かる?」

 

「わ、わかんないっピ……」

 

「……最近、画面の中の女の子に夢中みたいね?しかもウェディングドレスまで着せて」

 

「あっ……あっ……」

 

「カラサキシナ……だっけ?体がちっちゃくて、髪が白くて、それで組織の長の……」

 

「ち、違っ……」

 

「ねえ、どうして現実の私より画面の向こうの女の子にドレスを────」

 

「違うんすよぉ!そりゃ空崎さんからしたら〝こんなちっちゃい子に欲情するなんて気持ち悪い〟って思うかもしれないっすけどぉ!でも俺の感情はそういうあれじゃないんすよぉ!」

 

「……私が怒ってるのはそこじゃなくて────」

 

「父性!あくまで父性的なやつなんすよぉ!俺がこんなちっちゃい子を性的に見るなんて天地がひっくり返ってもありえな───いやああああああ!?つのドリルらめええええええええ!!?」

 

 






正実補習ティーパーティー先生に囲まれようと「いや俺ゲヘナなんで」の一言で堂々と帰宅する男、折川酒泉

空気を読めるようで読めてない男、折川酒泉

自分の誕生日の話になると露骨に誤魔化す男、折川酒泉

……本当は「酒泉君なんて大嫌い!顔もみたくない!」って大喧嘩した次の日になんらかの戦いに巻き込まれて顔面ぐちゃぐちゃになった酒泉君の死体とミカがこんにちはするお話を書こうとしてました

でも僕は読者の皆さんと違って人の心があるのでやめておきました、読者の皆さんと違って人の心があるので
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