〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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これの続きです


転生するのが遅すぎた男の日常

 

 

 

 

「は?アビドスの都市伝説?」

 

「そそ、なんか面白い話知らない?」

 

「アビドス七不思議作りたいんだよねー」

 

 

そう訪ねてきたのはアビドス学園オカルト部の生徒二人

 

生徒会副会長の俺ならアビドスに纏わる面白い話でも知っていると思っていたのだろうか……まあ、そこらの生徒よりは多少詳しいだろうけどさ

 

「でもなぁ、都市伝説かぁ……悪い、特に浮かばないわ」

 

「だよねー」

 

「副会長でも駄目かぁ」

 

 

目の前で露骨にガッカリされると期待に応えられなかった罪悪感が沸いてきてしまうな……無知無知酒泉ですまない

 

 

「……そもそもなんで七不思議なんて作る事に?」

 

「ほら、他の学園には大体そういう系の話があるでしょ?例えばアリウスの〝ラッパ吹きの亡霊〟とかミレニアムの永遠に劣化しない〝恐怖の双子機械人形〟とか、他にもゲヘナの〝空の一席〟とかさ」

 

「空の一席?なんじゃそりゃ」

 

「んーとね、確か……ゲヘナ風紀委員会の執務室にはずっと誰も座ってない席があるんだって」

 

「どっかの代の風紀委員長が〝その席はずっと残しておけ〟みたいな言い付けを残してからずっと守られ続けてきたルールなんだってー」

 

「なんでそんな意味分からん事を……?」

 

「さあ?そこに座る筈の誰かを待ち続けてるとか動かすと悪霊の封印が解かれるとか色々説はあるけど……」

 

「まあ、とにかく他の学園に習って私達も都市伝説を作ろう!みたいな?」

 

「へー……伝説って?」

 

「ああ!」

 

 

そもそも都市伝説って意図して作るものではなくない?という疑問を飲み込んでそれっぽい話を記憶の中から漁ってみる……が、特に浮かばず

 

俺はめっちゃ理性的に眼鏡くいっする冷静沈着天才タイプなのでオカルトとかその手の話はあまり信用していなかったりするのだ、はい今〝いかにも馬鹿っぽい自己紹介だな〟とか思った奴全員しばく

 

 

「……あ、そういえば幾つかそれっぽい話あったわ」

 

「マジ?どんなの?」

 

「かなり昔の話なんだけど、アビドスの砂漠にでかくて青い幽霊が現れたんだってさ。それを当時のアビドス生徒会とゲヘナの風紀委員で協力して除霊した……とかなんとか」

 

「んー……なんかふわふわしてるなぁ……」

 

「それじゃ都市伝説にはできないかなぁ……他にない?」

 

「他って言われても……あ、手帳おばけの話は?」

 

「手帳おばけ?」

 

「これまた昔の話なんだけど、アビドスで〝てちょう……てちょう……〟って呟きながら砂漠を彷徨う幽霊がいた……とかなんとか」

 

「これまたふわふわしてるなぁ……」

 

「うーん……砂漠全体が対象だとアビドス高等学校の都市伝説とは言えないよねぇ……」

 

「これも駄目か……」

 

 

他には?と訊ねられるも俺自身そこまでオカルト話に詳しい訳ではないので既にネタを切らしている状態だ

 

ただの歴史話でいいなら〝昔アビドスで宇宙船が発掘されたんだぜー〟とか幾らでも面白い話してやれたんだけどな……

 

 

「悪い、もう浮かばないわ」

 

「そっか、忙しいのに時間取らせちゃって悪いね」

 

「明日の戦術対抗戦頑張ってねー」

 

 

ひらひらーと手を振りながら去っていく二人、少しずつ小さくなっていく背中を見送り……おい待てェ、廊下は走るんじゃねェ

 

まあ、わざわざ追いかけて注意する程の事でもないし今回は見逃してあげるけどさ

 

 

「……しかし七不思議ねぇ」

 

 

怪談ではなく逸話であればとびっきりのネタを用意できるんだけどな、例えば────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────百年程前のアビドス生徒会はたった五人で学園を守っていたとか

 

 

 

 

 

 

 

 

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「都市伝説かぁ……そもそもアビドスって昔はかなり人が少なかったし、そういう噂自体流れる事がなかったんじゃないかな」

 

「……言われてみれば」

 

 

という訳で早速生徒会室にて会長様に訊ねてみたところ、ごもっともすぎる返答を頂いた

 

確かに……噂を流す人もそれを聞く相手も居ないというのに、都市伝説なんて生まれる筈がなかった

 

 

「でも、何も力になれないのはオカルト部の子達に申し訳ないよね……そうだ!私が〝うらめしやー!〟って言いながら夜中の校舎を徘徊したら七不思議って事にならない?」

 

「なりませんよ、幽霊にしては可愛げ有りすぎです」

 

「そ、そうかな?えへへ……」

 

「何照れとんねん」

 

 

自らを幽霊と名乗る梔子さん、それを冗談で言ってるのか本気でそう思っているのか俺には理解できない

 

何故なら彼女は────既に一度〝死〟を経験してしまっているのだから

 

……俺がそれを知ってるのは原作知識があるからで、当然梔子さんはそんな事など知る由も無いのだが

 

 

「まあ、無いなら無いでアイツらも別の話題探すでしょ……んじゃ、雑談も程々にそろそろ本題の方に移りましょっか」

 

「明日の戦術対抗戦の事だね?私に任せて!酒泉君に沢山カッコいいところ見せちゃうんだから!」

 

「いや、前線は俺一人で十分なんでいつも通り逃げに徹してください」

 

「ひぃん……」

 

視線を少し下げると絆創膏だらけの彼女の脚が視界に映る、ここに新しく絆創膏を追加する訳にもいくまい

 

無論、その細かい傷の中には人助けの過程で付いた物もあるので傷だけを理由に〝実力不足〟だなんて思わないし、むしろ精神性も含めたら強者の部類に入るとすら思っているのだが

 

でもやっぱ……その……アビドスの長にしてはちょっとぽわぽわしすぎているというか……

 

 

「しゅ、酒泉君?どうして私の脚をじっと見てるの……?」

 

「……」

 

「も、もしかしてスカートの中覗こうとしてる!?だ、駄目!そういうエッチな事は学校ではしちゃいけないんだよ!?」

 

「こっちはたった二人だってのに随分余裕ありますね」

 

「ごめんなさい……」

 

 

こちとらたった二人のアビドス生徒会に対し、対戦相手はトリニティの色んな部活の生徒達

 

試合が始まる前から既に数的不利が決まっている……というのはいつもの事なのであまり気にはしないが、それに実際二人でも余裕な試合が多かったし

 

……この時代のキヴォトス、あんまつえーの居ねえのな

 

 

「ね、ねえ……偶には私も前線に出て一緒に戦うっていうのは……」

 

「前にそれやったらスッ転んだ梔子さんに背中押されてそのまま梔子さんに潰されたりしたんすけど、あと薬莢踏んで転んだ梔子さんにシールドで後頭部ぶん殴られた時は流石に死ぬかと思いました」

 

「ひぃん……」

 

 

何が〝ひぃん〟だ〝ひぃん〟なのはこっちだよ、無理にこっちの動きに合わせる必要は無いって伝えてるのに無理して一緒に戦おうとするからそうなるんだよ

 

因みに梔子さんに潰された時も普通に死にかけました、原因は謂わずもがな窒息死……え?何で窒息しそうになったのかって?そりゃおめぇ……あれよ

 

 

「とーにーかーく!梔子さんはひたすら逃げるか、それが無理そうなら俺の後ろに隠れててください!そうしたら俺が絶対梔子さんを守り通してみせますから!」

 

「う、うん……ごめんね?酒泉君……頼りない先輩で……」

 

 

先程の失敗談を述べたのがトドメになってしまったのか、梔子さんは誰の目から見ても分かるくらいしょぼんと落ち込んでしまった

 

ちょっと厳しくしすぎたか?……いや、この人の場合はこれくらいが丁度良い

 

身を削ってでの人助けはあまりしないでくれと頼んでも結局困っている人は見捨てられないし、タチの悪い連中を制圧しに行った時に〝こっちは一人で大丈夫です〟と伝えても善意で助けに来ちまうし、そんで結局自分が危ない目に遭うし

 

お人好しというか何というか……さっきも言った様にこの人はぽわぽわしてるところがあるから、その分後輩である俺がしっかりしないと

 

……ただ、流石に言いすぎたかもな

 

 

「……すみません梔子さん、ちょっとデリカシー足りなすぎました。俺、梔子さんのことずっと〝頼りになる人だな〟って思ってますよ」

 

「う、ううん……いいの……私がダメダメなのは自覚してるから、そんな無理して良いところ探ししなくても……」

 

「無理なんかしてませんよ。たった二人しかいない生徒会なのに人望があるのは梔子さんが生徒一人一人と真剣に向き合ってきたからだし、学園外でも地域の方が催し事に協力してくれるのも全部梔子さんが人助けして回ってたからじゃないですか」

 

 

……あまりその人助けで怪我はしてほしくないのだが、かといってその善意を否定するつもりはない

 

梔子ユメという少女を語る上で彼女のお人好しエピソードは避けられない、それ程までにこの人は優しすぎるのだから

 

 

「それにほら、昔と違ってアビドスはもう十分すぎるほど人が集まってるってのに梔子さんは現状に慢心せず今も人を呼び込もうと必死に頑張ってるじゃないですか、そういう行動的なところを見る度に〝やっぱアビドスのトップに相応しいな〟って思わされますよ」

 

「そ、そうかなぁ?私がやってきた事なんて歴代の会長もやってきた当たり前の事だと思うんだけど……」

 

「だーかーらー、今のアビドスにその〝当たり前〟はもう必要無いでしょう?なのに今も頑張ってるのが凄いってんですよ」

 

 

そもそも当たり前の事だからって褒めなくていいとはならんだろう、毎日働いてる大人も毎日勉強してる生徒も例外なく全員偉い

 

……というのが、前世で十何年も家事中の母と帰宅後の父の背中を見続けてきた俺の持論だ

 

「ただ考え無しに突っ走ってるだけじゃなく、広報のアイディアだって毎回面白そうなの持ってきますし……ほら、この前の砂祭りの案なんかも最っ高に楽しめそうじゃないですか!」

 

「っ───」

 

「だから、まあ……もうちょっと生徒会長としての自分に自信を持ってもいいんじゃないすか?」

 

「……本当?本当にそう思ってくれてるの?」

 

「こんなところで嘘ついてどうするんですか」

 

 

嘘偽りない本心をさらけ出すのは少し気恥ずかしいが、それでこの人が笑顔になってくれるのならこの顔の熱さも喜んで受け入れよう

 

それに元はと言えば俺が加減ミスって厳しく言いすぎたのが原因だし、ここは素直に謝るべき───「ふっ……ぅ……う゛ぅ……」───え?

 

 

「あ、あの……梔子、さん?もしかして泣いて……」

 

「うぅ……う゛ぅぅぅ……!」

 

「も、もしかして俺のせい……っていうかそれしか考えられませんよねぇ!?」

 

 

マズイ、やらかした、戦闘中は後ろに下がっててほしいからって余計な事を言ってしまった

 

……と自己反省していたが、首を横に振る梔子さんを見る限りどうやら泣き出してしまった原因は違うらしい

 

 

「そ、そうじゃ……なぐで……す、砂祭り……嬉しくでぇ……!」

 

「す、砂祭り?」

 

 

な……なんだ?祭り事を開けるのがそんなに嬉しいのか?

 

 

「んな大袈裟な……砂祭りくらい何十回何百回でも開けばいいでしょう、幾らでも付き合いますよ」

 

「ぅ……うあああ゛あああ゛ん!!!」

 

「すみません、俺みたいなカスが同伴しようだなんて生意気でした」

 

「ち、ちが……しゅせんく、いっしょで……う、うれしぐでぇ……!」

 

「あ、そういう……いやだとしても泣いて喜ぶ程じゃ───」

 

「うええぇえ゛えん!!」

 

「あ、ああもう!分かった!嬉しいのは分かったからとりあえず涙拭いてください!」

 

「う゛ん……」

 

制服の内ポケットから出したハンカチで強引に顔を拭くと、もっとやってと言わんばかりに顔を近付けてくる梔子さん

 

その姿を見て俺は〝デケェ妹が出来たみたいだ〟って思いました、まる

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「あー大変だった……今後は口に気を付けねえとな」

 

 

今日の出来事を振り返り、心の中で猛省しながら帰路を歩く

 

……昔のアビドスだと、こんな風に他の帰宅中の生徒を見掛ける事もなかったんだろうな

 

まあ、俺が知ってるアビドスは〝現在のアビドス〟と〝原作で描写されたアビドス〟だけなんだけどな、それ以外は歴史の授業で学んだ程度だし

 

 

「……梔子さん、だから泣くほど喜んでたのか?」

 

 

もしかしたらアビドスで誰かと何かをやれるってだけで、あの人にとっては幸せなのかもしれない

 

そう考えれば考える程に、先程の自分の〝泣く程の事か?〟なんていう疑問が無神経だったと気付かされる

 

……今後はなるべく梔子さんのやりたい事を優先して動くようにしよう、うん

 

 

「さーて、その為にももっとアビドスの人口を……ん?」

 

 

などと誓ったはいいが、早速げんなりする光景を見せつけられる

 

下校中、俺が度々利用する何の変哲もない自販機、その横のゴミ箱に備え付けられているゴミ箱……の手前に大量の缶やらペットボトルやらが放置されている

 

ゴミ箱の方が満杯になってしまったせいで捨てる事ができなかったのだろうか、中には明らかにポイ捨てしたかの様に雑に横たわっているペットボトルまである

 

 

「おーおー、作業員さん困らすんじゃねえよ……」

 

 

アビドスに人が増える事で起こる〝負の側面〟を目にしてしまい、呆れ果てた様な溜め息が出てきてしまう

 

まあ、人口が増えれば当然こういう事や争い事だって増えるわな……

 

 

「よし、こんなもんでいいだろ……ん?おお、ナイスタイミングだな」

 

 

ゴミ箱に入り切らない分はもうしょうがないので取り敢えず自販機前やらに転がっているペットボトル等、作業員さんの邪魔になりそうな場所のペットボトルだけまとめて脇っちょに移動させておいた

 

その直後何らかの乗り物の音が聞こえてきたので振り返ってみれば、丁度その自販機のメーカーのボトルカーが徐行しながら寄ってきていた

 

これ以上の行為は余計なお節介になるかもしれない、仕事の邪魔にならない様に頭だけ下げてさっさと立ち去ろうか

 

 

「お疲れ様でーす……」

 

「待て」

 

「……は、はい?」

 

 

軽く挨拶してその場を去ろうと立ち上がった瞬間、運転席から出てきた色白の女性が制止してきた

 

……モデル並みに美人なのに鼠色の作業服ってところにちょっとギャップを感じてしまった

 

 

「それを片したのは汝か?」

 

「ま、まあ……そうですけど……」

 

「ふむ……」

 

 

正直に答えると作業員のお姉さんがこちらにツカツカと寄ってきた

 

やはり余計なお節介だったろうかと若干不安になっていると、お姉さんは俺の目の前で立ち止まり顔をじっと見つめてきた

 

 

「成る程、面白い眼をしているな……少し待て」

 

「え?は、はぁ……」

 

「甘味と苦味、どちらが好みだ?」

 

「えっと……甘味、ですかね」

 

「そうか」

 

 

急に何ぞやと思いながら、その場で立ち止まる

 

するとお姉さんは俺に背を向けて自販機の方へ移動し、そこに五百円玉を入れてイチゴミルクのボタンを押した

 

ガコン!とジュースが落ちる音と同時に〝当たればもう一本!〟のルーレットが始まるも、数秒後には〝ざんね~ん!〟という音声が鳴り響く

 

しかしお姉さんはそんな事など気にも留めず、自販機の取り出し口からジュースを取り出し、それを俺に投げ渡してきた

 

 

「うおっと……あ、あの……これは?」

 

「汝への褒美だ、くれてやる」

 

「い、いやいや!ただちょっと掃除しただけなのに対価なんて受け取れませんよ!」

 

「それならばただの恵みだ、受け取れ」

 

 

これ以上こちらの言葉を聞くつもりはないのか、お姉さんは俺の返答を待つことなくペットボトルの回収を始めてしまった

 

お姉さんからの御厚意を無下にするのもどうかと思った俺は、今度は深く頭を下げてから〝ありがとうございます〟と礼を言い、その場を後にした

 

……そういやあのお姉さん、俺の眼が優れてる事に初対面で気付いていたけど一体何者なんだ?

 

 

「……まあ、何でもいっか」

 

 

それより早く帰宅しなければ!寮に帰ればとてつもないスペシャルイベントが待っているのだから!

 

ん?スペシャルイベントが何かって?それはな……なんと!俺が借りてる寮の寮母さんが肉じゃがをお裾分けしてくれる!らしい!

 

 

「コクリコさんの肉じゃがかぁ……ぜってー美味いだろうなぁ……」

 

 

この前御馳走してもらった鯖の味噌煮もめちゃくちゃ美味かったしな!料理も出来てしかも美人とか完璧か?そんな人の手作り料理を食わせてもらえるとか前世の俺徳詰みすぎでは?

 

……まあ、コクリコさんと話してると横のうるせぇガキンチョが尻蹴ってきたり嫌みったらしいヘビ女がチクチク言葉で突っついてくるけど、それ込みでもプラスだろうよ!

 

 

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