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アリウスの攻撃により崩壊したトリニティ、その景色をトリニティから少し離れた場所から見つめる四つの影があった
「………そろそろ終わりだね」
「あんな崩壊した場所で戦い続けるなんて………皆さん苦しそうですねぇ………」
「…………」
「…………分かっている姫、最後まで気は抜かない」
次で最後だ………これで全てを終わらせて───
────仲間を導くのがリーダーの役目だろ!?自分から仲間を地獄に連れていってることにどうして何も思わないんだよ!?
「……………」
────どれだけ虐げられようが、どれだけ仲間のことを思っていようが、抗うことすら諦め、操り人形に徹することに決めたのはお前ら自身だろうが!
「……………」
────お前らは被害者じゃない………!間違いなく加害者だ………!
「……………っ!くっ………!」
あの男の声が響く、忌々しいあの男の声が
知ったような口をきくあの男の声が────
テロリストの気持ちなんて…………理解したくもねえよ………
「…………っ!」
「………リーダー、大丈夫?」
「いや………問題ない」
誰に何を言われようと今更止まる訳には行かない、全てを無に還そうと歩きはじめる
「vanitas vanitatum, et omnia vanitas」
────全てはただ虚しいだけだ
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「委員長の様子は?」
「………相変わらず酒泉の側を離れません」
「離れてる時間のほうが少ないぐらいです」
トリニティの会議室、そこでゲヘナとトリニティの上層部同士での作戦会議を終えたアコとチナツがイオリに問いかけられる
彼女達の最新の記憶に写る風紀委員長の表情は、ずっと曇ったままだった
酒泉の手術が完了してから、ずっと離れる気配がない
重要な会議以外では食事も睡眠もずっと酒泉の側で行う
自分達の大切な仲間が傷つけられ、自分達の委員長の心がボロボロになっている時に会議に集中できるほど彼女達は冷静ではなかった
「酒泉の馬鹿………っ!1人で突っ走って………!」
「イオリ、落ち着きなさい…………とはいえ、私も余り冷静ではありませんが」
「………今私達に出来ることは限られています、委員長と酒泉が戻ってきた時のためにも限られた行動の中で精一杯足掻きましょう」
「アコちゃん……チナツ……ごめん、ちょっと暴走してた」
「あなたが暴走しているのはいつもの事では?」
「そんなっ!?」
「ふふっ………」
ずっと重かった空気が少しだけ軽くなる、その時───
「皆さん、戦闘に備えてください!」
ゲヘナ風紀委員の1人が突然ドアを開けて大きな声量で言い放つ
「………まさか」
「先程トリニティから連絡があって………」
「再びアリウスが来ますっ!!!」
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壊し損ねた平和を再び壊そうと侵略者が進行する、無数の亡霊を引き連れて
アリウスとユスティナ、数は圧倒的に不利だが────
「ムツキ!ハルカ!敵の進行位置は予測できている!爆弾を仕掛けてすぐに退却を!」
「ハスミ!狙撃手だけ引き連れて壊された建物の上に待機を!あまり気分は良くないけど思いっきり壊してくれたお陰で瓦礫で身を隠せる!」
「ツルギ!敵を全て倒すことは考えなくていい!ムツキとハルカの行動をバレないようにするために、ただ思いっきり暴れてターゲットを取ってくれればいい!」
「イオリ、その地域は全員避難済みだ!敵をそこに誘導だけしてくれればそれでいい!」
〝数〟を押し返せるほどの〝質〟を持つ実力者の生徒達、そして彼女達に的確に指示を与えることのできる戦力によって戦況は互角だった
しかし─────
「っ!皆、上空!」
先生の咄嗟の指示により全員が回避行動を取ろうとした次の瞬間────
ミサイルが降り注いだ
「皆無事!?」
「何とかね……だけど社長、結構面倒そうな奴ら来ちゃったよ」
「彼女達は………!」
「キェヘヘヘヘへへへ!…………怒りを抑えろよ?ハスミ」
「………全員見事に避けられたね」
「問題ない、直接倒せばいいだけだ…………作戦通り行くぞ」
「……………!」
「辛く苦しい戦いもようやく終わるんですね………」
襲撃者の正体はアリウススクワッド、いまだに抵抗する戦力を潰すため直接出向いてきた
ユスティナ聖徒会はいくらでも補充できるがアリウス生徒はそうではない、ユスティナ以外の戦力が殲滅されたらそのままスクワッドごと押しきられる
このままユスティナ以外の手札が残っているうちに決着をつける、それが彼女達の狙いだった
─────そしてここで決着をつけたいのはゲヘナやトリニティも同じだ、少しずつアリウスの戦力は削げているものの、無限に湧き続けるユスティナを相手にしていたらいずれ戦力が尽きる
「…………皆、ここで全て終わらせるよ」
先生が生徒を奮い立たせる、生徒達を守るために
「…………行くぞ、全て無に還す」
サオリが仲間を引き連れる、全ては────家族を導くために
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「……………」
戦闘が始まった、あちこちから銃声や爆発音が聞こえる
でもそんな音は私の耳に届く酒泉の呼吸音に比べたら些細な音だった
「酒泉………」
そっと彼の顔に触れる、いつも私に慈しむような表情を見せてくれる彼の顔は今は苦痛で歪んでいる
いつも私を支えてくれた手はボロボロになり、包帯で巻かれている
いつも私のために走り回って仕事をこなしてくれた彼の脚は、一目見ただけで歩くことすら困難だと理解できるほど傷ついている
いつも私のことを褒めてくれた声は
──────もう聞こえてこない
「大丈夫………」
酒泉が私を置いていくわけがない
「次に目を覚ました時にはあなたを傷つけた人達は皆いなくなってるわ」
酒泉は私のことをまた支えてくれるはず
「だから………」
また私のことを褒めてくれるはず
「行ってくるね」
───少女は愛銃を手に、戦場へ向かった