感情というものは時に人を強くさせる、しかし逆に人を脆くさせることもある
まるで漫画のように怒りで攻撃性を増し強くなることもあれば、怒りで冷静さを失い簡単に敗北することもある
錠前サオリの怒りは間違いなくプラスの方に働いていた
痛みも忘れるほどの激情で立ち上がり、仲間の敵を討とうと確実に敵を倒すため、自身の怒りで埋もれた心とは裏腹に思考は的確に敵の次の動きや状況の把握をこなしていた
しかしそんな事など何の意味も成さない
何故ならば
「ぐぅ………っ!!」
「どうしたの?その程度?」
────元から圧倒的な実力差がある場合、焼け石に水だ
兎が強くなろうと獅子には勝てないように、蟻が強くなろうと人間に踏み潰されるように
空崎ヒナは依然変わりなくアリウススクワッドを圧倒し続ける
「………あのマスクの子、爆弾が直撃する瞬間バリアのような物が展開されるのが見えた気がしたけど」
やっぱり気のせいじゃなかったのね
そう思考するヒナの視線の先には、苦しそうに咳き込みながらも確かに生きている秤アツコの姿があった
「これ以上っ………好きにはさせないぞ………!」
ヒナを睨みながらアツコを庇うように立ち塞がるサオリ、そんなサオリの言葉をヒナはフッと一瞬笑った後すぐに無表情に戻り冷静に言い放った
「彼女を傷付けたのは貴女でしょ?」
「何だとっ!?」
「そもそもの話、貴女があんな物を使わなければ姫と呼ばれているあの子が傷つくことは無かった」
「それは………」
「貴女が殺意を持って行動を起こしたから仲間が傷付いた」
「貴女が人を殺す為にあんな爆弾を使ったから彼女が死にかけた」
「貴女が手段を選ばなかったからこんな悲劇が生まれた」
「貴女達が酒泉を殺そうとしたから──────」
今から貴女達も死ぬことになる
「っ!?」
ヒナがサオリ目掛けて突っ込んでくる、サオリが正面から銃撃を浴びせ、ヒヨリもサオリの後ろからスナイパーを放つが、ヒナの勢いは止まらない
「ぐっ!!!」
サオリの懐の手前まで潜り込んだヒナがサオリの腹に蹴りを放つ、サオリは咄嗟に片腕で防御するが
「がはっ………!」
そのまま防御している腕ごと蹴りあげ、無防備になった腹に拳をめり込ませる
苦痛で顔が歪むサオリをそのまま殴り飛ばし、今度はヒヨリに視線を向け走り出す
「ち、近づかせません!………」
ヒヨリの後ろにはアツコとアツコを庇うミサキがいた、ここで引くわけにはいかないと銃を構え発砲する
しかしヒナはヒヨリの攻撃を愛銃のデストロイヤーの銃身で防ぎ、そのまま接近し膝をヒヨリの腹にいれる
「うぅ………!」
ダメージを受け、前のめりになるヒヨリの身体をヒヨリの髪の毛を掴むことで無理矢理立たせたヒナはそのままデストロイヤーを腹に当て、容赦なく撃ち出す
「……ぁ……あ……!」
あまりの痛みで悲鳴すら上手くあげることの出来ないヒヨリを無視してそのままアツコとミサキにゆっくりと近づくヒナ
「………っ!」
まるで幽鬼のように近づいてくるヒナにミサキは一瞬恐怖を感じるものの、すぐに構えていたスティンガーミサイルを放つ
これまでの戦闘でただのミサイルではヒナは倒せないことを理解していたミサキは、爆煙で見えなくなっている間に一度距離を取ろうとアツコを抱えようとする
─────その瞬間、爆煙の中からデストロイヤーの一斉掃射が襲いかかる
「くっ………!姫………!」
アツコを抱えようとしていたミサキと身体のダメージのせいで抵抗できないアツコがそのまま直撃を食らい吹き飛ばされる
あらゆる抵抗を許さない、まるで暴君のようなヒナの圧がアリウススクワッドの心と体を追い詰めていく
「お前の相手は………私だ………!」
いつの間にか立ち上がっていたサオリが銃を撃ちながらヒナに接近する
が、その攻撃全てを真正面から受け止めたヒナはそのまま近づいてくるサオリの顔を掴み地面に叩きつける
「っっっ!!!」
勢いよく頭部から叩きつけられたサオリの脳が揺れるが、すぐに反撃を行おうと身体を起こそうとした瞬間………
「がっっっ………」
腹部を強烈に踏みつけられる
しかし銃だけは手放さなかったサオリはヒナに銃口を向けようとしたが………
「ぐっ………!」
今度は銃を握る手をデストロイヤーで撃ち抜かれる
銃を離すまで撃ち続けられ一気にボロボロになるサオリの手、とうとう痛みに耐えきれず銃を手放してしまう
あまりの痛みに苦痛の声をあげそうになるのを必死に押さえながら、ボロボロの手で離してしまった銃を拾おうとするが
「もう抵抗しないで」
「っ………ぁぁ……!」
反撃の芽を潰そうと容赦なくサオリのボロボロの手を踏みつける
「いい加減に諦めて、私は早く酒泉のところに戻らないといけないの」
そう言いながらサオリに止めを刺そうとするが、背後で何かの音が聞こえ、後ろを振り向くと………
「………リーダーから離れて」
「さ、させません………!」
「…………」
今にも壊れそうな身体で立ち上がるミサキとヒヨリ、そして膝をつきながらもヒナに銃を向けるアツコの姿があった
「……………………………いい加減にして」
もう貴女達に構っている暇はないの
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戦場から離れた場所、トリニティの病室
そこにはアリウススクワッドに敗れ、生死の境を彷徨う事になった折川酒泉の姿がある
─────はずだった
「セリナ先輩、大変です!」
「ハナエちゃん!何があったんですか!?」
「酒泉さんが…………!」
──────病室からいなくなりました!
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ぐっ………ETOを………成立させて………ユスティナを止めないと………
恐らく先生は指揮に手一杯で………ユスティナ聖徒会の情報をあまり調べられていないはず………先生に………連絡を………教えないと………
俺が中途半端に侵攻を防いだせいで原作ほど補習授業部も関わっていない………浦和ハナコのサポートもない………
最初から原作通りにするためにアリウスを無視するか、アリウスの侵攻を完璧に止めていれば………
俺の中途半端な偽善と中途半端な実力のせいで………こんな事に………!
だけど悔いている暇はっ……ない………っ!
ぐっ………!………げほっ!
…………この程度の痛、み………原作で………先生や空崎さんが受けた痛みに比べれば………!
…………待っててください、空崎さん
すぐに向かいます………!