「お願い………そこを退いて」
俺に向けて………というより俺の後ろの秤アツコに向けて殺意を飛ばす空崎さん
あっぶねえ………間に合ってよかった………
正直な話アリウススクワッドに対して思い入れがあるわけではないが、ここで死なれるのは色々と困る
これから先の未来で襲撃してくる〝色彩〟、その色彩が生み出すヒエロニムスとの戦闘で彼女達は必要になる
まあ………そもそもアリウススクワッドが死んでしまったらベアトリーチェも色彩と接触する儀式を行えないから色彩が来ないって可能性もあるけど
そう考えたらこのまま見捨てる方が良いのかもしれない
…………………いや、アリウスを助ける理由を探すのはもうやめよう
俺はただ…………
───空崎さん、さっきも言いましたけど俺は貴女に〝人殺し〟になってほしくないだけなんです
「酒泉…………でもあいつらは酒泉を………」
…………俺は聖人君子じゃありません、自分が殺されかけた事の恨みや怒りだって当然あります
ここまでズタボロにされたら当然スクワッド全員に対して思うところがあります
「それなら………!」
でも!!!
「…………!」
それ以上に、俺のせいで空崎さんの手を汚させてしまうのが嫌なんです
「酒泉………」
俺は人殺しの経験はないですけど、憎んでいる相手を一度殺してしまうと、殺人のハードルが下がってしまうと思うんです
「…………」
「あいつは敵だから殺そう」と、「あいつは悪い奴だから殺そう」と、「既に何度も手を汚してるから殺してしまおう」と、人を殺す為の理由を簡単に作れるようになってしまうと俺は思います
「でも…………あいつらは酒泉を殺そうとした!!!」
……………………
「自分達の目的の為だけに酒泉を囲んで!痛め付けて!殺そうとした!」
空崎さん…………
「私は………!私はあいつらを許せない………!」
……………俺もですよ
「え………?」
俺だってアリウスの事は許せません
大勢の人達を巻き込み、先生の事を殺そうとし、風紀委員の皆を傷付けた
…………だけど、ここで俺達が抑えないとまた血が流れる事になる
アリウススクワッドを殺せばアリウス生達は一旦退却するかもしれない、けどアリウススクワッドという要を失ったアリウスは暴走する可能性だってある
「……でも………でも!」
アリウスを許す必要はないんですよ、ただここで殺してしまえば取り返しのつかない事になる
空崎さんの怒りや憎しみを否定するつもりはありません、でもこれ以上戦いを続け、大量の血を流すのは嫌なんです
「…………」
お願いします、空崎さん
─────俺達で、戦いを終わらせましょう
「………私は…………」
……………
「私はただ…………酒泉を護りたかったの…………」
空崎さん…………
「酒泉を傷付けた人達を全員消せば…………酒泉を護れると思って…………」
………………
「酒泉の事を殺そうとした奴らを徹底的に潰せば………酒泉を狙う奴らもこれから先いなくなると思って…………」
………………
「もっと私が強ければ…………貴方を………」
あんな目に遭わさずにすんだのに────!
───そう叫ぶと、空崎さんは瞳から涙をこぼし出した
一度溢れたものは止まらなく、まるでずっと吐き出す事が出来なかったかのように溢れ出てくる
「酒泉を護りたかったっ!!!」
「酒泉を助けたかったっ!!!」
「酒泉が目を覚ました時に酒泉が安心できるようにしたかったっ!!!」
「これ以上酒泉に傷付いてほしくなかったっ!!!」
そして………
「私の大切な人の役に立ちたかった………っ!」
────空崎さん
「…………っ、何?」
俺はもう十分貴女に救われてますよ
「え………?」
俺の戦う理由の根底はいつも空崎さんでした
空崎さんがいてくれたから俺は安心して戦えた
空崎さんがいてくれたから俺は心が折れずにすんだ
空崎さんがいてくれたから俺は────
────今日まで生きてこれた
「………っぁ………」
ヒナの涙が落ちると同時に、全てを黒で覆うような天から光が溢れだす
前世では画面越しに見ただけの光景が、こうして現実で見ると酒泉には何よりも美しく感じた
…………先生がやってくれたんだな
見てください空崎さん
「………ッ……ン………何?」
ヒナが涙を拭い空を見上げると、先程までとはまるで正反対の美しく暖かい光景が広がった
────全部終わりましたよ、空崎さん
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…………恐らく今頃ユスティナ聖徒会が消滅して先生達もヒエロニムスとの戦いに集中できてるだろう
エデン条約も先生が奪い返した以上、アリウスだって引きはじめるはずだ
「ねぇ…………ごめんなさい、こんなに身体がボロボロの状態なのに私のせいで迷惑を掛けて………」
別に空崎さんのせいじゃないですよ!それにこっちこそ申し訳ないです、心配かけてしまって………
ん?やべ、てかすっかり忘れてたけど空崎さんの言う通り俺の身体やべえじゃん、意識した瞬間にめちゃくちゃ痛くなってきたんだけどてかやべえまじで痛い痛い痛い後アリウススクワッドどうすんのああもうダメだ意識が飛b───────
ヒナちゃがぶっ倒れた酒泉を心配している間にアリウススクワッドは引きあげました