白洲さんの来訪があった日から数日後、未だに引き摺る身体の痛みに慣れてきたものの………
「酒泉、服を脱いで。身体拭くから」
なんかずっと空崎さんに世話を焼かれてる気がする
とりあえず言われた通り大人しく服を脱ぐ
…………いやだってこれまで何回も抵抗したけど断る度に眼のハイライトが消えるんだもん
リハビリや食事、更には歯磨きまで手伝おうとしてくる
俺ってもしかして幼児扱いされてる……?
「………ごめんなさい、こんな傷跡を残してしまって。私が間に合っていれば…………」
そんな事を考えていると、空崎さんが突然俺の身体の腹部より少し上の部分を指でなぞってきた………くすぐったいからちょっと止めてほしい
………別に空崎さんのせいじゃないですよ
「…………」
そう答えるものの、空崎さんの表情は落ちたままだ
俺の身体には一部消えない傷跡や手術痕が残った、まあ別に酷い後遺症があるわけじゃないからいいんだけど
………そんなじっくり裸を見せつける機会もないだろうしね
ただ風紀委員の皆と海に行く事になった時とか色々と気を遣うことにはなりそうだけど大した問題じゃないな
「本当に大丈夫?本当に痛まない?」
空崎さんの介抱のおかげで大分治ってきたので大丈夫ですよ
「そう………それなら良かった」
そう言い微笑む空崎さん
うーん………俺が思ってる以上に心配掛けてしまったみたいだな
まあ、この調子なら来週か再来週ぐらいには退院して自宅に戻れる程度には怪我も治ってるだろう
そうすればもう空崎さんに迷惑を掛ける事も無いだろ
なんて事を考えていると空崎さんが俺の背中を拭き終えた、先程脱いだ服を渡され再びそれを着る
ありがとうございます、空崎さん
「これくらい気にしないで」
そういえば空崎さんは仕事とか大丈夫なんですか?ずっと俺の世話をしてくれてますけどもしかして………
「酒泉が寝た後に全部終わらせてるから大丈夫」
いやそれめちゃくちゃ大変なんじゃ………
「アコや先生と手分けして仕事してるから平気よ」
そうだったのか………
すいません空崎さん、本来なら俺が手伝う仕事なのに………
「酒泉はもう十分働いたわ、これ以上頑張らなくていいの。これからは────」
──────全部私がやるから
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窓から見える景色に橙色が交じり出す
普通なら生徒達の部活動が終わり全員が下校しだす時間だが、現在トリニティは復旧作業中のため登校してくる生徒はいない
…………静かだなぁ
現在俺は特にやることも無いのでベッドで横になっており、空崎さんもじーっと俺の方を見てるだけだ
……………あの
「なに?」
特にやる事もないですし……その………もう大丈夫ですよ?
「なにが?」
いや、その……これ以上空崎さんの時間を奪うわけには………
「大丈夫」
そ、そうですか………
「…………………」
…………………………
「…………………」
…………………………
やべぇ、会話終わった
てか何でずっと見てくるの………?こんなフツメン見てても何も面白くないでしょ………
何か他に言うことはないかと若干焦りながら話の種を探していると、先程からあまり口を開かなかった空崎さんの方から話しかけてくる
「ねえ、酒泉」
よかった……!向こうから話を振ってきてくれた……!
はい!何でしょうか?
「何で私の事ずっと名前で呼ばないの」
ああー………それは、何て言うかその………いきなり女性の名前を呼ぶのってなんか馴れ馴れしくないですか?
しどろもどろになりながら答える
俺が基本的に人を名字で呼ぶのは完全に前世の癖だ、中のいい友達相手ならともかく特に了承も得ていないのに女性をいきなり名前で呼ぶのは………ねぇ?
アニメのキャラってどうして仲間になった奴の事をいきなり名前で呼べるんだろうな………
「………じゃあ私が許すから」
これからは名前で──────
コンコンッ
………?誰だ?もう食事は終わったし着替えも済んでるのに
「………………このタイミングでっ………」
とりあえず中に入ってもらおうと「どうぞ」と扉越しに話しかける、「失礼するよ」と声が聞こえると同時に扉が開くとそこには─────
「やあ、突然こんな時間に押し掛けてきてしまって申し訳ない。復旧作業の指示や今後のスケジュールの調整などで中々時間が取れなくてね、このタイミングしか無かったのさ」
─────トリニティの上層部、ティーパーティー所属の百合園セイアが立っていた
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「すまないね、本当なら何か手土産を持って行きたかったんだが………」
気にしなくていいですよ、百合園さんも何とか時間を作って来てくれたんですよね?
「ああ、復旧作業の方は多少は落ち着いてきたもののそれ以外にも各学園や報道陣に今回の事件の説明、それと復旧作業に協力してくれてる各機関とも今後の打ち合わせをしたりしないといけなくてね………」
本来なら俺の方から向かうべきなのに申し訳ないです……
「いや、気にしないでくれ。むしろ私の方が邪魔してしまった感じだからね」
そう言いながら百合園さんは苦笑を浮かべながら俺の隣を見る
そこにはどっからどう見ても不機嫌そうな空崎さんの顔が………
「………………トリニティのトップが何の用?」
「そんなに警戒しないでくれ………といっても無理な話だな」
「当たり前よ、貴女達ティーパーティーの一人、聖園ミカはアリウスと繋がっていた。その聖園ミカの仲間である貴女を警戒するのは当然の事…………アリウスのせいで酒泉は傷ついたんだから」
「ミカの犯してしまった罪については私からも謝罪する、私がもっと早くミカの計画に気付いていたら他にも色々と手の打ちようがあったのに………本当にすまない」
「……………」
…………空崎さん、ティーパーティーでアリウスと繋がってたのは多分聖園さんだけです
「確証は?」
……………ありません、けど信じてほしいです
「…………分かった、酒泉がそう言うなら……」
ありがとうございます
「ふむ…………君はやはり………」
こちらを見て何かを確信したかのような表情で一人頷く百合園さん
…………多分〝あの事〟か
空崎さん、申し訳ないんですけど少しだけ席を外してもらえませんか?
「……………………は?」
セイアセイアセイアセイアセイアセイアセイアセイアセイアセイアセイア!!!(セイアゼミ)