〝ベアおば〟潰すゾ!!!
ヒナ委員長は折川酒泉の事を大切に思っている、それはこの私────火宮チナツの目から見ても明らかです
普段冷静な委員長でも酒泉君に危機が訪れるとかなり動揺しだします
………ですがそれが悪化しだしたのは調印式の事件からでした
重体から目を覚ましたばかりの酒泉君は身体を動かす事すら厳しく、その間委員長がお世話をする事になりました
………本来ならただでさえ忙しい委員長のやるべき事ではないのですが、本人の強い要望でこうなったのは内緒です
とにかく、委員長は酒泉君を支えようとあらゆる事を手伝おうとしました
この事から分かるように委員長は酒泉君の事になると凄く心配性になってしまうのですが………
そんな委員長と酒泉君の間に気まずい空気が流れています
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…………
「……………」
「イオリ………あの二人に何があったのですか」
「私から教えるとバレた時が怖いから自分で聞いてきてアコちゃん」
「命が惜しいので嫌です」
……………
「……………」
「そこまで分かってるなら私に頼まないでよ………」
「でも冷静に考えてみたらヒナ委員長の手で看取ってもらえるならそれはそれで………」
「何一つ冷静じゃないですよ……それよりも二人とも仕事に集中してくださいよ」
……………あ
「見てください、酒泉が恐る恐る話しかけようとしてますよ。あの二人が喧嘩したとしたらつまり私がヒナ委員長とくっつくチャンスが───」
「それはない」
「それはありませんよ」
「イオリには後で書類の束をプレゼントします」
「何で私だけ!?」
「皆仕事に集中して」
「「「はい」」」
「………それで、酒泉は何を言おうとしたの?」
その………この緊急の書類なんですが、万魔殿絡みの案件なんで今から行ってきます
「…………それなら後回しでいいから、仕事に戻って」
え?………でも、
「いいから………………余計な事しないで」
……………はい
「それと………トリニティ絡みの書類も全部こっちに渡して」
なっ………!?
「酒泉にはこのゲヘナ学園付近の仕事だけ任せるから、それ以外は全部こっちに回して」
そんな…………俺だって働けますよ!?
「大人しく私の言うことを聞いて」
……………
「わかった?」
…………はい、分かりました
気まずい…………空崎さんに感情をぶつけられたあの時からずっと気まずい…………
謝ろうにも謝る前に空崎さんの圧に押し潰されるし、仕事に行こうにも現場に出向く仕事は全部他の人に回されてる
そもそもの話空崎さんが俺に怒った理由は、俺が何でもかんでも一人で解決しようとしたからだ………多分
仲間が傷つけられて怒るのは理解できるけど、俺相手に過剰すぎないか?先生相手なら理解できるけど俺だぞ?
…………それとも、もしかしてあんなに怒るほど俺の事を大切にしてくれて………
……………いや、それはありえない。『あり得てはならない』
本来居ないはずの存在であるこの俺がこの世界で誰かに想われるはずがない、『想われてはいけない』
………この世界の問題は、先生が生徒達と絆を紡ぎ、共に成長し、脅威に打ち勝つ、そんなストーリーだ
『邪魔者』がその絆に介入すると何がどう変わるのか判らない、下手に介入するわけにはいかない
…………そもそもの話、どれだけ人が傷付こうが最終的にハッピーエンドになるのがこの世界だ
俺という『ノイズ』が存在しなければ最終的に解決するはず………だが、『ノイズ』がこの世界に生まれてしまった以上、何が起きるのか判らなくなってしまった
俺がこの世界に生まれなければ…………
………俺がこの世界を救うのに役立ったとしても元々未来を不安定にしたのは俺自身、マッチポンプのようなものだ
…………そんな俺が誰かに想われる資格なんてない、空崎さんの心を救うのは先生の役目だ
俺は先生みたいに強くないけど、先生を護る事なら出来る
先生さえ生きていれば、大抵の事は解決できる
先生さえ無事なら───────
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仕事を終えた俺は、ゲヘナ近くの大型スーパーに買い物に来ていた
シリアスな事を考えていようが腹は減るもんだ、今日はガッツリいくぞ!!!
夜は焼肉っしょー!!!
「今夜は焼肉よー!!!」
…………ん?
俺の考えていた事と似たような事を叫ぶ女性の方を見ると、そこには…………
「今日は久しぶりに贅沢にいくわよー!!!」
「久しぶりに大きい依頼を解決したお陰で大分稼げたね」
「アルちゃーん!デザートも買っていい?」
「もちろんよ!キムチもねぎ塩ダレも何でもつけて良いわよー!!!」
「太っ腹なアル様カッコいいです………!」
便利屋68の四人がいた
………………関わらんとこ
「ん……?あれは………」
さて買い物買い物~っと
「久しぶりね!!折川酒泉!!」
あ、洗濯洗剤もそろそろ買っとくか
「あ、あれ?聞こえてないの?」
ついでに米もそろそろ無くなりそうだし買っとこう
「ひ、久しぶりね!」
さて、こんなもんでいいかな、それじゃ───
「何か反応しなさいよ!?」
うるさっ
「何でさっきから無視するのよ!?」
だってあんたら関わる度に何かやらかすんですもん………
「一流のアウトローの元には事件が集まるものよ!」
事件起こしてるのはあんたらだろうが
なんてツっこんでると、他のメンバーも集まってくる
「あー、酒泉だ!」
「アル様を無視するなんて………許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない………!!!」
怖っ………
「皆、あんまりお店で騒がないで」
あ、鬼方さん、いつもご苦労様です
「久しぶり、酒泉、怪我は大丈夫だった?」
あれ?知ってたんですか?
「知ってるも何もゲヘナ辺りじゃ結構噂になってたよ、風紀委員長の付き人が重症を負ったって」
「くふふ~!委員長とよく一緒にいたもんね!」
風紀委員長の………
「………もしかしてヒナと何かあった?」
まあ、色々と…………
「………ふふふ、私の出番のようね」
………はい?
「真のアウトローとは豊富な人生経験によって後輩を導くもの………」
いや、そんなに歳離れてないんじゃ………
「細かいことはいいのよ!とにかく私に相談してみなさい!」
…………相談料とか取りませんよね?
「そんな事しないわよ!?」
冗談ですよ冗談
この人は問題児ではあるものの、決める時は決めてくれる人だ
エデン条約の時の「先生の力になってほしい」という依頼をこなしてくれた後、依頼料を払おうと連絡した俺に対し
『あの戦いで便利屋の恐ろしさを知らしめる事ができた、それが報酬よ!』
って言いながら電話を切ってきた
………まあ、流石に申し訳ないから怪我が治った後依頼料代わりにしゃぶしゃぶセット持っていったけど
ちなみに案の定空腹になってた
………そうですね、それじゃ相談に乗ってもらってもいいですか?
「任せなさい!」
「それは貴方が悪いわね」
「乙女心が分かってないなー」
「殴られても文句言えないね」
「さ……流石に鈍感すぎます………」
スーパーのベンチスペースで便利屋全員から一斉射撃を食らう俺
ぐっ………お、俺も分かってはいるんですよ、自分一人で出来る事には限界があるって………
「それ以前の話よ」
それ以前……?
「………ねえ、もし空崎ヒナが一人でブラックマーケットに殴り込みに行こうとしたら貴方はどうするの?」
そんなの止めるに決まってますよ
「でも空崎ヒナ本人が『何も気にしないで』と言って協力を拒否したら?」
無理矢理にでも止めます
「そうね、貴方ならそうするでしょうね。」
そう言うと今度は俺の目を真っ直ぐ見据えてきた
「でも、貴方が止めた後も何度も何度も一人で突撃しようとしたら貴方はどう思う?」
………そんなに俺は頼りにならないのかって
「そう、それよ」
…………
「大切な人を護りたい気持ちは分かるわ、けど護られる側だって貴方の事を護りたいかもしれないのよ?」
護られる側………
「貴方の所の委員長はそんなにか弱い存在なの?」
そんなこと………!
「だったら貴方が信じてあげなさいよ」
!!
「貴方の所の上司は毎回毎回私達の依頼を邪魔して返り討ちにしてくるほど強いのよ?なら彼女の強さを信じてあげなさいよ!」
「社長、それ自分で言ってて悔しくないの?」
「悔しいわよ!」
「悔しいんだ………」
まだ全部は理解できません
……………でも、ちょっとだけ分かった気がします
「ふふふ、何か困った事があれば便利屋に来なさい!どんな依頼でも解決してあげるわ!」
「アルちゃん風紀委員相手にそれ言う?」
「……………風紀委員としてじゃなくて一人の生徒として来なさい!」
「それヒナにバレたら面倒な事になるんじゃ……」
「事務所に突撃されそうです………」
「…………………………バレないように来なさい!」
やっぱ締まらないな…………
けど、ありがとうございました!
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便利屋と別れ、少し軽くなった心で帰路を歩く
…………明日空崎さんに直接あって二人で話そう、許してもらえるか分からなくてもとにかく謝る
このまま喧嘩したままなのは嫌だ、あの人には笑顔でいてもらいたい
そう考えながら帰路を外れ、裏道へと入っていく
…………何故帰路を外れるのかって?
…………さっきからずっと後をつけられてるんだよ
便利屋と別れてしばらくしてから気配が近くなりだした………まあ、今までも全く狙われなかった訳じゃない
風紀委員の仕事の関係上、恨みを持って襲ってくる奴だって当然いる。ただまあ、復帰仕立てのタイミングじゃなくある程度回復した今狙われたのは幸運だな
………にしてもこいつ、結構動けるな
尾行の仕方で多少はわかる
……………よし、一気に仕掛けるか
脚に力を入れ、全力で走り出す。人が滅多に訪れない通り道を迷路を走るかのように曲がり続ける
そして行き止まりに突き当たった所で─────
後ろに振り向き、追跡者に銃口を突きつける
帽子を深く被り、白いコートのような物を羽織る追跡者
…………どうせゲヘナの誰かだろ?さっさとかかってこいよ
指をクイッと動かし、相手に対して挑発を仕掛ける
………へえ、ゲヘナの不良なら大抵は乗っかってくるんだけどな。そこまで馬鹿じゃないみたいだな
言葉でも挑発を仕掛けるが、全く反応しない
………………おい、さっきからなんだ。アンタは何がしたいんだ?
一切動かない相手を不審に思い、懐からナイフを取り出した瞬間
相手が帽子とコートのような物を脱ぎ捨てた
…………っ!?……………嘘だろ…………?流石にちょっと早くないか………?
時系列的にはまだ『カルバノグ』ぐらいのはず………そもそもこの人が助けを求めるのは先生のはずだ………!
「………………」
何でアンタがもうここにいんだよ…………!
錠前サオリ………!