折川酒泉の目の前にエデン条約襲撃の立役者、錠前サオリが立っている
先程から一言も発しない様子は、まるで亡者の様に不気味だ
…………いつまで黙っているつもりだ
「…………」
酒泉の問い掛けに答える様子は一切ない
原作だと武器を捨てて土下座してまで先生に助けを求めていたが…………
────瞬間、サオリが酒泉にアサルトライフルの銃口を向ける
っ!?危ねえ!?
銃を上げようとする腕の動作を確認した瞬間、酒泉は咄嗟に銃を構えるであろう位置に蹴りを放ち、銃口を逸らす
しかしサオリはすぐにホルスターから拳銃を取り出し発砲するが───
ガキィンッ!!!
酒泉の取り出した超硬質ナイフによって防がれる
銃弾を防がれたのを確認したと同時にサオリは足払いを仕掛けるが、酒泉はそのまま後ろに飛び退き回避する
…………どうやら武器を捨てる気はないみたいだな、先生と会わず、補習授業部とも戦わなかったせいで改心イベントみたいなのが発生しなかったのか?
酒泉は原作との相違点について考察するものの、戦闘中に敵がそれを待ってくれるはずもなく容赦なく攻撃を仕掛けてくる
アサルトライフルによる射撃を、酒泉は近くに転がっていたドラム缶の裏に隠れてやり過ごす
しかしサオリはそのままドラム缶の上を飛び越え、裏を取ってくる
咄嗟に後ろにナイフを振り牽制するものの、サオリは軽く一歩下がるだけで攻撃を回避する
「…………終わりだ」
そしてそのままアサルトライフルを構え、酒泉に向かって撃ち放つ─────
ガガガガッ!!
が、酒泉は銃弾を〝全て〟同じ位置に放ち相殺した
「っ!?」
────忘れちまったのかぁ!?俺はめちゃくちゃ眼がいいってよぉ!?
「っ………!」
攻撃を全て防いだ酒泉はそのまま反撃を仕掛ける
もう片方のサオリの手が持つ拳銃による銃撃を、身体を半身にして回避し、そのまま回し蹴りを放つ
サオリは左腕で蹴りを防ぐが、酒泉は近くの建物のパイプを掴み支えとして、そのまま左脚も上げサオリの防御の為に使った左腕を両足で絡ませる
「くっ…………!」
そのまま引きずり込み、サオリの態勢を崩した酒泉はすぐに仰向けの態勢のまま銃口をサオリの顔に突きつけるが、サオリは横に転がる事で回避する
そのまま起き上がりすぐに応戦しようとするが───
「っ!手榴弾か……!」
次の瞬間、手榴弾が飛んできた
サオリが咄嗟に横に飛ぶと同時に手榴弾が爆発する、僅かに余波を食らう程度の被害で済んだが───
パァンッ!
「ッ!」
突然手の甲に走った強烈な痛みに、サオリは思わずアサルトライフルを落としてしまう
サオリの脚の動きから回避する方向が解っていた酒泉は、サオリが着地する直前にいつの間にか取り出していたスナイパーを発砲していた
───服の内側に隠しておいて正解だったぜ、アンタらアリウスと戦った時の教訓からアサルトライフルとナイフとは別に持っておく事にしたんだ
あの時もスナイパーを持っていたらもっと楽に戦えたんだけどな、と言いながらサオリに近づく酒泉
サオリは残った拳銃を構えようとするが、そちらの手も撃ち抜かれ拳銃を落としてしまう
そして咄嗟に近接戦に切り替えようと酒泉に向けて走り出すものの───
────おせーよ!!!
酒泉はサオリの拳をかわし、そのまま銃口を下に向けてサオリの膝を狙撃した
「っ………!」
───アンタがこっちに突っ込もうとしてるのは〝視えてた〟んだよ
そしてそのままスナイパーをサオリの頭に突きつけた
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一対一じゃ遅れは取らない、どうも折川酒泉です
相手が学園最強クラスの人じゃない限りそう簡単に敗けはしませんよ、はい
…………にしてもさっきから何も喋らないな
いつ他のスクワッドメンバーが参戦してくるか警戒していたけどそれも無かったしな………
………錠前サオリ、なぜ俺を狙った?
「…………」
黙っていてもこのままゲヘナ学園に突き出すだけだぞ?
「…………」
…………他のメンバーがいないのを見るに、仲間絡みの事で俺を襲ってきたのか?
「っ………」
ようやく反応したな
「…………」
おそらく原作に沿って考えると秤アツコが拐われて、他のメンバーともはぐれたんだろう
………でも何故それが俺を襲う理由になる?
俺には大人のカードもシャーレの権限もない、俺を頼った所でなんの意味もない
だとすれば残った方法は俺を人質として活用するくらいか………
「…………姫が」
なんて事を考えていると、錠前サオリが口を開いた
「アツコが………マダムに捕まった」
………原作通りだな、ここまでは
「追われてる間に仲間ともはぐれてしまった」
「逃げるうちに体力も物資も尽き、とうとう私も捕まってしまった」
「ここで終わりかと思った……おそらく私は殺されるだろうとも」
「しかし………マダムは通信機越しにこう言った」
「『折川酒泉を連れてこい』と、そうすればアツコは解放すると」
俺を………?
「何故かは分からないがマダムはお前に興味を持っていた」
それで俺を差し出せば皆仲良く帰れると?
「…………」
今まで散々アンタらを虐げてきた奴が本当に約束を守ると?
「……………それでも」
…………
「それでも………縋るしかなかったんだ………!」
「僅かな可能性でも賭けるしかなかった!」
「アツコを………皆を救うためには彼女の言葉を信じるしかなかった!」
…………まあ、事情はわかった。でも俺だってわざわざ捕まってやる程お人好しじゃない
とにかくこれで終わりだ────
「折川酒泉」
………何だ
「っ………頼みがある」
錠前サオリが微かに言い淀む
「こんな事を頼めた義理ではないのは分かっている、それでも………」
……………
「力を…………」
───────力を貸してほしい