…………よし、槌永さん、俺達は今からマダムの所に乗り込むからカタコンベに引き返して援軍を呼んできてくれ
さっきの戦闘の影響で道中が結構通りづらいと思うけど、そこは何とか頑張ってくれ
「………あの」
何だ?
「カタコンベの道中でミカさんに鉢合わせたりしませんよね?」
しないしない、さっき撒いてから少しは時間経ってるし流石にもうカタコンベから出てきてるでしょ
「………本当ですか?」
ほんとほんと
「絶対に!?」
………………ああ
「なんで間が空いたんですか!!?」
うるせぇ!!!行こう!!!ドンッ!!!
「行くのは私一人じゃないですかぁぁぁ!!!」
「………ところでリーダー、どうやって姫が捕らわれてるバシリカまで行くの?」
「無視しないでくださいよぉ!!!」
「………アリウス分校の旧校舎に向かおうと思う」
「うわぁぁん!!リーダーまでえええ!!」
ほら、一本○足バー(チョコ味)あげるから大人しくしなさい
「ぐすん………もうこうなっはらやけ食いれふ……」
ああもう…………食べながら喋るから口にチョコ付いちゃってるじゃん、拭き取るからじっとしてなさい
「むぐぐ………どうせならもう一本ください………」
一本で満足しろよ………後で再会出来たらな
「ほ、本当ですか!?えへへ………こんな世界でも苦しい事だけじゃないんですねぇ………」
「…………………酒泉、ヒヨリを甘やかさないで、増長するから」
すまん、やっぱ駄目だ
「そんなぁ………」
「………すまない、話を再開していいか?」
あ、すいません
「バシリカへ向かう方法だが………さっきも言った通りアリウス分校の旧校舎に向かおうと思う。噂程度の話だが、旧校舎にはバシリカに繋がる地下回廊があるらしい」
「………あまり当てにならないけど、正面からバシリカに突入するよりはマシかな」
まだ余裕がある敵戦力に対して酒泉達はたったの四人、カタコンベに引き返すヒヨリを除けば三人になる
更にはいつ襲ってくるか分からない〝襲撃者〟までいる
道中の戦闘で敵の武器を奪ったり、身を隠せる場所で少しずつ休憩しながら進んで来たが、それでもかなりの体力や物資を消耗していた
真っ向勝負では勝てない事は全員が理解していた
「では、これより旧校舎へ向かう………頼んだぞ、ヒヨリ」
「は、はい………皆さんもどうかご無事で………」
そしてヒヨリとそれ以外の三人は別々に進みだした
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「……………」
「………リーダー、さっきから呆けてない?」
先程から何かを考え込む様子で歩き続けるサオリ、その様子をおかしく思ったミサキが問いかける
「………いや、気にしないで────」
────聖園さんの事ですよね?
「………ああ」
「あの女の………?」
酒泉の言葉に肯定するサオリ
ミカの名前が出た瞬間、ミサキが顔をしかめる
「聖園ミカの憎しみは、元はと言えば私が原因だ。私が裏切ったせいで彼女は全てを失った………」
………だからといって無抵抗にやられる訳にはいきませんよ
「ああ、分かっている………分かっては……いるんだ………」
サオリは何かを言い淀み、そのまま「だが」と続ける
「全てが終わった後、私達は罪を償う…………だが、聖園ミカはどうなる?復讐の対象である私達が法で罰された後は、彼女の怒りは何処へ向かう?」
「………ようするに、あの女の事を心配してるの?」
「…………」
………その辺は大丈夫っすよ、〝先生〟がいるんで
「先生……か、そのシャーレの先生とはそんなに頼りになるのか?」
ええ、めっちゃ頼りになります………抜けてるところもありますけど
酒泉の言葉を聞くと、サオリは眼を伏せる
「そうか、お前は〝いい大人〟に会えたんだな…………だが、私はそんな〝大人〟を殺そうとしてしまった………」
「…………それはサオリ姉さんだけじゃなくて私達全員でしょ」
………大丈夫ですよ、先生はアリウススクワッド全員の事も助けてくれます
「………そうだろうか」
はい、自分を殺し掛けた生徒や別世界から来た侵略者すら助けようとするくらいにはお人好しですから
「何その例え……」
………あんな優しい人なんて他に知らないってレベルですね
俺は錠前さんに協力を要請された時は悩みましたけど、先生なら俺と違ってすぐに助ける決意をするぐらい優しいです
「………それは中々だな」
でしょう?
「………だが、それはお前も同じ事だろう」
………俺?
サオリの言葉に疑問符を浮かべる酒泉、そのままサオリは酒泉の眼を見据える
「私は最初、お前の事を倒し、マダムに引き渡す事で仲間を救おうとした………結果は知っての通りだが」
「挙げ句の果てに、お前の事を襲っておきながら恥も外聞もなくお前に協力を求めた」
「………だが、お前はこうして私達に協力してくれた。自分の命を奪いかけた相手を助ける為に」
………それは、前にも言いましたけど俺自身もマダムに会ってみたいから────
「たとえ打算込みだったとしても私達を助けてくれた事に変わりはない、そしてなにより……お前は完全な被害者でありながら私に恨みをぶつけるどころか、私の立場を慮ってくれた」
「本来なら憎しみをぶつけられても………それこそ殺されても文句を言えない立場である私にすら事情を聞いてから接してくれた」
「………私からしたらお前以上に優しい者など知らない」
「だからお前も自分の優しさに自信を持ってくれ、酒泉」
酒泉の瞳を見つめ続けながら話しかけるサオリ、その眼は相手の全てを信じているかの様な強い眼で───────
「早く行くよ………………………あとサオリ姉さん、顔近い」
「む………すまない」
………あ、すんません
ミサキの言葉ですぐに離れる二人、少々気まずい空気に包まれながらも三人は歩きだした
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「………何かおかしい」
「ああ、あまりにも〝静かすぎる〟」
しばらく歩いていく内に三人が違和感に気づく、ミサキとサオリは違和感の原因を探るが、酒泉はこの後に起きる事を知っていた
「………この辺りにこんな建物は無かった」
「私達の知らない間に作られたのか……?」
見慣れた景色に見慣れない建造物、違和感の原因は一目瞭然だった
しかしゆっくりと調べる時間は無い、辺りを警戒しながら歩きだそうとすると────
ダダダダダンッ!!!
────突然の襲撃が三人に襲いかかってきた
………っ!来たぞ!
「………みたいだね」
「このルートすらバレていたのか………!」
銃声の鳴る方へ視線を向けると、その先からアリウス生達が走り寄ってくる
敵を迎撃しようと銃を構えた瞬間────
『お久しぶりですね、アリウススクワッド』
サオリとミサキにとって聞き慣れた声が聞こえた
「この声は………」
「…………マダム」
よく耳を澄ませると、声は先程襲撃してきたアリウス生達の方から聞こえてくる
そちらを見てみると、突然ホログラムの様なものが浮かび上がり、そこに赤い肌をした女性の様な者が現れた
『あれほど痛みと恐怖で縛りつけたはずなのに逆らうとは………もう少し躾けた方が良かったですね』
ゴミを見る様な冷たい視線をミサキとサオリに向けると、そのままその視線を横にずらし、今度は酒泉に語りかける
『貴方とは初めましてですね、折川酒泉。私の名前は─────』
─────ベアトリーチェ、ゲマトリアの問題児、だろ?
『………やはり私の事も知っていましたか、しかしその物言いは少々鼻につきますね』
大人の癖に生徒達を支配して生徒会長やってる奴なんて問題児扱いでいいだろ、別に
それとも児童扱いじゃなくてババア扱いが良かったのか?それなら言い方を変えてやるよ、ベアおばぁ!!
『不愉快な男ですね、本来なら今すぐにでも始末したいのですが………私の下に来るのであれば見逃してあげましょう』
………そう、それだよそれ、何で俺に会いたがってたんだよアンタ
『私が求めているのは貴方の〝知識〟と〝記憶〟です』
………はぁ?
『────折川酒泉、貴方は未来を知っているのでしょう?』
確信したような目で酒泉を見つめるベアトリーチェ、その眼光に一瞬だけ眉をひそめる
『その反応……間違いではなさそうですね』
…………だったら何なんだよ
『決まっています、私は─────』
──────〝色彩〟にちょっかいかけるのは止めとけ、アレはアンタに制御できる代物じゃねぇよ
『………やはり色彩の事まで理解していましたか………尚更貴方を手に入れなければなりませんね』
………一つ聞くが………アンタ、色彩の力の片鱗にほんのちょっとでも触れたか?
『………だとしたら?』
……………………はぁ~、最悪じゃねえか…………
最終編イベント確定じゃん………
『まあ、素直に言う事を聞かないのであれば力ずくで従わせるまでです』
酒泉の心配事など知らんとばかりに言い捨て、再びサオリとミサキに視線を向けるベアトリーチェ
『………これが最終通告です、今すぐ折川酒泉を引き渡しなさい。そうすれば貴女達の事を見逃します』
「断る、酒泉には返しきれない程の借りがある」
「…………悪いけどもう貴女の〝道具〟じゃないから」
『………ならもう用はありません、折川酒泉以外は殺して構いません─────ああ、そうそう、言い忘れていましたが槌永ヒヨリの方にも追手を差し向けました』
そう言い放つと、ベアトリーチェの声が途切れホログラムの様な物が切れる
それと同時に敵のアリウス生達が銃を構える
「ヒヨリ………っ!」
「………今更戻れないし、ヒヨリを信じるしかないよ」
………槌永さんだって強いんでしょ?なら大丈夫ですよ
「………ああ、そうだ。ヒヨリならきっと無事にカタコンベを抜けてくれるはずだ」
サオリはそう自分に言い聞かせると、銃口を敵に向ける
「アツコを救い、全員で帰るぞ!」
そして引き金を引いた