単発ネタだったはずなのに……!
「…………………は?」
冷たい空気が一気に広がる
…………空崎さんを怒らせた時と同じ感じがする
「…………泣いてる女の子をゴリラ扱いなんて、ちょっとおかしいんじゃないかな?」
いや、だって───────
───────ゴリラを魔女扱いすると魔女に失礼だし…………
「……っ!………っ………ふ………っ……!」
「ミ、ミサキ……?」
戒野さんの方を見るとなんかめっちゃ笑い堪えてる
「へえ…………アリウスとゲヘナ、野蛮な奴ら同士仲がいいんだね?」
聖園さんの顔にめっちゃ青筋が浮かぶ、多分漫画だと怒りマークが付くレベルで
「最初は邪魔さえしなければ見逃してあげようと思ってたけど………やっぱやーめた!」
「貴方もアリウスと一緒に死んじゃえ☆」
そう言うと、近くにあった廃墟のドアを引っこ抜き投げ飛ばしてきた
………うおおおおおおお!?
「ミサキ!いつまで笑いを堪えているんだ!……………まだ笑ってるのか!?」
「………っ別、に………リーダー程ツボが浅い訳じゃないし………っ!………くっ………!」
二人とも何やってるんですか!早く逃げますよ!
「私達のせいか……?」
「………なんか納得いかないけどそうしよう」
「逃がすわけっ………ないっ………じゃん!」
今度はさっきの戦闘の余波で生まれた大きめの瓦礫を投げ飛ばしてくる
………やっぱりゴリラじゃねえか!
「……っ!……それっ……やめてっ……!」
めっちゃ笑うやん
「ああもう……ムカつくなぁ!」
とうとう怒りが爆発した聖園さんが接近しようとしてくる
────その時
「見つけたぞ!裏切り者と折川酒泉だ!」
「聖園ミカもいるぞ!」
「構うな!やれ!」
────聖園さんの背後からアリウスの増援が近づいてきた
よっしゃ!計画通り!今のうちに逃げますよ!
「………まさか最初からこれを狙っていたのか?」
ええ、だからわざと会話を長引かせたり挑発したりしたんですよ!
「…………言いたいこと言っただけじゃないの?」
……………………そんなわけ無いじゃないですか
「やっぱりそうだったんだ………」
敵のアリウス生の到着を確認したと同時にアリウス分校の旧校舎の方へ駆け出す、聖園さんも当然追いかけようとするが………
「撃て!」
「あの女がいると戦場が混乱する!」
「これ以上好き勝手させるな!」
俺達の方から見て一番後ろ──────つまりアリウス生に一番近い聖園さんは当然敵に狙われる
アリウス生が聖園さんに攻撃したのを確認したと同時にさらに脚に力を込めて走る
「もう…………本当にしつこいなぁ………」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「うわぁぁぁぁん!!!何で私ばっかりこんな辛くて苦しい思いをしなきゃいけないんですかぁぁぁぁぁ!!!」
現在、槌永ヒヨリはカタコンベ内を全力で走っていた
………背後の追跡者に追われながら
「槌永ヒヨリだ!確実にここで仕留めろ!」
「裏切り者は一人残らず始末しろ!」
「つ、捕まったらいっぱい苦しい思いをしそうです………!」
後ろから聞こえてくるアリウス生のセリフ、そして向けられる殺意に益々恐怖が増幅していくヒヨリ
走っていくうちに、所々に気絶しているアリウス生を確認した。おそらくアリウス自治区に侵入する際にミカが片付けたであろう生徒達だ
………そしてそれはカタコンベの入り口が近いという事を意味していた
絶対に捕まるまいと、全速力で走り続け、そして─────
─────カタコンベを抜けた
「や、やっとここまで戻れました………」
当初の予定の場所、援軍を案内するための目印にたどり着いたヒヨリ
しかし安心している暇はない、
そんなヒヨリの足元を、一人のアリウス生がスナイパーで狙撃する
「きゃっ!?」
突然の攻撃にヒヨリは思わずバランスを崩し倒れてしまう。すぐに立ち上がったものの、その間に敵は距離を縮めていた
そのままヒヨリを拘束しようと更に足を早めるが………
ズドンッ!
「ぐっ………!」
「あわわわわ……反撃しちゃいました……」
いつの間にガンケースから取り出したのか、普通の重さとは言えないヒヨリの愛銃・アイデンティティが敵の意識を一瞬で奪う
しかしヒヨリが一人を狙撃している間に他のアリウス生達が接近してくる。やがてその距離は数メートル程まで近づき、そして…………
「かはっ………」
「くっ……何が……」
「っ…………ぁ……!」
突如現れた無数の弾丸がアリウス生達に襲いかかった
「うえ………?一体何が起きたんですかぁ……?」
弾丸の出所を探そうと弾が飛んできた方向を見ると────
「久しぶり……………………アリウス」
かつて自分達を殺しかけた最恐の魔王────空崎ヒナが立っていた
「ひっ………」
顔を見た瞬間、調印式の時の記憶が甦る。一切の容赦なく自分達を始末しようとした時の姿を………
もちろんヒヨリは自分達が悪い事を理解していた…………今殺されても仕方ない事も
「……………」
「…………っぁ!」
ヒナはヒヨリを睨むと同時に自身の愛銃・デストロイヤーの銃口をヒヨリの方に向けた
突然凶器を突きつけられたヒヨリは思わず眼をつむってしまう
しかしヒナは容赦なく引き金を引き、そして………
「ぐぁ……!」
カタコンベの入り口付近でヒヨリを狙っていた敵のアリウス生を撃ち当てた
「………え?」
「………………」
敵が倒れたのを確認すると、銃を下ろしながらヒヨリに近付く
「あ、あの………ありが────」
「委員長………早いって!」
「この速度のまま向かうと………ゲホッ………味方とはぐれてしまいます………」
ヒヨリが礼を言おうとすると、ヒナの後ろから二人の生徒が近付いてくる
「…………チナツ、イオリ」
「彼が心配なのは分かりますけど……だからこそ冷静に行動しませんと」
「………ごめん、少し急ぎすぎた」
「…………少し?」
『イオリ、余計な事言うとまた反省文書かせますよ』
「………アコ、味方とどれぐらい離れた?」
『大丈夫です、後少ししたら合流出来る程度しか離れてません』
目の前の三人を見ていると、通信機から空色の髪の色の女性の姿が映し出される
その姿を見てヒヨリは───
「あ……へ………へ……」
『………?何ですか?いきなり人を指差して……』
「へ……へ……」
『………言いたい事があるならハッキリと言ってください』
「変態ですぅ!!!」
『…………はぁ!?』
突然現れたアコにいきなり〝変態〟の烙印を叩きつけた
『出会って早々変態呼ばわりとは、なんて失礼な!』
「だ……だって……横から胸が出て………!」
『こ………これは通気性だとか色々考えた結果です!決して私の趣味ではありません!』
「ミ……ミサキちゃんのズボンよりも露出が激しいですぅ……!」
『人の話を聞きなさい!』
あまりの言い草に怒りを向けるアコ、しかしそんなアコをヒナは手を翳し静止させる
「アコ、先生とトリニティの協力者は?」
『……正義実現委員会やシスターフッドの方々と一緒に此処に向かっている途中です…………それと、元アリウスの白洲アズサという方も』
「………そう、あの子も」
「アズサちゃんも来てるんですか!?」
『先生が各組織に掛け合っているところ、偶然白洲アズサに見られたみたいで………』
「………戦力が多いのに越した事はないわ」
「本当に私達の事を気に掛けてくれてたんですね……アズサちゃん」
かつての仲間が未だに自分達を想ってくれている事に、ヒヨリは心の奥底から喜ぶ
ヒナはそんなヒヨリに話しかける
「………槌永ヒヨリ、アリウス自治区に案内して。カタコンベの正しい出口は貴方達アリウスしか知らない、ルートがランダムに切り替わる前に突入する」
「うえ!?で、でも……敵の戦力は多いですし、他の人達が到着するのを待った方がいいんじゃ………それにまだちょっと時間はありますし………」
『………彼女の言う通りです、今から先生達と合流するのにそう時間は掛かりません』
「一分一秒でも惜しいの」
『敵の戦力が未知数である以上、下手に突入するのは危険です…………もちろんヒナ委員長の実力は信用していますが、酒泉やアリウススクワッドを救出するとなると戦力が揃ってから向かった方が確実です』
「………でも、それじゃあ────」
『────酒泉の事を信じるって決めたのでしょう?』
「………!」
『彼の強さは我々風紀委員全員が知っています。彼の事を信じてあげてください』
「アコ…………」
『…………まあ、いっつもヒナ委員長とくっついてたり、時々生意気な態度を取ったりと気に入らないところもありますが………』
「………態度に関してはアコちゃんの方から喧嘩を売るからじゃ」
『イオリ、帰ってきたら覚悟しておきなさい』
「そんな!?」
「二人とも、委員長の前ですよ……?」
アコの言葉に冷静さを取り戻すヒナ、大切な人の事になるとすぐに暴走する己の精神を律した
「アコ………ありがとう」
『…………………………………あっ』バタンッ!
「アコちゃんが倒れた!?」
「多分委員長に笑顔でお礼を言われたからでしょうね………」
「そ、それだけで倒れるんですか………?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
…………やっと地下回廊を抜けましたね
「ああ、ここが────」
バシリカだ────
地下回廊から顔を覗かせると、廃されていながら未だに神聖さを感じさせる空間が目に飛び込んでくる
地上に戻ろうと一人一人上がっていく
………そういえば錠前さん、何か熱っぽいとかないですか?
「………?いや、特に無いが………」
そうですか………
すっかり忘れていたが原作では錠前さんが発熱してぶっ倒れるはずなんだけど………
所々休んだり、そもそも助けを求めて来るのが早かったから原作ほど体力を消耗せずに済んだのか……?
まあ、それなら有難い
「………それで、どうする?」
「………いつミカが襲撃してくるか分からない以上、ここに留まっている時間はない。このまま進むぞ」
「了解」
辺りを警戒しながら、先頭の錠前さんについていく
………こうやって実際に来てみると相当ボロボロだな
「……そういえば酒泉は何故カタコンベの事を知っていたんだ?それに、マダムの目的も理解していたようだが………」
………まあ、色々ありましてね
「む、そうか」
……深く聞いてこないんですね
「誰にでも隠したい事の一つぐらいはあるだろう」
………信用しすぎでは?
「そんな事はない、共に過ごした時間は少ないが、それでもお前が人を裏切るような真似はしない事ぐらいは理解できる」
………ありがとうございます
「気を緩めすぎ……………………………あと、今日仲間になったばかりなのに二人とも気を許しすぎ」
いや、協力する分には良いことなんじゃ………
「………いいから進むよ」
「ああ、すまない」
会話を切り上げ、警戒しつつも歩みを早くする
………うし、それじゃあ速攻で秤さん救出して速攻で逃げ───────
ドガアアアアアン!!!
「やっほー☆」
何だよおおもおおお!!!
またかよおおおおおおおお!!!
本日三度目の襲撃者に思わずお兄ちゃんが憑依してしてしまう
アンタはバイオのネメシスか何かか!?
「人の事を散々煽っておきながら戦わずに逃げれると思わないでよね?」
「あいつ………本当にしつこい………!」
「………どうやら己の罪と向き合う時が来たみたいだな」
「リーダー………?」
「ミサキ、酒泉、先に行ってくれ。ミカとは私が─────」
─────オラァ!食らえや聖園ミカァ!
ダダダダンッ!
「あはっ!一人で突撃してくるなんてちょっと無謀じゃない?」
「なっ………待て、酒泉!ミカの相手は私が………!」
先生も槌永さんもいないのに俺と戒野さんだけで秤さんを救えると思ってんですか!?
「………確かに、それならあの女を倒してまた三人で向かった方がマシ」
「………へぇ、勝てる事前提なんだ?そこまで舐められるといっそのこと笑えてきちゃうなぁ……」
怒りを通り越して笑いを浮かべる聖園さん。サブマシンガンを構え、此方に笑みを見せ───
「それじゃ、ここでつけよっか─────」
────────決着を