アツコの元へ走るサオリ達、道中には敵は誰一人として存在しない
だが先程の戦闘の影響でこの場にいる全員の身体が重症を負っている
それでも彼女達は止まらない、身体中の痛みに耐えながら必死に駆ける
そして通路を抜けた時─────
─────〝何か〟に磔にされているアツコの姿が目に飛び込んできた
「ッ!アツコッ!」
姿を確認すると、サオリがアツコを解放させようと駆け寄る
「……ここに来たのは貴女達だけですか」
しかしそれを阻止するかの様にベアトリーチェが立ち塞がる
「自分が殺されないであろう事を利用して彼自身が足止めになりましたか………まあ、どの道ここで貴女達を始末すれば何も問題はありませんが」
「あははっ!若い子にそんなムキにならないでよ、オバサン☆」
「下手に挑発しないで」
「あれ?もしかして怖いの?」
「…………味方になってもやっぱりムカつく」
「ベアトリーチェ!私達はここでお前を倒し、アツコを救い出す。そして─────」
「─────支配から解放される、ですか?」
「………っ!」
サオリの言葉を予測していたかの様に言葉を被せる
「今まで私に言われるがままに他者を傷付けてきた貴女達が今更幸せになれるとでも?」
「それは………っ」
「貴女達が散々傷付けてきた者達が貴女達が幸せになるのを赦すとでも?」
「…………」
「サオリ、貴女には人殺しの技術しかありません、表の世界に貴女の居場所など存在しません。ミサキ、貴女は所詮〝道具〟なのです、大人しく所有者の言う事を聞いていなさい、貴女に意思など必要ないのです」
「……………その〝所有者〟に協力しろって言われてる以上、戦わない訳にはいかないから」
「………貴女の〝持ち主〟は私です」
「今は違う」
「………あの男に絆されましたか」
「え?もしかして貴女と酒泉君ってそういう関係なの?流石にドン引きしちゃうなぁ………男の趣味悪くない?」
「………戦闘中に〝偶然〟ミサイルを誤射しちゃったらごめん」
「こっちこそ〝偶然〟手が滑ったらごめんね☆」
まるでベアトリーチェなど眼中に無いとでも言う様に互いに火花を散らす
それを不快に感じるベアトリーチェが顔をしかめる
「……ていうかさぁ、今更後悔しても過去が無くなるわけじゃないんだからどの道進むしかなくない?サオリ」
「ミカ…………ああ、お前の言う通りだ。私は余りにも間違えすぎた、だからこそこれ以上間違えるわけにはいかないんだ」
「意思は変わらない……と、ならいいでしょう」
ベアトリーチェの脚が木の根の様に別れ、広がっていく
身体は縦に大きくなり、新たに生えた翼の様な物が木の枝のように別れ、蕾の様に閉じられていた顔が開花する様に広がっていく
背後には赤い光輪が展開される
その姿は正に〝怪物〟そのものだった
「………これが、アイツの正体」
「………へぇ、偉そうに指揮してるだけってわけじゃ無さそうだね」
「相手がどんな化物だろうと関係ない、これで終わらせるぞ!」
「貴女達には特別にお見せしましょう」
ベアトリーチェの手元に赤黒いエネルギーが集まっていく、それは巨大な球体となり────
「私の本当の力をッ!」
────それをサオリ達に放った
「ッ!避けろ!」
三人はそれぞれ散り、球体を回避する
その球体が地面に着弾したと同時に───
───爆発した
「ぐっ………!」
「………っ、こんなのあり?」
「まったく………また面倒な相手と戦う事になっちゃったなぁ……」
強力な爆発の余波で吹き飛ばされる三人、各々態勢を立て直し、銃を構える
三人はベアトリーチェの頭部に向けて銃弾を放つが、ベアトリーチェは枝の様に展開された背中の部位から赤色の光線を放ち、弾丸を全て焼き付くす
「もう、ずるいなぁ!」
光線を回避しながら前進するミカ、至近距離まで接近するとサブマシンガンを構える
今度は光線が届かないようベアトリーチェの真下まで潜り込み、そのまま顔目掛けて弾を送る
ベアトリーチェは腕を翳し、ミカの攻撃を防ぐ
その間にサオリとミサキはベアトリーチェの背後へと回り込み………
「………っ!後ろですか!」
背後からの気配に気づいたベアトリーチェが後ろに片腕を薙ぎ払う
「チッ………!」
「気付かれた……!」
ベアトリーチェの腕を後ろに跳び回避する二人、ベアトリーチェはそんな二人を追撃しようと顔に赤色のエネルギーを溜める
「させないよっ!」
嫌な予感を察知したミカは咄嗟にベアトリーチェの頭部に弾を放つ
しかしそんな事お構い無しにエネルギーを溜め続け、そして────
────先程の光線よりも何倍も太い赤色の光線が三本に別れ、サオリとミサキに向かって放たれる
赤い光が二人を消し去ろうと近づいてくる、サオリ達は突然の規模の攻撃に対応が遅れ………
「もう!足引っ張らないで………よっ!」
ミカがベアトリーチェの身体を全力で殴りつける、ほんの僅かにだが直撃コースから外れた光線はサオリとミサキの頬を微かに触れる
「余計な真似をっ!」
ベアトリーチェは自身の真下にいるミカに向けて複数の球体のエネルギーを放つ、ミカはそれを回避し、サオリ達の方へ駆け寄る
「無駄な抵抗は止めなさい、余計に苦しむだけですよ?」
「すまない………助かった」
「ねえ、あの攻撃…………利用出来ると思わない?」
「………何をするつもり?」
ベアトリーチェに聞こえない声量で何かを話すミカ達
「………まだ諦めるつもりは無いみたいですね」
ベアトリーチェが手を空に掲げると、そこから光線が赤い雨の様に降り注ぐ
先程と比べると一発一発の威力は低いものの、避ける事が困難なその攻撃は確実にサオリ達にダメージを蓄積させる
ベアトリーチェの攻撃により少しずつ煙が立ち込める
煙が晴れてきた時、一人の人影が見えたベアトリーチェはその人物を注視する
彼女は────
(ミサキですか………あの中で一番火力の高い武器はミサキのスティンガーミサイル、その一撃に賭けるつもりのようですが………全てお見通しです)
ベアトリーチェはミサキを逃すまいと腕を振るう。回避の遅れたミサキはその攻撃をまともに食らい、壁に叩きつけられ血を吐く
「かはっ…………」
ベアトリーチェが顔に赤いエネルギーを溜める
「まずは一人目……………待て」
確実に止めを刺そうと顔に赤いエネルギーを溜めたベアトリーチェが違和感を感じる
(彼女は……ミサキは何故スティンガーミサイルを持っていない?)
倒れ伏すミサキの周りにはスティンガーミサイルは存在しない
(…………まさか!?)
その瞬間、背後から何者かが向かってくる。ベアトリーチェが敵の正体を確認しようと後ろを向いた瞬間──────
「やっほー☆」
ミカがベアトリーチェの振るった腕を足場に大きくジャンプしてきた
─────スティンガーミサイルを持って
「聖園ミカ………!」
ミカはエネルギーをチャージ中のベアトリーチェの顔に近づき、スティンガーミサイルを構える
そしてそのまま
引き金を引いた
ミサイルを零距離で顔に食らったベアトリーチェはエネルギーをコントロール出来ず暴発させてしまい、更に爆発を巻き起こす
「いっ……………たぁ~………」
軽く愚痴るものの、実際にはかなりの重症を負ったミカ
目の前でベアトリーチェが苦しんでいるが身体が動かず止めを刺す事が出来ない
「だから………任せたよ」
「ぐ………あぁ………!よくもこの私にぃぃぃぃ!」
手で顔を抑え、苦痛に歪む。怒りに身を任せて全てを破壊しようと手を顔から離した瞬間
「ああ、任された」
サオリがベアトリーチェの顔に銃口を突きつけ、アサルトライフルの引き金を引いた
激痛に悶え苦しむベアトリーチェに耐えられるはずもなく
彼女は巨大な怪物の姿のまま倒れた
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ユスティナ達が酒泉に対して銃を構える
酒泉は自分にとって危険な位置にいる敵〝だけ〟を撃ち抜く
しかし倒されなかった────敢えて倒さなかったユスティナが酒泉に銃口を向ける
そのまま引き金を引く瞬間、酒泉は相手の懐に潜り込み、酒泉の反対側にいたユスティナへと攻撃を誘導する
「─────」
仲間の弾丸を全て食らったユスティナは静かに消えていく
酒泉はそのまま弾を撃ち終えた方にもスナイパーを突きつけ、引き金を引く
自身を狙っていた敵を片付けた酒泉は、後ろを向くが………
「─────!」
他とは明らかに存在感の違う聖徒────バルバラが酒泉に向かって走り出す
バルバラが巨大なガトリングの様な武器を構え、酒泉に向けると同時に────酒泉もバルバラに向かって走り出す
バルバラは何故か銃を撃つのを止め、一旦距離を取る
………やっぱりな、あのままバカデカイ武器を撃ってたら俺が死んでいた、だから下がったんだ
ベアトリーチェの〝折川酒泉の捕獲〟という目的の為、酒泉に対して死ぬ危険性のある行動を取れないユスティナ達
その行動プログラムを利用し、酒泉は何とか戦い繋いでいる
………っ!?
バルバラの背後で佇んでいたアンブロジウスが酒泉に青い炎を放つ
酒泉は後ろに跳び回避するが、それを左右に展開していたユスティナ達が追撃する
右から飛んで来る弾丸を超硬質ナイフで防ぎ、左から飛んで来る弾丸を〝眼〟の力で最小限で回避する
敵の攻撃を防いだ酒泉はスナイパーライフルで右側の敵を撃ち抜く
そのまま左側の敵を始末しようとした酒泉────
やばっ…………!
────アンブロジウスが先程より一回り大きい青い炎を手に浮かべる
その炎を投げ飛ばす動作を確認した瞬間、酒泉は左側のユスティナの元へ走り出し…………
そのまま炎が着弾した
───近くにいた………お前が悪い………なんちゃって
ユスティナを盾代わりにしていた酒泉が身を現す、ポイッと地面に捨てられたユスティナは少しずつ消滅していく
酒泉を認識したバルバラが再び酒泉に襲い掛かる
避けれる攻撃は避け、防げる攻撃は防ぎ、止めようのない攻撃が繰り出されそうな時は〝敢えて〟即死しそうなルートに飛び込み、敵の行動を止める
自身の持ち得る全ての技術を駆使して何とか抵抗する酒泉、だが体力も弾丸も既に限界を迎えている
更に敵は酒泉を殺す事は出来ないが────
ダァンッ!
………っ………いっ………てぇ………!
─────手足を撃ち、抵抗手段を奪う事は出来る
バルバラの放つ銃弾が酒泉の右腕を撃ち抜く、酒泉は痛みのせいで思わずスナイパーライフルを手放してしまう
その隙を逃さず、ユスティナ達が弾丸を酒泉に放つ
左手のナイフで弾丸を止めるが…………
ぐっ…………!
アンブロジウスが手を翳したと同時に地面が青く光り、突如爆発して酒泉の左腕を焼く
手に持つナイフを落としてしまい、止めきれなかった弾丸が酒泉の身体を掠る
更にバルバラは両腕の巨大な銃を酒泉に向けて撃ち放つ
瓦礫に身を隠すものの、通常のマシンガンやガトリングガンすら凌駕する質量と威力の攻撃に酒泉は簡単に吹き飛ばされる
ナイフとスナイパーライフルを手放してしまった酒泉は残された武器、アサルトライフルを取り出し近づいてくるユスティナ達を撃ち抜く
そして────
…………やっべ、弾切れた
カチッと虚しい音だけが鳴った
酒泉達はバシリカに着くまで、敵のアリウス生の銃や手榴弾などの物資を奪いここまで戦ってきた
しかし膨大な量、尚且つ強大な敵を同時に相手していた酒泉の弾薬は限界を迎えた
抵抗のしようが無い状況、打つ手はない、それでも諦めるわけにはいかない
ベアトリーチェと戦っているサオリ達の為にも─────
…………っ!
─────しかし現実は非情だ、酒泉の左脚を弾丸が貫く
最早まともに歩く事すら厳しくなった己の身体を必死に鼓舞し、立ち上がる
空になったアサルトライフルを放り投げ、両手に何も持たぬ状態でバルバラ達を睨み付ける
そんな酒泉にバルバラがゆっくりと近づき─────
ドガァァァンッ!!!
「キエエエエエエエエエエエ!!!」
「お、降ろしてくださいいいいいいい!!!」
「──────酒泉ッ!!!」
─────突如瓦礫を破壊しながらツルギとヒナが飛び出してきた
………槌永さん、何で剣先さんにおぶられてんの?
「あ………カーナビ代わりです………えへへ」