「─────」
「………逃がすかぁ………壊してやるぅ……!」
ツルギと戦闘中のバルバラが突如逃げ出す、その方向は酒泉とヒヨリが向かったのと同じ方向───つまりベアトリーチェのいる場所だ
「………っ!行かせない!」
ツルギがバルバラに近付こうと追いかけ、ヒナがデストロイヤーでバルバラを撃とうとするが、アンブロジウスが青い炎を投げ付けて妨害してくる
「………っ!剣先ツルギ!力を貸して!」
「…………いいだろう」
ツルギが近くの壊れかけの柱を利用して大きく跳び、アンブロジウスの頭に着地する
そのまま二丁目のショットガンを構え、アンブロジウスの後頭部をひたすら撃ち続ける
アンブロジウスは暴れまわり、ツルギを振り落とすが
「これで終わり」
今度はヒナがアンブロジウスの頭に乗り、そのままデストロイヤーで頭を破壊した
「………助かった」
「………礼を言うのはまだ早い」
敵を倒した二人はバルバラの逃げた方へと走っていく
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「チッ………貴方に死なれては困りますからね」
触手の様な物を引き抜き、酒泉を投げ捨てるベアトリーチェ
「ベアトリーチェエエエエ!!!」
その様子を見たサオリは怒りを露にし、武器も何も持たない手で殴り掛かろうとし────
「元はと言えば貴女が彼を連れてきたせいですよ?」
────ベアトリーチェの言葉に脚を止める
「確かに私は折川酒泉を連れてこいと命令しましたが………まさか一度殺しかけた相手に助けを乞うほど愚かだとは思いませんでした」
「………っ………」
「それともいざとなれば折川酒泉を裏切り、私に引き渡す算段だったのですか?」
「そんなこと────」
「貴女の行動はそうとしか思えないのですよ、私が折川酒泉を狙っているのを知っていて彼に助けを求めるなど………」
「なっ………!」
「確かに貴女が折川酒泉を連れてこなければ、私はとっくに秤アツコを生け贄に儀式を開始していたでしょう」
「違う………」
「秤アツコを救出する為の戦力を得て、いざとなれば交渉用の道具として利用でき、更には今みたいに盾代わりにもなってくれる、とても便利な〝道具〟を手に入れる事が出来て良かったですね?」
「私は……私はそんなつもりじゃ……!」
「でも結果的にそうなってしまった、貴女達のせいで」
ベアトリーチェの言葉のナイフがサオリの心を次々と突き刺していく
何も反論出来ずに、ただ立ち尽くすしかない
「っ!ああもうっ!何ボサッとしてるの!」
ミカがサオリの後ろに駆け出し、倒れ伏す酒泉を肩に抱えて下がる
それを援護するようにアツコはサブマシンガン───スコルピウスを構える
反対側に吹き飛ばされたヒヨリとミサキもそれぞれ己の愛銃────アイデンティティとセイントプレデターを構える
アリウススクワッドのメンバーが各々戦闘態勢に入る中、リーダーであるサオリだけが何も出来ずにいた
「サオリ、貴女は疫病神です。光の世界に入れば入る程、光の世界の人間を黒く染めていきます」
「サッちゃん!耳を貸しちゃ────」
─────アツコがサオリに叫ぼうとした瞬間、通路側からバルバラが飛び出してくる
「……っ!バルバラ!?倒したんじゃ………」
「上でヒナさんとツルギさんが足止めしていたはずじゃ……」
驚愕する全員を置いてバルバラは駆け出す、そのまま襲いかかってくると思われたが、バルバラはベアトリーチェの背後に立つ
「キヘヘヘヘヘヘ!逃がすか……!」
「酒泉には触れさせない………!」
バルバラの後を追うように少し遅れてツルギとヒナが到着する。ヒナはバルバラの位置、そして酒泉の安否を確認しようと辺りを見渡すが………
「………………嘘」
見つけてしまった、誰かに抱えられている酒泉を
…………身体から血を流し、ピクリとも動かない酒泉を
「なん……で……」
なんでこんな事になってるの?
誰がこんな事を?
私が送り出したせい?
彼を信じてしまったせい?
彼に嫌われてでも縛り付けるべきだったの?
なぜ、どうして、だれが、いやだ、しなないで
思考が纏まらず、ひたすらそんな言葉を脳に思い描くヒナ
そんなヒナに初めて聞く声が響く
「空崎ヒナに剣先ツルギ、面倒なのが来てしまったみたいですね………こうなった以上、もう手段は選んでいられません────」
────あの男は必ず確保します
「………っ!お前が………!」
ベアトリーチェの言葉を聞いた瞬間、ヒナは酒泉を傷つけた相手を瞬時に判断し、銃を構える
サオリも我に返り、すぐにアサルトライフルを拾い上げる
そして全員がベアトリーチェに攻撃しようとした瞬間──────
──────バルバラの腕がベアトリーチェの身体を貫いた
「………は?」
突然の仲間割れに全員が唖然とする
しかし背後から貫かれたベアトリーチェ本人は何故か笑っている
「確かに儀式の生け贄であるアツコは奪還されました、しかし儀式その物はまだ完全に壊れきってはいません。なら、使える物は使うまで」
「……まあ、どれほど偉大な人物だったとしても、こんな大昔の骨董品を吸収したところで大した力は得られませんし、そもそも成功するかも定かではありません」
貫かれたベアトリーチェの身体から血が流れ始める
やがてベアトリーチェ自身も血の様に赤い液体となり溶け出す
「なら私は─────」
その血は地面に伝う事なく、バルバラに纏わりついてゆく
「─────私自身を捧げましょう」
バルバラの髪が赤く染まる、頭部に浮いている崩れかけのヘイローは赤黒い光輪で繋がれ、身に纏うベアトリーチェの血が赤いドレスの様な衣装に変形していく
そして残されたベアトリーチェの血がバルバラの身体へと吸収されていく
「敵に未来を知る者がいる以上、此方は敵の想定を上回らなければなりません」
バルバラの背中から赤い鋭利が生え、枝の様に広がる
「まもなく私の意識は完全に消滅するでしょう、しかし私を吸収したバルバラは私の意思を継ぐはずです」
バルバラの頭部を護る様に大きな花弁が展開される
「この未来を貴方は予想出来ましたか?それとも計算外でしたか?まあ………今の貴方には聞こえていないでしょうね」
──────折川酒泉
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「イオリ、三時の方角からユスティナが来る!近くにシスターフッドがいるはずだ!彼女達と協力しながら私の方まで撤退して!」
『何言ってんの先生!そんな事したら危険だろ!全員で倒した方が……』
「この付近は物陰が多い!爆破部隊の皆に建物ごとまとめて処理してもらう!ヒナタの力も貸してもらえると助かる!」
『そういう事か……了解!』
『は、はい!分かりました!』
目の前の戦場を走り抜けながら〝シッテムの箱〟で状況確認をし、通信機越しに指示を出す先生
その優秀な指揮力でアリウス自治区全体の戦況を把握しながら、ゲヘナの風紀委員会、そしてトリニティの正義実現委員会とシスターフッドにサポートを行う
………そして組織に属さない者にも
「………っ!駄目だ、アズサ!前に出すぎている!」
『今度こそ……今度こそサオリ達に会うって決めたんだ!』
「命あってこそだ!出会う前に死んでしまったら元も子もない!」
『………それでも!』
「………ならせめて近くにいるハスミ達と連携を取るんだ!彼女達の位置が一番敵が少なく、アンブロジウスもいない!突入する時も比較的楽になるはず!」
『分かった!』
感情を抑えきれず、予定の位置よりかなり前に出てしまうアズサ
説得してもあまり効果が無い事を理解した先生はせめて少しでも安全に進める様にアズサに味方の位置を教える
アズサとの通信を終えたと同時に、今度はアコから通信が送られる
『先生、作戦通りに二体目のアンブロジウスを撃破しました』
「よし、その付近から敵の反応はもう無い!一度下がって物資を補給した後、三体目のアンブロジウスの所に援護に行ってあげて!」
『分かりました、補給した後、再度連絡します』
『せ、先生!大変です!』
アコが通信を切ると、突然〝シッテムの箱〟と呼ばれる機械から声が響く
しかしその声は先生にしか聞こえない謎の力が働いている
「どうしたの〝アロナ〟何があったの!?」
〝シッテムの箱〟の中に存在する水色の髪の少女、〝アロナ〟が慌ただしく伝える
『ヒヨリさんの言っていたバシリカの方角から急に膨大なエネルギー反応が出現しました!』
「………!」
突然の異常事態に一瞬だけ顔を強張らせる先生、しかしすぐに対処しようとシッテムの箱で再び戦況を確認しようとした瞬間─────
『────先生!』
シスターフッド所属の少女、伊落マリーが通信を掛けてくる
『ユスティナ聖徒会が急に増えて………!』
「ユスティナが………!?」
『それだけじゃなくて………そのユスティナ全員が赤色に染まっています!』
「赤色………?」
『その赤色の個体はさっきまで戦っていた通常のユスティナよりも強力で………速度、硬度、火力の全てが上がっています!』
「………赤色のユスティナに遭遇した部隊は敵を倒す事よりも少しでも軽傷で退却する事を優先するように伝えて!」
『り、了解です!』
想定外の事態に更に想定外が重なり、顔を歪める先生
その手は、〝大人のカード〟を強く握りしめていた
「………〝無茶しないで〟なんて、今後は酒泉に言えないな」
強化型ユスティナ
通常よりも全体的にスペックが上がっている、なお色彩には勝てない模様
バルバラ(ベアトリーチェ吸収体)
強化型ユスティナと同じく全てのスペックが底上げされており、更にはベアトリーチェの光線、そして強化型ユスティナを召還する能力を持つ
また、武器もパワーアップしており、ベアトリーチェの光線をガトリングで連続射出できる
でもやっぱり色彩には勝てない模様