俺も無所有になります
「………あれ?こういうのって普通シリアスな顔で『あ……貴女は一体……』とか言うんじゃないの?」
目の前の女性の話し方がいきなり変わる………いや、ゲーム本編だと先生が相手だったから敬語使っていただけか
七神さん相手だと普通に砕けた話し方してたし
「うーん……それにしても本当に驚かないね」
いや、実際はバチクソに驚いてます
「そうは見えないんだけどなぁ……」
………ところで、一つ聞きたいんですけど
「何を聞きたいのかな?………ハッ!もしかして私のスリーサイズを………!?」
は?逆に俺のスリーサイズ教えてやろうか?
「そんな事教えられても………」
……って、話が逸れた
俺が聞きたい事ってのは………
もしかしてこのまま電車に乗り続けたら俺死んだりします?
「……………………かも?」
…………………
嫌だああああああっ!!!死にたくない!!死にたくないいいいいい!!
「うわあ!?」
嫌だ……嫌だぁ!!!出してくれ!出してぇ!俺は帰らなくちゃいけないんだ!!!俺の世界に!!!
「ちょ!?落ち着いて!?」
私は………不滅だあああああああああっ!!!
「冗談!冗談だから!」
……へ?
「酒泉君は今意識を失ってるだけだから!」
へ、へへ………なんだよ、ビビらせやがって……
「………まあ、死ぬ可能性も────」
うわああああああああああっ!!?
「嘘嘘嘘!本当に冗談だから!」
たくっ、余計な手間を掛けさせないでくださいよ……
「ごめん……でも酒泉君のリアクションも大分助長させてたと思うけど……」
多分気のせいっすね
「……………そういえば酒泉君に聞きたい事があったんだった」
俺に?
「うん、酒泉君ってどうして─────」
「──────どうして戦ってるの?」
………と言いますと?
「だって酒泉君は未来を知ってるんでしょ?それなら自分が何もしなくても大体の事は先生が解決出来るって分かってたはずだよね?」
………まあ
「ヘイローも持たない、銃弾一発で死ぬ可能性のある身体でどうしてあんなにボロボロになるまで戦うの?だって酒泉君は────」
「────責任を負う者ではない」
…………
「元々この世界に存在しなかったのならこの世界の事件は酒泉君には何の関係もない、無理して戦う必要はないんだよ?」
……前に会った時に「この世界を頼む」みたいな事言ってませんでしたっけ?
「そうなんだけど、ちょっと気になっちゃって………こうしてまた会えたし折角だから聞いてみようかなって」
そんな偶然会った主婦同士の立ち話感覚で言われても……
「それなのにどうして自分から危険な目に会いに行くのかなって」
………大した理由じゃないっすよ?
「それでも聞いてみたいな」
……………………推しに幸せになって欲しかったから
「……え?」
あとアリウスにムカついたから……………今はベアトリーチェに対する怒りの方が大きいけど
「えーっと……」
それと自分という異物が存在してるせいで俺の知ってる未来通りになるか不安だったから、どうせ未来が確定してないなら自分のやりたい事をやろうと思って
………まあ、そのせいでアリウススクワッドが全員殺されかけたし、危うく空崎さんの手も汚させるところでしたけど
「……いっぱい背負ってるんだね」
いや背負ってはないっすね、どっちかって言うと勝手に引きずり回してる感じっすね
「そこはカッコつけてでも背負ってるって言おうよ」
無理です、俺に背負えるのなんて精々コミケ帰りのリュックサックぐらいです
まあ、それだとリュックサックだけじゃ足りないと思いますけど
「例えがよく分からない………」
……それと、さっきこの世界の問題は俺には関係無いって言ってましたけど、そんな事は無いですよ
「…………」
アビドスとかミレニアムとか全くの無関係な所の問題に関わるつもりはないですけど、世界規模の問題だと必然的に協力しないといけません
だって俺はこの世界が────────ゲヘナが大好きですから
天雨さんと銀鏡さんが何か言い合ってるのを火宮さんがオロオロしながら止めようとしたり
空崎さんがそんな二人を嗜める様な目で見つめて二人をビビらせたり
その四人とは別の、風紀委員の実働隊メンバーで任務帰りにどっかによって皆で食事したり
時々全員でバカやりまくって、空崎さんを風紀委員全員で無理矢理休ませたり
居場所なんです、俺の帰る場所なんですよ、ゲヘナは
……まあ、治安が悪すぎるせいで時々転校したくなる時はありますけど
「自分の護りたい物を護る為だけに戦う……」
駄目ですかね?
「……ふふ、そんな事はないよ。凄く良いと思う」
……そういえば貴女は────
────何処に居るんですか、そう問おうとした時、突如意識が薄れだす
頭の中がふんわりとした感覚に襲われ、身体を上手く動かせなくなる
「……そろそろ時間だね」
口が上手く回らない、だんだんと視界が暗くなっていく
「久しぶりに誰かと話せて楽しかった、ありがとう!」
「本当はもう少しお話したかったけど………貴方は元の世界に戻って、貴方が帰るべき居場所に」
せめて……さいごに……
ピックアップ率上げて………アロナ………
「何の話!?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
バルバラがガトリングから赤色の光線を弾丸の様に放つ
先生は〝大人のカード〟の力によって防御用ドローンを出現させ、そこからバリアを展開する
しかし想定していたより遥かに高い火力により、バリアにヒビが入る
「……っアロナ!出力を少し下げてバリアの範囲を絞って!」
『任せてください!』
意識を失っている酒泉と先生を丸ごと覆う様に展開されていたバリアが移動し、二人の正面にバリアが集中する
一ヶ所に防御を固めた事でバルバラの攻撃を防ぐが、バルバラは横に走り出し、バリアの展開されていない場所を狙い撃とうとする
「させない!」
「止まってくださいいい!」
バルバラの移動先を予測し、ヒヨリがバルバラの脚を撃ち抜く
それにより一瞬だけ脚を止めるが、バルバラの脚は直ぐに再生される
しかし再び走り出そうとするバルバラの足元にアズサのグレネードが投擲される
その爆発により今度は両足を損傷する
「ヒャハハハハハァ!!!壊れろぉ!」
「塵すら残さなければいいだけの話だ!」
再生中のバルバラにツルギとサオリが接近し、装填されている弾を全弾撃ち尽くす
至近距離での攻撃がバルバラの身体を纏う血ごと抉っていく
カチッカチッと空撃ちの音が鳴るまで引き金を引き続け、サオリとツルギは後ろに下がる
「さっきのお返しだよっ!」
そこにミカが上から飛び込んできて、サブマシンガンを放ちながらバルバラの身体を全力で殴る
更にバルバラが吹き飛ばされた先にミサキとアツコが銃撃を行う
唯でさえ壊れかけのバルバラの身体は更に崩れさり────
「っ!これでも駄目か……」
『あの再生能力を何とかしないと倒せません!』
────ぐちゅり、と音を立てて再生された
「もう、そろそろ休みたいんだけどー!」
「………じゃあ勝手に休んでれば?」
「はあ?貴女には言ってないんだけど?それよりもあのスティンガーどうしたの?あれ使いたいんだけど」
「弾も銃も限界………そもそも本来半使い捨てのを無理矢理使えるようにしてただけだから」
「……はぁ」
「………何?言いたい事があるならハッキリ言えば?」
「べっつにー?ただ疲れたからタメ息吐いただけだよ?」
「嘘ばっかり………」
「二人とも仲良いね」
「……姫、冗談でも止めて」
軽口を叩き合っているが、現状は敵の再生力に打つ手がなく、更に………
『先生!ユスティナがまた出現しました!』
「さっき倒したばかりなんだけどなぁ……」
「だったらまた全滅させるっ!」
ヒナがデストロイヤーを構えユスティナに突っ込んでいく
一体一体が強化されているものの圧倒的な高火力、そして圧倒的な手数で確実に落としていく
しかしユスティナに手間取っている間に今度はバルバラが完全に復活する
「それなら一気に!」
大人のカードを強く握り、シッテムの箱を操作する先生
するとバルバラの上空に軍用ヘリが現れ、重機関銃やミサイル等を一斉発射する
一発当たる毎に確実に身体を消し飛ばす
『駄目です……また再生しています……!』
「……どうやら火力がどうのって話じゃ無さそうだね」
しかし損傷した傍から直ぐに回復していく
完全に壊された身体は直ぐに新たな身体が出現し、半壊した武器は損傷部位から少しずつパーツを埋める様に直っていく
「どうしたものかな……こういうのってフィクション作品とかだと大体〝核〟が身体の中心とかに存在するんだけど……」
『先程から弱点を探していますが……その、敵の行動が素早い上に直ぐに再生されるせいでちゃんと調べる事が出来ません』
「だよねぇ………」
でも今先生が言ってた通り〝核〟ありましたよ
「え?本当!?」
はい、さっき先生がヘリで攻撃した時にちょこっと見えました
俺、めちゃくちゃ〝眼〟が良いんで
「………あれ?でもさっきアロナ『ちゃんと調べる事が出来ない』って言ってなかった?」
『………あの、喋ってるの私じゃありませんよ?』
「え?」
「酒泉!!?」
いや~、よく寝ました
すいません、アラームセットし忘れたせいで遅刻しました
今から俺も一緒に痛い痛い痛い痛い痛い身体めっちゃ痛い!!!
『身体を貫かれた状態ですから当然かと……』
そんな……ブ◯ーチのキャラは穴が空いてても戦えるのに……!
『何の話………………え?あ、あの………!』
「………酒泉、アロナの声が聞こえるの?」
え?まあ、聞こえますけど……そんなに驚かなくても───
………あ、そういえばストーリーで「私の声は先生にしか聞こえないはず」とか言ってた様な……
前世で何度も聞いたから?それとも〝プレイヤー〟って意味では俺も前世で先生だったから?
「……まあ、その話は置いといて〝核〟を見つけたって本当?」
はい、実は先生がヘリを出す少し前から起きていたんですけど、その直後の攻撃で一つ発見がありまして………
………バルバラの武器、やけに硬くないですか?
「………まさかそこに?」
俺も身体の何処かに弱点があるはずって思い込んでたんですけど、修復されていくガトリングをよく見てみるとなんか丸っこい赤黒い球が見えたんですよねぇ……
「身体じゃなくて武器に……」
………まあ、あれが〝核〟だって確証は無いんですけどね
「………いや、私達は敵の〝身体〟を完全に破壊する事にこだわりすぎていたのかもしれない」
『どうしますか……?』
「……よし、やってみよう!」
よーし!俺達の反撃はこれから────
「酒泉は私の後ろに下がっててね?」
あ、はい
いつの間に背後にいたんだ、空崎さん………