ツルギとミカがバルバラに近接戦を仕掛ける
キヴォトスの中でもトップクラスの身体能力を持つ二人はバルバラと互角に渡り合えてはいるが、再生能力を持つバルバラは敵の攻撃を避ける必要がない
だが────
剣先さん!聖園さん!バルバラの武器………ガトリングを狙ってください!そこが弱点です!
────背後からの声に戦闘しながらも反応する二人
「酒泉君!?いつの間に起き上がってたの!」
「そこが弱点か………粉々にしてやるうううう!!!」
二人はバルバラの身体では無くガトリングに狙いを定める、突然銃口の位置を変えられたバルバラは反応が遅れ、そのままガトリングへの攻撃を許してしまう
少しだけガトリングが欠けるものの、まだ半壊すらしていない状態から即座に再生する
今度は零距離で弾丸を叩きつけようとミカはバルバラの腕を引っ張ろうとするが……
「………っ!避けた!」
過剰なまでに距離を取るバルバラ、本来なら武器を壊されたところで再生させれば良いだけの話
しかしここまで露骨に警戒するという事はガトリングを攻撃されたら困るという事を逆に教えている様なものだ
「ようやく見つけた………キェヘヘヘ」
「酒泉の言った通りだな………」
「一体いつ起きたんでしょうか……いつの間にかヒナさんも向こうに居ますし」
「…………………………近い」
「ミ、ミサキちゃん?」
「待って、何か来る」
アツコの言葉に全員が構えると、バルバラは背中の枝の様な部位から赤黒いエネルギーの塊を作り出し、その塊から無数の赤い弾丸が雨の様に降り注ぐ
更にバルバラ自身もガトリングにチャージしたエネルギーを撃ちだし、四方八方へと攻撃を繰り出す
「皆下がってっ!!」
先生は大人のカードを掲げ、上空に防御型ドローンを複数生み出す
ドローンは生徒達の真上で待機し、傘の様にバリアを展開した
「酒泉、大丈夫……私が必ず護るから」
羽で酒泉を覆いながら抱きしめるヒナ、しかし酒泉はそんなヒナに申し訳なさそうに言う
……気持ちは嬉しいんですけど、多分このままだと攻撃の手が足りません
「…………」
バルバラは隙が有れば俺の事を狙ってきます、それを利用して攻撃が回避出来ない状況を作ってやりましょう
「………そんなの認め────」
────だから俺の事を護ってください
「…………」
前に電話で約束しましたからね、もっと頼るって
「……うん」
……よし、先生!アロナさん!
「何かなっ!?」
『今は敵の攻撃を防ぐので精一杯なのですがっ……』
俺が囮になります!攻勢に出ますよ!
「……っ!駄目だ、分かっていながら生徒を危険に晒すなんて───」
………大人のカードの〝デメリット〟俺も少しは知ってますよ
「…………」
先生だって命張ってんでしょ?だったら俺だけ呑気に見てるわけにはいきません
生徒が教師を一方的に頼るだけではなく、教師が生徒を一方的に助けるだけではなく、生徒も教師も共に支え合って、共に成長していきましょうよ
「酒泉………」
つーわけでヤバくなったら助けてください、先生!俺まだ死にたくないんで!
「……はぁ、君らしいね………分かった!何があろうと全力で君を護るよ!」
よっしゃあ!男同士の友情パワー、見せつけてやりま────
「私の事忘れたの?」
ごめんなさい
全弾を撃ち終え、煙が舞う中戦場を見渡すバルバラ
目標を見つけようと歩き始めた瞬間、二つの人影が飛び出してくる
───オラァ!こっちだ覚悟女ぁ!!
バルバラのターゲットである折川酒泉、そして酒泉を抱えるヒナだ
バルバラは酒泉を捕らえようと酒泉を抱えるヒナの脚に銃口を向ける
「そうはさせんっ!」
しかし横から飛び出したサオリがバルバラのガトリングを蹴りつけ、銃口を逸らす
ガトリングによる攻撃を外したバルバラはユスティナを召還し、サオリの足止めをさせる
そして銃口を向け直しつつ酒泉に向かって走り出す
少しずつ距離が縮まっていき、バルバラの手がヒナの抱える酒泉に届きかける
「ここだ!」
「分かってる!」
その瞬間、ミカがバルバラを横から殴り飛ばす
バルバラは少しバランスを崩しヒナ達から再び距離を離され、そこにアズサがグレネードを投げつける
爆発を真正面から食らったバルバラは血を飛ばしながら吹き飛ぶものの、直ぐに起き上がり血を纏いなおす
「血を吹き出せえええええ!!!」
直後、ツルギが高く跳び上がりながらバルバラに襲いかかる
腕を振るいツルギを迎撃しようとするが────
「…………キヒヘヘヘヘヘ!」
ショットガンを身体の前で交差させ、バルバラの腕を止めるツルギ
そのまま地面と腕の間をくぐり抜け、バルバラの顔に二丁のショットガンを放つ
「壊れろ!壊れろ!壊れろ!壊れろオオオオオオ!!!」
何度も何度も撃ち続け、バルバラの顔をズタボロにする
そして頭部が完全に崩れたのを確認したツルギはその場を離脱する
「やるよ、姫」
「…………タイミングバッチリ」
それを少し離れた場所から確認したミサキとアツコが二人ともスティンガーミサイルを放つ
「………先生のあのカード、どうなってんの」
「まさか何も無い空間から二つもスティンガーを出すなんてね」
ミサイルは少し上に上昇した後、頭部を再生しきれていないバルバラに降り注ぐ
一発一発の爆発がバルバラの纏う血を飛び散らし、肉体を破壊していく
バルバラの辺り一帯が爆煙で見えなくなる
再生されきっていない身体を無理やり動かそうとするが、突如上から謎の飛行音が聞こえ、上空を見上げる
「作戦通りの位置だね」
『パワー全開でいきます!』
そこには三機の攻撃ヘリがバルバラを囲んでいた
全てのヘリが銃口をバルバラに向け、重機関銃とミサイルを解き放つ
まだ上半身しか再生出来ていないバルバラはその攻撃から逃れる事は出来ず─────
─────再生された片腕でガトリングを投げ飛ばした
「………っ!」
『まだ抵抗を!?』
上空に浮かぶガトリングから少しずつエネルギーが漏れでて身体が再生されていく
反撃に出ようと再生されかけの手でガトリングを握るが………
───はいドーンッ!
酒泉がスナイパーライフルでバルバラの手を撃ち抜き、そのままガトリングを落とさせる
「良い仕事よ、酒泉」
落下したガトリングにヒナが残されたデストロイヤーの弾を全弾発射する
一撃当たる毎に少しずつガトリングが削られていき、そして
『……っ!おそらくあの赤黒い魂が酒泉さんの言っていた核です!』
「よし………!全員総攻撃───」
瞬間、赤黒い塊から無数のレーザーが放たれる
「………!」
「く……まだこんな物を……!」
完全に剥き出しにされた弱点部位からの突然の攻撃に不意を突かれた全員は、回避行動を取る前に吹き飛ばされる
そしてその間にガトリングからバルバラの身体が再生されていく─────
「えへへ………私なんかがトドメを譲って貰っちゃって申し訳ありません………」
──────その前に強力な一撃が核を撃ち砕いた
「……っ!何か出てくる!」
「ひいいっ!まだ戦うんですかぁ!?」
砕け散った赤黒い塊から得体の知れない何かが飛び出してくる
それは一ヶ所に集まると人の形に成っていき………
「ベアトリーチェ……酒泉を傷つけた奴……!」
ベアトリーチェの姿へと変化した
「………こいつまだ生きていたんだ」
「でも……起き上がる様子は無さそうですよ……?」
「終わった……のか……?」
ピクリとも動かないベアトリーチェを全員で警戒する
『先生!どうやらベアトリーチェはまだ生きているみたいです!………でも、各地からユスティナの反応が消えました!』
…………………った………
「………?」
勝ったぞおおおおおおおおおおお!!!
「待って酒泉!そんな大声を出すと………」
いっっっってええええええ!!!先生助けてええええええ!!!
「言わんこっちゃない……」
勝利の雄叫びを上げるが、自身のダメージをすっかり忘れていたせいで酒泉の勝利の雄叫びはただの悲鳴へと変わる
しかし直ぐに気を持ち直して話し出す
槌永さんナイス!最後のマジでナイス!
「そ、そうでしょうか………?」
よお~~~しよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし!!!
「えへへへ………ここまで褒められたのは久しぶりです………」
三個か?甘いの三個欲しいのか!?
「い、いいんですか!?」
………あ、ごめん、ぐっちゃぐちゃの血塗れになってるわお菓子
「うわああん!労働の対価を得られないなんてやっぱり人生は辛いことだらけなんですぅぅぅ!!!」
泣くな泣くな!そのうち雑誌かなんか差し入れしてやるから!
「うぅ……本当ですか……?」
ああ、ホントホント─────
「酒泉、近すぎるから離れて」
「ヒヨリを甘やかさないで」
ヒエッ………
先程までギリギリの戦いをしていたとは思えない空気に緊張が緩む
「さて……後は────」
「ベアトリーチェの回収は私達に任せて頂けないでしょうか?」
「そういうこったぁ!」
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俺の身体が突然不気味な感覚に襲われる
怪物に遭遇した時とは違う、死にかけた時とも違う、もっと別の何か
〝理解出来ない恐怖〟それが俺の身体の中で暴れだす
「な……!?」
「顔が……無い……?」
声のした方へ全員向くと、ベアトリーチェとはまた別の方向性を持つ異形の存在に全員が驚愕する
おそらく男性であろうその者は───頭部が存在していなかった
「この様な形で出会う事になってしまい大変申し訳ありません、私の事は〝ゴルコンダ〟と………そして此方の者は〝デカルコマニー〟とでも呼んでいただければ」
………ストーリーの展開上、ここで出会う事は分かっていた
正直これは────想像以上にヤバい
ベアトリーチェは単純にシンプルな怒りや殺意で分かりやすかった
だけどこいつ等に関しては何から何まで不気味で恐ろしい
………前世では先生大好きクラブだの何だの言われてたが、こうして実際に相対してみると、とんでもない〝ナニカ〟を感じる
仮に突然元の世界に戻ったとしても、もう二度とネタに出来ねーな………
「それにしても驚きました、ベアトリーチェ……彼女の事はただの舞台装置だと思っていましたが………まさかあそこまでの進化を果たすとは」
「具体的に言えば進化したのはバルバラですが、自分自身が上位の存在へと至る事にこだわっていた彼女が自分自身を生け贄に捧げてでも手に入れたい知識………その価値が貴方にはあるようですね」
「本日は先生が私達ゲマトリアにとってどの様な存在になるのか見極める為に来たのですが……とても面白い物を観させてもらいました」
─────折川酒泉さん
そう名前を呼ばれた時、身体の不快感が強くなり、身体が少し震えだす
………いや、強がって〝不快感〟なんて言い方してるが、これは間違いなく〝恐怖〟だ
奴らの身体を直視出来ずに視線を逸らすと、先生が俺の前に立つ
「………私の生徒に手を出さないでくれるかな?」
「これは失礼しました、その様な意図は無かったのですが………」
「………それよりもベアトリーチェを置いていってもらえるかな?彼女には色々と聞きたい事があるんだ」
「申し訳ありませんがそれは出来ません、彼女も〝一応は〟ゲマトリアのメンバーですから」
「……まどろっこしい事は無しにして力ずくで奪えばいいんじゃない?」
サブマシンガンを構える聖園さん、それに釣られて他の人達も銃を構えるが……
「────それは得策ではありませんね。最悪の場合、この中の何人かが死ぬ事になるでしょう」
その言葉にピタリと止まる
「私に戦闘能力はありません、ですが代わりに様々な物を作り出す事が出来ます。そう、例えば………〝ヘイローを破壊する爆弾〟、あれも私が作り出した物の一つです」
「……まあ、あれには私が思っていた程の効果はありませんでしたが………それでも今の貴女達には相当の脅威になるはずです、その効果は貴女達が一番理解しているはずです、アリウススクワッドの皆さん………そして空崎ヒナさん」
ヒナが思い出すのは〝ヘイローを破壊する爆弾〟を跳ね返し、秤アツコのヘイローを破壊しかけた記憶
「そもそもあの時から私が爆弾を改良している可能性だってあります。距離、威力、数、それらを正確に把握する事が貴女達に出来ますか?………そして大人のカードで全員を護る事が出来ますか?」
奴等の言葉に誰も言い返せない
「………さて、そちらの援軍がやって来る前に引き上げるとしましょうか」
ベアトリーチェを肩で支え、此方に背中を向けて歩きだす
「機会があればまた会いましょう、先生………そして折川酒泉さん」
………その時までにゲマトリアが崩壊してなければいいな
奴等は負け惜しみの様に吐き出した俺の言葉を無視してそのまま引き返していった
シスターフッドと正義実現委員会、そしてゲヘナ風紀委員会が到着したのはそれから少し後だった
………とりあえずは勝ちだ