それ以降は番外編をちょくちょく書いたり、ゲーム本編のゲヘナやアリウス、トリニティ関連のメインストーリーの更新次第ですかね
「酒泉……その、今日もお弁当作るの忘れちゃって……だから、その……今日も一緒に食堂に……」
書類仕事を終え、ペンと判子を机に置いて空崎さんが話しかけてくる
……おかしい、万魔殿にも仕事させてるから少しは楽になったはずなのに
もしかして相当空崎さんの疲れが溜まっていたのか?
「………ごめんなさい、毎回私と一緒に食べるのは嫌だよね」
思っていたより空崎さんの時間を作れていない事に疑問を感じていたが、その様子を勘違いした空崎さんが申し訳なさそうに謝罪を入れてくる
いやいやいや!そんな事ないですよ!ちょっと考え事してただけなんで!それで、今日は何を食べます!?
「本当……?無理してない?」
いやマジで大丈夫なんで!空崎さんとなら毎日でも一緒に食べたいくらいなので!
「ま、毎日っ!?…………そう、なんだ………」
……あ、今の発言は俺が言うのはちょっとキモかったっすね、すいません
「………そんな事ない、その………嬉しかった」
は?可愛いの塊か?
「…………………へっ!?」
………やっべ、口に出てた
ほ、ほら!早く行きましょう!今日は人気メニューがある日なんで混みますよ!
「あ………う、うん」
「多分私達の存在忘れてるよね……」
「はい……ところでアコ行政官は?」
「そこで脳を破壊されてる」
「ヒナ委員長ヒナ委員長ヒナ委員長ヒナ委員長ヒナ委員長…………」
「………放っておいていいんでしょうか」
「いいんじゃない?アコちゃんだし」
「ヒナ委員長がいっぱいだぁ……!」
全ての仕事を終えた俺は、帰宅してリビングでここ最近の空崎さんの様子について考える
……なんか最近ずっと弁当忘れてるんだよな、空崎さん。仕事量は目に見えて減っているはずなんだけどなぁ
まさか家に仕事を持ち帰っているんじゃ……!
もしそうだとしたら〝空崎さんの負担を軽減させよう大作戦〟(命名・俺)が失敗に終わってしまう
どうしたものか……
………弁当、か
俺って自炊はするけど別に得意な訳じゃないんだよなぁ……
………よし、やってみるか
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「酒泉、こっちもお願い」
………
「酒泉?」
……ぅえ!?あ、はい!
酒泉の様子がおかしい、さっきから仕事に集中出来ていない
………まあ、それでもミスしてないのは凄いけど
「……何かあったの?」
い、いいいいや?べべべべつにななにも?
「……」
彼は別にポーカーフェイスが下手というわけではない、戦闘中にハッタリを利かせたりとそういう系統の事はむしろ得意な方だ
……なのだが、そんな酒泉が明らかに動揺している
前に彼と「何かあったらちゃんと私を頼る」と約束したから、無茶をしている訳ではないと思いたい
「酒泉、本当に────」
あ!そろそろお昼ですね!
……露骨に話を逸らされた
しかし彼の言う通りそろそろお昼、仕事が一段落する時間だ
少し前までなら万魔殿絡みの面倒な仕事のせいでもっと時間が掛かっていた
でもここ最近は何故か自分達の仕事を自分達でこなしている…………そもそもそれが普通の事なんだけども
一体何を企んでいるのか知らないが、酒泉に手を出さなければ構わない
その……空崎さん、今日のお昼は?
「えっと……また食堂に行こうと思ってるけど……その……」
万魔殿の事を考えていると酒泉が私の予定を聞いてくる、ここ最近はずっと一緒に食事を取っていたから今日もそのつもりで聞いてくれたのかもしれない
……本当は酒泉が普段から食堂を利用していると知ったから、敢えて自分の弁当を作らずに一緒に食堂で食事をしているだけだ
……こんな事を知られたら酒泉に嫌われたりしないだろうか
「その……今日も一緒に行く?」
不安な気持ちを押し殺して酒泉に話しかける、すると酒泉は少し声が上擦りながら答える
そう……ですね、でもその前に少し行きたい場所があるんですけどいいですか?……出来れば空崎さんも
「……?構わないけど……」
そう言うと彼はトートバッグを肩に掛けて外に出た
「委員長!こちらの仕事を全て終わらせました!」
『サスガアコ、ユウシュウネ』
「いえいえ!委員長に比べたら私など……」
『ソンナコトナイ、アナタニハイツモタスケラレテルワ』
「い、委員長……!」
『イツモアリガトネ、アコ』
「委員長おおおお!!!」
「うわあ……指人形まで作ってる」
「流石に止めた方がいいのでは……?」
「あれに関わりたい?」
「…………」
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酒泉に付いていくと、校舎の裏側に設置されているベンチにつく
二人でそこに座ると、酒泉はトートバッグから風呂敷を取り出し、それを広げる
その中からは二つ弁当箱が出てきた
「………二つ?」
疑問に思っていると、酒泉がそのうちの一つを私に渡してくる
いや、最近ずっと食堂を使ってたんで弁当を作る暇もない程疲れてるのかなって……その、
────空崎さんの為に何かしたくて………
「─────」
彼が少し恥ずかしそうに笑いながら頬を掻く
……ああ、もう駄目だ、これは、もう────
────抜け出せそうにない
「酒泉」
いや、自炊が得意って訳じゃないんで味の保証は出来ませんよ!?中身も卵焼きとか野菜のおひたしとかウインナーとか普通の食べ物ばっかりですし!
「ねえ」
味も空崎さんの好みとか分からないですし全力で頑張りましたけどそれでも口に合わないかも────
「ありがとう、酒泉」
────………いえ、はい
「ねえ……開けても良い?」
ど、どうぞ……
酒泉のくれた弁当箱の蓋を外すと、中には先程酒泉が言っていた食材が綺麗に並べられていた
彼も同じ様に蓋を開けるが、私の方のお弁当よりもウインナーが少し焦げていたり卵焼きの形が少し崩れたりしていた
………本当に優しい
「いただきます」
両手を合わせ、酒泉のくれたお箸で卵焼きを掴み、口に運ぶ
それを酒泉は心配そうな表情で覗いてくる
………ど、どうですか?
「ふふっ……美味しいわ、今まで食べたどの料理よりも」
それは大袈裟では……?
「そんなことない」
正直な感想をぶつけると、酒泉は恥ずかしそうに顔を逸らす
そこからはあまり会話がなかったけど………
─────どこか心地よかった
「ご馳走さまでした」
お粗末様でした……でいいんでしたっけ?
「凄く美味しかった」
そこまで正面から言われるとちょっと恥ずかしいっすね………
「……ねえ、酒泉」
はい、何でしょうか
「明日は私が作ってくるね」
へ?いや、そこまで気を遣わなくても……
「気を遣ってる訳じゃない、私がそうしたいからそうするの」
じゃあ、その……お願いしてもいいですか?
「うん、任せて………それと、私は少し用事があるから先に戻ってて」
分かりました、それじゃあまた後で!
そう言うと彼は背中を向けて小走りする
ある程度距離が離れた所で私は後ろを向き───
「───次、邪魔をしたら許さないから、イロハ」
───建物の角で覗き見してくる趣味の悪い誰かさんに言い放った
どうやら酒泉は料理が私の口に合うかどうかで緊張してて気付かなかったみたいだけど……私は見逃さない
「折角彼と穏やかな時間を過ごしていたのに……途中から貴女が来たせいで台無し」
「最近大人しくしてるかと思えば、今みたいに監視の目を向けてきたり……」
「貴女達が何を考えているのかは分からない………けど、もし彼に手を出すつもりならその時は───」
「───覚悟して」
「なんて殺気飛ばしてるんですか、あの人………」