「へえ、あのゴリラ女の面会にも行ったんだ?ゲヘナの風紀委員から動物園の飼育員にでもなったの?」
なんで面会に行く度に罵られるんだよチクショウ
なんか開幕煽られました、どうも折川酒泉です
「何だかんだで仲良いんだ、ふーん」
「散々罵り合ってたくせに」
「そもそも何で私の前でよりによってあの女の話題を出すの?」
「あとこの前姫の面会に行ったって聞いたけどどんな話してたの」
「『俺の道具になれ』って言ったくせに簡単に捨てるんだ、私の事は必要じゃなかったんだ」
「そういえば酒泉ってヒヨリには甘いよね、私の事を捨ててヒヨリを新しい道具に────」
────待って待って待って待って待ってマシンガントークやめて
「……………」
無言で睨むのもやめてね?
面会して早々に戒野さんの機嫌が悪くなる、正直理由が訳が分からない
……なあ戒野さん、俺何かした?
「………」
もしかして戒野さんの前で聖園さんの名前出したから?
「………」
じゃ、じゃあ秤さんの面会に行ったのが原因?
「………」
………そ、それとも他の原因が……?
「………」
………
「……分からないんだ」
…………
よく分かんないけどすいませんでしたぁ!!!
とりあえず全力で頭を下げる、ちょっと勢いよく下げすぎたせいでゴスッと額を机に打ち付ける
「はぁ……もういい、そこまで本気で怒ってる訳じゃないから」
何かよく知らんが許してもらえたからヨシ!(現場猫)
「……それで、今日は何の用なの」
いや、特に用はないけど……何となく遊びに来た的な?
つまりこの間面会に来た時と同じ
「……そんな感覚で来られても困るんだけど」
あー……すまん、軽く話したらすぐに帰るから……
「別に嫌とは言ってないでしょ」
どうしろと?
前に秤さんからスクワッドの人達が俺に会いたがってるらしいって話を聞いたけど……戒野さんに関してはあんまりそう思わない
いつ面会に来ても似たような反応っていうか………全く変わらな────ん?
「……何じろじろ見てるの」
戒野さん……なんか肌綺麗になった?
「…………は?」
いや、何か雰囲気が違うっていうか………
「……セクハラ?」
ごめんなさい訴えないでください
「急に変な事言わないで」
でも実際に………あ、分かった
「………何が」
身体の傷が一部治ってるからだ
「………なんだ、そういうことか」
よく見てみるとアリウス自治区で共に行動していた時よりも傷が明らかに減っていた
手首に巻かれていた包帯も外されているが、その部分だけはうっすらと傷が残っていた
「ここじゃ自傷出来る物もないし、何もしなければ勝手に治ってくから………なんなら怪我してたら無理やり治療されるし」
まあ、裁く前に死なれちゃ困るからな、トリニティの人達もそれなりに丁重に扱ってくれるだろ
「私としては余計なお世話なんだけどね」
手首をぷらぷらさせながら気だるげに呟く戒野さん、自由が無いのは辛いだろうが………まあ、しゃーない
戒野さんってスクワッドの中でも一番の危険人物だからな
「……納得いかないんだけど」
目が離せない的な意味で危険なんだよ、隙あらば死んでそうだもん
「………それは酒泉も?」
俺?んー………カタコンベ突入前に合流した時は正直どうでもよかった、戦力的な意味では必要だけどそれ以外では特に仲が良い訳でもなかったし
「………まあ、当たり前────」
────けど、今死なれたらちょっと悲しむ………と思う
「ふーん………まあ〝持ち主様〟がそう言うなら、なるべく自重するけど」
素っ気なく……けれど少しだけ頬を染めて小声で呟く戒野さん
………そういえばさ、何で未だに俺の〝道具〟でいようとするんだ?
「『使ってやる』って言ったのはそっちでしょ」
ベアトリーチェとの戦いが終わるまでって条件付きだった気が……
「………私に生きる理由を勝手に与えてきた以上、無責任な事は許さないから」
そんな重い話だったっけ……
「………とにかく酒泉は私に命令する事だけ考えればいいから」
命令かぁ………まあ、多分この先またアリウススクワッドの力を借りるはずだから、その時頑張ってもらおうかな
「……ねえ、酒泉ってもしかして────」
おっと、皆まで言うな、俺はあくまでこの先何が起きるのか〝知っている〟だけだ
「────やっぱりそうだったんだ……」
この話は一部の人達にしかしてないから出来れば内密に頼む
「一部の人達……」
ああ、誰彼構わず伝え回ったら何処で誰が話を盗み聞きして悪用してくるか分からないからな
「……一つ聞かせて」
何を?
「……戦ってて辛くないの?」
それは………どういう意味だ?
「〝知っている〟って事はこの先に起きる事も大体は分かるんでしょ、だったら良い未来だけじゃなくて当然悪い未来だって見たことぐらいはあるはず」
「良い未来しか存在しないなら酒泉が自ら動く必要は一切無い、酒泉は悪い未来も知っていたから〝悪い方の未来〟に向かわせない為に自ら行動を起こした」
………
「自分がしくじったら未来が悪い方へ傾いてしまう、そんな責任感に押し潰されながら戦うのはどうして?」
……責任感とかじゃない、俺はただ大切な人達に傷付いてほしくなかっただけだ
「………その結果、調印式襲撃の時みたいに私達に殺されかけても?」
死にたくはない、でも悪い方の未来に向かってしまったらどの道俺も死ぬだろうし、仮に俺がどこの組織にも所属していなかったとしても結局やるしかないんだよ
「……まだ最初の質問に答えてもらってないけど」
………別に辛い事ばかりじゃない、未来を〝知っていた〟おかげで色々と出来る事もあったしな
「『ばかりじゃない』って事は結局辛いって事じゃん」
……まあ、正直……な
本当は俺だって何も知らないまま学生生活を楽しんだり世界の危機を知らないままダラダラと過ごしたかったさ
でも……それじゃあ────
「だったら逃げればいいでしょ」
────はい?
「別に酒泉一人の問題じゃないんだからそこまで身を削らなくてもいいじゃん」
「この世界が滅びたとしても酒泉には何の責任もない」
「たった一人の生徒に身を削らせないと滅びてしまう可能性のある世界なんて救う必要ない」
「酒泉はさっき『死にたくはない』って言ってたけど世界を救う過程で命を落としたら結局同じでしょ」
「だったら最初から全部投げ出しちゃおうよ」
「もし全てを置いていくのが怖いんだったら………」
「私が無理矢理連れ出してあげようか?」
戒野……さん?
「何を驚いているの?〝持ち主様〟の命令が無ければどうせ私も死ぬつもりだったし、それならいっそ二人で逃げ出してみる?」
………
「……なんてね、今の私にはそんな事をする力はないし」
冗談かよ、ビビらせないでくれ……
「………どうだろうね」
……あ、あー、ソロソロカエルジカンダー
「白々しい……」
だってめっちゃ意味深なこと言ってくるんだもん……
「……………」
……空気重いんで話の内容変えません?
「………勝手にすれば?」
じゃあ、まずはこの間槌永さんに頼まれてファッション誌を差し入れした時の────
「は?何それ、聞いてないんだけど」
だからどうしろと?
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いやー思ってたよりも大分話し込んだなー
戒野さんって一見素っ気なく見えてちゃんと話を聞いてくれるんだよなー
………最近色んな人の面会に行ってるけど俺自身も結構会話するの楽しんでんな
「そうなんだ、それは良かったね」
仕事終わりに寄って適当に駄弁りにいくこともちょくちょくありますからね
結構息抜きになるんですよ、これが
「それは私が相手じゃ駄目なの?」
いや、空崎さんっていつも忙しそうじゃないですか、その上更に時間を頂くなんて申し訳なくて………
「別に気にしないのに」
いやいやいや、そんな事したら天雨さんに怒られ………ん?
………………空崎さん?
「こんにちは、酒泉」
あの…………ここトリニティ…………
「来ちゃった」
………何故?
「またアリウススクワッドの面会に行くって聞いて」
………誰から?
「最近の酒泉の動向をアコに調べさせた」
………無茶な事はしてませんよ?いや今回は本当に
「そうみたいね」
……
「……」
……え?それを確かめに来たんじゃないんですか?
「……?」
いやそんな可愛く首を傾げられても……
「……ありがとう」
あ、はい…………ってそういう事じゃなくてですね……
その……何でわざわざこんな所まで……学校とかで聞いてくれれば素直に答えますよ?
「秤アツコの面会に行った時は教えてくれなかったのに?」
いや、あれは空崎さんの機嫌が悪くなると思って……
「……この前は聖園ミカの面会に行ったって聞いた」
えーっと……
「今日は戒野ミサキの面会だった」
あの……
「……………なに?」
……怒ってます?
「…………」
空崎さんは何も言わないが、如何にもなオーラを放っている
……よく見ると表情もちょっとだけ不機嫌そうだ
……あの、この後暇です?
「…………少しだけなら」
そのー……少しだけ二人で歩きません?
「………え?」
この先に美味しいクレープ屋あるんですよ、一緒にどうですか?奢りますよ?
「……いいの?」
あ、空崎さんが良ければ「絶対行く」あ、はい
「……ちなみに、そのクレープ屋って私以外の人とも来たことあるの?」
いや、一緒に行くのは空崎さんが初めてっすね
「私が……そう、ふふ」
それじゃ、空崎さんの時間があるうちに行きましょっか
「……うん」
歩こうとして一歩踏み出そうとした瞬間───
ギュッ
───俺の手に、少しだけヒンヤリとしていて柔らかい感触を感じた
……?……?…………!?!!?そそらさきききさん!?
「どうしたの?」
いや、手ててててて!?
「嫌?」
嫌ではないですけど……その……
「じゃあ……行こ?」
ちょ……っこのまま歩くのは流石に……!
人目もありますし……!
「楽しみだね」
聞いてます!?
「ねえ……あれってゲヘナの風紀委員長じゃない?」
「何でゲヘナがこんな所に……」
「じゃあ、あの男が………」
「彼が噂の『凄く強いけど各学園のトップクラス程の実力者ではないから実はあんまり強さが知られていない微妙な奴』って事?」
早速注目を集めてるし………
つーか最後の噂を流した奴誰だよ!?
「気にしないで、酒泉の強さは私が一番知ってるから………大勢の人に知られても困るし」
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ミレニアムの一室、そこで二人の男女が椅子に腰かけていた
男の方は少し困った様な表情で作り笑いを浮かべている
しかし女の方はそんな事などお構い無しに喋りだす
「───私の言葉の意味が理解出来なかったのかしら、先生」
「理解はしているよ、ただ頷く訳にはいかないだけさ………それにしても一体何処でその情報を手に入れたのかな?」
「私には優秀なメイドがいるの」
「…………」
「はぁ……先生もSRTの問題があるでしょうし、そう長く時間をかけたくないでしょう?もう一度だけハッキリと言わせてもらうわ」
「シャーレの権限を使って折川酒泉の身柄及び折川酒泉から入手した情報を全て此方に渡して頂戴」
「それは聞けないお願いだね─────リオ」