〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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今更日和ってる奴いる?いねえよなぁ!!?

 

 

 

 

「アリス、あのゲームがやりたいです!」

 

 

ゲーセンの筐体に指差して駆け出す天童さんを追いかける

 

今日は俺から天童さんを呼び出した………事情を説明する為に

 

しかし中々話を切り出せずにいた

 

………やっぱキツいなぁ、「天童さんのことぶっ壊すかもしれんわ」って言うのは

 

 

「酒泉!今度は負けませんよ!アリスは仲間達と特訓してきました!」

 

おう……

 

「……酒泉?」

 

んー……?

 

「ア、アリスと遊ぶのは楽しくないですか……?」

 

いやいやいや全然そんな事ないから!

 

よーし!お兄さん本気出しちゃうぞー!

 

「レベルアップした勇者の力、お見せします!」

 

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

 

 

 

目の前の画面にでかでかとLOSEと表示される

 

……駄目だ、全然集中できん

 

 

「やったー!また勝ちました!」

 

はは……強くなったなぁ天童さん……

 

「これも皆のおかげです!」

 

皆……?

 

「はい!どうしても酒泉に勝ちたくて皆さんにアリスの特訓に付き合ってもらいました!」

 

……

 

「アリス、皆さんと共に経験値を沢山稼いでいっぱい強くなりました!」

 

……いい人達だな

 

「はい!」

 

……じゃあ、さ、その人達とずっと一緒にいたいか?

 

「もちろんです!」

 

……自分が危険な目にあってでも仲間の事を護りたいか?

 

「……酒泉?」

 

………悪い、何でもない

 

「……やっぱり今日の酒泉は変です!」

 

そ、そうか?

 

「朝からずっと様子がおかしいですし………今思えば、プレイの切れも普段より悪い感じがしました!」

 

はは……言ってくれるなぁ

 

「……何かあったんですか?」

 

……なあ、天童さん、もし俺が今から天童さんの敵になったらどうする?

 

「え……?酒泉、敵になっちゃうんですか……?」

 

……いや、もう少し具体的な例にしよう、前みたいに物語風に語ろっか

 

さて、天童さんは伝説の勇者である自分を筆頭に、ゲーム開発部の仲間達と封印されている魔王を探しに出掛けました

 

「魔王……ですか?」

 

その魔王は世界が滅びる程の力を秘めていました、もし魔王が目覚めてしまったら大変な事になってしまいます

 

「むむむ……」

 

しかし天童さん達がいくら魔王を探しても全く見つかりません、文字通り影も形もありません

 

「こ、このままでは世界が終わってしまいます……!」

 

ですがそれも当然、何故ならその魔王は天童さんの中に封印されていたからです

 

「……………え?」

 

その事実を知ったこの世で一番自分勝手で最低で最悪な存在、折川酒泉という男が天童さんを倒しに来ました

 

「しゅ、酒泉が……?」

 

この折川酒泉とかいう救いようのない糞野郎は世界を護る為とか言い訳をしながら天童さんに襲いかかりました

 

「………」

 

世界を護る為に戦う、かといって天童さんを破壊する事にすら迷いを持っているこの中途半端な弱虫野郎に襲われた天童さんはどう対応する?

 

調月さんはとっくの昔に覚悟したっつーのに………

 

 

 

 

 

考えれば考える程迷いが強くなる

 

……勿論、調月さんとの約束を違えるつもりはない

 

最後まで天童さんを止める手段が見つからなかった場合、天童さんを破壊するという約束

 

どれだけ迷おうとそれだけは必ず守る

 

そもそもの話、暴走のトリガーである〝謎の機械〟と天童さんを接触させなければいいだけでは、と思うかもしれないが………それじゃ駄目なんだ

 

暴走によって天童さんの中にいる〝key〟という存在が目覚める

 

………そしてその〝key〟が居ないと、これから先現れる敵のバリアを突破出来ない

 

そうなったら俺達は打つ手の無いまま死ぬ事になるだろう

 

結局のところ天童さん………そして俺達が生き残るには一度暴走を経験しないといけないのだ

 

……まあ、それでも天童さん一人に責任を押し付けている事に変わりはないが

 

なんて事を考えていると天童さんが俺の顔を覗き込んでくる

 

 

 

 

「酒泉、なんだか辛そうです」

 

……天童さんの方が辛くなるよ

 

「……もしかしてアリスの事で悩んでるんですか?」

 

………

 

「それならアリスに話してみてください!」

 

……いいのか?

 

「仲間のサブストーリーの手助けをするのも勇者の役目ですから!」

 

……分かった、話すよ

 

それと………今から俺は天童さんを傷付ける様な最低な話をするから、全部聞き終わったら俺の事を煮るなり焼くなり好きにしてくれ

 

「………?」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「アリスの中に……世界を滅ぼす存在が……?」

 

 

全ての話を聞き終えた天童さんが愕然としている………無理もないだろう

 

突然自分の中に世界を滅ぼす力を持つ者が封印されていると言われて冷静でいられる方がおかしい、そもそもこうして一応は話を信じてもらえてるだけでも奇跡だ

 

……その上、完全に暴走したら俺が破壊することも話したんだ、このままぶん殴られても文句は言えない

 

しかし天童さんは此方の予想とは裏腹にキリッとした表情で立ち上がる

 

 

 

 

 

 

 

 

「アリス、理解しました!要するにアリスは自分の中の力を制御すれば良いんですね!修行パートです!」

 

……はい?

 

「内なる自分との対話によって真の力に目覚める……定番パターンです!」

 

 

全く想定していなかった流れに思わずポカンとしてしまう

 

 

「このイベントを乗り越えたらまた一つアリスがレベルアップします!」

 

いや……そうじゃなくて

 

「アリス、何か間違ってましたか?」

 

……何も思わないのか?

 

「……?」

 

だって──────俺は天童さんの事を殺すって言ったんだぞ?

 

もし天童さんの力を制御する方法が見つかる前に完全に暴走しきったら俺が天童さんを破壊するんだぞ?

 

怒らないのか?恨まないのか?憎まないのか?

 

「……本当は少し怖いです」

 

……

 

「でも酒泉は!アリスの為に言ってくれたんですよね?」

 

それは……そうだけど……

 

「アリスが暴走して皆を傷付けてしまう前に酒泉なりに考えてくれたんですよね?」

 

……でも、俺の言っていたことなんて要するに「殺されたくなければ力を制御しろ」っていう、ただの脅しみたいなもんだぞ?

 

「でも酒泉が教えてくれなかったらアリスは自分でも知らないうちに皆さんを傷付けていたかもしれません、酒泉はそれを防いでくれました!」

 

………何で俺なんかの擁護をしてくれるんだ?俺は天童さんの事を殺そうとした最低な人間なんだぞ?

 

「そんな事ないです!もし酒泉が本当に最低な人間でしたら────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────そんな辛そうな顔で話したりしません!」

 

 

 

……そうだ、天童さんは誰よりも人に優しいんだった

 

原作でも自分の命を狙った調月さんを許す程に

 

 

「だからアリスは信じます!酒泉はとても心優しい人だって!」

 

……

 

「それに酒泉はアリスのパーティーメンバーですから!仲間を疑うなんて事、アリスはしません!」

 

……ありがとな天童さん、おかげで少しだけ楽になれたよ

 

「それなら良かったです!」

 

 

まさか救いたかった人に逆に救われるとは思わなかった

 

なんだか気持ち心が軽くなった気がする

 

 

「それじゃあ今度は本気で勝負です!アリス、負けません!」

 

いいだろう!本調子を取り戻した俺の力を見せてやる!

 

「じゃあ次はあちらのゲームで……」

 

あ、その前に一つだけ聞いてもいいか?

 

天童さんの中にとんでもない力が眠ってるって話、どうして信じてくれたんだ?

 

そんな事言われても普通は困惑するだけだと思うんだが……

 

「それは……嬉しいからです!」

 

嬉しい?何が?

 

「前に酒泉が話してくれました、魔王の中にも優しい人達がいることを!」

 

「もしアリスの中にも強大な力を持つ者がいるんだとしても、その人が悪い人だとは限りません!」

 

「だから、アリスはアリスの中にいる人と一度向き合ってみたいです!」

 

そう、か、ちょっとは効果があったんだな……

 

………なあ天童さん、もしその人に会えたら……友達になってあげてくれないか?

 

「もちろんです!アリス、仲間を増やします!」

 

 

陰りない笑顔で堂々と宣言する天童さん

 

 

 

………本当に強い人だな

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………そう、説得出来たのね」

 

はい、後は先生や明星さんを説得するだけです

 

「………あの二人も?あの二人が頷く事はないと思うけど」

 

そう、ですかね……?

 

「ヒマリはアリスに対する認識が甘すぎるし、先生に関してはそもそも大人としての〝責任〟を果たそうとしていないわ」

 

……違いますよ、先生は〝先生〟という立場だから下手に動けないだけです

 

あの人にとっては天童さんもそれ以外の生徒もどちらも大切な生徒です、だからこそどちらも救う方法を考えているだけですよ

 

「けどそれでタイムリミットまで行動に移さなかったら何の意味もないわ、所詮は〝先生〟という立場が成り立たせているだけの偽善よ」

 

でも先生はそのやり方で多くの生徒を救ってきましたよ?

 

「……結果論よ」

 

結果論だろうと偽善だろうと救われた人がいるのは事実です

 

「そう……貴方も結局────」

 

………まあ、調月さんのやり方で多くの人間が救われるのも事実ですけども

 

「────っ…………はぁ、やけに先生を庇うのね?」

 

そう見えます?

 

「……貴方が私のやり方を理解出来てしまっている以上、貴方も間違いなく私と同じ〝こちら側〟の人間よ」

 

………

 

「他の人達が情に流される可能性のある以上、いざとなったら私と貴方だけでも成し遂げなければならないわ」

 

そうならない為に色々と行動してるんですけどね……

 

「もしそうなったら先生やヒマリ、そしてそれ以外の生徒達にも恨まれることになるでしょうね」

 

……いえ、調月さんは恨まれませんよ

 

「……何故?」

 

前にも言いましたけど、もしその時が来てしまったら俺個人の意思と俺個人の責任で俺一人で天童さんを破壊しますから

 

「………」

 

……ではまた、先生や明星さんに話を通したらまた来ますので

 

調月さんの方も、戦力集めよろしくお願いします

 

「……ええ、アリスを暴走させる実験当日までには集まるはずよ」

 

 

 

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