〝不可解な軍隊〟が俺に向けて紫の光弾を放ってくる、それを少し屈んで回避する
その態勢で再び攻撃の準備を始めた目の前の丸い機械共に鉛弾を送りつける
目の前で集束していた紫の光が一瞬で弾け、機械はそのまま爆発した
『成る程……酒泉の言っていた通りですね、これがアリスの暴走ですか……』
「んで!?こっから戦い続ければ良いんだな!?」
『はい、十分にデータが取れるまで宜しくお願いします』
「了解っとぉ!」
美甘さんが機械の群れに一人で突っ込む
敵に囲まれた美甘さんは蜂の巣にされるかと思いきや、正面の敵を踏み台に高くジャンプして回避する
そのまま空中で二丁の愛銃、ツイン・ドラゴンを周囲の敵に向けて放つ
周囲を取り囲んでいた機械達が疎らに破壊されていき、残った機械も地面に着地した美甘さんによって破壊された
「オラオラオラァ!どうしたぁ!おかわりを早く持ってこいよぉ!?」
「リーダー……暴れすぎですよ」
「リーダーだけずるーいー!私もー!」
「駄目だ……収拾がつかない……」
一見すると油断している様な会話だが、各々が確実に敵を処理していくC&C
「スライディーング!」
「アスナ先輩まで突っ込んでいったぞ……」
「……私達はいつも通りサポートに回りましょう」
圧倒的な殲滅力により次々と破壊されていく敵達
………今ならアレが出来そうだな、明星さん!
『いいでしょう、アリスの状態の変化は此方でしっかりと確認しておきます』
明星さんの許可を得たと同時に後ろに置いておいた袋からメガホンを取り出す
『………メガホン?』
『………何をする気なの?』
調月さんと先生が何やら怪しげな視線を遠くから向けてくるが気にしない
『では………プランAから試してみましょうか』
よーし、メガホンに口を近づけて……
そこの貴女!今すぐ暴走を止めなさい!
君のお母さんはそんな事望んでいない!
『………は?』
『えっと……ヒマリ、これはどういう……?』
『決まってるじゃないですか、説得ですよ』
いきなり暴力だなんてそんな野蛮な手を使うわけないじゃないですか
『いや、それは良いことなんだけど……』
『………呆れたわ』
いやいや、案外効果あるかもしれないですよ?ほらこうやって呼び掛ければ……
大人しく投降しなさい!貴女には情状酌量の余地がある!
『良いですよ、その調子です!』
『………』
『………』
ね?こうして語り掛けてあげればちゃんと───
「最優先排除対象を変更。武装のチャージ開始」
───あっ、紫の光が………
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いやー危なかった、俺の〝眼〟がなければ即死だった
『仕方ないですね……プランBを実行しましょう』
『あ、流石にあれだけじゃないんだね』
『……今度こそまともな作戦でしょうね』
『当たり前じゃないですか、まだまだ沢山ありますよ………では酒泉』
はいよ!
『あれは………ゲームソフト?』
『もう既に嫌な予感がするのだけど』
『まあまあ、このまま見ててください』
よし……
天童さん!これを見てくれ!天童さんの大好きなゲームだ!
『そうか……今までアリスはゲームによって様々な事を学んできた、ならその時と同じ様にゲームを使えばアリスの深層心理に呼び掛ける事ができるかもしれない!』
『何故だか分からないけど胃が痛くなってきたわ』
『さあ!私達の予想が正しければこれで少しは反応するはずです!』
天童さん!皆で一緒にゲームで遊ぼう!
四○(仮)、パーフェクトク○ーザー、コン○イの謎、人○ゲームハッピーファミリー、何でもあるぞ!
『あっ…(察し)』
『………あのゲームは何なのかしら?』
『酒泉……流石にそのラインナップは……』
「最優先排除対象、健在。武装のリロード開始」
そんなっ────
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あ、危なかった……俺の〝眼〟が以下略
『酒泉……何でよりによってそのラインナップにしちゃったの?』
いやー……ははは……この世界にもあるんだと思ってつい……
『………まさかもう終わり?』
『ま、まだまだいきますよ!プランCです!』
「ねーリーダー、あっちの方が楽しそうだしあっちに行っていい?」
「あ?駄目に決まってんだろ」
「リーダーのケチー!」
「二人とも余所見してないで敵を……」
「……もう倒してるな」
『酒泉!やってしまいなさい!』
了解!天童さん、これを見ろ!プルプルプル!
『………彼は何故左右に震えているのかしら』
『あれは酒泉が昔プレイしていたゲームの煽り行為らしいですよ?』
ほい!ほい!ほい!
『今度は屈伸しはじめた………』
『ゲーム好きのアリスの中で眠っていたのなら、多少は効果があるはずです!』
『酒泉、まさかしょっちゅうそんな事してる訳じゃないよね?』
いえ、自分からは絶対にやりません
『自分からは……?』
喧嘩を売られたからには………ねぇ?
『……酒泉、前を見なさい』
前?
「リロード完了。フル出力、発射」
あ、ちょっと逝く─────
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『次はプランDです!説得してください!』
了解!もう一人の天童さん、素晴らしい提案をしよう
お前も勇者にならないか?
「リロード完了、発射」
ひでぶ─────
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『まだまだ!プランE!誰もが食いつく様な刺激的なゲームを!』
なあもう一人の天童さん、俺と一緒にスッゲー刺激的なゲームに参加しないか?そのゲームに勝ち切る事が出来ればどんな願いも叶えられるんだ!
まあ悪質なサポーターに目をつけられたり身内が怪物にさせられたり自分が漆黒の将軍になったりするけど……
「発射」
これでお前も本物の勇者になれるぞ!天童アリス────
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『プ、プランF!シンプルに誘う!』
もう一人の天童さん!俺と遊ぼうぜぇ?
心が踊るなぁ!
「チャージ完了」
ま、まだだ!次こそは……!
「次なんてありません、発射」
やだ……やだあ!やだ─────
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はあ……はあ……だ、駄目か……
「……なあ、もう増援来なくなったんだけど、どうするんだ?」
「えー?もう終わりー?」
『仕方ないですね……今日はここまでにしましょうか、マキ』
「────まっかせて!」
そう叫ぶと同時に小塗さんが突然天童さんの後ろに飛び出してくる
そのままペイント弾を顔にぶちまけて視界を奪う
「───……視界情報が遮断されました、空間の再認識を───」
『ネル、お願いします』
「あんま気は乗らねーけど……あいよ」
美甘さんが天童さんに近づくと、何やらスタンガンの様な物を天童さんの首に押し付けてスイッチを押す
次の瞬間、パチッという音と同時に天童さんが倒れる
『……ヒマリ、あれは?』
『あれはエンジニア部に作ってもらった特殊なスタンガンです、なるべく優しく、なるべく早く、なるべく最小限の威力でアリスを気絶させる為の調整をしてもらいました………暴走状態でも、あまり気分の良いものではありませんけどね』
『そっか……ありがとね』
全員が汗を拭う中、調月さんが通信機越しでも聞こえるようにハッキリと喋る
『………やはり時間の無駄だったようね、残念だけどこの調子だと───』
『───それでチーちゃん、どうでした?』
『……うん、仮説通りゲーム関係の時だけアリスの反応があったよ』
『……何ですって?』
『やはりそうでしたか、となればもう一人のアリスとやらも完全なプログラムではなく多少は感情も持っているかもしれませんね』
ね?だから言ったでしょ?説得できるかもしれないって
『……まさか最初から知っていたの?』
前に言ったじゃないですか、「実際に見てもらう」って
『………』
もう一人の天童さんにも感情があるなら色々やれることが増えますよ
『……どう見ても説得できる感じではなかったけれども』
今回のは様子見ですよ、下手に大掛かりな事して手が付けられなくなっても困りますからね
次回から本格的な実験を開始します
『………具体的には?』
そうですね……強いて言うなら─────
─────子育て?
『………?』
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風紀委員室の空気がおかしい、別に冷たいわけでも気まずいわけでもないが
理由があるとするならそれは───全員の視線が酒泉に集中しているからだろう
………更に具体的に言うなら〝子育て本〟を読んでいる酒泉に、だ
仕事の休憩時間に熱心に本を読む酒泉、その様子はまるで子供が産まれたばかりの親のようで───
「ね、ねえ酒泉……それ、どうしたの?」
全員が疑問に思っていた事を質問するイオリ、酒泉は本に目を通しながら答える
………んー、ちょっと、ね
「いや、その〝ちょっと〟っていうのが気になるんだけど」
いや、まあ……ちょっと育てようと思いまして
「……何を?」
そりゃあ……子供を?
「……え?」
「……は?」
「……………………!?」
酒泉の言葉に全員が困惑する………一名だけ様々な感情がぐちゃぐちゃになった様な表情をしているが
事情を聞こうと今度はチナツが話しかける
「えっと……酒泉君の親戚の子の話ですか?」
んや、違う、そもそも俺親戚いないし
「じゃ、じゃあ……近所の子?」
うーん……近所ではないな
「ね、ねえ……もしかしてそれって……」
ヒナが絶望した様な顔で恐る恐る問いかけようとすると────
「つまり酒泉の子供という訳ですか!?」
────アコが目を開かせながら乗り出してきた
「ヒナ委員長、聞きましたか!?この男は子持ちですよ!?つまり奥さんがいる可能性もあります!」
「ア、アコ行政官!?」
「妻子持ちでありながら委員長の事を誑かしていたんですよ!?こんな男は止めておいたほうがいいですよ!」
「アコちゃん、本当にヤバいって!」
「ですからヒナ委員長はこの私と人生を共に─────ヒナ委員長?何故デストロイヤーを私に……ちょ、そこは胸ですよ?」
「横乳が喋ってる」
「ヒナ委員長?」
ギャイギャイと周りが一気に騒がしくなる中、何事も無いかの様に酒泉は本を読み続ける
んー……ケイさんって多分俺よりも圧倒的に年上だろうけど、純粋って意味では誰よりも子供だもんなぁ……
……確か調月さんの所に精神世界に入る為のダイブ設備みたいなのがあったよな、それを使って天童さんと一緒に説得するか
「ケイ……?子供の名前まで考えてるんですか!?しかも天童さんというのはもしや……奥さんの───」
「アコ、口を開かないで」
「」
「またアコ行政官が沈んでます……」
「これ何かこの前も見たことあるんだけど」
「そもそもの話、酒泉の年齢で結婚できるわけない………そうだよね、酒泉───」
……さて、そうと決まれば天童さんと一緒に教育方針を考えないとな
「」
「委員長も沈んだんだけど……」
この後誤解は解かれたが、結局ミレニアムでの活動は伝えなかった為ヒナはいじけっぱなしだった