はい、ということで用意できました精神世界ダイブ設備
あ、ちなみにエンジニア部製ね、調月さんに借りようとしたけどエリドゥにあるからって断られちまった
……まあ、そりゃそうだよね、まだ完全に信用された訳でもないのにエリドゥに入れてもらえるわけないよね
いやー、事前に先生に話しといてよかったー
「アリス、これ知ってます!VRゲーですね!」
なんて考えていると、天童さんがはしゃぎながらゴーグルの様な物に近づく
いや、確かに似てるけど……
「それが今回使用する装置だよ、アリス」
そんな天童さんに訂正する様に話しかける人物が一人、エンジニア部所属の三年生・白石ウタハだ
「やあ酒泉、あの時以来だね」
あ、白石さん、ちっす
「あ、ウタハ先輩です!」
「事情は先生から聞いているよ、リオ会長に目をつけられたんだって?何やらとても面白……大変な事に巻き込まれたようだね」
本音をちゃんと隠してから喋ってくださいね
「ははは、すまないね」
「……ウタハ先輩と酒泉は知り合いなのですか?」
まあ、以前ちょっと依頼したことがあってな……
「直接会うのは随分久しぶりになるね……それにしても調印式は大変だったみたいだね」
いやー死ぬかと思いましたよ、皆さんの作ってくれた防御装置が無かったら巡航ミサイルで即死でしたよ
ホントお世話になりました
「役に立ったのならそれは何よりだよ」
雑談を切り上げてダイブ装置の説明を聞こうと口を開く
……ところで、あの機械の使い方は───
「私が説明しましょう!!!」
───ふおおっ!?
突如背後から大声が聞こえてきたせいで変な声を出してしまう、やだ恥ずかしい……
「あの装置は我々が開発した精神世界ダイブ装置、その機能は何と通常のダイブ装置の三倍!」
そう大きな声で語るのはエンジニア部所属の一年生・豊見コトリ
………通常のダイブ装置が分からない俺には何が凄いのか理解できない、そもそも原作のパヴァーヌ編でも当たり前のようにダイブ設備が登場することがおかしいと思うんだ
「ダイブ中の身体を快適に維持する為に冷房機能や肩揉み機能を搭載!」
おお!それは普通に嬉しい!
「更にはビタミンやミネラルなど、装着者に不足しているものを教えてくれる健康診断機能も!」
お、おお……?
「更に更に装着者の手相を解析してその日の運勢を占う機能まで!」
お………
「そして最後に好きな音楽をダウンロードしてダイブ中に耳元で流すことのできる機能が!」
………ダイブ中だと意味無くね?
「細かい事は気にしないでください!」
どやっ!と何が誇らしいのかよく分からないが胸を張る豊見さん
……まあダイブできるならそれでいいや
「……ちなみにダウンロード機能は私がつけた」
豊見さんより少し高い位置から顔をスッと横に出し、補足を入れるくるのはエンジニア部の一年生・猫塚ヒビキ
……まあ、そんなこったろうとは思ってたけど
「さて、後は先生達を待つだけだけど……」
「そろそろ約束の時間ですよね?全然来る気配がないのですが……」
「……酒泉達は何か聞いてないの?」
「アリスは何も伝えられていません……」
俺も特に─────ん?
「……着信音、酒泉の携帯から?」
そうみたいっすね……あ、先生からだ
「……何かあったのだろうか」
適当に断りを入れてから電話に出る、スピーカー越しからは複数人の声が聞こえる
『……あ、もしもし、酒泉?』
先生、なんかあったんですか?
『いや、それがね───『ねーいいでしょ!?私達もアリスの所に行きたいよー!』───まあ、こんな感じでね』
あー……ゲーム開発部?
『うん』
どっからバレたんですかね?
『具体的な内容はバレてないけど………アリスが何かを隠してるのは気づいてるっぽいね』
あー……ゲーム開発部ってよく一緒にいるし、そりゃ天童さんの些細な変化にも気づくか
『うん、取り敢えず酒泉に言われた通りに抑えてるんだけど……『何でセミナーの会長さんが良くて私達が駄目なのー!?』……そろそろ限界かも』
調月さんもそっちに?
『うん、あとヒマリもいるよ、今めっちゃモモイに揺らされてるけど』
『やめてくださいはいてしまいます』
『………私達には大事な予定があるの、貴女達の私情に付き合ってる暇は無いわ』
『なっ……なにおぅ!?』
『リオ、もう少しオブラートに……』
『……その言い方は酷くないですか?私達はアリスと同じゲーム開発部です、私達にも知る権利はあると思いますけど』
『いーよミドリ!言ってやれー!』
『たかが同じ部活というだけでしょう?それだけでは理由にならないわ』
『私達にも大事な予定があるんです、その打ち合わせの為にもアリスちゃんと会わないと』
『そーだそーだ!』
『お姉ちゃんは黙ってて!』
『ぴえっ……』
『……あ、あの!どうしても会うことは出来ないんですか?』
『ユ、ユズが自分から!』
『流石私達の部長!』
『わ、わ、私っ、アリスちゃんのことが心配なんですっ、凄く真剣な表情で〝待っててください〟って言い残されて……そ、それで心配になって……』
『そう、それなら全てが終わった後で話すわ』
『い、今知りたいんですっ!』
『……はぁ』
『ひっ!』
………なんか状況が悪化してね?
『……もう!何で皆何も教えてくれないの!?先生もヒマリ先輩も会長も何で邪魔するの!?』
『これは貴女達の為でもあるのよ』
『私達の為……?』
『リオ、その話は───』
『ヒマリ、先生、このままじゃ埒が明かないわ。少し残酷な方法だけど彼女達にも真実を教えて大人しく帰ってもらったほうがいいわ』
『全て解決するまでゲーム開発部には秘密にしてほしい、これはアリスのお願いでもあるのですよ?』
『キヴォトスを滅ぼす兵器の頼みなんて聞く必要があるのかしら』
『……リオ、やはり貴女とは分かり合えませんね』
『これも全てキヴォトスの為よ』
『……二人とも落ち着いて、ここで喧嘩してると余計に遅れちゃうよ?それとゲーム開発部の皆、ごめんね?今回ばかりは君達を連れていくわけにはいかないんだ』
『な、なんで!?』
『そんな……先生まで……』
……仕方ない、か
なあ天童さん
「はい!なんでしょうか!」
ゲーム開発部の皆が天童さんに会いたがってるってよ
「……え?」
どうする?
「……ア、アリスは……」
……まあ、流石にこれは悩むよな
天童さんを暴走させる実験に関わった者達は所謂、修羅場に慣れている者達だ
自分で言うのもなんだが、俺だって修羅場を……調印式やバシリカでの戦いを経験している
だがゲーム開発部は違う、彼女達はゲヘナ風紀委員のように常に戦闘関連の問題事を引き受けているわけじゃなければC&Cの様に依頼を受けて戦っているわけでもない
もちろん彼女達の実力が高いのは知っている、しかし本気の戦場を経験したことがあるかどうかはかなり重要だ
後に最終編で本格的な作戦に加わるとはいえ、現時点で彼女達が経験したことのある本気の戦場なんてパヴァーヌ一章のC&C戦くらいだろう
そんなゲーム開発部は天童さんにとってかけがえのない大切な存在、彼女達を巻き込むのは気が引けるだろう
「アリスは……まだちょっと怖いです……」
……仲間は傷付けたくないもんな
「はい……モモイ達は強いです……けど、それでも……」
……最終判断は天童さんが決めてくれて構わない
「ア、アリスは仲間を信じています……けど……」
……あー、もしかして暴走が怖い以外にも理由が?
「はい……」
胸をギュッと押さえながらポツリと語り出す
「アリス、辛いんです………仲間のことを信じていると言っておきながら本当の事をまだ伝えられない自分自身が………」
「皆さんは優しいから、こんなアリスの事でも受け入れてくれるはずなのに……それを疑ってしまっている自分が許せないんです……」
「もし……もしアリスが暴走して、ゲーム開発部の皆を傷付けてしまったら……アリスは……」
………随分上手くいきすぎてると思ったら肝心なことを忘れていた
それは天童さんが己の居場所を見つけられるかだ
天童さんならケイさんを受け入れることはできるだろう、そしてゲーム開発部の事を信じているのも本当だろう……ただ、それとこれとは話が別だ
原作では仲間の説得があったからこそ「自分はここに居ていいんだ」と思うことができた、だがこの世界だとこのままケイを受け入れるだけでは天童さんの心は一生晴れないかもしれない
もしゲーム開発部に説得させるなら、天童さんの正体を一度明かす必要があるが………調月さんにその役目をやらせるのもな……
なるほどな……
「…………」
……よし、天童さん、ちょっと聞いててくれ
「……?」
それと先に謝っておく……本当にごめんなさい、殴るなり蹴るなり好きにしてください
「……え?」
困惑する天童を置いて再び先生と話す、その際に携帯をスピーカーモードに変える
……あ、もしもし先生、ちょっとそっちの電話もスピーカーモードに変えてもらってもいいですか?
『ん?何か伝えたいことがあるなら私から……』
いえ、大丈夫です、自分で言うので
『分かった……っと、切り替えたよ』
よし……あ、あー、皆さん聞こえますかー?
『……男の人の声?』
『だ、誰……?』
どうも、ゲヘナ学園一年の折川酒泉です
『え?なんでゲヘナの人が?』
それは……俺が天童さんの実験に関わっているからですよ
『……は?』
『実験……?』
『話が早くて助かるわ、酒泉………いい?天童アリスは────』
─────待ってください調月さん、ここから先は俺が言いますので
『……そう、ならお願いするわ』
『……酒泉、どういうつもりですか?』
『分かっているでしょ、ヒマリ?酒泉も私と同じ考えということよ』
『……まさか』
『………アリスちゃんに何をしようとしてるの?』
少し威圧感を感じる声で問いかけてくる才羽妹さん、此方も遠慮なく言わせてもらう
………決まってるじゃないですか─────
─────天童さんを暴走させる実験ですよ
『……は?』
『アリスちゃんを……?』
『……どういうこと?』
天童さんはこの世界を滅ぼす力を持つ存在なんですよ
『何を言って……』
皆さんがアリスと名付けた少女は未知から侵略してくる〝不可解な軍隊〟の指揮官であり、〝名もなき神〟を信仰する無名の司祭が崇拝した〝オーパーツ〟であり、古の民が残した遺産、その名も─────
─────〝名もなき神々の王女AL-1S〟
『ア、アリスちゃんが……?』
『ふざけないで………貴方の脳内の独自設定を話さないで!』
残念ながら俺の妄想でも何でもないんですよね、これが
先生や明星さんに聞いてみたらどうですか?
『う、嘘ですよね!?全部あのゲヘナの一年が勝手に言ってるだけですよね!?』
『………いや、酒泉の言っていることは本当だよ』
『……はい、彼女が力の一端を放つのを実際に確認しました』
『そんな……そんなの嘘だ!』
聞き分けねえなー……じゃあハッキリ言ってやろうか?天童さんはなぁ………
この世界をぶっ壊す存在なんだよぉ!
あんた等みてーなくだらねえ友情ごっこしてる連中にどうにかできる存在じゃねえんだよ!
『……っ!黙って!』
いいや黙らないね!それともなんだ?そうやって一生真実から逃げ続けるつもりか?
『何が真実だ!そんなの……』
そうやって嘘だの妄想だの言って〝本当の天童アリス〟を受け入れることができねーならさっさと帰んな!
どうせ大して長い付き合いでもねえ存在なんだ!死のうがデータが消えようがすぐに忘れるだろうよ!
─────世界を滅ぼす魔王の存在なんてよ!
俺の横で絶望した様な表情をしている天童さん、エンジニア部の人達も突然の俺の変わりように困惑したような視線を向けてくる
が、そんなことは俺には関係ない
………そして彼女にも関係ないだろう
『…………どうでもいい』
今の天童さんを勇気づけられるのはゲーム開発部くらいだろう
だから頼むぞ、原作では〝あの言葉〟を伝える前に天童さんが連れ去られてしまったが………今なら直接伝えられるはずだ
『そんな事どうでもいいの!!!』