〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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〝ケイちゃん〟遊ぶゾ!!!

 

 

部室に緊迫した空気が走る

 

向かい合う二人の男女、少しでも油断すればその瞬間に死が訪れるだろう

 

命の灯火は互いに残り僅か、次の一瞬で全てが決まるだろう

 

二人は同時に構える、互いに目の前の敵を排除する為に

 

そして────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くっ……負け、か……

 

 

「あ、危なかった……!」

 

 

 

 

 

────酒泉を打ち倒し、この戦いを制したのはユズだった

 

 

 

 

これで三勝五敗かー……

 

「やっぱり酒泉君は強いね……最後の戦いなんて残り数ミリしかゲージなかったから多分ガードしただけでも削られてたよ……」

 

いやー、花岡さんも中盤のタイミングでよく盾じゃなくて攻めに切り替えられましたね……完全にハメたと思ったんですけど

 

「うん、あのコンボって大体のキャラだと中々抜け出せないけど、あの時私が使っていたキャラは一度だけ自傷して火力を上げられる技があったから……」

 

まさか自傷ダメージで生まれた数フレームの無敵時間の間に抜け出すとはね……

 

「酒泉君の方も、よくその後の攻撃を捌けたね……」

 

キャラ動作を見れば次に上強来るの分かってたんで、そこにカウンター合わせれば………まあ、そのカウンターも逆にカウンターされちゃったんですけどね

 

花岡さん的にはあそこは距離を取った方が良かったですかね?

 

「ううん、私のキャラって遠距離戦もそこそこできるから酒泉君の判断は間違ってないと思う」

 

あざっす、俺のキャラって近距離戦めちゃくちゃ強い代わりに中距離遠距離がめちゃくちゃ弱いんでやっぱ離れない方がいいですよね

 

「でもそのキャラをここまで使いこなしてる人なんて酒泉君しか見たことないよ……」

 

いやー、そう言われると照れるなー……対ありでした

 

「ありがとうございました」

 

 

 

対戦中の緊迫した空気が解け、一気に緩やかな空気に戻る

 

タオルで汗を拭いながらエナジードリンクを飲む、そして汗でベタベタになったコントローラー部をウェットティッシュで拭く

 

そんな二人の戦いをずっと見ていた他の面子は……

 

 

 

「まるで世界大会の決勝戦みたいだったね、お姉ちゃん」

 

「……私、良いこと思い付いた!酒泉とユズの二人で色んなゲームの大会に出てもらって賞金をさらいまくろうよ!」

 

「ゲームでもよくある金策というものですね!」

 

「……大丈夫?他校の生徒を巻き込んだらユウカに怒られない?」

 

「別に部費として申請する訳じゃないし大丈夫だよ!あくまでプライベート!」

 

お、俺の意思は……?

 

「あはは……ごめんね?」

 

「……それにしてもユズ、よく酒泉君と普通に話せたね?まだ出会って日が浅いのに」

 

「多分人見知りよりもゲーマーの部分が強く出るからだよ!」

 

「そ、そうかな……?でも、確かに不思議と緊張しないかも……」

 

俺の中のゲーマーも花岡さんと戦ってる時が一番強まるな……

 

「ハイハイ!次はアリスが戦いたいです!」

 

「あっ!じゃあ今度は私が!」

 

「モモイ……ですか?」

 

「その反応は何なのさ!?」

 

「仕方ないよ、お姉ちゃんこの前調子に乗って酒泉君に挑んだらボコボコにされてたし」

 

「ぐぬぬ……」

 

「最終的にレバガチャしてたじゃん」

 

なんならレバガチャされた時の方がキツかったです

 

「な、なにー!?」

 

「分かりました!アリス、モモイを倒したらユズと酒泉に挑みます!」

 

「前座扱い!?むむむ……こうなったら見返してやる!下剋上じゃー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「」

 

「わーい!また勝ちましたー!」

 

「アリスちゃん、上手だったよ」

 

ラーニングによって強くなる……それが人工知能だ

 

「なんで酒泉君がドヤ顔してるの……?」

 

「………ズルい」

 

「……?」

 

「ズルいズルいズルい!アリスちゃんにだけアドバイスするなんて皆ズルいよー!」

 

「うわっ実の姉が駄々をこねてる」

 

「なーぐーさーめーろー!」

 

 

 

あまりの大敗っぷりに幼児みたいに暴れだすモモイ

 

かと思いきやすぐにバッ!と起き上がり、アリスに一つの提案をする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───それじゃあさ!代わりにケイと戦わせてよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

ダイブ装置での実験から二日後、予定通りアリスとケイの人格を交代するシステムがアリスに組み込まれた

 

そこから更に二日経ったのだが、ケイは一度も表に出てこない

 

一応無理やり引っ張り出すことも可能だが、それをやるにはそこそこ手間が掛かる上、アリスの「自分から出て来てほしい」という要望もあったためそれを行おうとする者はいない

 

 

 

 

 

「えっと……なんでケイちゃんと?」

 

「……まさかお姉ちゃん、『ケイに勝てば実質アリスにも勝ったことになる』とか思ってないよね?」

 

「ギクッ!?」

 

口で言う人いるんだ……

 

「……と、とにかく戦わせろー!」

 

 

 

もはやヤケクソになっているモモイ、そんなモモイの頼みを聞いたアリスは己の中にいるケイに話しかける

 

 

「……えっと、『付き合うつもりはありません』とのことです……」

 

「そ、そうなるよね……」

 

「残念だったねお姉ちゃん」

 

 

当然の如く断られるモモイ、しかし悔しがる様子はなくむしろニヤリと笑う

 

面々は何やら嫌な予感がしたが、止める隙もなくモモイは言い放つ

 

 

 

「ハッハ~ン!そんなに負けるのが怖いんだ~?」

 

 

 

 

 

 

 

「モモイ……」

「お姉ちゃんじゃないんだからそんな煽りに乗るわけが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【いいでしょう、貴女との基本スペックの差を思い知らせてあげましょう】

 

「……え?」

あ、出てきた

「嘘でしょ……」

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

折川酒泉はこう思う

 

〝ケイは最初から感情が無い訳ではない〟と

 

原作でも自身のデータをモモイのゲーム機に転送する際に不服そうな反応をし、モモイのセーブデータを削除する際も「残念、削除。」と、どこか挑発するような言い方をしていた

 

だとすれば彼女は感情が無いのではなく感情を自分で自覚、または理解できないのだと

 

ならばこれから色んな事を体験させて少しずつ感情について学ばせていけばいい、それが酒泉が考えたケイと和解する為の方法だ

 

 

 

 

 

 

 

 

そのはずだったんだけどなぁ……

 

「はい!また私の勝ちー!」

 

【納得できません、再戦を要求します】

 

「何回やっても同じだと思うよー?」

 

【…………再戦を要求します】

 

………この調子だとまず最初に〝怒り〟について学ぶことになりそうだな

 

 

 

目覚めたばかりのケイはまだゲームの知識が浅く、モモイ相手に連敗を重ねていた

 

それとは逆に久しぶりに連勝を重ねたモモイはどこか腹の立つ笑みでケイを挑発する

 

 

「まあ、別に構わないけどね?何回でも挑戦を受けてあげるよ!」

 

「お姉ちゃん……みっともないよ……」

 

「ケ、ケイちゃん大丈夫?」

 

【………分析完了】

 

……ん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【これで終わりです】

 

「」

 

早いって、普通ここから少しずつケイさんに追い詰められる展開じゃん

 

 

 

余りの瞬殺っぷりに口が塞がらない面々、皆が想像していたよりケイの学習能力が優秀だったのだ

 

 

「ケイちゃん凄かったね……」

 

「」

 

「別にお姉ちゃんもめちゃくちゃ弱いってわけじゃないんだけどね……」

 

「」

 

……仕方無いな

 

 

 

ずっと黙りっぱなしのモモイに酒泉が近づき、笑顔で話しかける

 

 

「うぅ……どうせ私なんて……」

 

モモイさん、顔を上げてください

 

「酒泉……?もしかして私のこと慰めてくれるの……?」

 

ザッッッコッ!!!

 

「うあああああ!戦争だあああ!」

 

 

 

 

この後ぶちギレたモモイが酒泉に格ゲーやFPSで勝負を挑むものの、酒泉がわざと負けるまでモモイはボコボコにされ続けた

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

また別の日、酒泉はミレニアムのゲームセンターに来ていた

 

ここに来る理由と言えば大体がアリスと遊ぶ約束をしている時だが今日はアリスだけではない

 

酒泉とアリス、そしてケイの三人でこの一日を楽しむのだ

 

 

「お待たせしました!」

 

スマホをいじりながらゲームセンターの前で待つ酒泉の所にアリスがやってくる

 

 

「すみません!ケイを説得していたら遅れてしまいまして……」

 

そんなに待ってないけど……説得?

 

「はい、今日は酒泉と一緒に冒険すると言ったのですが、ケイは『絶対に表には出てきませんから』と中々心を開いてくれなくて……」

 

 

 

しょんぼりとした顔で俯くアリス、しかしすぐにパッ!と顔を上げて拳を握りしめる

 

 

「でもアリスは諦めません!必ずケイをアリスの中から出してみせます!」

 

おお!俺も手伝─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぐぅぅぅ~……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?今のって……」

 

………ごめん、先に食事にしない?

 

「はい!空腹ゲージを満たさなければ道中でダメージを受けてしまいますからね!」

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

 

よーし、俺が出すから好きなもん頼んでくれ………もちろんケイさんもな

 

「ありがとうございます!アリス、ハンバーグが食べたいです!」

 

んじゃあ俺はこの……ナポリタンで

 

「はい!ご注文は以上でよろしいでしょうか?」

 

あ、すいません、あとドリンクバー三つお願いします

 

「えっと……三つですか?」

 

はい

 

「後からもう一名いらっしゃるのでしょうか……?」

 

あー……まあ、そんな感じです

 

「はあ……」

 

ところで天童さん、ケイさんは何を注文するって言ってた?

 

「だ、駄目です……答えてくれません……」

 

………それじゃあ〝天童さんに合いそうな料理〟を聞いてくれないか?

 

「アリスに合う料理ですか?………えっと、このパンケーキが合いそうらしいです」

 

おっけ、じゃあ店員さん、これもお願いします

 

「かしこまりました!……えっと、結局ドリンクバーは三つでよろしいんですよね?」

 

 

 

二人しか居ないのにも関わらずまるで三人居るかの様に会話する酒泉達に困惑する店員

 

酒泉は少し戸惑いながら厨房へオーダーを通しに行く店員を申し訳なさそうに見送る

 

 

「そういえば今日は何処に冒険しに出掛けるんですか?」

 

そうだな……今日は天童さんに色んな場所を案内してほしいんだ

 

「私が……ですか?」

 

ああ、この間は俺がゲヘナを案内しただろ?だから今日はミレニアム周りのことを俺やケイさんに教えてほしい

 

「それなら任せてください!アリスが二人をサポートします!」

 

 

フンスと得意気に胸を張るアリス、しかしその奥にいるケイがどの様な反応をしているのか想像つかない

 

今回の〝冒険〟でケイも何かしらの感情を表に出してくれないかと酒泉は考えるが、今回だけでそう簡単に解決できる問題ではないことも理解している

 

だからといって下手に行動してケイの不信感を買えば敵対してしまう可能性もあるため、時間をかけてゆっくりと解決していくしかない

 

 

「あの、酒泉……ケイが〝私は食べませんから〟って言ってます」

 

ん?ああ、分かってるよ

 

 

 

特に気にすることもなく軽く返事をする酒泉、二人はそのまま料理が届くのを待った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご馳走さまでした、酒泉!」

 

 

 

食事を終えたアリスはジュースを飲んで一息つく

 

表情を緩ませきったアリスとは正反対に真剣な表情で何かを考える酒泉、やがて意を決して口を開く

 

 

 

天童さん……ケイさんに交代できないか?

 

「でも本人が……」

 

頼む、どうしても聞きたいことがあるんだ………この世界に関する重要な話が

 

「………〝多少質問に答える程度ならいいでしょう〟とのことです」

 

悪い、助かる

 

【………それで、私から何を聞きたいのですか】

 

 

 

前触れも無く突然ケイに切り替わり、少しだけ驚く酒泉

しかし折角出て来てくれたのだからこのチャンスを逃すまいとケイに問いかける

 

 

 

……精神世界で会った時、ケイさんは自分達の力を〝世界を滅ぼすための力〟って言ってたけどケイさん自身はその力を何の為に使いたいんだ?

 

【何度も同じことを言わせないでください、この力は世界を────】

 

それはケイさん達を作った奴等が決めたことだろ?ケイさん自身が決めたことじゃない

 

【────私の意思は関係ありません、私はただ決められた通りに力を使うだけです】

 

ケイさん達を縛り付ける大昔の老人共はもういないんだ、自分の好きなようにしていいんだぜ?ケイさんだって天童さんと同じように自分のなりたい存在は自分で決められるんだ

 

【そもそも己の存在理由を考える必要がありません、何故なら私の役目は最初から決められているからです】

 

存在理由を考えなくていいならその役目だって気にしなくていいだろ

 

【………先程から貴方は何が言いたいんですか】

 

別に大したことは言ってないさ、ただケイさんの好きにしていいって伝えたかっただけだ

 

【……っ!貴方はまたその様な無責任なことを言って……そんな綺麗事で王女を護れるとでも───】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隙ありっ!

 

【───んぐっ!?】

 

 

 

 

 

 

ケイが大きく口を開けた瞬間、酒泉がその口にパンケーキを突っ込んだ

 

そのまま咀嚼し始めるまで口に押し付け続け、飲み込んだのを確認してようやくフォークを離した

 

 

 

【っ!いきなり何をするのですか!?】

 

いや、さっき天童さんに合いそうな食べ物聞いた時パンケーキって答えてたから……

 

【だからって何故私に……!】

 

天童さんの中に居る影響で無意識に自分の食べたい物選ばないかなーって……

 

【そんな意図はありません!私はただ王女に合いそうな物を選んだだけです!】

 

 

パンケーキのホイップクリームを口につけながら怒るケイ、しかし酒泉はそれを無視してまた食べさせようとフォークを差し出す

 

 

【……まさか最初からこの為だけに私を呼び出したのですか】

 

いや、何か適当に重い空気でも出しとけば出て来てくれるかなって

 

【………もういいです、私は戻らせていただきます】

 

 

 

そう言うとケイは再び人格を交代しようとし────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────何かに弾かれる感覚を味わった

 

 

 

 

(これは……まさか!?)

 

(ふっふっふ……ここは通しませんよ、ケイ!)

(お、王女!?これはどういうことですか!?)

 

(大人しく目の前のパンケーキを食べ終わるまで帰しません!)

 

(くっ!こうなったら力ずくで……!)

 

(ぐぬぬぬぬ……ま、負けません!)

 

 

心の中で主導権の奪い合いが発生するものの、この勝負は大半の機能を担っている本体のアリスの方が有利だった

 

 

【くっ……】

 

お、どうやら天童さんがアシストしてくれたみたいだな、特に打ち合わせも何もしてないのによくやってくれたよ

 

【おのれ……貴方が王女を誑かさなければ……!】

 

さあ、大人しく食事を楽しみな!そしてこの後は俺と一緒に〝冒険〟してもらおうか!

 

【……仕方ありません、ここは大人しく従うしかないようですね】

 

 

 

結局ケイは不服そうにしながらもなんだかんだ食事を楽しんだ

 

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

 

 

【……何故私がゲームセンターに行かなければならないのですか】

 

(ケイにも色んな体験をしてほしいからです!)

 

 

この後は三人で〝冒険〟する予定だったが、一度もゲームセンターを体験したことのないケイに楽しんでもらおうと、待ち合わせ場所にしていたゲームセンターまで戻ってきていた

 

 

【……くだらない、もう十分付き合ったでしょう。今度こそ私は帰りますよ】

 

あるぇ~?ケイさんは王女様のご意向に逆らうんだ~?

 

【そんな挑発に乗るわけないでしょう】

 

まあ仕方ないか……俺にゲームでボロ負けして王女様に情けないところを見せたくないもんな~?

 

【………貴方に構うつもりはありません】

 

〝世界を滅ぼす力〟とか言っておいて所詮はこの程度か~、大したことなかったな~!

 

【…………】

 

 

最初は余裕綽々とした表情で無視していたケイだったが、好き放題言ってくる酒泉に対して少しずつ頬がピクピクと動く

 

そしていよいよ我慢の限界が近づいてきた時、酒泉の一言で溜め込んでいた怒りが静かに爆発した

 

 

 

 

 

────まあ、所詮はモモイさんのゲーム機でスヤスヤ眠っていた程度のポンコツAIか!

 

 

 

 

 

【────それだけは聞き捨てなりませんね】

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

私は他人の感情に左右されない

 

元より〝敵対勢力を滅ぼす〟という目的を持って作られた存在である以上、それ以外の目的を探す必要などない

 

故に自分の感情を探す必要も優先する必要もない

 

……だからこれは私の感情で動いているわけではない

 

 

 

 

 

はい、俺の勝ち!何で負けたか明日まで考えといてください

 

【……まだです、もう一度です】

 

 

 

 

 

 

あくまで自身の脅威性を目の前にいる気に入らない男に見せつけるためだ

 

 

 

 

 

 

【今のはまだ操作方法に慣れていなかっただけです、もう一度戦えば結果は変わります】

 

お、ノリがいいな!

 

【勘違いしないでください、私の基本スペックを貴方に知らしめようとしているだけです】

 

……やっぱり感情豊かだろ、ケイさん

 

【気のせいです】

 

モモイさんのセーブデータ消す時、ちょっと楽しそうにしてただろ

 

【何故それを………あの時、貴方は居なかったはずでは?】

 

否定しないんだな……

 

 

 

 

苦笑しながら次のゲームの用意をする彼はどこか余裕そうだ………気に入らない

 

しかしこの程度のことで怒っていては彼の思う壺、ここは冷静に対処を………

 

 

【………早くキャラクターを選択しなさい】

 

……結構負けず嫌い?

 

【………黙りなさい】

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

【…………】

 

よし、また勝ち!

 

【もう一度です】

 

ま、また?

 

【早くしなさい】

 

 

 

 

──────────

 

 

 

【…………ぐっ】

 

ふう……今後こそ勝負ありだな

 

【……まだ終わってません】

 

えぇ……

 

 

 

──────────

 

 

 

【………っ……】

 

は、はは……この短時間で随分と腕を上げたな……

 

【負けてしまえば何の意味もありません、もう一度です】

 

…………

 

 

 

──────────

 

 

 

【…………】

 

いやあ!まさかここまで強くなるとはなあ!負けちゃったよ!

 

【……貴方が手を抜いていたのは気づいています、もう一度】

 

ゑ?

 

 

 

──────────

 

 

【…………】

 

た、頼む……俺の負けでいいから……

 

【もう一度】

 

 

──────────

 

 

【………もう一度】

 

勘弁してください……

 

【駄目です、もう一度】

 

 

──────────

 

 

【もう一度】

 

こ、これ以上は……もう……

 

【もう一度】

 

ほ、本当に限界なんです……

 

【もう一度】

 

 

──────────

 

 

【………そこっ!】

 

(やりました!流石ケイです!)

 

【当然です、操作方法さえ理解してしまえば此方のものです】

 

(流石アリスの……ゲーム開発部の仲間です!)

 

【彼女達の仲間になった覚えはありません………それよりいつまで黙っているのですか、これで貴方も私の性能が────】

 

…………

 

【………折川酒泉?】

 

…………はっ!?

 

【まさか……最後の試合の時、意識が───】

 

いやあ!最初から最後まで全力で戦いましたけど完敗でしたよ!

 

【………】

 

これはもう俺より強いと認めざるを得ませんね!

 

【……もう一度】

 

ヒッ!?

 

 

──────────

 

 

 

 

【なるほど、これがアイスですか……まあまあですね】

 

や、やっと終わった……その気にさせる為とはいえ、必要以上に煽るもんじゃないな……

 

(ゲーム終わりの糖分は最高だって酒泉が言ってました!)

 

 

 

横でゲッソリしながら炭酸飲料を飲む男を眺めながらアイスを口に入れる

 

度重なる疲労を一気に癒すかの様に甘味が口の中に広がっていく

 

 

(しかし……私は何故あんなにムキに……)

 

(それが〝感情〟ですよ、ケイ!)

 

(感情……?)

 

(ケイは酒泉に煽られて〝怒った〟んですよ!)

 

(………)

 

(何回も酒泉に挑んだのだって〝悔しい〟からです!)

 

(私が……?)

 

(そして今食べているアイスも〝美味しい〟ですよね!)

 

(それは……そうですが……)

 

 

 

ケイは己の心情を考え込むが、いくら思考を巡らせても自分の感情を理解できないと判断するとアイスの棒をゴミ箱に捨ててすぐに帰ろうとする

 

 

【……貴方のくだらない挑発に乗ってあげたんです、これで満足したでしょう】

 

途中からはケイさんの方が意地になっていたような……

 

【とにかく、今度こそ───】

 

いや、最後に一つだけいいか?

 

【───はぁ……まだ何かあるのですか?】

 

ああ、一番大事なイベントを忘れているぜ

 

【…………イベント?】

 

ゲームとかで新しい村に来た場合、とりあえず武器屋とかアイテム屋とか確認するだろ?

 

【まさか……】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけでこの中から欲しいグッズを選んでくれ!あ、天童さんも好きなの選んで良いからな

 

【…………】

 

 

彼に連れられてたどり着いた場所はゲームセンターからそう遠くない雑貨屋だった

 

そこまで大きくはないものの、店内にそこそこ人が居るあたり人気が無い訳ではないのだろう

 

軽く店内を見渡していると折川酒泉が話しかけてくる

 

 

 

あ、自分で選べないなら俺が選ぼうか?

 

【私は別に───】

 

(アリス、あの青いロボットのキーホルダーが欲しいです!なんだか親近感が湧きます!)

 

【……王女があのキーホルダーを欲しがっています】

 

 

 

仕方が無いので王女が欲しがっていた物だけ指差す

 

ダンボールの様な四角いパーツを組み合わせただけにしか見えないデフォルメされた青いロボットのキーホルダー、折川酒泉はそれを買い物かごに入れると再び私に話しかけてくる

 

 

 

それで、ケイさんは決まったか?

 

【私には必要ありません、こんな物があったところで何の意味も成さないのですから】

 

そっか、じゃあケイさんはこっちの赤いロボットね

 

【……話を聞いていましたか?】

 

大丈夫大丈夫、俺が払うから

 

【そういう問題ではありません】

 

せっかく三人で初冒険したのに何の思い出も残さないなんて寂しいだろ?

 

(アリス、三人の思い出が欲しいです!)

 

【………】

 

 

本来なら今すぐ投げ捨ててしまいたいが、王女の喜ぶ声を聞いたら何も言えなくなる

 

 

 

【……王女の意向なら仕方ありません、ここは大人しく受け取らせていただきましょう】

 

よし、じゃあ会計してくるわ

 

(これは三人の宝物にしましょう!)

 

 

 

王女も折川酒泉も此方のことなどお構い無しで勝手に話を進める

 

……が、改めて受け取った時は何故か悪い気はしなかった

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じで遊んできました

 

「そっか、このまま上手くいけばケイとも仲良くなれそうだね」

 

「……どうかしら、そう簡単に世界を滅ぼす存在を手懐けられるとは思えないけど」

 

「リオ、貴女はどうしていつも悪い方向にしか考えないのですか。その様に一人で勝手に突き進もうとするから話が拗れるのです」

 

「私は全ての可能性を考えているだけよ」

 

まあまあ、でも実際に接して見て改めて分かりましたけどケイさんもそこら辺の普通の女の子とほとんど変わりませんでしたよ

 

「今日の様子を聞く限り、希望は見えてきたかな?」

 

それじゃ、先生は引き続き実験の手続きをお願いしますね

 

「うん、任せて。ヒマリとリオはこれから先のアプローチ方法についてお願いね」

 

「お任せください……この女と協力するのはあまり気が乗りませんけど」

 

「酒泉はこれからもアリス達のことをお願いね」

 

うっす

 

「………酒泉、一ついいかしら」

 

はい?

 

「もしケイを説得できてアリスを犠牲にしなくてもよくなったら……私がやろうとしていた事はただ人を殺そうとしていただけになるのかしら」

 

「リオ………」

 

「その場合、私は必要のない犠牲を───」

 

調月さん、訂正してください

 

「……何を?」

 

〝調月さんがやろうとしていた事〟じゃないです、〝俺と調月さんがやろうとしていた事〟です

 

「………」

 

「………酒泉、貴方はやけにリオを庇いますね……何か理由があるのですか?」

 

……俺の知っている未来がハッピーエンドだけなら調月さんの事を非難していたかもしれません

 

でもバッドエンドも知っている以上、ただ非難するだけなんて無責任な事はできないんですよ

 

「……そうですか」

 

 

 

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