〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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遊園地に来てアトラクション乗らねえ奴いる?いねえよなぁ!?

 

 

 

 

辺りが喧騒に包まれている

 

周りを見渡せば老若男女が入り交じり、家族連れや恋人同士の者達が心踊らせながらそれぞれの施設を楽しんでいる

 

………まあ、俺は別に家族も恋人もいないけど───「酒泉!アリス、あれに乗ってみたいです!」───あ、走らないでー!

 

「………何故私まで一緒に来ないといけないのかしら」

 

今の天童さんとケイさんの様子を直接見てもらおうと思いまして

 

「……まあ、いいわ。万が一何か起きたらトキに対処してもらうから」

 

「イエス、マム」

 

「…………トキ、頭に付けているそれは?」

 

「これはさっき買ったネズミのカチューシャれふ」サクッ

 

「………今食べてるのは?」

 

「さっき酒泉から貰ったチュロスれふ」モグモグ

 

なんかガン見されたんで……

 

「………ごめんなさい、買い直すわ」

いや、一本ぐらい気にしませんよ、調月さんもどうです?

 

「……ありがとう、頂くわ」

 

「皆さん!早く行きましょう!」

 

 

 

という訳でやって来ましたネズミがメインマスコットの夢の国、その名も〝ネズチューハイランド〟

 

……前世で聞いたことあるような名前の組み合わせだけど大丈夫か?

 

 

「リオ様、アリスは実験の要となる重要人物であるため、近くに護衛を一人置いた方が良いかと」

 

「………トキ、貴女も乗ってきなさい」

 

「イエス、マム」

 

めっちゃウキウキしながら乗りに行った……

 

「………トキには日頃から私の仕事の補佐をしてもらっていたから普通の学生達の様に遊びに行く時間が無かったの」

 

だから天童さんやケイさんの途中経過を観察しに来ただけとはいえ思わず楽しくなってしまった、と

 

「私はトキを縛り付けていたのかもしれないわね……」

 

んー……飛鳥馬さんは自分の意思で調月さんに付いてきてると思うんですけど……だってほら、あれ見てくださいよ

 

「……?」

 

 

 

先程飛鳥馬さんが走って行った方に指を差すと飛鳥馬さんが無表情で此方に手を振り、天童さんが軽く跳ねながら俺達を呼んでくる

 

「酒泉!リオ先輩!この観覧車四人で乗れますよ!」

 

「リオ様、こちらです。早く並びましょう」

 

 

 

 

……ほら、懐いてるでしょ?

 

「………」

 

調月さんは一人じゃないんですよ、ずっと飛鳥馬さんが一緒に居たんですから

 

………だから、飛鳥馬さんのこと置いていかないであげてくださいね?

 

「……善処するわ」

 

駄目です、確約です

 

「………分かったわ」

 

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

「わあ……凄く高いです!このまま空中ダンジョンに行けそうです!」

 

次はあそこのジェットコースターに乗ってみるか?

 

「はい!」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

観覧車から見える光景にはしゃぐ天童さん、しかしそれとは反対に調月さんと飛鳥馬さんは黙りしている

 

飛鳥馬さんの方は時々チラッと調月さんに視線を向けるがすぐに下を向く

 

調月さんは何も喋らず外の景色を眺め続けているが、時々何か言おうと口を開きかけている

 

 

「あの、リオ様」

「ねえトキ」

「「あ………」」

 

 

お互いに言葉が被ったせいでピタリと止まってしまう

 

……何やってんだこの人達

 

 

「えっと……何かしら」

「いえ……リオ様からどうぞ」

 

………

 

「いえ、私は後からで大丈夫よ」

「従者が主を差し置いて話す訳にはいきません」

 

……よし、天童さん、写真撮るからあの二人の間に挟まってきてくれ

 

「了解です!アリス、突撃します!」

 

 

「えっ……?」

「きゃっ……」

 

 

天童さんはそう宣言すると、調月さんと飛鳥馬さんの間に座って二人の手を取る

 

 

「アリス、準備完了です!」

 

「……何をするつもり?」

 

何って……写真撮るだけですけど

 

「私達はアリスの途中経過を確認しに来ただけよ、その必要は無いわ」

 

でも飛鳥馬さんは撮りたがってますよ?

 

「トキが?」

 

「いえ、私は……」

 

さっき調月さんの方をチラ見してた時スマホいじってたでしょ、その時カメラアプリ開いてるの見えたんで

 

「……!」

 

「……そうなの?トキ」

 

「……はい」

 

 

遠慮がちに肯定する飛鳥馬さん、それを見た調月さんは意外そうな顔をする

 

 

「リオ様とこのような場所に来るのは初めてでしたので……その……」

 

「………」

 

「……失礼しました、任務中に申し訳ございません」

 

「………トキ」

 

「はい」

 

「撮りましょうか、写真」

 

「……!」

 

「酒泉、撮影係をお願いしてもいい?」

 

ええ、バッチリ綺麗に撮りますよ!

 

「アリス、私と位置を交換してもらってもいいかしら」

 

「分かりました!リオ先輩はトキの隣に座りたいのですね!」

 

「……ええ、そうよ」

 

「……ありがとうございます」

 

 

無表情に返事をする飛鳥馬さん、しかし俺の眼は飛鳥馬さんが僅かに微笑んだのを見逃さなかった

 

そして調月さんと天童さんも何となくその雰囲気を察しているのか、野暮なことは言わずにただ撮影の準備をするだけだった

 

 

 

……んじゃあ、観覧車が止まる前にぱぱっと撮っちゃいますよー

 

「ピース、ピース」

 

「リオ先輩も一緒にやりましょう!」

 

「こ、こうかしら……?」

 

 

ぎこちない動きでピースをする調月さん、そんな彼女に天童さんが頬がくっつきそうな距離まで近づく

 

それを見た飛鳥馬さんもおずおずと顔を近づける……目の保養たすかる

 

 

「……早くしてちょうだい」

 

あれ?恥ずかしがってます?

 

「早く」

 

ゴメンナサイ

 

 

下手にからかうと痛い目を見そうなので大人しくスマホを横に構える

 

3、2、1の合図でボタンを押すと、パシャリと音がなる

 

……うん、我ながら完璧だ

 

 

「上手く撮れましたね!」

 

 

それを横からヒョコッと天童さんが覗いてくる

 

この写真は帰った後プリントして後日皆に渡すとしよう

 

「……これで終わりかしら」

 

「……リオ様、ありがとうございました」

 

「……いえ、私の方こそ────」

 

あ、まだ撮り終わってませんよ、もう一度座ってください

 

「────……もう下に着く頃だと思うけど」

 

あと一枚だけ撮ったら今度こそそれで終わるんで

 

………ということで天童さん、ケイさんを呼んでください

 

「はい!アリスにお任せください!」

 

 

そう言うと目を瞑る天童さん………あ、これ言うの忘れてた

 

 

ケイさんと写真を撮り終わるまでずっと観覧車の列に並び続けるから!

 

【………最初から選択肢が存在しないじゃないですか】

 

 

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

【…………】

 

「……彼女はどうしたのかしら?」

 

何か天童さんの中に戻れないっぽいです、まあ俺が戻さないように頼んだんですけどね!

 

【……何が目的ですか、折川酒泉】

 

ん?ゲーセンの時みたいに色んな事を体験してほしいだけだけど?

 

【はぁ………それで、次は何に乗るのですか?】

 

あそこのジェットコースターだけど……え?いいの?

 

【どうせ貴方のことですからあの手この手で私のことを嵌めようとするのでしょう?でしたら最初から素直に従って早く戻った方が効率的です】

 

言い方ぁ!

 

【黙りなさい、さっさと行きますよ】

 

 

 

「……何だかんだで楽しんでますね、リオ様」

「……私達が思っているよりも感情的なのかもしれないわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【あ、貴方はあんな危険な物に王女を乗せるつもりだったのですか……!?】

 

 

数分後、腰がガックガクになったケイさんをお姫様抱っこしながらジェットコースターを降りた

 

……いや、正直俺もあそこまでヤバいとは思わなかった、ゲヘナで散々揉まれてきた俺ですら歩くのがキツい

 

途中から360度どころか720度くらい回転したんじゃないかってくらいヤバかった……自分でも何を言ってるのか理解できないが

 

あれ絶対建築基準法の何かしらに抵触してるだろ、それともキヴォトスではセーフなのか?

 

 

【次からは選択を間違えないでください】

 

はい……すいません……

 

【何をボサッとしているのですか、早く私をあのベンチまで運びなさい】

 

はいはい、分かりましたよお姫様………あれ?そういえば調月さんは?

 

「……だ、だいじょうぶよ……うぷっ…」

 

「リ、リオ様……」

 

 

……キヴォトス基準でもアウトだろ

 

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

 

 

 

「パンパカパーン!アリス、再び登場です!」

 

あ、戻ってきた

 

「どうやらケイが疲労状態に陥ってしまったようなので……」

 

あー……それは申し訳ないな

 

「ですので代わりにアリスが楽しみます!」

 

そっか、なら次はコーヒーカップなんてどうだ?

 

「はい!アリスが操縦したいです!」

 

「あの……私とリオ様はここで休んでから行きますので……」

 

「…………」

 

「だ、大丈夫ですか?体調が戻るまでアリス達も……」

 

………いや、天童さん、俺達は先に行こう

 

「え?でも………」

 

ほら、こっちこっち!…………ちゃんと話し合ってくださいね?

 

「酒泉………」

 

「………ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

酒泉がアリスの手を引いて離れていく

 

少しずつ遠ざかっていく背中を見送ると、リオが顔を俯かせながら話し出す

 

 

「トキ……今まで貴女を縛り付けてしまってごめんなさい」

 

「……え?」

 

 

突然の謝罪に無表情だったトキが目に見えて動揺する

 

 

「私は個人の目的を優先して貴女と向き合おうとしていなかった、貴女には貴女の人生があるというのに……」

 

「今更気づいても遅いかもしれないけれど、もう貴女を縛るつもりは無いわ」

「トキ、これからは貴女の好きに────」

 

 

 

 

 

 

「顔を上げてください、リオ様」

 

 

 

頭を下げて謝罪しようとするリオを制止させるトキ、

 

彼女はリオの両肩を掴んで顔と顔を向かい合わせ、視線の位置を合わせる

 

 

「リオ様、私は縛り付けられてなんかいません」

 

「……え?」

 

「私は自分でリオ様に従いたくてついてきているのです、もし嫌ならとっくに離れています」

 

「………」

 

「私が仕えるべき主はリオ様だけです………ですからどうか………」

 

 

言葉にするのを躊躇するが、トキは一息置いてからリオの目を真っ直ぐ見つめて口を開く

 

 

「どうかこれからもリオ様と一緒に居させてください」

 

「………」

 

「駄目……でしょうか……」

 

「……トキ」

 

「……はい」

 

「これからも頼らせてもらうわね」

 

「……!はい!」

 

少しだけ頬を染めながら答えるリオ、自分と共に居たいという真っ直ぐな思いをぶつけられるのは彼女にとって初めての出来事だった

 

また、トキの方もリオがここまで心の内をさらけ出してくれるのは初めてだった

 

 

(酒泉の言っていた通りね……こんなにも近くにずっと支えてくれた人が居たのに……)

 

 

自分は孤独ではなかった、そう考えると何もかもを一人で背負おうとした自分の視野の狭さに呆れてしまった

 

 

「……彼には感謝しないとね」

 

「……酒泉ですか?」

 

「ええ、彼が私は一人じゃないと教えてくれたの………それと、トキのことを置いていかないであげてともお願いされたわ」

 

「そう……ですか」

 

「……ねえトキ、私達もあのコーヒーカップに乗りましょっか」

 

「え?で、ですが………まだ体調が戻りきっていないのでは?」

 

「そうね………ならこれは〝任務〟よ、私と一緒に折川酒泉と天童アリスの追跡を行いなさい」

 

「……了解です。この任務、確実に成し遂げてみせます」

 

「ええ、お願い────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやああああああ!!!天童さん、これ以上回さないでえええええ!!!

 

「アリス知ってます!これは〝押すなよ!?絶対に押すなよ!?〟というやつですね!もっと回転させます!」

 

回すな──!!

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「………他のアトラクションにしておきましょう」

 

「イエス、マム」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

近くの土産屋で品を眺めているトキとアリス、そんな二人を酒泉とリオが少し離れた場所から見ている

 

 

「さっきはありがとう、お陰でトキとゆっくり話し合えたわ」

 

そいつは何よりです……で、今日一日天童さんとケイさんの様子を見てどう思いました?

 

「………何度聞かれても私の意見は変わらないわ、彼女達は世界を滅ぼす力を持った危険な存在よ」

 

……そうですか

 

「…………でも、それはあの子達が望んでいたことではないわ」

 

……え?

 

「ケイはただ大昔に与えられた〝任務〟を実行しようとしているだけ………私がトキにそうしてきた様に」

 

と、言いますと……?

 

「……彼女もトキと同じように心の奥底では何かを求めているのかもしれないわね」

 

 

 

いつもと同じ返答が返ってくると思っていた酒泉は予想外の答えに驚く、その様子を見たリオは少しだけ不満気な顔をする

 

 

「………その表情は何かしら」

 

いや、まさかそこまで考えてくれてるなんて思わなくて……

 

「私だって人間よ、意見が変わらなくても認識が変わることぐらいあるわ」

 

……ありがとうございます

 

「…………お礼を言うのはまだ早いわ」

 

 

 

照れ隠しのつもりなのか、フイッとそっぽを向くリオ

 

そんな彼女のポケットから振動と共に着信音が鳴る

 

 

 

「ちょっと待っててちょうだい……先生?」

 

 

 

電話に出たリオはそのまま酒泉の隣で通話を始める

 

どうやらただの雑談では無いようで、時々険しい顔をしている

 

 

「そう、もう対処はしたのね………分かっているわ、今日はもう切り上げます」

 

……どうしたんですか?

 

「………酒泉、聞いて」

 

 

やがて通話を終えたリオは先程までとは打って変わって深刻な表情で話し出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミレニアム学園付近で不可解な軍隊Divi:Sionが出現したわ」

 

 

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