「先日、先生から連絡があった通り不可解な軍隊がミレニアム付近に出現したわ」
「C&Cが対処してくれたお陰で幸いにも被害が出る前に制圧できたけど、一般市民の何人かには目撃されているわ」
「もしこのまま実験を続けた場合、いずれ対処しきれない数の不可解な軍隊が出現する可能性がある、それだけは避けなければならないわ」
「……だから、実験は中止よ……残念だけどね」
「暫く状況を見て、また落ち着いたら実験を再開しましょう」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
という訳で、残念ながら暫く冒険は中止です
「うぅ……そんなぁ……」
「まあまあ、私達と部室でゲームすればいいじゃん!」
「でもアリスちゃんにとっての冒険って日常生活の一部になってたし、お出かけできないのは辛いよね……」
「だからといって忠告を無視して勝手に外に出る訳にはいかないしね……」
「バレなきゃ良いんじゃない?」
もしバレたらそれこそ本当に実験の猶予が無くなりますよ?
「お姉ちゃん……そんな簡単な話じゃないんだよ?」
「うっ……」
……あ、モモイさんそこ狙撃されますよ
「……あ゛!?」
声きったね……
「しゅ、酒泉!蘇生早く!」
今後の動向についてゲーム開発部に報告しに来た俺は適当にゲームをやりながら話していた
隣ではモモイさんの操作するキャラが綺麗にヘッドショットを決められてダウンしていた
「や、やばい!エリアが迫ってきてる!」
あー……これ無理っすね、お先に失礼します
「ええ!?置いてかないでよ!?」
いやどう考えても無理でしょ、俺が一人で一位取るんで見ててください
「自分さえ助かればそれでいいの!?」
この俺が自己犠牲などするはずが無かろう!
「卑怯者~!」
近くで倒れたままピクリとも動かないモモイさんのキャラを放置してマップの中心まで移動する
下手に助けようとして全滅したら元も子もないからね、しょうがないね
「アリス、レベルアップできないのでしょうか……」
「まあ、部室の中でもデイリークエストくらいならこなせると思うから……」
「そ、それにちゃんと我慢すればそのうちまた冒険できるようになるよ!」
「でも……せっかくケイと一緒に冒険して仲良くなれたのに……」
「……そうだね」
「まさか会長が一緒に行ってくれるなんてね!」
「観察目的だったみたいだけどね」
ゲーム開発部に伝えた内容は当然遊園地の事だって話してある
その時に「何で私達も誘わなかったのー!?」って文句を言われたがあれはあくまで観察という体で行っただけだ、必要最低限の人数だけで問題ない
……ていうか、そう判断したのは調月さんなんだから俺に言わないでほしい
まあ途中から普通に楽しんでた気もするけど
「でもリオ会長も優しくて良かったね」
「うん!最初は問答無用で意見を押し通す様な人かと思ったけど……」
「アリスちゃんの実験にもずっと付き合ってくれてるしね」
「まだちょっと怖いけど……思っていたよりは怖い人じゃなさそうだよね……」
調月さんのことに話が変わると、結構プラスな意見が出てくる
いいぞ、その調子でもっと褒めろ、そして一人で抱え込む調月さんを全力で甘やかしてあげてほしい
調月さんってゲームの知識もあるし、その知識でゲームに因んだ例え話したりするしでなんだかんだでゲーム開発部と相性が良さそうなんだよなぁ……
組織のトップに立つ人の特徴として一人で抱え込みやすかったりするから一人ぐらいは友達を………心をさらけ出せる相手を作ってほしい
………っと、はい一位頂きました
「本当に勝っちゃった……」
「………これさ、最初からお姉ちゃんいらな───」
「───何も言わないでミドリ」
「凄いです酒泉!モモイがいなくても勝ってしまいました!」
「」
「アリスちゃん……」
「ちょっとは手加減してあげてね……?」
良くも悪くも純粋すぎる天童さんの一言で簡単に沈むモモイさん
天童さんみたいな素直な子に罵倒されるのはキツいからな………まあ、一部のへんたいふしんしゃさん達には需要がありそうだけど
いやー始めて出会った時にクソザコ扱いを撤回できて良かったー
「こうなったら……〝キヴォトス大乱戦〟で勝負だ!」
「何で突然乱闘ゲームを……?」
「だって前からずっと酒泉に良いところ取られっぱなしなんだもん!そのせいでアリスに私が弱いって勘違いされちゃうし!」
「………そのゲームでも勝てるとは思えないけど」
「ふっふっふっ……三対一ならどうかな!?」
「お姉ちゃん……情けないよ……」
「勝てばいいの勝てば!ていうかどんな手を使ってでも一回くらい本気で勝ちたい!」
「はぁ……」
まあ、別に良いですけど……
「ごめんね……?」
「よし!本人の了承も得たことだし、ユズ!お願い!」
「ふぇっ!?わ、私!?」
はあ!?それはズルくねえか!?花岡さんまでそっち行ったら勝てねーでしょ!?
「あれれー?酒泉君って女の子三人に負けちゃうんだー?」
モモイさんが明らかに分かりやすい挑発を仕掛けてくる
……なんだろう、戦闘中に挑発されても迂闊に乗ったりはしないんだけどこういう日常の場で挑発された時の煽り耐性が低い気がする………自分で言うのもなんだけど
「なーんだ!今まで散々イキってた癖にその程度なんだ~?」
………
「まあ、どうしても戦いたくないなら逃げてもいいよ?」
………テメェなんか怖くねえ!
野郎オブクラッシャー!!!
「そうこなくっちゃ!」
「いいのかな……?」
「アリスは酒泉とユズのプレイを観ていたいです!」
「それなら最初は私とお姉ちゃんとユズちゃんの三人でチームを組むね」
そう言ってコントローラーを持つ三人、それを返り討ちにしようと此方もコントローラーを握る
「私このキャラにしよっと!」
「お姉ちゃんそれ使えたっけ?」
「ユズがこっちにいる時点で勝ち確だし大丈夫でしょ!」
ふ……ふざけやがって……
後悔しやがれ─────っ!!!
「いえーい!また勝ち~!」
勝てるわけねェだろうが!!!
「酒泉君……もう諦めて普通にやろ?一対一でお姉ちゃんボコそ?」
「ミドリ!?」
くそっ、これで三敗目だ……
ぶっちゃけモモイさんだけならどうにでもなるけど、花岡さんとミドリさんまで一緒なのは流石に無理
……けどここまで来たなら勝つまでやりたいなー
「酒泉君?携帯鳴ってるよ……?」
なんて考えていると花岡さんが俺のスマホに視線を向けてくる
ホントだ、誰だろ………空崎さん?
とりあえずゲーム開発部の皆に軽く手のジェスチャーで断りを入れながら通話ボタンをタップする
すいません、ちょっとポーズ画面に────
『もしもし、酒泉?明日の仕事なんだけど……』
「今だー!」
─────はあ!?
次の瞬間、モモイさんがまったく動かない俺のキャラ目掛けて攻撃を繰り出してきた
『……え?』
て、テメーッ!何してんだーッ!
「今だよ皆!仕掛けろー!」
「はあ……面倒だけどここらで気持ちいい思いさせてあげればしばらく静かになるかな……ごめんね?酒泉君」
ミドリさんまでっ!?
『お、女の子……?それも複数……』
く、くそ……やられて堪るか!
「へっへーん!もう遅いよーだ!」
一旦スマホを置いてコントローラーを持つが、時既にお寿司……じゃなくて遅し
「えい!えい!よっと!ふふーん!今度は私が上になるんだから!」
マウント攻撃か……くそっ、離れろ!
『上になる?マウント?離れろ?………くっついてるの?』
こ、こうなったらこっちに……!
「あっ!酒泉君、そっちの穴は駄目だよ!」
『………っ!?』
んなっ!?この穴トゲギミックあったのかよ!?おのれミドリさんめ!
「私のせいじゃないけど……最近のアプデで追加されたんだ」
「いっけー!トドメだユズー!」
「う、うん……ごめんね酒泉君、後で一対一でやろうね?」
『…………』
「じゃあ……攻めるね?」
『……責める?』
ぐっ……駄目だっ、全員モモイさんのテンションに乗せられてる……!
『………駄目、落ち着かないと。宇沢レイサって子の時みたいに勘違いしてる可能性もあるし───』
「おお……激しいぶつかり合いです!」
『─────』
「次はアリスが酒泉とやりたいです!」
『……………』
画面に表示されるのはモモイさんとミドリさんと花岡さんの使用キャラ、つまり俺が負けたということだ
……いや、三対一にしては頑張った方だし、花岡さんも相手側に居たし
『…………酒泉』
………あっ!すいません空崎さん!忘れてたわけでは……!
『今すぐ風紀委員会に来て』
……え?今日休みでは……
『いいから、説教するから』
せ、説教!?もしかして俺何かしました!?
『風紀委員なのに風紀を乱す様な真似しないで』
ま……待ってください!何のことかさっぱり……!
「アリス、準備万端です!酒泉も準備してください!」
『早く来てね?』
ハイイマスグイキマス
電話超しから感じる気迫にカタコトになってしまう
やべえ……風紀を乱す様な真似ってなんだ?ただゲームで遊んでただけなのに……
「酒泉?どうかしたのですか?」
……すまん天童さん!急用が出来た!
「え?」
すぐに向かわなきゃ俺が殺されるかもしれないんだ!
今度埋め合わせするからそれで許してくれ!それじゃ!
困惑する天童さんを置き去りにし、カバンを持って走り出す
………っと、あの人も忘れずに
─────じゃあな!今度はケイさんとも遊びたいな!
【…………私は別にどうでもいいです】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
酒泉がゲヘナに戻り、残ったゲーム開発部のメンバーとも遊び終えた後、アリスはミレニアム学園付近の冒険に出掛けていた
冒険と言ってもリオに許可された範囲だけだが、それでも出歩けるだけありがたい
「今日は久しぶりに学校の周りを冒険します!」
(王女よ、こんなにも見慣れた場所を巡回しても意味が無いと思いますが……)
「序盤のダンジョンに再び戻ってくると新しいイベントが設置されている場合もあります!」
(……そうですか)
誰に教えられたのか、ゲームの豆知識の様なものを披露するアリス
普段と同じような光景でも変わらず楽しそうに歩き回る彼女を見てケイはなんとも言えない表情をする
「………むむっ?」
暫く歩いていると、アリスの視線が校舎から少しだけ離れた場所に止まる
そこには数匹の猫が戯れていた
「こ、これは……モンスターハウスです!」
ゆっくりと慎重に歩み寄っていき、バレずに近づけたと思ったアリスは手を伸ばして────
「あっ!」
────一匹の猫が突如走り去っていった
それに続くかのように他の猫達も次々と逃げ出していく
「アリス、そんなに怖いのでしょうか……」
(王女、こんな事をしていないで早く校舎に─────っ、これは……)
アリスはガックリと肩を落とすが、何やらカタカタという音が聞こえ足が止まる
「………?この音はなんでしょうか?」
(……何故っ……こんな所に……)
背後から何かが近づいてくる
「……あ……この、かんかくは……」
(まさか……また王女に引き寄せられて……!それに、こんな内部にまで……!)
その何かの正体はアリスともケイとも関わりの深いもので、リオ達が恐れていた事態を引き起こす存在だった
「また……ぼんやりと……」
(ぐっ……頭が……!王女と意識の共有ができるようになった影響で私まで制御が……!)
背後の存在がゆっくりと近づいてくるがアリスは一歩も動こうとせず、そして────
「あ………」
(王、女………)
────意識が闇に沈む
アリスはドサッと倒れると、そのままポケットの中に入っていた携帯も一緒に地面に落ちる
アリスの精神世界の奥底に居たケイはすぐには意識を失わなかったものの、そう長くは持たないだろう
じわじわと世界が黒く染まっていき、少しずつ心が侵蝕されていく
やがて全て塗り潰されるその瞬間────
(………ぁ……)
────目に映ったのはアリスの携帯に付けられた赤と青のロボットのキーホルダーだった
(まだ……少しなら身体を動かせるはずです……)
アリスと意識を交代し、携帯に手を伸ばす
赤いロボットのキーホルダーに指が届き、そのまま引きずるように手元まで移動させ、そして───
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
た、助かった……誤解を解けて本当に良かった……
結局あの後は空崎さんの誤解が解けるまで全力で謝り続け、後日風紀委員会の備品の買い出しに付き合う約束を取り付けることで何とか許してもらった
くっそ……これも全て才羽モモイって奴の仕業なんだ!
やっぱりモモイさんは極悪人だああああ!
………ふう、にしても結構時間掛かったな、今何時────
────ん?天童さんから不在着信?
無料で水着ウイ来ました(隙自語)