〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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イベント始まってるのに寝てる奴いる?いねえよなぁ!?

 

 

 

【……くだらない】

 

【希望を持つだけ無駄でした………やはり私達機械に感情など必要ありません】

 

【結局、己に定められた運命に抗えないのなら………私は私に与えられた役目を全うしましょう】

 

【王女を本来の在り方に戻します】

 

【………この世界を終焉に導く為に、この力を使いましょう】

 

【…………】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【折川……酒泉……】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……アリスちゃんは?」

 

「……まだ出てこない」

 

「………」

 

 

酒泉が入院している病院の中で、重苦しい空気を出しながら話すモモイ、ミドリ、ユズ

 

その中でもモモイは病院に着いた時からずっと声を発さない

 

……それも当然だろう、あの時のことをずっと引きずっているのだから

 

 

「……お姉ちゃん、大丈夫?」

 

「………うん」

 

「む、無理しない方がいいよ?」

 

「………あの事件は誰が悪かったとかじゃない、ただ運とタイミングが悪かっただけだよ。お姉ちゃんのせいじゃ────」

 

「……………たのに?」

 

「────え?」

 

「酒泉が、私を助けるためにあんな大怪我したのに?」

 

「……っ」

 

今まで一度も見たことのない姉の絶望した表情を見てミドリは言葉が詰まる

 

そこにはゲームで負けて悔しそうに騒いでいる時の顔もゲームで勝って人を楽しそうにおちょくる時の顔もない

 

ただ光の消えた暗い瞳でぼんやりと病院の廊下を歩いているだけだ

 

「………私、先生が言ってた言葉の意味がやっと分かったんだ」

 

「それは………」

 

「『酒泉は私達のことを護ろうとしていた』って、こういう事だったんだね」

 

「…………」

 

酒泉達が何故自分達に秘密でアリスの実験を行おうとしたのか理解できたモモイ

 

しかし今更真意を知ったところでもう手遅れだった

 

酒泉の手術が終わってから数日経つが、彼は未だに目を覚まさない

 

これでは─────

 

「謝ることさえ……出来ないんだね……」

 

目を覚まさない酒泉の見舞いに行き、何も話さずにただボーッと眺め続けて帰るだけの生活をモモイは繰り返していた

 

「お姉ちゃん………」

 

「………」

 

「………ふ、二人とも、着いたよ!」

 

ユズが声を出すと、モモイ達は303と書かれた病室の前で立ち止まる

 

全員少しだけノックするのを躊躇ったが、前に出たミドリが軽くコンコンッとスライドドアをノックしてからゆっくりと足を踏み入れる

 

「失礼します………っ!」

 

部屋に入った瞬間、ミドリの動きがピタリと止まる

 

それを疑問に思ったユズはミドリの後ろから病室を覗き込む

 

「……えっ……!?」

 

「………?」

 

ずっと俯いていたモモイだけ事態を把握できずにいると、ユズが少し震えながら口を開く

 

「────ゲヘナ学園の……風紀委員長さん……?」

 

「………え?」

 

ゲヘナ学園という言葉に反応したモモイは顔を上げる

 

そこには────

 

 

 

 

 

 

「貴女達は………」

 

 

 

 

 

 

────未だ眠り続けている酒泉の手を握るヒナの姿があった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう………じゃあ、貴女達がゲーム開発部なんだ」

 

「………はい」

 

ヒナとモモイ達は軽く自己紹介を終わらせる

 

「…………」

 

「…………」

 

ミレニアム学園のゲーム開発部とゲヘナ学園の風紀委員長、まったく共通点の無い両者が集まれば当然場の空気も固まる

 

お互いに何の話から切り出せば良いのかを探っていた

 

「………酒泉がこんな重傷を負うのは私の知る限りでは三回目」

 

「……え?」

 

そんな中、ヒナから先に口を開いた

 

「一回目はエデン条約の調印式の時、二回目はアリウス自治区に行った時」

 

「あ、聞いたことがあります………まあ、酒泉君がその事件の当事者だったって事までは知りませんでしたけど」

 

「ミレニアムの私達の耳にも入ってくるぐらい大きな事件だったもんね……」

 

「そう……そして三回目は今回の事件」

 

「っ!」

 

ヒナの言葉を自らを責める言葉だと勘違いしたモモイはビクッと身体を動かす

 

しかしヒナは即座にそれを否定する

 

「……別に貴女を恨んでいる訳じゃない、最後まで聞いて」

 

「ごめん、なさい……」

 

「話を続けるわ……酒泉が怪我をする時は大体誰かを助ける為だった」

 

「………」

 

「調印式では私や先生を助ける為に、アリウス自治区に攻め込んだ時はアリウススクワッドを助ける為に………そして今回酒泉が助けたかったのはおそらく貴女達」

 

「……でも、そのせいで酒泉は────」

 

「酒泉は貴女達を悲しませたくて助けた訳じゃない………貴女達全員に笑顔でいてほしかったから助けた、それだけよ」

 

「────っ!」

 

「だから貴女達がいつまでも落ち込んでいるのは私が許さないから、もし酒泉の想いに応えたいなら早く立ち直って」

 

「ヒナさん………分かった、何とか頑張ってみる……かも」

 

「……それでいいわ」

 

僅かにだが笑顔を取り戻したモモイ

 

ユズとミドリがホッとする中、ヒナが何かをポケットから取り出す

 

「それと……これも渡しておく」

 

ヒナがモモイに手渡したのは少し大きめのお守りだった

 

「……え?何でお守り?」

 

「しかもちょっと大きい……」

 

「……あれ?ちょっと分厚い……?」

 

軽くお守りを触っていたユズが何かに気付く

 

「中に何か入ってる……紙……?折り畳んである……?」

 

「中身は見ないで、それと開けもしないで」

 

「ええ!?」

 

「あと無くしたり損傷させたりもしないで、絶対に……とは言わないけど、取り返しのつかない事になるから」

 

「そこまで言われると気になるんだけど……」

 

「時が来たら〝回収〟しに行くから」

 

「だったら最初からヒナさんが持っていた方が良いんじゃ……」

 

「とにかく何も気にせず大事に持ってて………〝口実〟や〝名目〟が欲しいだけだから、酒泉の為にも」

 

「………?」

 

「………あ、あと誰にもバレないようにしてね」

 

「本当に何渡されたの私!?」

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

窓を覗くと日が沈み、学園内が暗くなっていた

見舞いを終えて病院から帰って来たモモイ達は部室の前に立っていた

 

しかし中々部室の扉を開けずに廊下をウロウロとしている

 

「……まだ勇気が持てないかな?」

 

「あ……先生」

 

そこに仕事を終えた先生がやって来た

 

「ごめんね、遅くなって……」

 

「仕方ないですよ、最近はトリニティとゲヘナへの出張が多いって聞きますもん」

 

「エデン条約絡みの事件でちょっとね………いや、これじゃ言い訳になっちゃうね……」

 

先生が自分自身を責め立てて申し訳なさそうな表情をするが、モモイ達が慌てて擁護する

 

「いやいや、先生はあの場に居なかったんだからしょうがないよ!」

 

「そ、それに……あの時は私も居ませんでしたから、私のせいでもあります!」

 

「ユズちゃんまで自分を責め出したら収拾がつかなくなるよ……」

 

「あぅ……ごめんなさい……」

 

「このままウジウジしてても埒が明かないよ!取り敢えずアリスを説得して皆で酒泉に会いに─────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「残念だけどそれは不可能よ」

 

カタカタという機械の音と共に一人分の足音が近付いてくる

 

静かに、それでいてハッキリと聞こえる様に発せられる声はどこか冷徹さを感じさせる

 

ゲーム開発部の面々と先生が後ろを振り向くと、そこには複数のAMASを連れて先頭を歩くリオがいた

 

「会長……それはどういう意味ですか」

 

リオの言葉にミドリが険しい顔で問いかけるが、知ったことかと言わんばかりに堂々と答える

 

「彼女が……アリスが暴走した結果、どんな被害が出たのか貴女達も知っているでしょ?特にモモイはその眼で直接見たはずよ」

 

「……っあれはアリスの意思でやった訳じゃないでしょ!?」

 

アリスが暴走した時の光景を思い出したモモイは一瞬だけたじろぐが、リオの言い草にすぐに食ってかかった

 

「自分から誰かを傷付ける為に動いた訳じゃないのに、一方的に危険な存在扱いなんて酷いよ!」

 

「実際に〝危険な存在〟なのよ、彼女は……そしてそれはアリス自身でも理解しているはずよ────そうでしょ?扉の前で聞き耳を立てている貴女?」

 

リオがそう言った瞬間、扉がゆっくりと開かれる

 

「アリス……」

 

そこには涙を流した跡を残し、ふるふると震えながら俯くアリスが居た

 

 

 

 

 

 

 

「……あの時からケイが返事をしてくれないんです」

 

「アリスはこれからどうすればいいのか、ケイに聞いても殆ど答えが返ってきません」

 

「……いえ、たった一度だけ返答がありました」

 

「『私は世界を滅ぼす存在です。今までも、そしてこれからも』、そう言ってました」

 

「………リオ先輩」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アリスを消してください」

 

 

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