結論から言うと要塞都市エリドゥへの侵入は成功した
エリドゥに侵入する為の経路……ミレニアムからエリドゥに建設資材を運ぶ為の無人列車の辿ったルートを見つけ、そこから隠密に動く
その為の調査はすぐに終わった、理由としてはやはり原作とは違う展開……〝ヒマリ〟の存在だろう
この時点でリオに監禁されていなかったヒマリはその才能を遺憾なく発揮し、エリドゥへ繋がるルートを見つけ出した
道中、通路でリオのドローンと会敵してしまう等のイレギュラーが起こってしまったが、それもヴェリタスのハッキングでリオに発見される前に防ぐことができた
その後、C&Cが真正面から暴れて敵の気を引き、その間に先生達が通路からこっそりとエリドゥに侵入する
全て作戦通りに………と簡単に終わるほどリオ達は甘くなかった
まず最初に異変が起きたのは〝エリドゥそのもの〟
エリドゥの都市構造を作り替えるという荒業を行い、C&Cの各メンバーを分断した
次にリオの手によって先生達はヴェリタスとの通信を遮断されてしまい、そこに更に〝アバンギャルド君〟というふざけた見た目や名前とは裏腹に強力な戦闘能力を誇るロボットと遭遇してしまった
危うく全滅しかけたが、先生達から少し遅れて後からエリドゥ内に侵入したエイミの援護、そしてヒマリとチヒロのハッキングによる援護で何とかその場を切り抜けた
更に事態の好転を後押しするかのようにリオが全く想定していなかった予想外の援軍───スミレの助力もあり、完全に状況を押しきった
また、C&Cの方もリオの予測データを上回るほどのネルの近接戦闘能力や他のC&Cのメンバーが予想よりも早く要塞都市の迷路を攻略したことでトキを撤退させることに成功した
道中でエンジニア部がダウンしたりその護衛をする為にスミレやエイミが残ったりで多少の戦力は落ちたが、別行動を取っていた先生達とC&Cが合流することで結果的に戦力が増強される
先生、C&C、ゲーム開発部、そしてヴェリタスのバックアップ
原作とは流れが多少違うものの、ここまでは概ね酒泉の知る未来通りになった………まあ、その酒泉はまだ合流できていない上、先生達も酒泉が目覚めたことは知らないのだが
そして後はアリスの元へとたどり着くだけ────などという簡単な話ではなかった
………今までのは全て前座、むしろここからが本番だった
リオとトキが解放した切り札、それは最強の力を誇るパワードスーツ〝アビ・エシュフ〟だった
エリドゥ全体の電力と演算機能を使用し、一瞬で展開される防御システムや未来予知レベルの回避能力を発揮させる、正に原作で言われていた通り〝チート〟のような力だった
更にはガトリングガンやレーザー兵器と言った超火力を未来予知に近いレベルの予測で確実に狙ってくる為、攻撃性能までチート級だった
その圧倒的な力の前にアリスを救おうとする者達が次々とボロボロになっていく、辛うじて渡り合えているのは────
「ターゲットロックオン、ファイア」
「……ぐっ!?」
────先生側の戦力の中で一番の実力を持つネルだけだ
そしてそのネルですらフルパワーを出していないアビ・エシュフ相手に手玉に取られている
「させるかっ!」
「忘れてもらっては困ります……ねっ!」
カリンがトキの背後からスナイパーライフルで狙撃し、アカネが手榴弾をトキの正面から投げつける
「……予測完了」
そう小さく呟くとトキは右腕のガトリングガンで手榴弾を爆発させ、後ろからのスナイパーライフルによる狙撃は首を軽く傾げて回避する
「いえ~い!いっただき~!」
手榴弾の爆発の中からアスナがスライディングで突っ切って来るが、それをアビ・エシュフのブースターを軽く吹かして飛び越える
「今だよ!」
「これなら避けられないでしょ!」
空中にいるトキに向けてミドリとモモイがそれぞれスナイパーライフルとアサルトライフルを向ける
が、ミドリの狙撃は腕の装甲部分で防ぎ、モモイのアサルトライフルによる連続射撃はそのまま空中でスラスターを吹かせて全て回避する
「っユズ!頼む!」
「はい!い、いきます!」
背中のパーツを支えに滑り込んだ態勢を維持するトキ、その隙を見逃さなかった先生がユズに指示を与えてグレネードランチャーを発射させる
「無駄です」
しかしそれすらもアビ・エシュフに予測されていたのか、軽く左腕を上げて数発の弾丸を空中のグレネードに向けて放つことでそのまま空中で爆発させる
「……やっと隙を見せやがったな?」
「────……」
腕を上げた態勢のまま、まだスラスターを吹かしていなかったトキの背後にネルが現れる
そのまま二丁のサブマシンガンを背中に突き付け、引き金を───
「なっ!?」
───引こうとした瞬間、ブースターを一瞬噴射してからスラスターを強めに逆噴射させることでバク転の様な動作でネルの背後に回り込む
そのまま両腕をネルに向けられるが、ネルは咄嗟に前に飛び込んで攻撃を回避した
「まさかあのタイミングでも駄目なんてね……ヒマリ、チヒロ、そっちはどう?」
『……駄目、エリドゥの能力を一部使われてるのか知らないけどセキュリティが頑丈すぎて突破できない』
『用意周到ですね、他人を信用できないリオらしいです………いえ、その唯一信用できる者があんな状態になってしまったからこそ覚悟を決めてしまったのですね』
「………」
『……いえ、今話すことではありませんね……それよりも先生、お気づきですか?』
「うん、もし防衛システムが本当に無敵なら───さっきの空中での攻撃を腕で防ぐ意味はないはず」
『行動を制限させる条件が分かればいいのですが……』
「………」
「……なあ先生、あんたの作戦を教えてくれよ」
「……危険だよ?」
「どうせこのまま戦っててもいずれこっちが削られるんだ、ここらで勝負仕掛けるしかねーだろ」
「そっか、それならネル………私を屋上まで運んでくれ!」
「了解っとお!」
会話が終わった瞬間、ネルが先生を担ぎ上げてビルを登っていく
「……逃がしません」
先生の確保も目的の一つであったトキは先生を担いでいるネルを追いかけるが、その背後から援護射撃が飛んで来る
しかしそれらを全てアビ・エシュフの予測能力で避ける
ネルが屋上へ向かい、トキがそれを追いかけ、更にそのトキを狙い打つ二重の鬼ごっこが続く
しばらく走っていると、ネルはほとんど何も障害物が無い場所まできた………つまり屋上だ
「もう逃げ場はありません、大人しく────」
投降してください。そう続けようとした瞬間、ネルが先生を抱えたまま屋上の端まで全力で走り出す
「────っ!?」
『何を考えているの……!?トキ、追いかけなさい!』
そう命令されたトキはネルに向けて全力で走り出そうとし────
「よく来たな、歓迎するぜ」
───端の方で先生をポイっと安全な場所へ投げ、そのまま迫ってくるトキの腕を掴んだ
「っ!?」
トキは咄嗟に迎撃しようとするが、突如建物の爆発に巻き込まれてそのままネルと一緒に屋上から落下する
「爆弾……いつの間に!」
「このまま空中デートと洒落込もうじゃねえか!」
空中から落下しているのにも関わらず、ネルは建物の壁を足場にしながら走り出す
そして片方のサブマシンガンをトキに向けて放つ
「被弾……ダメージ、軽微……!重量加速に対する演算補正開始!」
負けじと反撃するトキ、冷静に銃口をネルに向けながら引き金を引く
「はっ!おもしれえ!地面とキスするまでに先にぶっ倒れた方の負けだ!」
日頃から争いの絶えないキヴォトスですら滅多に見ることのない、人間同士による空中戦が始まる
下に残ったモモイ達は必死にその様子を見ようとし、その間に先生も全力で建物の一番下まで戻る
まるで花火の様に火花が散り、まるで災害の様に瓦礫が降り注ぐ
やがて銃声が止み、代わりにドゴオオンッ!という地面に何かが激突する音が聞こえる
「はぁ……はぁ……ネルは……?」
一番下の階層まで戻り、建物の外に出てきた先生は状況をモモイ達に確認する
爆煙やら砂煙やらで目の前の状況が見えにくい中、何者かが奥から近づいてくる
その姿をよく見てみると……
「あっ!?ネ、ネル先輩だ!」
「勝てたんだ……!」
ボロボロになりながら歩み寄ってくるネルに安堵するモモイとミドリ
しかし先生とユズは違和感に気付く
「………っ!モモイ、ミドリ!ネルをこっちへ!」
「ま、まだ終わってない……!」
ネルの更に後ろから人影が現れた、その正体は───
「……損傷軽微、戦闘続行可能です」
多少傷が付いただけのパワードスーツを纏って平然と出てきたトキだった
「そんな……」
『先生、貴方の作戦には多少驚いたけどこれで終わりよ……トキ』
「………戦闘再開」
一瞬だけ動きが止まるものの、すぐに行動を開始するトキ
「皆様!此方です!」
しかしその瞬間、トキに向かって手榴弾を投げながらアカネが呼び掛けてきた
その手榴弾を防衛システムでガードすると、今度は何処からかスナイパーライフルによる狙撃が襲ってきた
『この狙撃……カリンね』
「リーダー!おーきーてー!」
トキの気が逸れた隙に突然現れたアスナがネルを抱える
『皆さん、今のうちに退却を!』
『早く!』
ヒマリとチヒロの声にハッと我に帰ったモモイ達が全力で走り出すが、アビ・エシュフのスペックの前ではすぐに追い付かれてしまうだろう
『追いかけて』
「イエス・マム」
リオの命令を聞いた瞬間、両腕を逃げるモモイ達に向ける
そして両腕の装甲に付いているガトリングガンを撃とうとする────
「………っ!?アラート……!?」
───が、突然鳴り響いた警告音に動きが止まる
その警告が示す方へ視線を向けると……
「あれは……」
『………まさか、目を覚ましたの?』
うおおおおおおおお早い早い早いいいい!!!
『ヒナ委員長に抱えられておきながら何を文句言ってるんですか!』
「酒泉、もう少しだけ我慢して、あとで首輪………じゃなくて良いものあげるから」
トキの後ろからヒナと酒泉が猛スピードで迫ってきていた
「なっ……酒泉!?なんでここに……」
「ど、どうして………でも良かった……」
「安心してる場合じゃないよお姉ちゃん!このままだと返り討ちに……!」
『………トキ、酒泉を抱えている彼女の腕を狙いなさい。酒泉には当てないように』
「イエス・マム」
そう言うとトキがガトリングをヒナの手元に向けて放つ
エリドゥのサポートにより超精密射撃と化した攻撃はヒナの手元に向かって正確に飛んでいく、が───
「……させない」
背の羽で酒泉ごと覆うように護る
攻撃を防いだヒナはそのまま速度を緩めずにトキに近づく
そして一メートル程まで近づいた時、ヒナに抱えられている酒泉が機械や包帯を取り付けられている見るからに重傷な腕を上げる
『(……無駄よ、アビ・エシュフの演算能力で全ての攻撃パターンを予測しているわ。彼女の……空崎ヒナの銃による攻撃も、酒泉の今の身体の状態から繰り出されるであろう攻撃も)』
酒泉が両手を前に出した瞬間、トキが迎撃態勢に入り─────
パアンッ!
─────直後、酒泉の両手から何かが破裂したような音が鳴り響いた
「………は?」
唖然とするトキ、モニター越しのリオも固まっている
「ねこだま、し?」
瞬間、ヒナが勢いをつけた回し蹴りでトキの顔をパワードスーツごと蹴り飛ばした
「……今のうちに先生達と合流して離脱する」
『流石委員長!これから私の飼い主になる御方!』
「………?」
うぷっ……今の回し蹴りで気分が……