最終編前その1
中心に立っている一人の少女を囲むかの様に左右と前に大勢のトリニティ生達が座っている
彼女達は殆どがその少女に憎悪や嫌悪の宿った眼で睨み付けているが、その少女本人はまるで「そんな事などどうでもいい」と言わんばかりに目の前を見つめ続ける
その態度が余計に周りの者達の怒りを買ったのだろう、中心に集まる視線が強まる
中には微妙に聞こえるか聞こえないかの声で罵倒する者も
そんな者達を静める為に裁判官………の様な役目を担う生徒がガベルをカッと叩く
ヒソヒソ声が止むと、その生徒が部屋全体に声が届くようにハッキリと喋り出す
「判決を言い渡します……聖園ミカに下される処分は三つ」
「一つ目はティーパーティーとしての権限の剥奪……こちらについては代理の者が決定するまで名だけをティーパーティーの座に置き、あらゆる政治活動に関わることを禁止します」
「二つ目はトリニティへの奉仕活動……此方の言い渡した期限までトリニティの為に働いてもらいます。活動内容については後日、担当の者が言い渡します」
「三つ目は行動の制限……寮は此方の指定した場所を使用し、その寮の門限等にも従うこと。もしこれらを破る事があれば、その度に罰則を──────」
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「あっはははははっ!なんでそんなに包帯ぐるぐる巻きなの?ミイラ男のコスプレかと思っちゃったよ☆」
はぁ~~~?俺だって関係者強制参加じゃなけりゃあ自宅で休んでたっつーの!
廊下ですれ違ったゴリラが開幕煽ってくる
「はーっ……聴聞会でずっと笑いを堪えるの大変だったよー……途中で焦った様に包帯巻き直してたよね?おもいっきり目立ってたよ?」
お前ちょっとは反省したフリぐらいしろよ、監視係もいるんだぞ
「……ゲヘナ学園の生徒でしょうか?申し訳ありませんが、この後彼女をナギサ様とセイア様の所までお連れしないといけないので……」
あ、すいません、どうぞ……
「あれ?私に会いに来たんじゃないんだ?」
んな訳ないでしょ………ちょっと席を外してちゃんと包帯巻き直してきただけだ
「あの……ミカ様……」
「そんな長くはならないよ、軽く話すだけだし」
俺はさっさと戻りたいんですけどね
「へえ?私相手だと緊張しちゃうのかな?」
そりゃあ、野生動物と生身で対面したら緊張するでしょ
「………」
………
「怪我人だからって手を出されないと思ってない?」
勝てんぜ、お前は……
「ふ、二人とも止めてください!」
一触即発だった俺達の間に監視係さん達が割り込んでくる
……っと、この人達に迷惑掛けるわけにはいかないな
「……はぁ、ナギちゃん達の所に向かってただけなのに貴方に会っちゃうなんて……最悪だよ」
こっちだって空崎さんの所に戻ろうとしただけなのに、まさか野生のゴリラに出会すなんて……
「相変わらず女の子に嫌われる才能だけは大したものだね!」
人をおちょくる事に関して聖園さんの右に出る者はいませんけどね
「そんなことばかり言ってると、そのうち誰かに背中から刺されるんじゃない?」
少なくとも聖園さんの方がろくな死に方しなさそうですけどね、判決ぅ~地獄行き~!
「もしそうなったら酒泉君も道連れにするから大丈夫だよ☆」
おう上等だやってみろよ、逆に引っ張り上げてそのままジャーマンスープレックス決めてやるよ
「……貴方ごときが?」
はぁ?人間の力舐めんなよゴリラ
「あはは!そんな簡単にボロボロになるひ弱な身体じゃ無理無理!」
逆にアンタは頑丈すぎる気がしますけどね、もはやゴリラにも失礼な気がしてきましたよ!
「そもそも銃弾一発当たるだけでも死にかけるその身体じゃ、争い事の絶えないゲヘナは向いてないんじゃない?」
は、はぁ?これでも結構強い方ですがぁ?
「トリニティならもっと活躍できると思うよ?………雑用係としてね☆」
「あ、あの……そろそろ行かないと」
「ナギサ様達がお待ちですので……」
「……迎えに来てもらった方がいいのでは?」
……つーか、そういう聖園さんだって今日から雑用係みたいなもんじゃないっすか
「……はあ?」
精々頑張れよ?……下っ端ぁ!
「っな!?」
とりあえず言いたいことだけ言ってその場から足早に去る、俺は早く空崎さんの所に戻らないといけないのだ
ちなみに一人で席を外そうとした時に空崎さんも一緒に来ようとしてたけど、この後トリニティの各組織の偉い人達との会議があった為、渋々引き下がってくれた
その際に羽沼さんが説得を手伝ってくれたのが意外だった………いや、多分空崎さんへの嫌がらせだな
そんな事を考えている間に背後から聖園さんがギャーギャー騒いでいるが、それらを全て無視して歩き続ける
俺は動物園の飼育員ではないのだ
………羽沼さんと空崎さん、喧嘩してないといいけどなぁ
「マコト、さっきのはどういうつもり?もし酒泉がトリニティの人間に目をつけられたらどうするの?その場合は今度こそ貴女に責任を取ってもらうけど。ねえ、答えて。何を企んでいるの、最近大人しいと思ったけど今度は何をしようとしてるの。もし彼がまた怪我をしてたらゲヘナ学園の歴史から万魔殿という名が消えることになるから、聞いてるの?マコト、ねえ─────」
「キ、キキキ……そんなの貴様への嫌が───うぷっ……や、やめ……揺らすな……おえっ……イ、イロハ……止め────オエエエエエエッ!!!」
「うわぁ………」
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「こ、こちらです!」
「では、私達はこれで……」
監視係の子達に連れてこられてティーパーティー専用の会議室までやってくる
……多少の苛立ちを抱えたまま
「やあ、さっきぶりだね、ミカ」
「聴聞会、お疲れ様でした」
「あの空気の中、よく耐えきったね」
そんな私にセイアちゃんとナギちゃん、そして先生が笑顔で話しかけてくれる
……あんな酷いことをした私なんかに
「もぉ~……背中が板みたいになっちゃうかと思ったよー」
素直にお礼を返すことができずに、いつも通り気楽に振る舞う………まあ、多分皆には気付かれてるんだろうけど
どっかの誰かさんと違って鋭い皆ならね!
「……ミカさん、何かあったのですか?」
「……え?」
「いえ、何か不機嫌そうでしたので……」
「そんな顔してたの?」
「はい……もしかしてここに来るまでの間、トリニティの生徒に何か言われたのでは……」
ナギちゃんが気を遣う様な表情で尋ねてくる………誤解させちゃったなら申し訳ないな、これも全部彼のせいだ、うん
「あはは!大丈夫だよ、ナギちゃんの考えている様な事は一つも起きてないから!」
「それならいいのですが……」
「ただ、ちょっと気に入らない人とばったり会っちゃっただけだから!」
「……ひょっとして、彼と鉢合わせたのかい?」
何かピンと来たのか、セイアちゃんがこっちに視線を向けてくる
こういう時に勘の鋭さを発揮してほしくなかったなぁ……
「そうなんだよねー……せっかく聴聞会が終わって気持ちよく帰れると思ったのに……最悪だよー」
「そういえば彼も来ていたな、何故か怪我している状態で………」
「私も今日は休んだ方がいいって止めたんだけど………あそこまで頭を下げられたら流石に無下にはできないからね。ヒナもあんな風にお願いされてたんだとしたら、そりゃあ断れないわけだよ」
先生は溜め息を吐きながらそう言って………え?
「せ、先生、待って。頭を下げられたってどういうこと?」
「ん?」
「だ、だって……聴聞会って関係者は全員強制参加だったんじゃないの?」
「確かに関係者には出てほしいだろうけど、別に強制ではないよ?」
「関係者本人が怪我などの理由で来れない場合は普通に断ることもできますしね」
「まあ、その怪我してる張本人に『どうしても見届けたい』ってお願いされちゃったらね……」
「先生のその様子だと、相当頼み込まれたみたいだね」
「………」
「……ミカ?」
「そう、なんだ………」
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「お帰りなさい、酒泉。怪我はない?誰かに変なことされなかった?」
特に何もありませんでしたよ、五体満足です
「………満足、ではないと思うけど」
前に比べて比較的に、です
「………ごめんなさい、一緒についていくことができなくて」
いや、あの後空崎さんも大事な予定があったんで仕方ないっすよ
「マコトさえ邪魔しなければ……」
それはそれで会議に出席しないことになるのでは……?
「……マコトだけ行けばいい」
いやぁ……あの人だけ行ったら絶対トリニティに喧嘩売りますよ……
「……確かに」
………あれ?そういえば羽沼さんは?
「………………急に体調が悪くなったらしい」
そっすか……あっ、この後暇ならトリニティのスイーツ店寄りません?
二人ペアじゃないと注文できないのがあるんですよ
「………酒泉はまだ頼んだことないの?」
はい、ですから空崎さんにお願いしたいなーって……もちろん俺が出すんで
「……別に構わないけど、条件がある」
何ですか?
「これから先、ペア限定の品を買う時は………私に頼んで」
えっと……逆にそれでいいんですか?迷惑では……?
「迷惑じゃない………とにかく、そうして」
はぁ……分かりました
コミケまであと一週間ですね、ブルアカ本買い漁ってきます