酒泉がアサルトライフルの引き金を引き、無数の弾丸がミカを襲う
それを驚異的な身体能力で避けたミカはそのまま酒泉に接近しようとする……が、回避されるであろう事を予測していた酒泉は逆に自分から接近し銃口をミカに向ける
ミカは咄嗟に首を少し傾けて弾を回避し、今度はミカが酒泉の腹部に銃口を向けるが、ミカが引き金を引くよりも先に膝蹴りを仕掛けて銃口を無理やり逸らす
その後、後ろに飛び退いて態勢を立て直そうとした────
………っ!
────瞬間、身体に違和感を感じ、一瞬動きが止まってしまう
そこらの生徒にとっては気づくことすらできない一瞬、実力者にとっては明確なチャンスとなる一瞬
当然後者であるミカがその隙を見逃すはずもなく、その一瞬で酒泉に急接近する
酒泉の動きが戻った時には既に遅く、ミカは酒泉に足払いを掛けて態勢を崩した酒泉をそのまま押し倒す
「じゃあねー!楽しかったよ☆」
そして銃口を倒れている酒泉の額に向けてから引き金に指を掛け────
────その直後、少しだけ鈍い痛みと共に酒泉の額にベチャッとペイント弾が炸裂した
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「これで二連勝~!ちょっと弱くなったんじゃない?」
……は?まだ身体が本調子じゃなかっただけだが?
「言い訳するなんて男の子らしくないねー」
ペイント弾で汚れた手を俺の服で拭いてくる聖園さん、何しやがるこのゴリラ
……ちなみに、こうなったのには深い理由が……いや、大した理由は無いな
漸く復帰の目処が立ったからトリニティでケーキでも買ってから風紀委員会に顔を出そうとしたんだ
するとその帰り道で草むしり中の聖園さんを発見して俺は………スルーした
だって話しかける理由もないじゃん、どうせいつもみたいに煽り合いになるし
………そうして気を遣ってやったのに、あの野生動物から仕掛けてきやがった
「女の子と話し慣れてないんだ☆」とか「へえー?逃げるんだ?」とか好き勝手言いやがって……!
しかしそんな安っぽい挑発に乗ってやる暇など俺にはない、何故ならば風紀委員会に顔を出した後は復帰に向けて軽い運動をしようと思っていたからだ
その事をやさし~く、ていね~いに伝えてやると奴はこう言った
《それなら私が手伝ってあげよっか?酒泉君って弱くて脆いんだし、どうせ誰かの手伝いが必要になるでしょ?》
酒泉は激怒した、かのゴリラに力の差を分からせなければならぬと決意した
そこからはいつも通りに煽り合い宇宙に発展した。その結果、実戦形式でリハビリすることになった
とりあえずさっさと終わらせたかったから草むしりを手伝って、殆ど使われなくなったトリニティの寂れた演習場に向かった
え?二回戦ってんじゃねーかって?この人に負けたままなのは絶対に嫌だ
………という訳でもう一回じゃあああ!
「えー?これ以上やっても無駄だと思うんだけどなー?」
久しぶりの戦闘で自分の身体の使い方が分からなかっただけですぅー!次からは圧勝しますぅー!
「しょうがないなぁ……」
そう言いながらもペイント弾の補充をする聖園さん、今からその綺麗な面をペイントまみれにしてやるぜ……!
──────────
この瞬間を待っていたんだあああ!
「はい☆三連勝☆」
何とおおおおお!?
──────────
取ったぁ!ハハァ!
「えい」
ひでぶっ!?
──────────
さらにもう一発!
「これで五連勝だね!」
だらしない生徒ですまない……
──────────
ここだっ!
「……っと……危ないなぁ」
なぬっ!?
「えい☆」
ぐええええ!?
──────────
もらったあ!
「よっと……はい、これで終わり───」
なんのぉ!
「……っ避けられた……?」
今度こそ!
「……危な……っ!」
勝った!トリニティ編完っ!
「……かったぁ」
………え?あれも防ぐの?
「七連勝目……良い数字だね☆」
──────────
うわごりらつよい……
この人なんなん?ティーパーティーよりも正実の前線で暴れてた方が活躍すんじゃね?
てか、こうして再び戦ってみると改めて学園トップ勢とのレベルの違いを思い知らされる………まあ、一番強いのはウチの委員長だけどな
しかし……まさか一度も勝てないとは思わなかったな
「これで分かったでしょ?私の方が上だって☆」
めっちゃ笑顔で煽ってくるじゃん、この世で一番ムカつく笑顔なんだが
直視してると腹が立ってくるので視線を逸らすと、ゆっくりとオレンジ色に染まっていく外の景色が見えた
「もう……酒泉君なんかに構ってたせいで日が沈み始めちゃったよ……門限あるのに」
先に話しかけてきたのはそっちでしょうが……
「でも……そっか、もうこんな時間なんだね……早いなぁ……」
くっそ……めちゃくちゃ悔しい……
「…………その、本当はもうちょっとだけ────」
聖園さん、次いつ空いてます?
「────え?」
また模擬戦挑みに行くんで予定教えてください……まさか、自分から仕掛けておいて断るつもりじゃないでしょうね?
「………いいの?」
七連敗したまま終われるかってんだ!次こそは絶対に……!
「…………ふふっ、そんなに私と一緒に居たいんだ?」
はあ!?んな訳ないでしょ!?
「はいはい、分かってるよー☆」
楽しそうに答えながら帰り支度をする聖園さん、そんなに俺をボコれて嬉しかったのかこいつ……
正直、今すぐにでもリベンジしたいがゴリ園さんに門限があるから仕方無く今日は諦める
……あ、でもついでに〝あの約束〟ぐらいは果たせそうだな
「どうしたの?帰らないの?」
聖園さん、帰り道にちょっと買い物するぐらいの時間はありますよね?
「それぐらいなら大丈夫だけど……それがどうかしたの?」
ほら、前に言ったじゃないですか………
借りは返すって
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「じゃーん☆これなんてどう?可愛くない?」
聖園さんがピンク色でフリフリの水着を着て試着室から出てくる
……確か学校指定の物が欲しいとか言ってませんでしたっけ?まあ、別にそれでもいいんですけど
「……つまんない反応」
ジト目で睨みながら再び試着室のカーテンを閉める聖園さん、俺に面白い反応を求められても困る
「……でも、本当に良いの?こんなに買ってもらっちゃって……」
……一応、アンタには命救われてますから
「それって……ベアトリーチェの時の事?」
俺のことを抱えながら護ってくれたって聞いてるんで………その礼ぐらいはしないと
「別に気にしなくても……………救ってもらったのは私の方も同じなんだし」
何とも言えない表情で呟く聖園、最後の方だけ声が小さすぎて聞こえなかったが……
………ああもう!さっさと買って帰りますよ!こういう空気は苦手なんですよ!
「あっ!待ってよー!」
買い物カゴに入った大量の学校指定の物………と先程聖園さんが試着していた水着を持ちながらレジに進む
……決して気まずいからとか気恥ずかしいからとかではない
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「いやー、酒泉君に力の差を逆に分からせてあげただけなのに………まさかの収穫があるなんてね」
精々今のうちにイキれるだけイキっといてください、最後には聖園さんが悔し涙を流すことになるんでね!
「その頃には寿命で死んじゃってるかな?」
こ、このメスガキ(年上)め……!待ってろよ……いずれアンタの喉元に食らいついてやるからな!
「期待せずに待ってるねー」
くそっ………ほら、受けとれよ、全部アンタのだ
「ありがと─────あれ?これも買ったっけ?確か私が買ってもらったのって学校指定の物だけじゃ……」
いや、試着してたんで気に入ったのかと思って……まあ、いらないなら別に────
「いっ……いる!絶対いるから!」
うおっ……ビックリしたぁ……それならいいですけど……
あ、それと今日買った物は全部厳重に保管しておいた方がいいですよ、何かされるかもしれないんで
「何かって……何を?」
その……ほら、聖園さんを恨んでる奴等が何か仕掛けたりとか……
「………もしかして心配してくれてるの?」
はあ?金の無駄遣いになりたくないから警告してるだけですぅ~!
「………ねえ、酒泉君」
な、何だよ……柄にもないって言いたい────
「ありがとう………これ、ずっと大事にするね」
………あっそ
「………」
無言で買い物袋を抱きしめる聖園さんを置いて別れの挨拶すらせずに帰る
………あっ、風紀委員用のケーキ買わないと