少し前にミレニアムで話したことを覚えているだろうか、それは〝どうすれば天童さんとケイさんが消えずに済むのか〟という話だ
あの時からずっと当時の………最終編が配信された当初の記憶を必死に思い出そうとしていた
だって転生してからもう十何年も経ってるんだぜ?抜け落ちてる記憶だってあるはずだ
でも現状だと大した事は思い出せていない、今分かることは………
①先生達が乗る……予定のウトナピシュティムの本船とは、昔の人達が〝名もなき神々〟に対抗する為に作った物である
②そのため、〝名もなき神々の王女〟である天童さんやケイさんが乗り込めば、当然その二人を亡き者にしようと牙を剥くだろう
③そのデメリットは、原作では先生が肩代わりすることで防いだ
……とまあ、こんな感じだ
このぐらいの情報じゃ、解決策なんて────
────ん?先生が肩代わり?
………そもそもケイさんが消えた理由って力を行使したことだけじゃなくて………先生が肩代わりできない状況下で、本来は敵であるウトナピシュティム内で力を使ってしまったからじゃないか?
どれだけの容量を使っただとかリソースが足りなかっただとか、それは天童さん達が消滅してしまう理由と関係ないのでは?
よし、早速本人に聞いて………いいのかなぁ……
実は天童さん達をあまり会議に参加させたくないのには理由がある、それは………バリアを突破する方法を聞いた天童さん達が自分を犠牲にしてでもそれを実行する可能性があるからだ
……いや、可能性ではないな。本編でも天童さんは実際に実行していたからな
でも、まあ………解決策が見つからないと結局意味がないよなぁ……
しゃーない、電話でケイさんに聞いてみるか……
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『浅はかな男ですね、その様な重要な話は誰にも聞かれないような場所で直接会ってするべきです』
一瞬で切られた
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という訳できちゃった♡
【…………】
冗談です、お願いですからそんな冷たい目で見ないで
【……早く座りなさい】
出会っていきなり背筋が凍る様な視線をぶつけられてしまい咄嗟に謝罪する、相変わらず元気そうで良かった
とりあえず言われるがままに座ったけど……
……なんでゲーセン外のベンチ?
【人混みや騒音等で私達の会話を丁度良いぐらいに聞こえにくくさせることができるからです、他意はありません】
確かにいいかも……
そういえば三人で初めて来たのもこのゲーセンだったなぁ……もう全部が懐かしいな、そんな時間は経ってないはずなのに
【……もう一度言いますが他意はありませんから】
何故か念を押されるが、それを誤魔化すようにケイさんが一息ついてから喋り出す
【では、早速本題に入りますが……貴方の言う通り、王女の敵である〝ウトナピシュティムの本船〟にさえ干渉しなければ王女に危害はありません】
やっぱそうだったか!
【………そもそも、世界を滅ぼす為に作られた私が一度力を行使しただけで消滅してしまっては意味が無いでしょう】
た、確かに……言われてみれば……
俺の間違った知識のせいで調月さん達にまで迷惑を掛けてしまった……
【……貴方は未来が視えるのでは?それなのに誤解していたのですか?】
い、いや……俺は未来が視えるってよりも未来を知っているって感じだからさ……それも大分昔の記憶だし……
【………昔?】
は、はは……なんだよ、ただ事を大袈裟にしてただけじゃん……俺……
早とちりしていた自分の愚かさにもはや渇いた笑いしか出てこない
何かもう………先生にこれから先何が起こるのかだけ話して、後は大人しく静かな森で動物に囲まれながら余生を終えた方が良い気がしてきた
それぐらい余計なことをした気分になる……
【……酒泉】
はい……ぽんこつむのうしゅせんです……
【いいですか、一度しか言いませんのでよく聞きなさい】
なんでしょうか……
【私は貴方に感謝しています】
……え?
【与えられた役目を果たすことでしか己の存在理由を証明できなかった私に対し、〝王女達と共に歩む〟という新たな選択を与えてくれたことを……】
【それらは全て貴方が身を削りながら行動してくれた結果なのです、貴方自身がその行動を恥じるのなら……私が代わりに肯定してあげましょう】
………もしかして慰めてくれてる?
【………勘違いしないでください、いつまでもそんな暗い雰囲気でいられると鬱陶しいと思ったから、仕方無く励ましただけです】
……ありがとな、ケイさん
顔を逸らしているケイさんにお礼を言うと、突然ズイッと顔を急接近させてくる
突然の事に驚いていると────
「ケイばっかりズルいです!アリスも酒泉とお話ししたいです!」
……あっ、入れ替わってたのね
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──────
「もう!ユウカったら……あそこまでガミガミ言わなくてもいいじゃん!」
ゲーム開発部に向かいながら先程までの出来事を思い浮かべる
切っ掛けは最近のアリスとケイの様子について尋ねられたことだった
そこから何故かゲーム開発部全体の活動について聞かれ、最終的には「真面目にゲーム開発してるのか」とか「部屋を片付けなさい」だとかに繋がっていった、なんでさ!
「そのせいで遊ぶ………じゃなくてっ、部活動する為の時間も無駄にしちゃったし……」
やっと部室にたどり着き、扉に手を掛け────
『あ、危なかった……』
ぐおお……!また負けた……
『でも凄いね、酒泉君………怪我が治ったばかりでもうユズと戦えるようになるなんて……』
『はいはい!次はアリスが戦います!』
「……え?」
────部室の中から酒泉の声が聞こえた
いつの間に遊びに来てたんだ……まあ、嬉しいけど
早速挨拶しようと扉をそのまま開けようとするが、手が動かない
……あれ?開かない……どうして?鍵が掛かってるわけじゃないのに……
そこまで考えてようやく自分の手が動いていないことに気づく………な、なんで!?
どうしよう……何故か緊張してきた……そういえば酒泉と会うのって病院に一人でお見舞いに行った時以来だな……
よ……よーし!ここは堂々と思いっきり手を上げて挨拶を……!
「やーやー!久しぶりだね酒泉!早速だけど私とも勝負しよう────」
「うぅ……やっぱりユズは強いです……完敗しました……」
「で、でも……アリスちゃんも上手くなってるよ」
「……ねえアリス、やっぱり距離感近くない?」
「?」
「〝?〟じゃなくて……酒泉君はそれで良いの?」
ちょっと前が見えにくいですけど……特に支障は無いんで
「…………………まあ、本人が良いなら別に構わないけど」
部室に入ると、胡座をかいている酒泉の上にアリスが乗っかっていた
「────え?」
「あ!モモイが来ました!これでゲーム開発部が揃いましたね!」
「今日はやけに遅かったね、何かあったの?」
「………」
「……モ、モモイ?」
「………はっ!?い、いや!何でもないよ!?ちょっとユウカに捕まっちゃってさー!」
ユズが顔を覗いてきてようやく意識がハッとする
……いや、そんなことよりも
「ア……アリスー?何で酒泉の上に座ってるのかなー?」
「なんとなくそうしたかったからです!」
「り、理由が適当すぎない?酒泉も困ってるんじゃないかなー?」
いや、俺は別に………あっ、でも少しだけ重────
【何か言いましたか?】
────羽のように軽いですっ!
「……あっ!駄目ですよケイ!今はアリスの番なんですから!」
一瞬だけ瞳の色が変わったかと思えばすぐに元に戻るアリス
………むぅ、何か変な感じがするなー……
「………お姉ちゃん?」
「……ええい!とにかく勝負だー!ギッタンギッタンにしてやるんだからー!」
いや、そろそろ調月さんの所に行かないと……大事な話があるんで……
「いいから!一回戦ってくれたらそれでいいから!」
……結局この日は酒泉が(元)会長の所に逃げ出すまで挑み続けた