待てや便利屋ああああああ!!!
「最近姿が見えなかったのにどうして今日に限って復帰してるのよおおお!?」
「……厄介なのに見つかったね」
「あははは!にっげろ~!」
「ア……アル様の邪魔はさせません……!」
風紀委員達の射撃を避けながら全力で走り続ける便利屋
何故こんな事に……なんて説明する必要は無いだろう、いつも通りやらかしたところを風紀委員達に見つかっただけだ
「全員纏めて…………えっ!?」
爆弾のスイッチのような物を取り出そうとしたハルカ、しかし手に持った瞬間には既に手元を何者かに狙撃されており、その痛みで落としてしまう
「社長、こっちは不味い……っ!?」
カヨコが新たな逃走ルートを確保しようとしても、その先に手榴弾が投げ込まれる
敵を倒すため……というよりも敵の選択肢を確実に潰していくような攻撃に便利屋の面々は思ったように動けない
ここは多少危険な目に遭ってでも突破口を開こうと、アルが後ろの逃げ道を塞いでいる風紀委員達の元へと駆け出す
「退きなさい、貴女達では相手に………ヒィッ!?誰よ!?かっこつけてる時に!?」
……が、その直後にアルの進行方向に銃弾が跳んでくる
「ふっ……残念だったわね、私の頭部に直接弾を当てるチャンスを逃すなんて」
(あ、危なかった……!あと少し先に進んでいたらそのまま食らっていたわ……!)
内心冷や汗だらけなのを取り繕いながら、反撃に出ようとする
「ムツキ!準備は良い?」
「おっけ~!いつでも起爆できるよー!」
そしてアルはスナイパーライフルを構え、進路を塞ぐ者達を今度こそ狙い撃とうとする
「よくやった!酒泉!」
………屋根上から接近してくるイオリの存在に気づかずに
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いやぁ!完璧な流れでしたね!
「ナイスアシストだったぞ、酒泉!」
「ちょっと!?キツく縛りすぎよ!」
銀鏡さんとハイタッチしながら喜んでいると、背後からアウトロー(笑)の声が聞こえてくるがそんなことはどうでもいい
空崎さんの仕事を増やす人食い反社の言葉など知らん
「それにしても酒泉君……色々と凄まじかったですね」
そのままドナドナされていく便利屋の姿を見送っていると、他の人達の軽症を手当てしていた火宮さんに話しかけられる
「これもヒナ委員長との特訓の成果……でしょうか?」
『当たり前です、何せ酒泉は幼気なヒナ委員長の優しさにつけこんで保健体育の勉強をたっっっっっっぷりとやってましたからねっ!』
めちゃくちゃ言い方に悪意あるじゃないですか!?ただ人体の構造について詳しく調べてただけですよ!?
「でも、かなりの成長スピードだよね」
……
『今の戦い方をより強化する為とはいえ………ぐぬぬぬぬ』
うわっ、お手本のような〝ぐぬぬ〟だ……
「……あれ?そういえば、その委員長は?」
通信機越しの天雨さんに呆れたような視線を向けていた銀鏡さんが思い出したように尋ねる
「いつもなら酒泉と一緒にいるはずなんだけど……」
「確かに……今回の作戦にも参加しなかったのは珍しいですね」
『ヒナ委員長でしたらトリニティへ出張に行ってますよ』
「ああ、エデン条約絡みの仕事?」
『まあ、間接的にそうと言いますか……ETOの設立が決まった時からトリニティとゲヘナ間での連携を強化する案が度々挙げられてきたのですが、今回はその中の一つを実行するということで』
………と、言いますと?
『もうすぐ始まるんじゃないでしょうか?正義実現委員会との戦術対抗戦』
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……てな感じで、ちょっとだけ強くなりました
「そうか……」
シマエナガの頭を撫でながら、ティーカップを置くセイア
今回のようにセイアは時々酒泉を呼び出すことがあるが、その理由の大半は未来の事に関してだ
未来を知る者同士という、似たような境遇であり似たような思いを抱える二人は会う機会は少なくても割とすぐに意気投合した
……もっとも、今のセイアに予知夢の力は残っていないが
「実は私の方も面白い事が起きてね、それは────」
あ、勘が良くなったとかですか?
「………できれば私から言いたかったのだがね」
少し拗ねた様に頬を膨らませるセイアだが、すぐに「やはり知っていたか」と話を続ける
「君の未来の知識量は底が知れないな、一体どこからどこまでが範囲内なんだい?」
……まあ、色彩との戦い以降の事はあまり詳しくないですけどね
精々トリニティやゲヘナとは全く関係無い事件を多少知っている程度です
「つまりそこから先は君も未来が分からなくなるという訳か………もし視えない事に恐怖を感じたりしたのなら、その時は私に相談すると良い」
そうですね……じゃあその時が来たらお願いします
「ああ、他の者達よりは力になれるはずだ」
そう言って微笑むセイア、これは決して彼女の自惚れではない
実際に彼女は理解できるのだ……酒泉の気持ちを
今でこそ色んな人を頼るようになった酒泉だが、それ以前で一番最初に彼の心を解放させることができたのはセイアだけなのだ
「しかし相談か………懐かしいな、君の悩みを聞いて抱きしめてあげた時のことを思い出したよ」
……ソ、ソンナコトアッタカナー?
「おや、忘れてしまったのかい?それなら思い出させてあげよう……あの時の君は泣きながら────」
ごめんなさい覚えています許してください
「なんだ、私は親切心で教えてあげようと思っていたのだが……」
意地の悪い笑みを浮かべながら中央に置かれたクッキーを摘まむセイア
酒泉は何故か自分に近寄って来たシマエナガに〝お前のご主人様は意地悪だなー〟と少々不貞腐れた表情で愚痴りながらツンツンと頭に触れる
「おや……どうやらこの子は君のことを気に入ったようだね?」
俺?何で?
「私と君に何か似たようなものを感じ取った……のかもしれないな」
ああ、そういう……
「それか前に君を抱きしめた時に〝そういう関係〟かと思われた……とかね?」
いや、その時はシマエナガ居なかったでしょ?
「そうだったかい?まあ、君が望むのなら再び同じことをしてもいいが……」
酒泉は〝からかわないでくださいよ〟と言おうとした────
ドサッ
────が、何かが落ちる音が聞こえて動きが止まる
………百合園さん
「……なんだい?」
この展開、見覚えがあるんですけど
「奇遇だね、何故か私も懐かしい気分になったよ」
俺も……主に病室で体験した事があるような……
「……よし、二人で扉の方を向くぞ」
嫌です、一人で見てください
「駄目だ、私と君は運命共同体だ」
背筋が凍る感覚を覚えながらも、仕方無く視線を右に向ける二人………若干顔を俯かせながら
まず最初に視界に入ったのは床に落ちている何処かのスイーツ店の紙袋、おそらくセイアの所に遊びに行く前に買ってきたのだろう
そして顔を少しずつ上げていき、次に視界に入ったのは────
「………セイアちゃん、〝抱きしめた〟ってどういうこと?酒泉君も一体いつからセイアちゃんとそんな関係になっていたの?」
あっ
「……やあ、ミカ。遊びに来てくれたのかい?わざわざ手土産まで買ってきてもらって申し訳ないね」
「いいから答えて」
あっあっあっ
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一人の少年がトリニティ生に連れられて長い廊下を歩いている………何故か疲れた様な表情で
廊下の先の堅牢な扉の前に着くと、トリニティ生に真剣な顔で何かを伝えられる
そしてそのトリニティ生の言葉に何度か頷くと、トリニティ生は扉の鍵を開ける
そのまま道を譲られた酒泉はゆっくりと扉の中に入っていき────
「……久しぶり、だな」
………そうですね
「最近、顔を見なかったが……何かあったのか?」
ちょっと怪我をしてしまいまして……
「なっ……!それは本当か?怪我は治ったのか!?」
はい、なんとか
「……そうか、なら良かった」
……ありがとうございます
「………」
………
「………その、今日は何の用だ?」
……もうすぐ裁判が始まるでしょ?だから一度くらいはちゃんと話しておこうかと思いましてね
「そう、だな……いつも少し話して終わりだからな……」
……つっても、何から話せば良いのか分からないんですけどね………
………錠前さん