いよいよ最終編突入です、前後編で別れると思いますがこの小説もこれで最終編です
〝シキサイ〟潰すゾ!!!
「PMCの兵力が砂漠の方に移動してた?」
因縁の相手の名前を聞いたホシノは眉間に皺を寄せながら顔を上げた
「ん、今までとは全然規模が違った」
「ふーん……何かあったのかな?あいつら最近静かだったのにね」
アビドスとカイザーは深い因縁がある
小鳥遊ホシノのことやアビドスの借金のこと、そして土地の問題等考え出したらキリがない程に
その内の幾つかは未だにアビドスに傷を残している
「ここ数日、あちこちでカイザーPMCが移動しているのを見ました……」
「あいつら、他人の自治区で好き勝手して……!ほんと許せない!」
「アビドス砂漠で何かあったのでしょうか?」
心配や怒り、単純な疑問と後輩達の感情も別々だったが、ホシノとしてはアビドスに手を出されなければそれで良かった
……が、放置するのもそれはそれで心配だ
「……そういえば、この事で先生から連絡が来てた」
「先生から?」
「うん、〝私が調べるからカイザーには近づかないで〟っていうのと〝なるべく単独での行動は控えて〟って……なんだかいつも以上に警戒していたような気がする」
シロコは電話越しでも伝わるほどに真剣だった先生の声を思い出し、何か悪い事でも起きているのかと危惧する
尤も、カイザー関連の事件で良い事が起きたことなど一度もないが……
「……うん、とりあえず先生の言うことに従った方が良さそうだね」
「うぅ……私、バイトがあるんだけど……シフトとかどうしよう……」
「皆でお店の中で待っておけばよくない?帰りはそのまま皆でセリカちゃん家にお泊まりする感じでさ~」
「ん、賛成」
「はぁ!?それ絶対止めてよ!?だいたいそんなスペース無いわよ!」
「でしたら皆でパジャマパーティーですね☆」
「こうなったらもう止められませんよ……」
「うぐぐぐっ………いい!?今日だけだからね!?」
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……ね?カイザー動いたでしょ?
「うん、酒泉の言ってた〝合図〟だね」
先生が入れてくれたコーヒーを飲みながらドヤ顔でイキってみる。まあ、原作知識あるし知ってたことなんだけどさ
………あ、コーヒーおいし、然り気無く砂糖多めにしてくれてるの優しいな
「アビドスの皆には一人で行動する時は周りをよく警戒しておくように伝えておいたけど………それでも心配だね」
一応できる限りの監視はしてるんでしょう?
「うん、だけどカイザー以外に動きがないからなんともね……」
そう、カイザーが動いたところで最終編開始の合図でしかないのだ
この後の展開は砂狼さんがカイザーとは別の存在……〝彼等〟に拉致られるのだが……
何月何日の何時にそれが起きるのかなんてさっぱり分からない、常に見張るぐらいしか対策が思い浮かばない
そしてその役目は多忙な先生よりもアビドスの皆の方が適任だろう
「シロコのことを最優先に警戒しておくとして……次の問題は……」
……狂犬さんはどうなりました?
「渋々だけど了承してくれたよ、色々と複雑な思いを抱いてるんだろうね……」
まあ、一度敵対した者の護衛を頼まれるなんて想像もしてなかったでしょうからね
「でも、なんとか頷いてくれて良かったよ」
この事件を期にあの人も前を向いていくだろうから、もう心配する事はないな………で
────あとは………不知火さんですね
「………」
最初は事件を起こす前に取っ捕まえればよくね?って思ってたが、そもそも証拠も何もないのにどう捕まえるんだって話になってしまう
それにタイミングを間違えればカイザー共を警戒させてしまう、もしそれで変な小細工をされたら面倒なことになる
カイザーと超人様の会話をどっかで録音できればいいんだけど……どこで直接取引してるのかもどこで連絡を取っているのかも分からない
それに………まだ事件を起こす前の生徒を捕まえて強制捜査するなんて、先生を苦しませるような真似はさせたくない
……まあ、さっきも言ったけど証拠が無い以上は手出しできないだろうけどな
「……やっぱり説得できないかな?」
んー……説得できるかは分かりませんけど、釘を刺す為に会いに行くというのは悪くないですね
結局物理的に行動を縛ることはできませんけど……
「……近いうちに会いに行ってみようかな」
あ、その時は護衛も連れていってくださいよ?万が一があると大変ですから
それと……多分あまり時間は残されてないんで、会うなら早めの方がいいですよ
「うん、分かってるよ」
……まあ、先生なら予め対策をしておけばカイザーごとき軽く蹴散らせるだろう
敵の狙いが先生であることが分かり切ってる以上、準備なんていくらでもできる
俺は大人しくサンクトゥムタワーに備えておけばいいだけだ、もう何も心配する必要はない
……一応、ちょっとした〝仕掛け〟もしておいたしな
これで少しでも七神さんの負担や七神さんに向かう不満が減ればいいんだけど……
……んじゃ、話すことも無くなったんでそろそろ帰りますね
「あ、それなら送るよ」
いえ、先生もまだ仕事残ってるでしょ?こっちのことは気にしないでください
……本当にカイザーには気をつけてくださいね?
「うん……酒泉の方もね?」
俺は大丈夫ですよ……それじゃ、また……
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「キヴォトス全域で超高濃度のエネルギー体がいくつか観測されたの」
モモカの操作によってモニターに映し出されたのは〝UNKNOWN OBJECT〟と表示されている複数の〝何か〟だった
「場所はアビドス砂漠、D.U.近郊の廃墟化した遊園地、ミレニアム郊外の閉鎖地域、トリニティとゲヘナの境界付近、ミレニアム近郊の新しい都市と……あと、サンクトゥムタワーのど真ん中」
エネルギー発生地の名前を聞いたリンは怪訝そうな表情でモニターを睨む
「サンクトゥムタワーの真ん中、と言いますと……」
「そう……私達が今いる場所、ここの真上」
「それを聞いて外部カメラの映像を確認してみたのですが……何も見つける事ができず……」
「そ、何も変わったところがなかったんだ」
心配そうな表情で情報を語るアユム、そんな彼女とは対照的にモモカは肩の荷が下りたかのようにスッキリした表情をしている
「他の地域も一緒でね、最初は超大型の台風でも来るのかと思ったんだけど、台風は質量を持ってないし……」
「データとして観測はできるものの、実在しない……ということですか」
「そういう事、それなら残る可能性は一つ………機械の故障ってわけ!」
「モモカちゃん……」
意地でも休もうとするモモカに呆れたような視線が向けられるが、そんな二人を置いてリンは覚悟を決めたような目で呟く
「……実際に確認するしかなさそうですね」
「えっと……リン先輩、今なんと?」
「えっ!?直接行くつもり!?ドローンで見ても何もなかったのに!?特に異常報告が入ったわけでもないのに大袈裟な……」
あまりにも突然すぎる発言にモモカは思わず止めに入ってしまうが、リンはお構い無しに話を続ける
「───各自治区の生徒会代表を緊急招集します」
「えっ!?」
「現在、連邦生徒会に対応する余力はありませんので、各自治区と協力して該当地域の分析を行います。連邦生徒会長代行の権限により緊急プロトコルを発動───キヴォトス非常対策委員会を発足します」
「非常対策委員会……?そ、そこまでする?ただの機械の故障かもしれないよ?」
「……それならそれでいいのです、杞憂で済みますから……ですが、本件の全貌が明らかになるまでは全力で対応しなくてはなりません」
「トリニティ、ゲヘナ、ミレニアム……そしてアビドス。それだけでなく、連絡が取れる全ての自治区の責任者をこちらに招集します」
「うわぁ……終わった。これ、一週間は徹夜だよねぇ……」
「……リン先輩、その……本当に大丈夫なのでしょうか?」
そんな中、先程まで黙り込んでいたアユムが意義を唱える
しかし、理由はリンの案に不満があるからではない
「その……最近リン先輩が代行の権限を乱用しているという声が……あちこちから入ってきています……」
むしろリンの身を案じているからこそだった
「各自治区の代表を招集するとなると、リン先輩ご自身の立場すら危うくなるかもしれません……特に今回は防衛室の権限を侵害していると思われる可能性も……」
重い空気の中、申し訳なさそうに口を開くアユム
「あっ……もちろん連邦生徒会長代行のご判断としては適切だとは思いますが……ですが、財務室からは……」
「……判断の一つ一つに指摘を入れるでしょうね」
扉が開くと同時に、一人の少女が部屋に入ってくる
その少女────扇喜アオイは見る者によっては冷徹に感じるような眼差しでリンを見つめる
「いつから統括室の行政官が、防衛室の権限まで持つようになったのかしら?」
「アオイ、これは……」
「説明は不要よ、この件については把握済みだから。キヴォトス中に未曾有の異常現象が発生、兆候も実害も特に無い───けれど、脅威がないことを立証するまではあらゆる手段を動員して最高水準で対応すべき……その決定に異論は無いわ………そう決定したのが連邦生徒会長ならね」
リンの行動を肯定するアオイ、かと思えば最後に全てを否定する一言を付け加える
「………んえ?電話?一体誰から……ま、いいや、なんか修羅場になりそうだしこれを理由に抜け出しちゃおっと」
「えっ!?さ、流石にマズイのでは……!?」
「でも、貴女は連邦生徒会長じゃない、行政官よ。代行の腕章をつけたからといって貴女が彼女になるわけではない」
「サンクトゥムタワーの行政権を失った上にSRT特殊学園の閉鎖を決定、シャーレという正体不明の組織の認可……」
「じゃっ、あとはよろしくねアユム、またね~」
「よろしくと言われましても……ど、どうすれば……」
「もしも~し……どったの~?私、今からサボっ……仕事しようとしてたんだけどー?」
「その上、これは一体どういう事?シャーレの予言?終焉の予知夢?そんな戯言に振り回されて………いくら代行といえど、度を越しているわ」
「え?エネルギー反応?確かにこっちでも確認してるけど………………ちょっ……え?なに?そんな電話入ったの?いくらミレニアムでも流石に情報掴むの早すぎない?しかも元会長さんと全知さんから?」
「アオイ、私のことが気に入らないのは分かりますが……」
「……私は今、私的な感情の話をしてはいないの」
詰め寄ってくるアオイに対して冷静に返すリン
アオイは少しムッとした後、すぐに表情を変えて再び喋り出す
「私は昔から貴女の能力を高く評価してきたわ、それは生徒会長も然り、貴女の能力は誰よりもよく理解しているつもり………でも、貴女が連邦生徒会長のような超人になれるわけではない」
「もう……一体なんなのさ……え?トリニティからも?しかもティーパーティー?どっちの学校も情報網優秀すぎない?………はぁ、仕方無いなー……」
「貴女が代行になったのは統括室の行政官だったからであって、貴女の能力が認められたのではなく、あくまで必要だったからに過ぎない」
「その事実は代行の腕章をつけている限り貴女につきまとうでしょうね、それを念頭に置いて判断をお願いしたいの………連邦生徒会長〝代行〟」
「…………」
「それでも、貴女が非常対策委員会を設置するのであれば防衛室の権限を侵害するに足るだけの根拠と正当性が────」
「あー……口を挟んじゃって申し訳ないんだけどさ……たった今できたよ、正当性」
「……はい?」
仲裁するように割り込んできたモモカ、彼女は面倒そうに頬をポリポリとかきながら口を開く
「トリニティとミレニアムから電凸があったらしいんだけどさー………」
「今すぐ両校付近の未知のエネルギー反応について調べろってさ」