つまりブルアカは健全なゲームです
大地が光り輝く────直後、爆発する
調印式での戦いの時と同じようにローブを被った巨大な怪物が不可思議な攻撃を仕掛けてくる
あの時と明確に違うのは、アリウスもトリニティも互いに背中を預けあっている………というところだろう
「ヒヨリっ!狙撃を中止しろ!また爆発するぞ!」
「ひいいい!?また地面がぁ!?」
サオリの声に反応してヒヨリが地面を見ると、再び輝き出す
大きめのスナイパーライフルを抱えながら咄嗟に駆け出すと、その場が光に包み込まれた
「あ、危なかったです………あと少し遅かったら丸焼きにされてました……!」
「あっ、またヒヨリの着地先が輝いて………」
「なんで私ばっかりいいいい!?」
爆破地点から連鎖するように光が広がっていく
ヒエロニムスによる広範囲爆撃は攻めと守りを両立させていた
「……サッちゃん、どうする?」
「………奴の頭部に最大火力を叩き込む」
「だとしたら、必要なのは………」
「ミサキ、弾はあるな?」
「あるけど………私の武器は一ヶ所に弾が集中するような素直な軌道してないよ?」
「近距離で当てればいいだけだ」
「………あのゴリラと同じ使い方じゃん、しかも私の武器が壊れるの確定だし」
口では文句を言いつつ、武器に弾を込めるミサキ
そのやり取りを聞いていたミネは、背後のアリウススクワッド達に咎めるような視線を向ける
「………貴女達は捨て身の特攻を仕掛けるつもりですか?」
「そう簡単に死にはしないさ………それに、罪人が怪我を負ったところでトリニティに被害が出る訳では────」
「なりません、私の前で自らの身体を粗末に扱うような真似は許しませんから」
「………なら、どうする?」
「その役目、私が引き受けましょう」
「ミネ団長!?何を仰っているんですか!?」
自らの身体を傷つけようとするミネの姿に、セリナが思わず止めに入る
「ミネ団長もアリウスの皆さんもご自分の身体を軽視しすぎです!他の作戦を考えるべきです!」
「……だが、悠長に構えてる時間がないのも事実だろう」
サオリが背後に目を向けると、そこにはヒエロニムスを引き付けているシスターフッドの姿があった
「……っ!駄目です!あまりダメージが入っていません!」
「やはり通常の武器では限界が────っ!?」
後ろに退こうとした瞬間、瓦礫に足を取られて態勢を崩してしまうマリー
そんな彼女の足下が光り始め、一気に顔が青ざめる
サオリやミネが咄嗟に走り出し────
「マリーっ!」
「きゃっ……サクラコ様!?」
────二人がたどり着くよりも前にサクラコが後ろからマリーを抱えて飛び退く
「ど、どうしてここに……?」
「トリニティの防衛ラインが自警団のお二人によって安定してきましたので、予定より早く突入させていただきました」
マリーをゆっくり下ろすと、サクラコはヒエロニムスを睨んだ
「……ここからは私が前に出ますのでお二人はサポートを………ヒナタ、マリー」
サクラコは二人を後ろに下げると、今度は自分の番だと言わんばかりに堂々と前に出る
「……あ……あの格好って……」
「ヒヨリ、余計なこと言わないで」
「………サクラコさん、それは何のつもりですか?」
「……はい?」
ミネがワナワナと震えながらサクラコに近づくと、下半身の方にビシッ!と指を差して勢いよく叫んだ
「こんな重要な局面でっ!その様なふざけた格好をするなどっ!」
「えっ!?」
そう、サクラコの格好は……その……なんともまあ際どいものだった
まるでハイレグレオタード………普段の日常生活では身に纏うことは絶対にないであろう服を、あろうことか戦場に持ち出してしまっている
「こ、これはですね……最後の聖徒会長が残したユスティナ聖徒会の礼装でして……!」
『ユスティナ〝性〟徒会!?』
「きゃっ……ハナコさん!?」
突如、通信機から大音量の声が響く
それは途中から黙り込んでしまったハナコの声だった
『それはつまり……〝性〟の〝徒〟ということですか!?サクラコさん、貴女は〝生徒〟ではなく〝性徒〟だったのですか!?性をもたらす使徒ということで合ってますか!?』
「し、質問の意味がよく分かりません!ハナコさんは何が言いたいんですか!?」
『……はっ!?し、失礼しました……サクラコさんがあまりにも衝撃的すぎる格好をしてきたので……つい……』
ハナコは軽く咳払いをし、話を切り出す
『では、気を取り直して………ヒエロニムスの行動パターンの解析が完了しましたので、皆さんにご報告を』
「あの姿を見てから〝気を取り直して〟って言われましても……」
「……何かおかしいのか?」
「………しょっちゅうお腹を出してるサオリ姉さんも似たようなものか」
『確かにサクラコさんの格好は誰がどう見ても卑猥ですが、その話をし始めるとキリがないので一旦置いときますよ?』
「………えっ!?そんな風に思われていたのですか!?」
『まずは皆さんが何度も苦しめられている攻撃……地面が青く光り出した時の攻撃です、これは至ってシンプルな通常の爆発………とはいえ、脚を負傷させるには十分すぎるほどの威力ですのでご注意を。この攻撃が出る時の合図はヒエロニムスの右手の杖が光った時です』
「は、ハナコさん!?流石に冗談ですよね!?」
『次は対象の周囲が青黒く光った場合の攻撃……此方は地面関係なく空間そのものが爆発しますが、これに巻き込まれると一瞬で意識を奪われる可能性があるので、こちらもやはりご注意を………この攻撃の場合、ヒエロニムスの左手の杖が青黒く光ります』
「は、話を聞いてください!これはですね、先程も言ったようにユスティナの─────」
「サクラコさんっ!真面目に話を聞きなさいっ!」
「そ、そんな……ミネ団長まで……」
『……そして最後にもう一つ、ヒエロニムスが両方の杖を光らせた場合です』
「……両方の杖を?」
『両方の杖を同時に光らせてから十数秒後、膨大なエネルギーと共に辺り一面が包み込まれる………との情報が入りました。ですが、これに関しては実際に見た者は一人もいないので何とも……』
「………実際に使われていないのにどうして情報が残っているんだ?」
『そうですね………実はこの情報に限っては私が調べた訳ではなく、調印式の時に実際にヒエロニムスと対峙した先生から頂いたものなのですが………でも、その時もヒエロニムスは別にそんな行動は取っていなかったんですよね……』
「………では、なぜ先生がその情報を?」
『すみません、こればかりは私でも………何かを隠したがっているという事だけは分かるのですが……』
「…………酒泉か」
『……?』
「いや、何でもない………とにかく、その情報がシャーレからの物だとしたら信憑性はかなりのものだろう。それを頭に入れて立ち回るとしよう」
帽子を外し、白いコートを脱ぎ捨ててサオリが前に出る
その表情には決意が込められていた
「一番無防備になるのは両方の杖が光った時………そのタイミングなら問答無用で全火力を直撃させることができる」
『……ですが、失敗すれば全滅ですよ?』
「この戦いに敗北すれば、どの道キヴォトスは滅びるんだろう?なら、やるべき事は変わらないさ」
『………ふふっ、確かにそうでしたね』
サオリは死を恐れていないかの様に堂々と佇むと、そのまま背後の仲間達に語りかけた
「今の話は聞いていただろう………お前達はどうする?」
「この戦いに破れればキヴォトスは滅びる……そう言ったのは貴女でしょう」
「元より覚悟は決まっています」
サクラコとミネも足を前に進め、サオリを挟むように並び立ち─────
「や、やっぱりあの人の格好だけおかしいですよ……」
「しーっ………本当のこと言っちゃ駄目だよ、ヒヨリ」
「………姫も結構酷いこと言ってるけどね」
「う……うぅ……」
「お、お前達!余計なことを喋るなっ!………その、すまない……私の部下達が失礼なことを……」
「い、いえ……気にしていませんので……」
「………まさか本当に無自覚だったとは」