「や、やあ……酒泉……ウトナピシュティムの確保、ご苦労だったね……」
「あ、あとは私達に……お、お任せ……を……」
「ここからは……ぜぇ……私達の……ぜぇ……仕事……だから……」
明らかに俺より疲れてるであろうエンジニア部の三人が到着した
ヤバい、とにかく罪悪感がヤバい
「な、なぁに……気にすることはないさ……ちょっと連日アバンギャルド君の整備をしてて巨大スーパーノヴァの設計図も描いて実際に完成した時に機能に問題がないかシミュレーションしてここに来る途中で絡んできた敵を倒してウトナピシュティムの修理に必要そうな道具を全て用意してきただけだ」
「これから……もう一度疲れる予定ですので……一つくらい仕事が増えても………問題ありません……ので……」
「はぁ……はぁ……お、落ち着いてきた……」
………ちょっと輸送車両から水取ってきますね
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「こ、これがウトナピシュティムの本船か………!なんて素敵な内装をしているんだ……!」
「見てください!こちらに何かしらのエンジンがありますよ!?」
「凄い……中もこんな広いなんて……」
先程までの疲れなど無かったかのように目を輝かせて船の中に入る三人
どうやら一瞬で心を奪われたようだ
「早速修理を開始しても良いかい!?」
えっ!?いや、それはむしろありがたいんですけど………も、もう少し休んだ方が……
「そんな悠長な事は言っていられない!私の工具達が〝早く触らせろ〟と騒いでいるんだ!」
両手をわきわきとさせながら迫真の表情で近づいてくる白石さん
テンションおかしくない?自分達でも気づいていない内に過労ライン越えてない?
「見てくださいウタハ先輩!この回路、まだ生きてますよ!?」
「……あっ、なんか取れちゃった」
「なっ!?二人ともズルいぞ!?私を置いて先に触るなんて!」
そう言うと白石さんはスパナを両手に持って走り出した
「………彼女達がエンジニア部………なのか?」
あっ、七度さん………はい、そうです
「………大丈夫なのか?」
実力は確かなんで………機械に関して彼女達の右に出る者は─────
「うおっ!?火花が!?」
「クモの巣がー!?」
「……あっ、コード踏んじゃった……」
─────………い、今は疲れてるだけなんで……ちょっと休憩したらすぐに元に戻るはずなんで……
「………休む気配が全くしないが」
………し、白石さーん!ストップ!やっぱ休みましょう!
「止めないでくれ酒泉!私はこの船に心奪われた!この気持ち、まさしく愛だ!」
ちょっ……足はやっ────
「しゅ、酒泉……これほどいて……」
猫塚さん?一体何が────うおっ!?めっちゃコード絡まってる!?
〝運動音痴キャラが縄跳びしようとした〟みたいな状況になってる!?
「た、助けて……苦しい……」
「ははははっ!ここが良いのかい?ここも修理してほしいのかい!?」
だ、駄目だ……どんどん収拾がつかなく─────
「酒泉さーん!こっちも助けてくれませんかー!?」
豊見さん!?今度は何を────ダクトみたいな場所に挟まってるっ!?
「どこに繋がってるのか気になって入ってみたんですけど、途中で進めなくなってしまいまして………」
だったら出てくればいいだろ!?
「そ、それが抜け出せなくなってしまいまして………」
え?どんだけ無理やり入り込んで………あっ!?お腹周りで止まってる!?
「お、乙女の生肌を見ないでくださいよ!」
助けを求めたのはそっちでしょ!?………ったく、とりあえず引っ張りますよ?せーのっ!
「いたたたたたっ!?お腹が!お腹が引きずられてます!もっと優しくお願いします!」
じゃあもっと腹引っ込めてくださいよ!?こっちだって女性の身体触り続けるの精神的にキツイんすからね!?
「お、お腹の話はしないでください!」
くっ……す、少しずつ引っ張って……!
「む、胸が!今度は胸が取れちゃいますからあ!せめて足を持ち上げて若干斜め上から引っ張ってください!」
はあ!?それだとスカートが大変な事になりますよ!?
「目を瞑りながらお願いします!」
わ、分かりましたよ……せーのっっっ!!!
「も、持ち上げすぎです!ダクトに引っ掛かりすぎないように少し調整してください!」
目を瞑ってるのにどうしろと!?
「み、見ちゃ駄目ですよ!?絶対に見ちゃ駄目ですからね!?」
わ、我が儘ばかり言いやがって……!
「酒泉!ちょっとそこにある工具を持ってきてくれないかい?あと天井を弄りたいから少しだけ肩車をしてくれると助かる!」
「酒泉……早くこれほどいて……なんか腕が変な方向に曲がり始めた……」
「な、なんか少しずつ息苦しくなってきました………酒泉さん……」
えっ!?ちょっ……あ、あんま喋らないで─────
「………FOX2、手伝うぞ」
「う、うん……了解……」
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「第三サンクトゥム、攻略完了です!」
「第一サンクトゥム優勢!此方も攻略間近です!」
各エリアの担当オペレーターから戦況報告が届き、すぐに次の指示を出す先生
届いてくる内容はどれも自分達の有利を報せるものばかりだが、それでも妙な不安感が拭えない
「先生、各サンクトゥムや防衛エリア付近の敵の動きですが……」
「……うん、ちょっとおかしいね」
ハナコが各地の戦闘をモニターで映し出す
最初は膨大な兵や守護者自身の圧倒的なスペックを頼りにした戦い方だった
だが、今では全ての手札を一気に使い果たすことはなく、少しずつ兵を小出しにしている状況が続いていた
防衛ラインに一定数の敵を送り、撃退されればある程度の間隔を空けてからまた一定数の敵を送る………それの繰り返しだ
「こっちの体力を消耗させる為?いや、それよりも先にサンクトゥムが攻略されてしまえば意味が無い。かといって防衛ラインを崩す為に数で攻めてくる訳でもない…………」
「此方からの反撃を警戒した足止め……でしょうか」
「それか〝本当の目的を隠す為の隠れ蓑〟とも考えられるね………」
敵の目的の一つである〝シロコの身柄の確保〟をまだ諦めていないのだとしたら、自分達が定期的に送られてくる戦力に対応している間に決め手となる何かを仕掛けてくる可能性がある
「……シロコがここに隠れているのがバレている可能性も考えておかないとね」
最初はどこかの地下施設に護衛付きで隠れててもらおうと考えていた
しかし先生は敵がどこまで情報を得ているのか不明な以上、下手に自分の手の届かない範囲で匿うのは危険だと判断した
なにより────
(─────敵は〝自分自身〟………キヴォトスの各施設の場所を把握されててもおかしくない)
それなら、いざとなれば〝大人のカード〟の力で援護できる自分の近くに居てもらった方が良い
どちらにせよ敵に居場所がバレている可能性はあるが、それならば少しでも安全な択をと先生は考え抜いた
「………っ!?先生!第六のサンクトゥムからエネルギー反応が!?」
「なっ……このタイミングで……?」
突如、アラートと共にモニターが空中に展開される
画面には黒く、おぞましく、巨大な何かが蠢いているのが映っていた
(酒泉の話では第六以外の全サンクトゥム攻略後に出現するって話だったけど………)
またもや酒泉の記憶には無い出来事が起きた
………が、第六のサンクトゥムは本来、攻略された五つのサンクトゥムからエネルギーを集めて生成されるはずだった
だが、現在攻略済みのサンクトゥムは第二と第三のみ………つまり、エネルギーを集めているのはこの二つしかない
明らかにリソース不足、確実に本来のスペックより落ちているだろう
(不完全な状態で切り札を投入……そこまでして〝本命〟を隠したいのか……?)
敵の狙いを模索しつつも、新たに出現するであろう敵に備えて先生は通信機を手に取った
「ヒマリ、状況は分かっているね?」
『ええ、想定より早く出番がきてしまって多少は動揺しましたが………特に問題はありません』
「そっか、それなら彼女達を呼んでくれるかな?そう────」
「─────カイテンジャーを!」