ヤバい、シャーレと連絡がつかない
カイテンロボの戦いはどうなっているのか聞こうとしたけど全く無線に出てくれない
向こうでは何が起きている?もしかして手を離せない状況なのか?
……そうだ!攻略済みのサンクトゥムで待機してる人達に聞いてみよう!
という訳でケイさん!説明よろしくぅ!
【本部が襲撃されました、他のサンクトゥムからも援軍が送られていますが、ここに来て防衛ラインの方への攻撃が苛烈になったせいで思うように行動できていません。ですから貴方もさっさと援護に向かいなさい……以上です】
あっはい………え?カイテンロボの戦闘、もう終わったの?
【そのようですね】
………これも全て陸八魔アルって奴の仕業なんだ!
【……はい?】
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「アロナッ!頼んだ!」
『任せてください!』
シッテムの箱の力でバリアを展開し、ケテルの砲撃を防ぐ
その横をバルバラが通り抜けようとするが、先生が大人のカードの力で攻撃用ドローンを召還して動きを止める
多少仰け反ったバルバラにユウカとカヨコが追撃を加える……が
「……っ、生半可な火力じゃビクともしないね」
「もう!これ以上指令室がめちゃくちゃにされる前に決着をつけたいのに!」
バルバラはすぐに体勢を立て直して反撃を開始する
「これは……ちょっとマズイかもね……!」
生徒達を護りながらもバルバラとケテルの動きから目を離さない先生
このままではジリ貧になると判断し、より強く大人のカードの力を振るう
すると指令室の窓の外から一台の戦闘ヘリが出現し、ミサイルをケテルに向かって数発放つ
多数ある脚の内、後部の方を破壊されたケテルは砲弾を放つ直前にバランスを崩して天井に砲身を向けてしまう
そのまま天井が破壊されると同時に瓦礫がケテルの上に降り注ぎ、ケテルのメインカメラを塞ぐ
「よし!次は……!」
バルバラをこのフロアから外に落とそうとヘリの砲身を向けると、再びミサイルを放とうとして─────別の方向からのミサイルに迎撃された
「っ!?ここに来て援軍……が……」
先生が視線を向けた先は窓の外
そこから見えたのは〝自分が召還した戦闘用ヘリと同じ種類の戦闘ヘリ〟
少々ボロボロになっているが、それでも見間違えることのないシャーレのマークをつけたヘリ
それが先生自身に牙を剥いていた
………敵は別世界の〝自分〟
こうなる事は先生も覚悟していたが……
「大人のカード対決………こんな早い段階で発生するなんて────!」
別の方に意識を向けていると、ケテルが瓦礫を振り払うと同時にバルバラが走り出す
ハナコが、アコが、その場の全員がなんとか止めようとするが、オペレーターに徹していた彼女達の装備では火力面が足りずに敵の注意を逸らすことさえできない
先生が大人のカードで武器を呼び出してサポートしようとするが────
「───……っ!バルバラにバリアを!?」
───敵もまた、大人のカードの力でバルバラを護る
バルバラはそのまま勢い留まることを知らずに扉を破壊し、そこから下の階層に向かって走り出した
「早く止めないと………っ!」
ケテルと敵の戦闘ヘリから同時にミサイルが発射され、生徒達を護る為に防御に集中せざるを得なくなる
まるで〝自分の考えを分かっているかのような行動〟に手を焼く
「先生っ!下の階層にも護衛部隊は集まっています!ここは目の前の敵を速やかに排除するのが優先かと!」
「……そうだね、速攻でケリをつけて速攻で助けに行こうか!」
目の前の敵を排除する為にフル出力で大人のカードの力を行使する
より強くバリアを展開し、より高い火力の武器を生徒達の元に出現させ、より強力な戦闘ヘリを召還する
「私達が下に行くまでの間、時間は十分に持つはずだ!だって─────」
「─────あの子達が居るんだから!」
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建物内で暴れるバルバラを多くの生徒達が止めようとするが、バルバラは立ちはだかる彼女達を片手間に処理しつつ速度を増していく
ハンドガン程度の弾丸ならば意に介さず、アサルトライフルも腕の武装でガードし、逆に敵のシールドは容易く破壊しながら突き進む
目的地は決まっていないが、バルバラはシロコの居場所を探る為に手当たり次第部屋の扉を破壊する
「対象、全く止まりません!」
「くそっ!とにかく時間を稼げ!」
圧倒的な機動力、驚異の耐久力、そして防衛部隊側とは明らかに性能の違う武装
外からも生徒達がバルバラの足止めの為に駆けつけてくるが、少しずつ援軍の数も減っている
ここに来てサンクトゥムを確実に攻略する為に戦力を割いたのが裏目に出た
……が、そんな絶望的な戦場にも希望が現れた
「────待たせたわねっ!」
深紅の長髪、黒いヘルメット、赤い瞳
彼女の名は河駒風ラブ
普段はヘルメット団として活動している彼女が、キヴォトスを危機から救う為に立ち上がった
時にはシャーレと敵対し、時には他校の生徒に銃口を突きつけていた彼女達が今だけは手を取り合っていた
「全員、突撃いいいいいい!!!」
「「「───すっぞオラァァァァァァァ!!!」」」
とても物騒な表情で銃を構え、バルバラに突撃する部下達
バルバラの猛攻にも怯まずに果敢に立ち向かい───
「「「うわああああああああ!!!」」」
────普通にぶっ飛ばされた
「……え?嘘、あれなんか強くない?人の形だけど化物みたいなスペックしてる感じ?」
「隊長!どうするんすか!想定よりも遥かに強いっすよアイツ!」
「あ、あああ慌てるんじゃないわよ!まだまだ此方には戦力が─────ギャフン!?」
明らかに冷静さを失っているラブの顔を踏みつけて一人の少女がバルバラに接近する
両足で放った蹴りがバルバラの腕でガードされるが、そのままバルバラの腕を足場にバネのように大きく飛び上がる
そして空中でスナイパーライフルを構え、バルバラの額に一発弾丸を撃ち込む
「……少々手こずりそうですね」
「一体どこのどいつが隊長を踏み台に────なっ!?お、お前は……ワカモ!?」
自分達のリーダーの顔を踏みつけられたことに怒りを燃やした部下達が一人の少女を睨み付けるが、その顔を見た瞬間に一瞬で青ざめてしまう
「ワ、ワカモ!?なんでこんな所に………」
「私はただ〝先生〟に借りを返す為に協力しているだけです、リゾートでの一件や初遭遇の時も見逃されてますからね………」
素っ気なく答えながらも視線をバルバラから逸らさないワカモ
次の手はどうしようかと考えていると、バルバラが腕のガトリングを構える
「………まあ、一先ずはこの攻撃をしのいでから反撃の隙を────」
────うおおおおおお!!!これはカイテンロボの戦闘が見れなかった分っ!!!
「────っ……?」
次の瞬間、突然一人の少年が背後から接近してくる
少年はバルバラにアサルトライフルの銃口を向けると、そのまま弾丸を放ちながら突っ込んでいく
バルバラも腕のガトリングで迎撃しようとするが、他の生徒が使っていたであろう壊れかけのシールドを拾い上げて弾を防ぐ
しかし限界を迎えたシールドが完全に破壊されると同時にバルバラがガトリングを振り上げて地面に叩きつける
………が、酒泉は軽く横に飛んでそれを回避する
そのまま戦闘の余波で生まれた瓦礫等の周囲の障害物を足場にしてバルバラの後頭部にしがみつくと、今度はスナイパーライフルの銃口を突きつける
─────そしてこれはカイテンジャーの名乗りを見れなかった分!!!
弾丸を一発放つと、器用にも両足だけで体勢を維持しながらスナイパーライフルのリロードを済ませる
─────これがコミケで買ってきたエ駄死本を風紀委員に公開された時の分!!!
─────これが〝折川酒泉ロリコン説〟を広められた分!!!
─────これが色んな人達にめっちゃピアス穴を空けられた分!!!
─────そしてこれが………全ての責任を背負わされた陸八魔さんの分だあああああああ!!!
よく分からない怒りと共に連続射撃を行う少年────折川酒泉
一通り怒りをぶつけて満足したのか、スルッとバルバラから足を離してワカモ達の方へと飛び退く
────ふぅ……やはり頑丈なサンドバッグは良いな……
「な、なんだこいつ……」
あっ……どうも、折川酒泉です。皆さんの援護に来ました
「え?あっ、どうも」
「…………」
ヘルメット団員が若干引き気味に酒泉を見つめる中、ワカモだけが何かを言いたそうに酒泉に近づく
「……この感じは……いえ、でも………そんな筈は………運命の人のような………そうではないような………」
………え?なんすか?
「……こんな状況ですが、一つお聞きしても?」
まあ、時間が掛からなければ……
「では、早速ですが────」
「────貴方様………いえ、貴方は何処かで私とお会いしたことがありますか?」
酒泉の身体が固まる
それは何故そのような質問をするのか理解できなかったから………ではない
むしろ心当たりがあったからだ
………だが、それは自分以外誰も知らないはずの〝過去〟だった
それをヤンデレキャラ特有のセンサーで感じ取ったであろうワカモに対して恐怖を抱いたのだ
「………それで?答えは?」
────い、いや?会ったことはありませんけど?
「会ったこと〝は〟ない……ですか、では質問を変えましょう。貴方は私のことを出会う前から知っていますか?」
────………知りません
「私の目を見て答えてください」
────勘弁してくれ……俺はプレイヤーであっても先生ではないんだよ……
「……何をボソボソと────っ!」
二人の間に割り込むようにバルバラがガトリングを連射する
それぞれ左右に別れて攻撃を回避し、バルバラを倒そうと己の銃に弾を込める
「……仕方ありません、この話は一旦後にしましょう。続きはあの女を始末してからですね」
────いや、俺はその……予定があるんで……
「あら?女性からのデートのお誘いを断らなければならない程の予定ですか?」
………お、俺……身持ちは堅いんで……
軽口を叩きながらも攻撃を回避する二人
酒泉とワカモが同じ場所に退いた瞬間、酒泉がワカモ以外には聞こえないほどの小声で耳打ちする
────狐坂さん、張り切ってるところ申し訳ないんですが………ここは俺一人に任せてくれませんか?
「………その理由は?」
────狐坂さんには何かあった時の為に〝あの人〟の近くに居てほしいんです
「……ああ、〝あの人〟ですか」
盗聴を警戒してシロコの名前を濁しながら会話する二人
ワカモはどこか疑うような眼差しで酒泉を睨む
「一応聞いておきますが………この戦いが終わった後、私に深掘りされるのが嫌だから今のうちに離れておきたい………とかの理由ではありませんよね?」
………………………違います
「………まあ、そういう事にしておきましょう」
渋々といった感じで頷くと、ワカモは大きく飛び退いてラブの後襟を掴む
困惑するラブを無視して歩きながら酒泉に語りかける
「……え?なに!?私、なんか怒らせるようなことした!?」
「この場は貴方様にお任せします………いえ、今はまだ貴方と呼んでおきましょう」
────え?なに?〝貴方様ポジション〟俺なの?先生は?
「では、お気をつけて………折川酒泉さん」
「ちょっ……痛い痛い痛い!お尻が引きずられてるから!自分で歩けるから!」
バルバラは退却していくヘルメット団やワカモにガトリングの銃口を向けようとするが、それを目の前に立つ酒泉に妨害される
正面から亡霊の姿を見た酒泉は、何かを懐かしむかのように目を細める
────あの時はアンブロジアスや雑兵も一緒だったけど………この状況、そして今の俺ならどこまで戦えるかな?
思い返すのはバシリカでの戦い、時間稼ぎの為に目の前の聖女に立ち向かった時のこと
あの頃の酒泉では太刀打ち出来なかったであろう相手がこうして再び現れた────だとすればやる事は一つ
─────ゲヘナ学園一年、折川酒泉っ!!!タイマン張らせてもらうぜっ!!!
今、この瞬間、リベンジマッチが始まった