「いっ……たぁ……」
「つ、着いたの……?」
「皆さん、ご無事ですか!?」
頭を押さえながら立ち上がるオペレーター達
突入時の衝撃のせいで外の景色は瓦礫だらけになってしまったが………間違いなくここはアトラ・ハシース内だ
ここからはラスボス戦終了まで戻れません、セーブポイント?セーブなんかねぇようるせえよ黙れよセーブなんかねぇよ
「各員、ここで再び点呼を……」
さて、後は1つずつ敵の拠点を制圧してラスボスの元に辿り着くだけ………とはいかないらしい
「……っ!待ってください、これは……!」
突如、アラートが鳴り響く
それと同時に各員の警戒が高まる
「敵性反応、多数!」
「ウトナピシュティムに接近しています!」
外から大量のお出迎えがやってきたみたいだ
テーマパークに来たみたいだぜ、テンション上がるなぁ~
………なんて冗談を言っている場合ではなさそうだ、まさかこんな早く襲ってくるとはこの折川の眼をもってしても(ry
『うへ~……おじさん達の出番かな?』
『私達の方も準備は整っていますわ』
「そちらもご無事でしたか……」
操縦室とは別の場所で待機中の小鳥遊さんと黒舘さんから通信が入ってくる
ここからは原作通り防衛戦になるんだろうな
『この船を守り切ればいいんでしょ~?だったら任せてよ~』
『美食の道を阻む存在は私達美食研究会が許しませんわ!行きますわよフウカさん!』
『だから私を勝手に美食研扱いしないでくれる?』
────愛清さんに無理強いたら本気でお前らの部活潰すからな
『冗談ですわ……殺気、漏れてますよ?』
ヒ○カかお前は
「……分かりました、では皆さんには防衛エリアの情報を送ります」
『りょうか~い』
『……なるほど?私達はこの付近を防衛すればいい……と』
タッチパネルを操作し、位置情報を送信した七神さん
さて……俺達もそろそろ働きにいこうかな
「酒泉、私達はウトナピシュティムの正面を守るよ」
────了解っす
「待ってください、そのルートは恐らく最も敵の進軍が激しいルートになるはずです。誰か数人援護を……」
「大丈夫よ、私と酒泉なら誰も通すことなく守り切れるから他のメンバーは船内の仕事をお願い………酒泉もそれでいい?」
────空崎さんが一緒なら何処だろうと何人相手だろうと問題無いっすよ
「……そういうことだから」
「ですが……」
「まあまあ……2人の実力は私も何度も見てきたからさ、そこは保証するよ?リンちゃん」
「だから誰がリンちゃんですか……はぁ、分かりました。先生がそう仰るのであればウトナピシュティム正面の防衛は貴方達にお任せします」
空崎さんが俺の事を完全に信頼してくれてる
ヤバい……敵が迫ってきている状況なのにニヤケてしまう
『おお~……公衆の面前で見せつけてくれるね~?風紀委員君は風紀委員長ちゃんのことが大好きなのかな~?』
────そりゃあ、大好きっすよ
『あ、ありゃ?堂々と答えちゃった?』
「なっ……しゅ、酒泉!?気持ちは嬉しいけれど、こんな大勢の前で………いや、逆に大勢の前だからこそ周知させるという手も────」
────別に隠す理由なんてありませんし、前から言ってることですから………ずっと尊敬してますもん
『あ~……大好きってそっちの意味の……』
頭をかきながら何か言いにくそうにする小鳥遊さん
それと同時に周囲からも呆れたような視線が集まる
「……はぁ……またですか、酒泉」
「いや……うん……何となく分かってたけどさ」
『乙女の恋心は食欲と同じ……いつ爆発するか分かりませんわよ?』
『……えっと……私も今回は酒泉君が悪いと思うかな』
その中でも同じゲヘナである天雨さんと鬼方さんからは〝またかコイツ〟みたいな目で見られ、黒舘さんと愛清さんには何故か怒られた
『なんていうか……ごめんね?風紀委員長ちゃん』
「気にしないで………この戦いが終わったらたっぷり説教するから」
『とんでもない子を好きになっちゃったね~………同情するよ、うん』
「……まあ、もう慣れたことだから」
『………慣れるほど同じムーブされてるの?1発ビンタでもしとけばー?』
「ううん、そんな事しなくても地上に帰ったらしっかりわからせるから」
『あっ…………風紀委員君がんばってね~』
何故か小鳥遊さんに応援された
頑張る?頑張るって何を………ああ!拠点防衛のことか!
────任せてくださいよ!こっちは空崎さんが一緒なら百万人力ですから!
『……うへぇ……いつか本当に女の子に襲われても知らないよ?』
────確かにもう1人の砂狼さんに襲撃されましたけど、今回は皆と離れすぎてないんで大丈夫だと思いますよ?まあ、それでも一応警戒はしておきますけど
『そういうことじゃないんだけどなぁ………おじさんしーらないっと』
そう言ってから小鳥遊さんとの通信が切れた
なんだ……?小鳥遊さんは何を危惧しているんだ……?
「……酒泉、貴方が自らの上司を信頼しているのは知っているけど………それでも油断は禁物よ」
「酒泉、気にする必要はありませんよ!この女はただ嫉妬して────」
「あーもう!ヒマリ先輩は黙っててください!これ以上喧嘩の火種を撒かない!」
「むごっ!?」
明星さんが調月さんに指差して何かを伝えようとしたが、その口は早瀬さんの手に塞がれてしまった
「……酒泉、もう行こう」
空崎さんに手を引かれ、その勢いのまま足を進ませる
さて、これから俺達は敵の進軍を食い止めなければならないが………この後、シロコテラーがウトナピシュティムに侵入して爆弾らしき物で船内のシステムを破壊しに来ることは調月さんや明星さん、そして先生にも伝えている
その上でウトナピシュティムから出て戦っている理由は………ぶっちゃけどうしようもないからだ
アトラ・ハシースの演算能力をどうにかしない限り、シロコテラーのワープ能力はある程度自由に使える
いつ、どこに、どんな爆弾を仕掛けてくるのか………それを特定するなんて無理ゲーすぎる
そもそも船内のカメラも突入時の衝撃でぶっ壊れているのが多数存在する………っていうかカメラだけじゃなくて大半のシステムがぶっ壊れた、つまりシロコテラーの姿を此方から探すのは得策ではない
それとも船内をずっと見回り続ける?………敵が大量に迫ってきているのに?
まあ、要するに無理なもんは無理だと最初から切り捨て、ここらは原作通りの流れにしてしまおうという作戦だ
……考えたのは先生と調月さんと明星さんの3人だけどな!
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「酒泉、次は────」
────左側の敵ですよね……もう撃ってます
「……完璧よ」
私が指示を出そうした頃には既に酒泉が敵の増援を倒していた
……本当に、よくここまで強くなってくれたと思う
調印式、バシリカ、ミレニアム、そして……虚妄のサンクトゥム
短期間で数多の戦場を潜り抜けてきた結果、風紀委員会の中でも上位に位置する彼の戦闘能力は更に研ぎ澄まされた
その実力はあのトリニティ最強と噂される剣先ツルギや、そんな剣先ツルギに匹敵しているかもしれない聖園ミカが相手でも簡単には負けないようになっていた
……まあ、流石に正面からだとまだ勝てないだろうけど
酒泉はその事を悔しがっていたけど、1年生の時点でその強さなら問題は無いと思う
………もしかしたら色彩との戦いを見越していたからこそ焦っていたのかもしれないけど
(………アレは)
そんな事を考えながらもウトナピシュティムに接近しようとする雑兵を始末していると、酒泉が幽霊の様な敵と戦っているのが視界の端に映った
ユスティナ聖徒会、調印式を襲った亡霊、アリウス生と共にゲヘナとトリニティを苦しめた存在
酒泉はそんな彼女達に特に苦戦することもなく、簡単に倒してしまった
首を軽く動かすだけで弾を避け、敵の姿もまともに見ずにスナイパーライフルの一撃で亡霊の頭部を貫く
今のところセミナーの元会長に貰った新しい武器を使っている様子もない、間違いなく酒泉自身の実力だ
(……話によるとバルバラって怪物も倒したみたいだけど)
私は強化された状態のバルバラとしか戦ったことがないから、通常のバルバラがどんな戦闘能力を持っているのかは情報でしか知らない
だけど、当時の報告書を読めばかなりの実力であろうことは理解できる
《─────!》
「うるさい」
耳障りな音を立てながら襲ってくる丸い機械の軍団をデストロイヤーで一掃する
その頃には既に酒泉がユスティナを全滅させた後だった
地上での戦闘で負った傷は多少存在するが、ここでの戦いで負った傷は酒泉の身体には1つも存在していなかった
(……やっぱり、これで良かったんだ)
自分から厄介事に首を突っ込んだり、時には何もしていないのに巻き込まれたり
その度に何度も身体に傷を作り、それでもまた戦おうとする
そんな酒泉を護りたくて私は………酒泉を束縛していた時期があった
風紀委員の仕事は書類関係しかやらせず、戦闘には絶対に関わらせない
何処で何をしていたのかも報告させ、少しでも怪しいと思ったらすぐに問い詰めた
………でも、それを続けていたらきっと酒泉はここまで強くなることはなかった
アリウス自治区に突入した日、酒泉は私を頼ってくれた
全部ではないけど、自分の抱えているものを私にも背負わせてくれた
酒泉を助ける方法は縛り付ける事だけじゃなかった
1人で護るのではなく2人で戦う、それが私の選んだ道だ
だから、酒泉を縛りつけてしまったのもアリウス自治区に向かおうとする酒泉と口喧嘩してしまったのも、間違いなく悪いことだけではないのだろう
そのお陰で私と酒泉の距離は縮まったのだから………と、思ったけど酒泉のクソボケレベルはキヴォトス1だろうから本人は何も感じていないのかもしれない
………つまり、このままじゃ駄目、この程度の距離感じゃ酒泉は今までと何も変わらない
私はもっと酒泉に近づきたい、もっと酒泉を知りたい、もっと酒泉に頼られたい
……いつか、酒泉が抱えている物をもっと多く私に預けてほしい
だから────こんなところでキヴォトスを滅ぼされる訳にはいかない
人の恋路を邪魔してくる輩は色彩だろうと何だろうと叩き潰さなければ
そして、私のことをゲヘナシナシナシロモップと呼ぶ連中に私がゲヘナツヤツヤシロモップであることを思い知らさせる
だから……
「邪魔……邪魔……邪魔……!」
────……空崎さん?
「邪魔……邪魔────酒泉?どうしたの?」
────いや、あの………敵、全滅してます。空崎さんが撃ってるのは無名の守護者のコピー体の残骸です……
「……あ、本当だ」
少々力が入りすぎていたみたいだ……でも、ここは戦場だし丁度良いくらいだろう
「……こちらウトナピシュティム前防衛ライン、全員片付いた」
『こちらオペレ────えっ!?もう終わったんですか!?たった2人であの量を!?』
この声は確か……早瀬ユウカ……ていう名前の人だっけ
通信機から驚いたような声が響いてくる
「他のエリアの戦況は?」
『えっと……現在戦闘中ですけど、このまま行けば何事もなく順調に殲滅できるかと』
「そっか……私達はこのまま他のエリアの援護に行けばいい?」
『そ、そうですね……お願いしてもよろしいでしょうか?』
若干引いたような声で返事がきた
……何か失礼な事をしてしまったのだろうか
────ちょ、ちょっと早く倒しすぎましたかね?
「これも酒泉のお陰よ」
────途中から俺が撃ち抜こうとした相手が全員デストロイヤーでぶっ飛ばされてたんですけど……
「そう……だっけ……?」
……暴力的な女だと思われていないだろうか、ちょっとだけ苦戦した方が良かったかもしれない
ちなみにポンコツユウカちゃんは番外編での勘違いを引きずったままなのでウトナピシュティム内の会話を聞いても
(大丈夫よ酒泉君……私は分かっているわ……)
(酒泉君は先生と付き合っているから風紀委員長さんの想いに答えることができず、かといって拒絶して傷つけたくもない……だから鈍感なフリをしているのね……)
(周りが全員敵になったとしても、私とノアだけは酒泉君と先生の味方だからね……)
みたいに勝手に酒泉君の理解者面してます