『2つ目の次元エンジン、破壊完了しました!』
通信機から天雨さんの声が響く
どうやら先生達の方は順調に進んでいるらしい
『先生と対策委員会はこのまま第3エリアに移動を開始、3つ目の次元エンジンに向かっています』
対策委員会が一緒なら向こうも戦力的に申し分ないだろう、俺達は安心して戦える
最終的には全員で第4エリア……つまりプレナパテスの所に集まるかもしれないが、それまでに少しでもスムーズに移動できるよう敵を減らしておきたい
チラッと視線をずらせば空崎さんが天雨さんと通信機で会話している、恐らくこの後の行動について尋ねているのだろう
……地上の戦いではあんなに想定外の事が起きたのに、アトラ・ハシースに乗り込んだ途端原作通りに進むのは……なんか……不気味だな
「……そう……分かった、それなら私達もすぐに向かうわ」
────……天雨さんはなんて?
「第3エリアに敵性反応が多数集まっているから援護してきてほしいって………急ぐよ、酒泉」
天雨さんとの通信を終えた空崎さんが駆け出し、俺もその後に続く
……まあ、どんな想定外が発生しようと今更後戻りは出来ないんだし、行けるところまで行くしかないか
雑兵退治で使い切ったビーム兵器のバッテリーをポイ捨てしながら、脚に力を込めて走る速度を上げた
残りバッテリーは3個………か、1エリア1個って考えたら一応最後までは持ちそうだな
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「ふふふ……やっと見つけましたよ……敵の一手を……!」
モニターに表示される複数の管理システム
そのパネルが青色に光り〝正常〟であることを示している中、幾つかのパネルが赤く光っている
「この赤いのが敵にハッキングされたウトナピシュティムのシステムね……」
「どうですかリオ!私の方が貴女より先に発見しましたよ!ウトナピシュティムを修理中の状況で!オペレートをこなしながら!私自身の力で!」
「別に貴女だけの力ではないでしょう?」
「おや?負け惜しみですか?手分けしてハッキングされていた部分を探していたので貴女の力は借りていないはずですが────」
「敵からハッキングされるという可能性に気づけたのは酒泉の未来知識のおかげなんだから彼の力でもあるでしょ?」
「……わ、分かってますよ」
負け惜しみかと思えばリオの口から出てきたのはまさかの酒泉を称える言葉
予想外のずらしに先程〝自分の力〟と言ってしまったヒマリは少々ばつの悪そうな顔でそっぽを向く
「そんなことよりも早く制御権を取り戻しましょう、そうすれば自爆シークエンスだって自分達のタイミングで起動できるはずよ………敵に奪われず、ね」
「貴女に命令されなくてもそのつもりです……この私にハッキング対決を挑んだことを後悔させて────あら?」
「……どうしたの?」
モニターを操作し、敵のハッキングを阻止しようと動き出すヒマリ
だが、その直後、指がピタッと止まる
「…………え?いや、早すぎません?もうこんなところまで?」
「……ヒマリ?」
「どうやって……いくらウトナピシュティムがボロボロの状態とはいえ、こんなあっさり……」
「………まさか……」
リオが口を開きかけた瞬間、赤いランプと共にアラートが鳴り響く
「っ!?異常事態発生!」
「……はい!?何が起きたんですか!?」
「ウトナピシュティム周辺は異常無し、先生やヒナ委員長達のエリアにも変化は────」
「────いえ、異常が発生しているのはウトナピシュティム内部です」
「……はい?」
「ハッキングされたんですよ、システムの半分を」
「…………半分!?」
オペレーター各員がウトナピシュティム内のデータを開こうとするが、その内幾つかの画面にロックが掛けられていた
周囲から焦りの声が聞こえる中、ヒマリは1人静かに思考する
(酒泉の話ではもう1人のシロコさんが船内に現れたタイミングでハッキングの為の仕掛けを施すはず、そのイベントは実際に発生しましたけど………これほど早くウトナピシュティムの制御権を奪う事など不可能なはず、それともアトラ・ハシースの力を使えばその程度の事ならば容易いとでも?それかもう1人のシロコさんの手がなくても遠隔でハッキングが───)
(……いえ、違いますね。それが可能ならばアトラ・ハシースに乗り込んだ時点ですぐにハッキングを開始していたはず────……乗り込んですぐに?)
「……そういう事ですか、もう1人のシロコさんがハッキングの為の仕掛けを施したタイミングが分かりましたよ」
「……それは彼女が私達の前に姿を現した時じゃないの?」
「もっと早かったんですよ、それこそ最初の防衛戦が始まるより早く………つまり、私達がアトラ・ハシースに乗り込んだのとほぼ同じタイミングです」
「……待ちなさい、だとすると敵はバリアが破られることを前提で……それも破られてすぐにハッキングを行えるように入念な準備をして待ち構えていたことになるわ」
「敵がイレギュラーな事態に備えていても何らおかしくありませんよ、だって………奴等は存在自体がイレギュラーな人物を発見しているのですから」
リオの脳裏に浮かんだのは1人の少年の姿
もう1人の砂狼シロコに襲撃されたという、ゲヘナの生徒
「────っ!ユウカ!通信を今すぐ酒泉に繋げて!」
「わ、分かりました────っ……これは……!?」
「何かあったの!?」
「しゅ、酒泉君の通信機だけ……反応がありません……!」
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第1、第2エリア共に制圧済みのお陰か敵の姿が全く見当たらない
占領済みの拠点はヴェリタスの防衛システムが守ってくれるって話だし、俺達はその言葉に甘えて先生達の援護に向かっていた
第2エリアを通り抜けようと走っていると、周囲に破壊済みの大量の機械兵の姿が
恐らく先生や対策委員会の皆がやってくれたのだろう
────っ!空崎さん!止まって!
「っ……」
そんな事を考えながら走っていると、途中の通路で空間に謎の歪みを発見する
少しずつ大きくなる歪みを見て何が起こるのか何となく察していた
「酒泉!私の後ろに!」
空崎さんの指示に従って後ろに隠れると、空崎さんの羽が大きく広げられる
デストロイヤーをその先の空間の歪みに向けていると、その歪みから出てきたのはシロコテラー────ではなく、既に攻撃用のエネルギーをチャージし終えている無名の守護者.TypeBだった
「っ!」
空崎さんは敵の攻撃よりも早くデストロイヤーの引き金を引いて紫の弾丸をTypeBに撃ち込む
機械の身体が火花を散らし、そのまま爆発する………と同時に爆煙の奥から何かが投げ込まれる
手榴弾と思わしき物を見た瞬間────新たな気配を感じ、視線を横にずらすと空崎さんの頭部の横にいつの間にか銃口が出現していた
空崎さんが撃たれる────その前に銃口を破壊しようとビーム兵器をスナイパーモードに変更して狙いを定める
だが、その直後に銃口は謎の空間に引っ込み、投げ込まれた手榴弾らしき物から煙が発し………同時に今度は俺の背後から手が伸ばされる
振り向いた瞬間に右腕を掴まれ、咄嗟に反撃しようと銃口を突きつけようとし────ビーム兵器を脇に押さえて両手で敵の腕を掴んだ
「っ!酒泉───」
背後から空崎さんの叫び声が聞こえるが、振り向いている余裕はない
………今更だが、さっきのは判断ミスだったかもしれない
空崎さんの肉体なら至近距離で頭部に強力な一撃を入れられたとしても多少のダメージ程度で済んだかもしれない
〝眼〟が良すぎるあまり、空崎さんより先に空間の歪みに気づいて真っ先にそれを防ごうとしてしまった
そして……それを逆手に取られた
情けない話だ……この辺の判断能力が甘い辺り、自分はまだまだなのだと実感させられる
だが、まあ………俺に空崎さんをわざと見捨てろというのは無理な話で、咄嗟に護ろうとしたのも仕方無いことなのだろう
そんな事を考えながら俺は────シロコテラーと共に謎の空間に飲み込まれていった
先程まで立っていたエリアと似たような場所に飛ばされ、それと同時にシロコテラーに投げ飛ばされる
その際もビーム兵器をしっかりと脇に挟み続け、落とさないようにする
「………私の腕を咄嗟に掴んだのは正解だった」
注意をシロコテラーに向けつつ辺りを軽く見渡していると、相手側から話しかけてくる
「あのまま私だけが貴方を掴んでいる状態だったら、私は………貴方を一方的に〝外〟に投げ捨てていた」
あの一瞬の判断を間違えていたら原作より一足先にお星様にされていた
その事に恐怖を感じて冷や汗を流しながらもゆっくりと立ち上がる
「……でも、どちらにせよ結果は変わらない」
オペレーターとの通信を試みるが、通信機にはノイズが走るだけだ………妨害されたか
「ここは第4エリア、貴方の世界のシロコもこのエリアにいる」
「………けど、こことは別の隔離された部屋に閉じ込められているし、先生達も今からやっと第3エリアに辿り着く」
「勿論、戦力は第3エリアに集中させる。先生達も空崎ヒナも助けには来れないし、来れたとしてもかなりの時間が掛かるはず」
「つまり、この戦場には私と貴方しかいない………私の伝えたいことが分かる?」
────……ああ、分かっているよ
「不確定要素である貴方を始末する……今度こそ、確実に」
────要するにボコボコにされたいんだろ?さっさとこいや銀行強盗
本当は雑な曇らせが書きたくて身売り酒泉君とか人を助ける為に人を殺っちまって銃を握れなくなった酒泉君が書きたかったんです、でも流石に本編進めないと……