〝アリウス〟潰すゾ!!!   作:あば茶

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ブーメラン突き刺さったまま戦う奴いる?いねえよなぁ!?

 

 

 

「よかった……やっぱり酒泉は生きていた、シロコも手を汚しちゃいなかった!」

 

────先生……すいません、途中でヘマしちゃいました

 

「無事ならそれでいい!よく帰ってきてくれた!」

 

 

敵の目の前にも関わらず俺の両肩をガシッと掴みながらそう叫ぶ先生

 

そんな先生とは対象的に困惑したように空崎さんが小さな声を震わせて話しかけてきた

 

 

 

「酒泉……なの……?」

 

────正真正銘、純度100%の折川酒泉ですよ。お酒の度数で考えるととんでもない数値ですね………でも私はお酒ではないので

 

「だって……酒泉は死んだって……あの女が殺したって……!」

 

 

 

場をなごませる為の冗談を聞き流されてしまった、酒泉ショック

 

うーん、それにしても俺がいない間に色々と食い違いが発生したらしい

 

 

 

「……もう起きてきたんだ」

 

────誰かさんが俺の身体にトドメを刺さなかったお陰でな……アンタ、なんで俺を見逃した?

 

「………見逃した訳じゃない、戦いが終わるまで起きることはないだろうって判断しただけ」

 

────わざわざ二人きりになってまで俺のことを殺そうとしたアンタが?無防備な状態の俺に何もせずに?

 

「………」

 

 

 

矛盾を指摘するとシロコテラーは黙り込んでしまう

 

今言った通り、シロコテラーには俺を見逃す理由が無い

 

気絶した俺を人質として利用したりしなかったし、そうでもしないなら生かしておく必要も無い

 

合理的な理由が無いなら残されたのは……感情的なものだけだ

 

 

────アンタさ、悪役には向いてないよ

 

「……何の話」

 

────そっちの先生……プレナパテスにも同じ様にトドメを刺す事が出来なかったんだろ?

 

「違う、先生は私が───」

 

────〝私が存在してるせいで先生が死んだ〟って意味ならアンタが殺した事にはならないぞ、生まれたこと自体が罪になっちまうなら全人類が地獄に堕ちるべき大罪人だ

 

「……貴方、どこまで知っているの?」

 

────今すぐ降参するなら教えてやるよ

 

「………ならいい」

 

 

 

シロコテラーは自らの意思で世界を滅ぼそうとしている訳ではない、それは最終編をプレイ済みの人間ならとっくに知っているであろう事実だ

 

先生を失い、対策委員会の皆を失い、1人で苦しみ、足掻き、踠き、そして絶望し、人は苦しむ為に生まれてきたと悟った瞬間────色彩に目を付けられてしまった

 

その絶望を色彩に感じ取られたのか、それとも砂狼シロコが〝死の神〟であるが故に呼び寄せてしまったのか

 

どちらにせよ砂狼シロコ自身に罪はない、大切な人達を失っても尚1人で戦い続けた少女が罰せられる理由なんて存在していい筈がない

 

 

 

────………正直さ、ちょっとだけ期待してるんだ。アンタが〝俺を殺した〟って嘘を吐いた理由に

 

「……期待?」

 

────先生達の冷静さや戦意を失わせる為か、もしくは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────自分の事を〝敵〟だと認識させて、本気で倒して……いや、止めてほしかったから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……随分と都合の良い妄想だね」

 

────もし理由が後者ならまだ説得の余地がある、これ以上互い無駄な血を────

 

「うるさい」

 

 

 

シロコテラーの銃口が俺に向けられ、そのまま引き金を引かれる

 

顔に弾丸が飛んでくるが、軽く顔を逸らして頬の真横を通過させる

 

 

「……止めてほしいから嘘を吐いた?貴方の勝手な妄想を押し付けないで。私はただ、戦闘を有利に進める為に相手の心を乱そうとしただけ」

 

────……さいですか

 

「ここで諦めたらそれこそ……今までやってきた事が全て無駄になってしまう。私が利用してきた先生の苦しみも全部……全部……!」

 

 

 

シロコテラーの瞳に敵意がより強く込められる

 

……どうやら説得は無理そうだ、まあ最初から期待してなかったけどな

 

キヴォトスってのはいっつもこうだ、どれだけ互いに歩み寄っても最終的にはドンパチで解決する事になる

 

エデン条約もパヴァーヌも……そして最終編も、互いに鉛弾を交わさなければ想いどころか言葉も通じない

 

……ならばこちらもキヴォトスらしく行かせてもらおう

 

 

 

 

────空崎さん、立てます?

 

「あ、うん……ありがとう」

 

 

 

手を差し伸べるとなんなく立ち上がる空崎さん

 

顔色もさっきよりマシになっている、この短時間ですぐ戦闘可能な状態に戻るとは流石は我等が風紀委員長だ

 

 

 

「……その、本当に酒泉……だよね?」

 

────ええ、そうですけど……何か違和感でも?

 

「違和感とかじゃないけど……でも、妙に落ち着いている気がして……」

 

 

 

そうか?……そうだな、そうかもな

 

確かに自分の中でも〝何かが変わった〟って感じがする

 

俺の眼はこの場にいる全員の身体状況を見極め、1ミリ程度の僅かな身体の揺れすら見逃さず、それぞれの呼吸のタイミングすら掴んでいる

 

脳はその情報を一瞬でキャッチし、先程シロコテラーと話していた時ですら雑念と同時進行で処理していた

 

たが、この状態もいつまで持つのか分からない

 

……無駄話はしていられないな

 

 

 

────空崎さん、心配掛けてすいませんでした。本当なら今すぐ土下座してでも謝りたいところですけど………生憎とそんな時間は無さそうなんで、今すぐ構えてもらってもいいですか?

 

「……分かった」

 

────砂狼さんにも戦ってもらいますけど……でも、此方の動きに合わせる必要はありません

 

「……悔しいけどあっちの私はかなりの実力者、ここは協力しないと────」

 

────勿論協力はしますよ………俺の方から砂狼さんの動きに完璧に合わせるので、後は好き勝手やってください

 

「……出来るの?話すのも初めてなのに完璧に合わせるなんて……」

 

────出来ます……というよりも今の俺には〝誰と協力する〟とか〝誰に合わせる〟とか関係無いので

 

「……ん、なら信じる」

 

────先生はプレナパテスの相手をお願いします、大人のカード同士の戦いなんで今までと違って判断ミスもあるかもしれませんが……その場合は俺が〝修正〟しておくんで気にせず指揮を出しちゃってください

 

「……酒泉の身に何があったのかは分からないけど、でも………分かった!そっちは任せるよ!」

 

 

 

大人のカードの掲げる先生、デストロイヤーをリロードする空崎さん、ドローンを浮かばせる砂狼さん

 

俺もビーム兵器を背のホルダーにしまい、スナイパーライフルとアサルトライフルを取り出す

 

 

「……あ、そういえば……」

 

────ん?どうかしました?空崎さん

 

「……えい」

 

 

 

空崎さんに背中を小突かれた……なんで?

 

 

「だって、さっき〝クソボケは背中から刺されても仕方無い〟って言ってたから」

 

 

えっ

 

 

「今は敵の前だからこうして色々と抑えてるけど……本当はもっと沢山言いたい事があるんだから」

 

────えっと……戦闘前に軽く聞いておきたいんですけど、例えばどんな……?

 

「さっきもう1人の砂狼シロコとの戦闘を〝デート〟って例えた事とか、クソボケブーメラン発言とか」

 

────ブーメラン!?お、俺はクソボケじゃないですよ!?

 

「自分がクソボケだと自覚していないところとか、やたらと砂狼シロコの境遇を知っているようなムーブをしてる事とか」

 

────ま、まだあるんですか!?

 

「……これ以上例を出すと止められなくなりそうだしここまでにしておく」

 

 

 

この戦いが終わっても修羅場がまだ残っている事に軽く絶望する

 

……俺はなんて勘違いをしていたんだ……シロコテラーは中ボスだ、真のラスボスは空崎さんだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……今、酒泉が私に対して失礼な事を考えた気がする。これについても後で問い詰めるから」

 

 

 

アカン(アカン)

 

 

 

 

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